臨床神経学
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48 巻, 7 号
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総説
  • 東海林 幹夫
    2008 年 48 巻 7 号 p. 467-475
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    先進各国とアジア諸国では人口の高齢化とともに認知症が爆発的に増加している.世界では2,430万人,米国では400万人,本邦でもすでに200万人を超しており,少子超高齢化時代を迎える30年後には人口の11%,400万人と推計されている.未だに根本的な治療法はなく,認知症は早急に解決すべき国民の医療・福祉の最重要課題である.この認知症の多くの原因がAlzheimer病(AD)である.本稿ではADの臨床症状と経過について述べた.新しく標準化されつつある診断基準や神経心理試験をまとめ,近年の病態解明に基づいた診断の進歩とAβ oligomerを対象とした新たな治療への方向性について紹介した.
原著
症例報告
  • 豊田 元哉, 飯島 献一, 高橋 一夫, ト蔵 浩和, 山口 修平
    2008 年 48 巻 7 号 p. 481-485
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳女性である.頭痛,ふらつきの後,錯乱症状,発熱,意識障害が出現し入院した.入院時,錐体路徴候,髄膜刺激徴候,上肢ミオクローヌスをみとめた.検査にて肝障害,炎症反応,血清サイトメガロウイルス(以下CMV)IgM抗体の上昇をみとめた.髄液蛋白が増加し(67mg/dl),MRI・DWIにて白質に高信号域をみとめた.アシクロビル(Acv),ガンシクロビル(Gcv)投与,ステロイドパルス療法を行ったが,痙攣重積発作をきたした後,約2カ月間の意識障害が続いた.しかしGcvの継続投与により徐々に意識レベルおよび運動障害の改善をみとめ,ほぼ自立したADLとなった.2カ月間の遷延性意識障害を来たしたCMV脳炎うたがい症例に対して,Gcvによる持続的治療が有効であった.
  • 佐藤 卓, 菊池 昭夫, 尾上 紀子, 平本 哲也, 近江 三喜男, 小野寺 淳一
    2008 年 48 巻 7 号 p. 486-491
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    症例1は79歳女性である.2003年6月よりパーキンソン病(PD)の診断でカベルゴリン4mgを内服した.2005年11月呼吸困難が出現した.心拡大,肺うっ血と胸水貯留があり,心エコーにて心臓弁膜症をみとめた.原因と思われるカベルゴリンをプラミペキソールに置換し,利尿剤とアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)投与で症状は消失し,3カ月後には心臓弁膜症も消失した.症例2は74歳女性.2001年4月PDを発症.レボドパ・カルビドパ合剤700mg,カベルゴリン4mg投与中の2005年4月息切れが出現した.心エコー上心臓弁膜症をみとめ,利尿剤投与で心不全は改善した.しかし2005年11月よりふたたび心不全が悪化し,肺水腫,下肢浮腫も呈した.2006年1月の心エコーでは心臓弁膜症が悪化しており,肺高血圧も合併した.ACEIを追加投与し,カベルゴリンをプラミペキソールに置換したが,悪性症候群,DIC(disseminated intravascular coagulation)を併発し死亡した.ドパミンアゴニストによる心臓弁膜症の合併には常に注意が必要で,定期的な心雑音のチェックや心エコー検査が重要である.また麦角剤での治療中に心不全徴候が出現したばあい,麦角剤の中止または非麦角剤への切りかえが重要である.
  • 近藤 啓太, 野田 公一, 越智 一秀, 野村 栄一, 大槻 俊輔, 松本 昌泰
    2008 年 48 巻 7 号 p. 492-496
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性である.32歳時に橋梗塞を発症し,その時点で両側視床内側の陳旧性梗塞を指摘された.36歳時に意識障害,四肢麻痺を呈し,脳底動脈閉塞による小脳,橋を中心とした脳幹に多発性梗塞を再発した.胸部造影CTで左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava;PLSVC)をみとめ,右上大静脈(right superior vena cava;RSVC),PLSVC,その他縦隔内の静脈の著明な拡張と静脈血栓がみとめられた.PLSVCは左心房へ還流しており,本例は縦隔内の静脈血栓によるPLSVCを介した奇異性脳塞栓症と診断し,抗凝固療法をおこなった.過去にPLSVCを介した奇異性脳塞栓症の報告は無く,文献的考察を加えて報告する.
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