臨床神経学
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49 巻, 6 号
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総説
  • 高草木 薫
    2009 年 49 巻 6 号 p. 325-334
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/08
    ジャーナル フリー
    大脳皮質は認知的な随意運動の発現に,脳幹―脊髄は姿勢反射や筋緊張,歩行などの生得的な運動に,そして,大脳皮質から脳幹への皮質網様体投射は随意運動に先行する姿勢制御に関与する.大脳基底核は強力な抑制作用と脱抑制によって,大脳皮質と脳幹の時間的・空間的な活動動態を協調的に制御し,適切な運動機能の発現に寄与する.したがって,大脳基底核の障害やこれを修飾するドーパミン作動系の異常により,この協調的な調節機構が破綻すると,随意運動や姿勢筋緊張,そして,歩行の異常など,基底核疾患に特有の運動障害が出現する.
原著
症例報告
  • 加藤 博子, 吉田 眞理, 安藤 哲朗, 杉浦 真, 橋詰 良夫
    2009 年 49 巻 6 号 p. 348-353
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性である.急速に進行した左片麻痺より初診時脳梗塞がうたがわれたが,MRI FLAIR画像で血管支配領域と一致しない広範な高信号域,血液・髄液検査のTPHA陽性所見から神経梅毒と診断した.駆梅療法で改善せず,入院7カ月後死亡した.病理学的には,画像に一致する領域に慢性髄膜脳炎像を示し,神経細胞の萎縮脱落とアストロサイト,桿状ミクログリアの増生をみとめたが,血管炎や脳梗塞の所見はなかった.実質型神経梅毒のうち,急速に巣症状を呈し臨床症状に対応する局在病巣を示すLissauer型進行麻痺と考えられた.脳梗塞と鑑別上問題となりえ,またMRI画像と病理所見で病変部位の一致を確認した貴重な症例と考え報告する.
  • 鴨川 賢二, 戸井 孝行, 岡本 憲省, 奥田 文悟
    2009 年 49 巻 6 号 p. 354-357
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性で,多発性硬化症(MS)の進行により,外斜視をともなう両側内側縦束(MLF)症候群が持続した.単眼で固視すると他眼の外斜視が誘発される交代性外斜視を呈しており,wall-eyed bilateral internuclear ophthalmoplegia(WEBINO)に合致していた.MRIではT2強調画像にて橋被蓋傍正中部に高信号をみとめた.本邦でのWEBINOの報告はほとんどが脳血管障害の急性期にみられたものであり,MSの報告はきわめてまれである.本例のWEBINOの機序として,橋下部被蓋傍正中部の脱髄病変による両側MLF障害と持続的な傍正中橋網様体のimbalanceの可能性が示唆された.
  • 末田 芳雅, 高橋 哲也, 越智 一秀, 大槻 俊輔, 滑川 道人, 郡山 達男, 瀧山 嘉久, 松本 昌泰
    2009 年 49 巻 6 号 p. 358-363
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/08
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳女性である.54歳時より両下肢の異常感覚を自覚し,57歳時より左下肢の跛行を呈するようになった.その後筋力低下,歩行困難が徐々に増悪するとともに,左上肢の挙上困難,構音障害,嚥下障害が出現した.母,兄に類症をみとめていたことから常染色体優性遺伝形式の遺伝性疾患であると考えられ,MRI信号異常をともなう延髄,上位頸髄の萎縮の所見と併せて成人型Alexander病と診断した.GFAP遺伝子の検索によりこれまで報告のないS398F変異をみとめた.成人型Alexander病はまれな疾患と考えられているが,緩徐に脊髄症ならびに球麻痺を呈し,延髄,上位頸髄に限局した萎縮をみとめる症例の鑑別の一つとして重要である.
  • 幸崎 弥之助, 田北 智裕, 俵 哲, 大塚 忠弘, 平野 照之, 内野 誠
    2009 年 49 巻 6 号 p. 364-369
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性であり,咽頭右側の発作性の痛みのため入院した.舌咽神経痛と診断しカルバマゼピン内服を開始したが奏功せず,drug-induced hypersensitivity syndromeをきたした.そのため同薬剤を中止しリン酸コデイン内服,リドカイン局所噴霧をもちいることで疼痛管理が可能となった.退院後のリン酸コデイン漸減により症状再燃をきたしたため,発症約4カ月後に神経血管減圧術をおこない,以降は内服薬による疼痛管理が不要となった.一般的に神経因性疼痛はオピオイド鎮痛薬に抵抗性とされるが,舌咽神経痛の疼痛管理に対し有効な可能性がある.
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