症例は62歳男性である.コントロール不良の糖尿病と頑固な便秘あり.入院時,意識障害,発熱,項部硬直,多形核球優位の髄液細胞数増多,糖低下から細菌性髄膜炎と診断した.画像検査で脊椎硬膜外膿瘍・傍脊柱筋膿瘍・脊椎炎も判明し,筋膿瘍穿刺液からB群連鎖球菌の
Streptococcus agalactiae を検出した.感染は抗生剤による保存的治療でいずれも軽快した.経過中,突然の大量下血を契機に便秘にともなう直腸宿便潰瘍の合併が明らかとなったことから,直腸常在菌のB群連鎖球菌が,直腸潰瘍を感染の起点として骨盤静脈叢に入り,硬膜外腔や椎体,傍脊柱筋に分布するBatson静脈叢を介して一連の感染を惹起したと推定した.
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