臨床神経学
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51 巻, 1 号
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楢林賞
  • 河村 満
    2011 年 51 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(PD)の認知機能障害というと,手続き記憶障害,遂行機能障害,視空間認知障害,嗅覚障害,それに加えて病的賭博などの社会行動障害などが記載されてきた.われわれは,PDにおけるこれらの認知機能に加えて社会的認知機能(Social cognitive function)に着目し,とくに病初期症例で検討した.社会的認知機能には,表情認知機能,意思決定機能,さらに,自閉症で詳しく検討され,機能の大脳責任部位が明らかにされつつある他者心理推測機能などがふくまれる.その結果,PDでは,表情認知・意思決定・他者心理の推測機能のいずれにおいても異常がみられ,脳波のダイポール課題の結果などから,それらの障害がとくに扁桃体機能障害と関連することを明らかにした.PDは運動障害のいわゆる4徴候以外に,早期から各種認知機能障害がみられ,PDは今,新しい角度から捉えなおさなければならない疾患であると思われる.
原著
  • 櫻井 謙三, 伊佐早 健司, 高石 智, 加藤 文太, 清水 華奈子, 下邨 華菜, 徳山 承明, 長谷川 泰弘
    2011 年 51 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    発症48時間以内の脳梗塞患者146例を対象とした.このうち入院前からスタチンを服用中であったもの,あるいは入院時に脂質異常症をみとめたものに対しては,入院直後よりアトルバスタチン10mg/日の投与を開始し(Statin群,45例),これ以外の症例では入院2週間はスタチンの投与をおこなわなかった(Non-Statin群,101例).経時的にInterleukin(IL)-6,IL-10,IL-18,Matrix Metalloproteinase(MMP)-2,MMP-9,および高感度CRPを測定した.入院時の値を基にした第3,第7,第14病日のIL-6変化率は,Non-statin群では各々145%,174%,155%で,Statin群では173%,43%,40%であり,Statin群ではNon-statin群に比し第7,第14病日において有意に低下を示し,かつその交互作用は有意であった(group X time factor,p=0.047).発症14日以内に進行増悪を示したものの割合はNon-Statin群よりStatin群の方が少なかったが有意差はえられなかった(7.9% vs 20.2%,p=0.118).入院後14日以内に神経徴候の症候増悪率,退院時転帰には両群間で有意な差はみられなかった.我が国の常用量のアトルバスタチン(10mg/日)の脳梗塞発症48時間以内の投与開始は,急性期の血中IL-6の値を低下させうる.今後急性期の症候増悪や転帰に対する影響を検討する価値があり,IL-6値はその際検討すべきマーカーの一つとなるものと思われた.
  • 田中 真, 相原 優子, 池田 祥恵, 相原 芳昭
    2011 年 51 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    3テスラMRIにて正常者とパーキンソン病(PD)例の黒質神経メラニンをneuromelanin-related contrast(NRC)として画像化し半定量した.正常加齢でNRCは増加した.PDで高度に減少し,重症度・罹病期間と負相関をみとめた.幻覚あり群で高度に低下し,嗅覚障害の有無で差がなく,レム睡眠行動異常で中間的な値を示し,症状発現時期に依存すると推定した.PDのNRCの減少は腹外側から正中に向かって進行した.レビー小体型認知症で減少しているがPD症状があるとより高度に減少した.NRCは既知の病理所見と整合性をみとめたが,NRCの意義や特異性および近縁疾患での検討を重ねる必要がある.
症例報告
短報
  • 津川 潤, 坪井 義夫, 井上 展聡, 鈴木 重明, 山田 達夫
    2011 年 51 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    意識消失発作をくりかえす全身型重症筋無力症の51歳男性例を経験した.ホルター心電図で洞不全症候群をみとめ,意識消失の原因はAdam-Stokes発作と診断した.胸腺腫摘除術および免疫療法後におこなったホルター心電図では,洞停止はなく不整脈は消失しており,本症例における心伝導障害が免疫療法に反応した可能性が示唆された.重症筋無力症患者でまれに心筋炎などの心疾患を合併することが知られているが,近年,筋炎や心筋炎をともなう重症筋無力症で抗kv1.4抗体が高率に検出されるとの報告がある.本例は臨床経過に加えて,抗kv1.4抗体が陽性であったことから,免疫異常による心疾患を合併した可能性が示唆された.
  • 伊藤 康幸, 光藤 尚, 山本 文夫, 橋本 洋一郎, 平野 照之, 内野 誠
    2011 年 51 巻 1 号 p. 35-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    当科に2008年10月から2009年9月までの1年間に入院した虚血性脳血管障害患者連続例を対象に,脳卒中データバンクをもちいて,発症前の抗血栓薬内服状況を後ろ向きに検討した.脳梗塞初発時点で17.6%(心原性26.0%,非心原性14.5%)の患者がすでに何らかの抗血栓薬を内服していた一方で,2回目再発時40.3%(同43.8%,39.2%),3回目再発時40.0%(同83.3%,11.1%)の患者が抗血栓薬を内服していなかった.虚血性脳血管障害の既往があっても,心原性,非心原性ともに再発直前に抗血栓薬を内服していない患者が多く存在しており,抗血栓薬内服継続の必要性についての啓発が重要である.
  • 崎山 佑介, 道園 久美子, 泊 晋哉, 渡邊 修, 中原 啓一, 高嶋 博
    2011 年 51 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性である.超低体温循環停止下人工血管置換術を契機に,急性発症の核上性眼球運動障害,動作緩慢,頸部ジストニアなど進行性核上性麻痺(PSP)に酷似した症候を呈した.嚥下障害は一時的に改善したが,その後に再悪化.抗パーキンソン病薬の内服下において,その他の症候は非進行性であった.発症前より中脳被蓋部の萎縮が存在していた.本例は,胸部大動脈関連の低体温下手術後に急性発症するPSP類似症候群の本邦初の報告である.
  • 松山 友美, 重藤 寛史, 佐竹 真理恵
    2011 年 51 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性である.75歳時意識消失をともなう全身けいれん発作を初発.78歳の5月,両上肢のミオクローヌスが覚醒後に2~3回みられた.6月下旬にふらつきが強く3日間入院,安静にて軽快.7月中旬にふたたびふらつきが出現し当科初診.JCS 2の意識障害,軽度体幹失調がみられた.血液,脳脊髄液,頭部MRIに異常なし.脳波で持続1~2秒の全般性棘徐波・多棘徐波複合が2~4秒おきに出現.非けいれん性全般てんかん重積状態と判断しジアゼパム5mg静注にててんかん性放電消失,以後バルプロ酸400mg/日投与をおこない症状は改善し発作間欠期てんかん性放電も著減した.高齢発症の非けいれん性全般てんかん重積状態はまれであり若干の考察を加え報告する.
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