臨床神経学
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49 巻, 10 号
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総説
  • 宇川 義一
    2009 年 49 巻 10 号 p. 621-628
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    臨床所見に情報を追加できる小脳磁気刺激検査に関して概説する.小脳を刺激すると,約5msの潜時で大脳運動野の抑制が出現する.この効果を筋電図の反応で観察するのが,人での小脳磁気刺激である.小脳皮質・上小脳脚・視床・視床皮質路など小脳遠心路の病変では抑制が誘発されず,橋核・中小脳脚などの小脳求心路病変での失調症では抑制がみとめられる.小脳失調以外の失調症では正常の抑制が誘発される.以上より,小脳刺激は,プルキンエ細胞を刺激して,小脳核の運動野への促通効果を脱抑制していると推論された.ataxic hemiparesisの患者の解析で,小脳遠心路障害による失調症と小脳求心路障害による失調症を鑑別できる例がある.
原著
  • 藤井 修一, 芝崎 謙作, 井口 保之, 坂井 健一郎, 木村 和美
    2009 年 49 巻 10 号 p. 629-633
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    急性期脳梗塞患者における発作性心房細動(pAF)と左房(LA)径の関連について検討した.対象は発症24時間以内の脳梗塞で,入院中に経胸壁心臓超音波検査でLA径を計測しえた292症例.LA径は持続性心房細動(cAF)群77例,発作性心房細動(pAF)群32例,非AF群183例の順に大きかった(中央値4.7 vs 4.1 vs 3.5cm,p<0.001).pAF群と非AF群を識別する至適LA径は3.8cm(感度68.8%,特異度73.8%)であった.多変量解析ではNIHSSスコア≥8とLA径≥3.8cm,僧帽弁疾患が発作性心房細動の独立した関連因子であった.急性期脳梗塞の洞調律患者においてLA径の拡大した症例は,pAFの存在を考慮する必要がある.
症例報告
  • 藤岡 祐介, 安井 敬三, 長谷川 康博, 高橋 昭, 祖父江 元
    2009 年 49 巻 10 号 p. 634-640
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    意識障害と痙攣で発症した重症熱中症の47歳,男性症例.意識障害の改善後,高度の無為・無欲,体幹失調等の小脳性運動失調症候がみられた.急性期の頭部MRI拡散強調像(DWI)にて小脳皮質に,ADC値の低下をともなう異常高信号がみられた.発症約2カ月後,体幹失調,構音障害は改善したが,四肢の測定障害はむしろ悪化した.MRI(DWI)上の異常高信号は消失したが,小脳は萎縮傾向を示し,脳血流シンチグラフィでは小脳歯状核部の血流低下が増強した.DWIでの異常高信号は,高体温による小脳Purkinje細胞の細胞性浮腫を捉えた可能性があり,その後の小脳萎縮の出現や後遺症の有無について注意深く検討する必要があることを示している.
    本症例では急性期に酒石酸プロチレリンを使用し,無為・無欲に対する有効性を確認した.熱中症後の無為・無欲の改善を期待し試みられるべき治療の一つであると考える.
  • 山本 敏之, 大矢 寧, 古澤 嘉彦, 埜中 征哉, 村田 美穂
    2009 年 49 巻 10 号 p. 641-645
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィー(DM1)の20歳女性が,傾眠と易疲労,突然の応答の悪さに気づかれた.食前食後の血糖測定で無自覚性低血糖の反復をみとめた.75g経口糖負荷試験(OGTT)では,空腹時の血糖値,血中インスリン値(IRI)は正常であったが,IRIは糖負荷60分後に最高528μIU/mlまで上昇し,120分後血糖は57mg/dlに低下した.インスリン過分泌による低血糖症と診断し,pioglitazone内服治療を開始した.治療から2週後と10カ月後のOGTTでは,インスリン分泌は抑制され,低血糖はなかった.非糖尿病のDM1患者の反復する無自覚性低血糖にpioglitazoneが有効であった.
  • 斎藤 聡, 高橋 牧郎, 野々口 直助, 太田 剛史, 高橋 潤, 松本 禎之
    2009 年 49 巻 10 号 p. 646-650
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    直静脈洞血栓症の40歳代男性例を経験した.病初期の頭痛時に,MRI-T2*強調画像(T2*WI)にて,直静脈洞内に特異なリング状の低信号をみとめた.T2*WIは脳静脈血栓症の診断に有用であることはすでに報告されているが,閉塞した静脈洞はこれまで一様な低信号として描出されており,リング状の低信号の報告はない.本例はこの翌日より混迷状態となり,血管造影にて直静脈洞の完全閉塞を確認したが,抗凝固療法により後遺症なく改善した.またT2*WIの経時的変化を追うことで,治療効果を確認できた.脳静脈血栓症の早期診断や回復過程の評価に,T2*WIが有用である可能性が示唆された.
  • 中村 聖香, 和手 麗香, 新出 明代, 朝山 真哉, 中野 智, 日下 博文
    2009 年 49 巻 10 号 p. 651-655
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/07
    ジャーナル フリー
    症例は36歳男性.小脳性運動失調のみが亜急性に進行し,頭部MRIで小脳虫部と半球の萎縮をみとめた.末梢血HIV-RNA量増加,CD4+細胞著減をみとめ,CD4/CD8比は0.04であった.髄液検査では単核球優位の細胞数増加と蛋白の軽度上昇をみとめ,PCRでEBV,HBV,JCVが陽性であった.HIV感染症に対してHAARTを開始したところ,HIVウイルス量の減少にともなって失調の進行が停止した.その後20カ月の経過中,高次脳機能障害をふくめた新たな神経症状の出現や,AIDSの発症はみとめず,復職が可能となった.亜急性小脳性運動失調症とHIV感染症との関連について,考察を加え報告した.
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