臨床神経学
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51 巻, 2 号
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総説
症例報告
  • 谷口 浩一郎, 沖野 巌, 山本 伸昭, 松本 真一, 立花 直子, 濱野 利明
    2011 年 51 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    後頸部筋に限局した低カリウム血性ミオパチーにより首下がりを呈した2症例を経験した.症例は78歳の女性と85歳の女性で,後頸部筋に限局した筋力低下のため首下がりを呈していた.血清カリウムは低値で,針筋電図で頸椎傍脊柱筋に筋原性変化をみとめた.MRIでは後頸部筋群に信号変化をみとめた.血清カリウムの正常化とともに,首下がりは消失した.このうち1例では,首下がりが再発し,同時に血清カリウム値も低下していた.首下がりの鑑別診断として低カリウム血症による限局性のミオパチーも考慮する必要がある.
  • 矢澤 由加子, 佐藤 祥一郎, 板橋 亮, 古井 英介, 近藤 竜史, 松本 康史, 藤原 悟
    2011 年 51 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性である.左眼の一過性黒内障で発症し,眼科的診察で左眼の視力低下および血管新生緑内障,虹彩ルベオーシスをみとめた.頸動脈エコー検査から左総頸動脈近位部に高度狭窄の存在が推定され,眼動脈エコー上左眼動脈の血流速度は低下していた.脳血管撮影では左総頸動脈起始部の高度狭窄が確認され,左眼動脈の描出は不良であった.左総頸動脈起始部狭窄による眼虚血症候群と診断した.眼動脈血流改善により眼虚血症候群の増悪を防ぐため,左総頸動脈起始部にステントを留置した.術後,黒内障発作は消失,虹彩ルベオーシスは消退し,視力低下の進行はなかった.本例では総頸動脈狭窄部位の推定や血行動態の評価に超音波検査が有用であった.
  • 笠間 周平, 木村 卓, 梶山 幸司, 武田 正中, 高橋 正紀, 芳川 浩男
    2011 年 51 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル 認証あり
    高CK血症にて当院を受診し,診断にいたった家族歴のない13歳男性を報告する.3歳時より運動中から運動後の下肢の疼痛,筋のこわばりを自覚.小学生時よりマラソン中,両下腿に疼痛とこわばりが出現し,走れなくなるといった症状が出現していた.収縮をくりかえすことによって生じ,寒冷で増悪する眼輪筋の筋強直症をみとめた.遺伝子検査で骨格筋型ナトリウムチャネルのM1592Vの変異をみとめた.本変異は高カリウム性周期性四肢麻痺を呈することが多いが,本症例では明らかな麻痺発作をみとめず,先天性パラミオトニーの臨床像を呈した.ナトリウムチャネル異常症はまれであるが,筋強直が軽微な症例も存在するため,CK高値の鑑別として本疾患をうたがうことが重要と考えられた.
  • 長嶺 和弘, 矢澤 省吾, 中尾 紘一, 大井 長和
    2011 年 51 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性で構語障害,右の顔面と四肢の不全麻痺で搬入された.両側方への注視麻痺をみとめたが,垂直性の眼球運動制限はなく,不全型閉じ込め症候群であった.第1病日の頭部MRIで橋被蓋正中部に梗塞巣を同定.症状は数日動揺したが,抗血小板療法にて四肢の麻痺は急速に改善し約二週間で独歩可能となり,眼球運動は緩徐に回復し第81病日には軽度の両側性外転神経麻痺が残存するのみとなった.経過と画像より本症例の両側方視の制限は両側の内側縦束と両側外転神経核の障害により出現し,傍正中橋網様体の関与は乏しいと考えた.臨床的に良好な経過をたどり,画像に現れない脳幹の虚血症状の推移を観察できた症例であった.
  • 伊丹 亮, 三條 伸夫, 桑原 宏哉, 山本 雅樹, 新 謙一, 横田 隆徳, 水澤 英洋
    2011 年 51 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性である.約半年の経過で歩行障害が進行し,起立・歩行不能となった.トーヌスが正常な下肢優位の不全麻痺,四肢腱反射の亢進,Babinsiki徴候陽性,四肢の異常感覚などをみとめた.MRI上ほぼ全長にわたる脊髄病変,胸部CTでびまん性粒状影,血清および髄液HTLV-1抗体価高値,髄液プロウイルス量・neopterin高値,肺生検で細気管支周囲のリンパ球浸潤などの所見よりHAMおよびHABAと診断した.ステロイドパルス療法により短期間で症状の改善がみとめられた.数カ月以内で症状が進行する脊髄病変では急速進行性HAMを鑑別する必要があり,その際HAMに高率に合併する肺病変の検索が有用である.
  • 増田 曜章, 木村 成志, 中村 憲一郎, 岡崎 敏郎, 荒川 竜樹, 熊本 俊秀
    2011 年 51 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性例で,痙攣,精神症状,感覚性失語をみとめ,入院した.髄液検査で単核球優位の細胞数増多,頭部MRIでは海馬,扁桃体を中心とした左側頭葉内側部,前頭葉眼窩部に病変をみとめ,辺縁系脳炎と診断した.脳波では左半球に周期性一側性てんかん型放電(periodic lateralized epileptiform discharges:PLEDs)をみとめた.経過中に,感覚性失語とPLEDsが同期して出現し,抗てんかん薬の投与にて両者の消失をみとめ,てんかん性失語重積状態と考えられた.辺縁系脳炎の診療をする際,てんかん性失語重積状態も念頭におく必要がある.
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