臨床神経学
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48 巻 , 4 号
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総説
  • 高橋 淳
    2008 年 48 巻 4 号 p. 233-241
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル 認証あり
    神経機能を修飾して変化させる(ニューロモデュレーション)方法として,広義には薬物治療や遺伝子治療,経頭蓋磁気刺激がある.さらに手術操作によるものとして,深部脳刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)や細胞移植療法が挙げられる.パーキンソン病に対するDBSでは,淡蒼球や視床下核に電極を挿入して電流を調節することで顕著な運動症状の改善がえられる.このことは,適切な場所を選べば局所の環境を変えることによって神経機能を調節しうることを意味する.脳局所環境を変化させる別の方法として細胞移植が挙げられ,現在は神経幹細胞,胚性幹細胞(ES細胞)などの臨床応用に向けた研究が進められている.
原著
症例報告
  • 松山 友美, 笹ヶ迫 直一, 小池 明広, 松浦 理城, 古賀 孝臣, 川尻 真知, 大八木 保政, 岩城 徹, 吉良 潤一
    2008 年 48 巻 4 号 p. 249-254
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性である.1998年右手脱力,翌年に左手脱力が出現し,徐々に進行した.2003年首下がり,2004年11月下肢脱力が出現した.臨床的には進行性の下位運動ニューロン症状が主体であった.2005年2月嚥下性肺炎で緊急入院した.入院9日後気管切開,同13日後心電図モニター上ST上昇,特徴的心エコー所見からたこつぼ型心筋症と診断した.循環管理をおこない一旦小康状態になるもふたたび血圧低下し,治療に反応せず入院37日後死亡した.剖検上心筋に梗塞巣はなく,心尖部・心基部のびまん性心筋変性と線維化をみとめたが死因は確定できなかった.神経病理学的には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の所見であった.ALSでたこつぼ型心筋症を合併した例のはじめての剖検報告である.
  • 呉城 珠里, 葛本 佳正, 青松 宏美, 楠 進
    2008 年 48 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性である.上気道炎症状が出現後,髄膜刺激症状をともなった頭痛,異常行動が出現.臨床検査より肺炎球菌性髄膜脳炎と診断した.頭部MRIでは散在性の大脳白質病変をみとめた.抗生剤治療により炎症所見,髄膜刺激所見は改善するも,MRIでみられた,散在性の白質病変は更に増悪,これらはステロイド投与により改善した.本症例では,肺炎球菌性髄膜脳炎を契機に急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:以下,ADEMと略)類似病態を併発したと考えた.肺炎球菌性髄膜炎後のADEMの報告はきわめてまれであるが,細菌性髄膜炎にともなう病態の一つとして考慮が必要と考えられた.
  • 井口 正寛, 丸山 健二, 堤 由紀子, 内山 真一郎, 岩田 誠
    2008 年 48 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    結核菌の各種塗抹検査・PCRが陰性であったため,初期診断が困難であった神経結核症の2例を経験した.1例目は33歳女性.右側の外転神経麻痺と顔面麻痺を発症し,QuantiFERONが陽性であったため,神経結核症をうたがい,結核専門病院に転院した後,結核菌が証明された.2例目は34歳男性.髄膜炎を発症し,髄液培養で結核菌が証明される前に,QuantiFERON陽性によって神経結核症と診断し,治療を開始した.神経結核症の早期診断にQuantiFERONは有用である.
  • 安部 芳武, 迫 祐介, 花岡 拓哉, 木村 成志, 荒川 竜樹, 熊本 俊秀
    2008 年 48 巻 4 号 p. 263-266
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性である.4日間の経過で両下肢の脱力,感覚障害,排尿障害をきたし当科に入院した.74歳時に上行結腸癌,75歳時に転移性肺癌の手術を受けた.神経学的には下肢対麻痺,アキレス腱反射消失,L3以下の感覚消失,膀胱直腸障害をみとめた.腰部MRIにて脊髄円錐部にT1強調像で等信号域,T2強調像で低信号域を示し,周囲に造影効果をともなう病変をみとめ,脊髄内出血と診断した.血漿フィブリン分解産物,D-ダイマー,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体の上昇をみとめ,凝固線溶系の活性化が示唆された.脊髄円錐部に出血をきたすことはまれであり,本症例では大腸癌とその転移にともなう凝固線溶系の亢進が誘因であると考えられた.
短報
  • 市來 征仁, 渡邊 修, 岡本 裕嗣, 池田 賢一, 高嶋 博, 有村 公良
    2008 年 48 巻 4 号 p. 267-270
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性である.排便中に1回,入浴中に2回,のたうち回る激しい頭痛が突然に出現した.2回目の頭痛消退後,痙攣発作を呈した.頭部CT,くりかえし施行した髄液検査でくも膜下出血は否定された.頭部MRIで両側後頭葉・両側頭頂葉に拡散強調画像およびFLAIR画像で高信号域をみとめた.脳血管造影でびまん性分節状攣縮をみとめた.三回目の頭痛以降,無症状で,また4カ月後の脳血管造影では,異常は消失しており,Reversible cerebral vasoconstriction syndromeと診断した.発症誘因として,強力な鼻腔鬱血除去作用のある葛根湯加川きゅう辛夷の関与が考えられた.本例は,漢方薬が誘因と考えられた最初の報告である.
  • 田村 麻子, 谷口 彰, 落合 直美, 佐々木 良元, 成田 有吾, 葛原 茂樹
    2008 年 48 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性である.主訴は左眼周囲の疼痛,神経学的に左上眼瞼の触覚低下,左眼のぼやけ感,対光反射遅延,外転制限をみとめた.血液検査では赤沈が亢進し,MRIで左眼窩先端部に造影効果をともなう腫瘤性病変をみとめ,Tolosa-Hunt症候群(THS)と診断した.ステロイドのパルス療法と経口投与によって,症状は消失した.脂肪抑制MRI T2強調画像で,左視神経周囲の髄液腔拡張が,水平断では線路状に平行に走るtram-track sign,前額断にてリング状のdonut configurationとして描出された.右側に症状が出現した2年前のMRIを確認したところ,右視神経周囲に同様の所見をみとめ,これらは,症状改善後に消失していた.これらのMRI所見は脂肪抑制T2強調画像で容易に描出され,臨床経過とも対応するので,THSの診断と治療効果の判定に有用である.
  • 糸川 かおり, 福井 海樹, 中里 良彦, 山元 敏正, 田村 直俊, 三戸 聖也, 島津 邦男
    2008 年 48 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル 認証あり
    11年という長期間の寛解期の後,再発した無菌性髄膜炎をともなう亜急性壊死性リンパ節炎の29歳男性例を経験した.初回も今回もリンパ節の腫脹は,頭痛・発熱より遅れてみられた.脳脊髄液は,初回には入院時より細胞数増多がみられたが,11年後の再発時には,入院の1週間後に細胞数増多が明らかになった.初回・再発時ともに,ステロイド薬内服後,頭痛・発熱はすみやかに改善した.ともに再発時に一過性の血清IgEの増加がみとめられており,長期間の寛解期がみられたこと,ステロイド薬が著効したことなどから,病態に免疫学的背景の関与が示唆される.
  • 岡田 陽子, 芝崎 謙作, 坂井 健一郎, 小林 和人, 井口 保之, 木村 和美
    2008 年 48 巻 4 号 p. 278-280
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳の女性である.高血圧に対してACE阻害薬を服用していた.意識障害,全失語,右不全片麻痺,右Babinski徴候をみとめ,頭部MRI拡散強調画像で左島皮質に高信号,MRAで左中大脳動脈の閉塞をみとめた.心電図モニタリングで心房細動をみとめ,心原性脳塞栓症と診断した.発症3時間以内であり,rt-PA静注療法(アルテプラーゼ0.6mg/kg)をおこなった.その60分後に著明な両側の口舌血管浮腫を呈し,rt-PAの副作用と判断し,浮腫出現30分後にステロイドを投与した.その20時間後に口舌血管性浮腫は改善した.ACE阻害薬を服用中に脳梗塞を発症した患者におけるrt-PA静注療法は,合併症として口舌血管性浮腫を念頭に置かなければならない.
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