臨床神経学
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50 巻, 6 号
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総説
  • 田中 惠子
    2010 年 50 巻 6 号 p. 371-378
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍患者には様々な神経障害が合併するが,自己免疫学的機序により生じると考えられる一群が傍腫瘍性神経症候群であり,多くは腫瘍の発見に先んじて発症する.神経症状発症早期から,病型と関連して血清および髄液に特徴的な自己抗体が検出され,本症の診断・悪性腫瘍の早期発見マーカーとして有用と考えられる.現在も様々な手法により,新たな診断のマーカーとなる抗体の検索が進められており,最近,NMDA受容体抗体,電位依存系カリウムチャネル抗体をともなう病型などが明らかになった.また,抗原の局在と治療反応性,予後との関連にも一定の特徴がみられることが明らかになってきている.
原著
症例報告
短報
  • 榎本 雪, 守谷 新, 菊地 サエ子, 望月 仁志, 杉浦 嘉泰, 宇川 義一
    2010 年 50 巻 6 号 p. 409-411
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    症例は,慢性腎不全で3年間血液透析をうけている75歳男性である.アルコール多飲はない.ビタミンをふくまない糖質液の点滴後,急速な歩行障害と意識障害を呈した.脳MRIや脳脊髄液に異常が無かったものの,病歴と症候からウェルニッケ脳症がうたがわれたため,直ちにビタミンB1(VB1)の投与を開始し,症候はすみやかに改善した.後に血中VB1の著明な低値が判明し,ウェルニッケ脳症の診断が確定した.血液透析患者や高齢者では,画像所見が正常であっても非アルコール性ウェルニッケ脳症の可能性があることを十分に認識し,些かでも本症がうたがわれた際は,VB1の検査結果を待つことなくすみやかにVB1投与を開始すべきである.
  • 中川 悠子, 魚住 武則, 辻 貞俊
    2010 年 50 巻 6 号 p. 412-414
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)患者と介護者20名を対象に,ALS Functional Rating Scale(ALSFRS)高得点群と,ALSFRS低得点群の二群に分け,介護者の介護負担とQOLが患者の機能障害度と関連があるか検討した.ALSFRS高得点群では機能障害の進行にともない介護負担が増大していたが,低得点群では相関はなかった.またALSFRS高得点群の方が有意に心の健康面が障害されていた.比較的早期のALS患者の介護者に対し,機能障害の進行にともなう介護負担の増加を防ぎ心の健康面のケアをおこなう必要がある.
  • 野本 信篤, 紺野 晋吾, 村田 眞由美, 中空 浩志, 根本 博, 藤岡 俊樹
    2010 年 50 巻 6 号 p. 415-417
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性である.微熱,食欲低下が1週間続いた後に,頸部の激痛と右側上肢の脱力をみとめた.第3病日に両上肢の脱力,激痛が出現した.肝逸脱酵素の急激な上昇をともなった.右上肢は完全麻痺,左側上肢はMMT3で,深部反射は消失し,神経痛性筋萎縮症と診断した.髄液細胞数2/mm3,蛋白105mg/dl と蛋白細胞解離をみとめ,IgMおよびIgG抗GT1a抗体が陽性であった.抗GT1a抗体は咽頭頸部上腕型のGuillain-Barré症候群との関与が指摘されており,腕神経叢の障害を呈した本症例の臨床所見と一致した.抗GT1a抗体は一次的に病態と関わった可能性と二次的変化である可能性の両者が考えられた.
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