臨床神経学
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50 巻, 5 号
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総説
  • 三條 伸夫, 水澤 英洋
    2010 年 50 巻 5 号 p. 287-300
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    プリオン病は正常プリオン蛋白が伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し蓄積することにより発症する.孤発性,遺伝性,獲得性の3種類があり,本邦では1999年からの約10年間のサーベイランス調査で1,320名の患者が確認され,硬膜移植CJD例が多いことや遺伝性CJDで本邦に特異的な変異例が多いなどの特徴がある.孤発性古典型では急速進行性の認知症,四肢のミオクローヌス,MRI拡散強調画像で大脳皮質と基底核の高信号,脳波でPSDなどの特徴的な所見をみとめるが,非典型例も少なくない.臨床症状,髄液検査,遺伝子検索により的確な診断をくだすことが,病態の解明,二次感染予防,心理サポートにおいて重要である.
症例報告
  • 小川 暢弘, 川合 寛道, 山川 勇, 真田 充, 杉本 俊郎, 前田 憲吾
    2010 年 50 巻 5 号 p. 301-305
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性である.右人工股関節置換術後,感染がうたがわれ,入院8カ月前より,ミノサイクリン(MINO)100mg/日の内服を開始.3カ月前に下血があり,発熱・関節痛が出現,1カ月前より非対称性に四肢の異常感覚,下腿腫脹が出現し,さらに右下垂足を呈したため入院した.血清検査では,炎症反応高値,抗核抗体陽性であり,電気生理学的検査にて多発性単神経障害をみとめた.腓腹神経生検にて有髄神経線維の脱落,軸索変性像,中型動脈の閉塞をみとめた.症例は結節性動脈周囲炎の診断基準を満たしたが,MINOを中止後,直ちに症状が改善し,薬剤性血管炎性ニューロパチーと診断した.本病態の神経組織は既報になく貴重と考えられた.
  • 古澤 嘉彦, 山本 敏之, 大矢 寧, 三山 健司, 鈴木 純子, 村田 美穂
    2010 年 50 巻 5 号 p. 306-310
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    気胸のため最大強制吸気量維持の訓練ができず,呼吸器系コンプライアンスが低下した遅発型Pompe病の39歳女性が,非侵襲的陽圧換気(NPPV)中に皮下気腫・縦隔気腫を合併した.圧外傷を考え,吸気圧を下げたところ低酸素状態になり十分に減圧できなかった.NPPVと体外式人工呼吸器の併用で,吸気圧を十分に下げることが可能になり,皮下気腫・縦隔気腫は治癒した.陽圧換気が必要な神経筋疾患患者の圧外傷治療にNPPVと体外式人工呼吸器の併用が有用であった.呼吸機能が低下し始めた時点で最大強制吸気量維持の訓練をおこなえばこのような事態は回避できた可能性があり,呼吸リハビリテーションの重要性について考察した.
  • 相場 彩子, 渡邉 由佳, 小鷹 昌明, 中村 利生, 平田 幸一
    2010 年 50 巻 5 号 p. 311-314
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は24歳女性である.急性の発熱と頭痛,意識障害にて入院した.齲歯から続発した前頭洞炎,および上顎洞炎,さらに硬膜下膿瘍へと進展した細菌性髄膜脳炎と診断したが,脳脊髄液や膿瘍からの塗抹染色検査では起因菌は検出できず,培養でも同定することができなかった.16SリボゾーマルRNAの遺伝子解析により,口腔内常在菌であるPorphyromonasFusobacteriumとが同定された.緊急開頭による洗浄術をおこない,より適切な抗菌薬を選択することができた.硬膜下膿瘍はときに急激に拡大するため,外科療法の機会を逸することのないよう留意するとともに,細菌の同定においては,迅速な結果の期待できる遺伝子解析を積極的に活用すべきと考えられた.
  • 山口 裕子, 近藤 孝之, 猪原 匡史, 川又 純, 福山 秀直, 高橋 良輔
    2010 年 50 巻 5 号 p. 315-319
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    36歳妊娠18週女性に遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター(rt-PA)静注療法をおこない母児共に良好な経過をえたので報告する.患者は運動性失語と右不全麻痺を突然発症し約30分後当院に救急搬送された.来院時のNIHSSは6点,頭部MRAで左中大脳動脈分枝の閉塞とMRI拡散強調画像により同血管支配領域の脳梗塞と診断された.発症約2.8時間後rt-PAを経静脈投与され症状はほぼ消失し,独歩で退院した.周産期はヘパリンで抗凝固療法を続け,脳梗塞の再発なく正常満期産を経て母児共に健康である.妊婦へのrt-PA投与は未だ安全性が確立されていないが利益と危険性を考慮のうえ選択肢に加えるべきである.
  • 田口 芳治, 高嶋 修太郎, 温井 孝昌, 道具 伸浩, 豊田 茂郎, 田中 耕太郎
    2010 年 50 巻 5 号 p. 320-324
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性である.朝起床時より右片麻痺を自覚し当院に搬送された.来院時構音障害と右完全片麻痺をみとめ,NIHSSは12点であったが,検査施行中に症状は完全に消失した.その後,アスピリンとヘパリン投与をおこなったが,同様の脳虚血発作を一過性にくりかえし生じたため経静脈的血栓溶解療法を施行し,さらに,スタチンの投与と低分子デキストランの点滴静注を追加した.頭部MRI拡散強調画像で左被殻から放線冠に淡い高信号域をみとめ,MRAでは異常所見はなかった.来院22時間以降,脳虚血発作は消失し,退院時には後遺症のない良好な転帰をとった.本例はCapsular warning syndromeを呈したBranch atheromatous diseaseと考えられ,t-PA,低分子デキストランをふくめた多剤併用療法が有効であった.
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