臨床神経学
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50 巻 , 2 号
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楢林賞
  • 村田 美穂
    2010 年 50 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    偶然の臨床経験をきっかけに抗てんかん薬ゾニサミドの抗パーキンソン効果を発見した.ゾニサミドは抗てんかん薬としての常用量よりもきわめて少ない,25mg 1日1回投与で進行期パーキンソン病患者の運動症状を著明に改善し,長期的にも効果を維持することが可能であり,2009年1月ついに抗パーキンソン病薬として認可された.抗パーキンソン作用の出現機序としては,現時点までにチロシン水酸化酵素mRNA発現増加をともなうドパミン合成亢進と中等度のモノアミン酸化酵素阻害作用を明らかにし,T型Caチャネル阻害作用の関与が推定された.さらにゾニサミドは各種パーキンソンモデルで神経保護効果を示した.ゾニサミドは強力にドパミンキノン生成を抑制するが,これはS100β分泌を介した非活性型グリア増殖作用,およびグリアのシスチン・グルタミン酸トランスポーター発現増加作用を介してグルタチオン増加を示すことによることを明らかにした.さらに,ゾニサミドは強力な抗apoptosis作用を示した.今後,ゾニサミドの神経保護作用について臨床的に検証すること,SNP検索などをもちいて抗パーキンソン効果の個人差の機序を明らかにしていく必要がある.
原著
  • 水野 真由子, 福澤 一吉, 副島 昂樹, 津野田 聡子, 岩田 誠
    2010 年 50 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(PD)の運動障害を検討するため,PDと健常者の前方および右斜め前方(側方)へステップする運動と棒をまたぐ運動の運動学的解析をおこなった.すべての課題でPDの運動潜時は健常者より長く,運動時間は短かった.また側方へステップする課題では最大速度および最大速度に達する時間で,棒をまたぐ課題では最大速度に達する時間で,PDと健常者の間に相違がみられた.速度プロファイルでは,PDは健常者にくらべ最大速度到達後,運動が減速する際の負の加速度が急激に増大し,かつ躍度も大きかった.結果よりPDでは運動プログラミング系,運動制御系に障害があり,これには大脳皮質―基底核ループの機能低下の関与が示唆された.
症例報告
  • 市川 博雄, 高橋 伸佳, 稗田 宗太郎, 河村 満
    2010 年 50 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    失語症・認知症をともなわず孤立性失書を合併した球麻痺型ALSの2例を報告した.書字障害の内容は仮名の脱字がもっともめだち,仮名・漢字の錯書がみられた.さらに,文法障害を示唆する助詞の脱落や誤りもみとめられた.MRIでの脳萎縮は軽微であったが,SPECTでは左優位に両側前頭側頭葉の取り込み低下をみとめた.失書はALSにともなう認知症の初期症状として重要と考えられ,責任病巣として左前頭葉が推定された.
  • 寺澤 英夫, 田路 浩正, 片岡 敏
    2010 年 50 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性.Wegener肉芽腫症と診断されステロイド療法の経過中に強直間代性けいれん発作とけいれん重積状態を反復した.Gadolinium造影頭部MRIでは篩骨洞に造影効果をもった腫瘍性陰影をみとめ,前頭蓋底を越えて前頭葉下部に浸潤性に進展していた.発作間欠期の脳波では左前頭部に周期性鋭波放電をみとめ,前頭葉病変を焦点とした部分発作が二次性全般化し,てんかん重積状態を呈したと考えられた.Wegener肉芽腫症では副鼻腔病変が前頭蓋底や前頭葉に直接進展する可能性があり,てんかん重積状態をふくむ中枢神経症候の発現に留意すべきである.
  • 小早川 優子, 立石 貴久, 河村 信利, 土井 光, 大八木 保政, 吉良 潤一
    2010 年 50 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性.全身痙攣にて前医へ入院し,抗けいれん薬に抵抗性の意識消失発作をくりかえし,頭部MRIにて両側前頭葉を中心に広汎なT2延長病変をみとめ当院へ転院した.精査にて血清,髄液中の抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体価の異常高値をみとめ,血漿交換療法にて抗体価の低下とともに臨床症状,画像所見が改善した.抗GAD抗体陽性の神経疾患としてStiff-person症候群や難治性てんかんが知られているが,本症例のように広汎なMRI病変をともなう免疫介在性脳症の報告はきわめてまれである.症候性てんかんをともなう脳症では,広汎なMRI病巣を呈するばあいでも抗GAD抗体の関連をうたがう必要がある.
  • 小林 史和, 栗原 康, 長坂 加織, 飯田 晴康, 新藤 和雅, 瀧山 嘉久
    2010 年 50 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性で,幼少時から歩行時のふらつきがあったが,進行していなかった.25歳時に性腺機能低下症と小脳萎縮を指摘され,当院を受診した.両側卵黄状黄斑ジストロフィー,注視方向性眼振,構音障害,小脳性運動失調症,四肢腱反射低下,凹足変形をみとめた.大脳高次機能,嗅覚,聴覚には異常なし.内分泌学的検査で性腺機能低下症をみとめたが,既知の遺伝性脊髄小脳変性症やKallmann症候群の遺伝子異常はみとめなかった.頭部MRIで小脳萎縮,ECD-SPECTで両側小脳半球と脳幹の血流低下をみとめた.本症例は本邦2家系目のBoucher-Neuhäuser syndromeと考えられた.
  • 伊藤 康男, 阿部 達哉, 富岳 亮, 小森 哲夫, 荒木 信夫
    2010 年 50 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性である.急性の異常行動と変動する意識障害で発症した.入院時妊娠17週で児の発育に問題はなかった.髄液検査で単核球優位の細胞数増多,抗NMDA受容体抗体陽性,頭部MRIで明らかな異常所見なく,非ヘルペス性辺縁系脳炎が考えられた.妊娠26週目より意識障害は徐々に改善し,妊娠37週で自然分娩した.骨盤MRIで卵巣奇形腫をみとめず,分娩後の抗NMDA受容体抗体が陰性化したことより,本症例の発症に妊娠との関連が示唆された.妊娠中に発症した抗NMDA受容体抗体陽性の非ヘルペス性辺縁系脳炎の報告例はまだなく,貴重な症例と考えたので報告する.
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