臨床神経学
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51 巻, 8 号
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総説
  • 櫻井 靖久
    2011 年 51 巻 8 号 p. 567-575
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル フリー
    非失語性の失読および失書の病巣局在を呈示し,これに基づいて新たな失読および失書の分類を提唱する.この中で新たな局在病変による失読・失書として,後頭葉後部(後部紡錘状回・下後頭回)病変による仮名の純粋失読(より一般的には文字の純粋失読),中側頭回後部病変および限局性角回病変による漢字の純粋失書をあげてある.さらに,失行性失書,前頭葉性純粋失書,視床性失書などについても,病巣の局在を論じる.
  • 本村 政勝
    2011 年 51 巻 8 号 p. 576-582
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症(myasthenia gravis,MG)は自己抗体の種類によって,1)アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor,AChR)抗体陽性MG,2)筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(muscle-specific receptor tyrosine kinase,MuSK)抗体陽性MG,そして,3)前記の抗体が検出されないdouble seronegative MGに分類される.本邦では,MG全体の約80~85%が抗AChR抗体陽性で,残りの5~10%で抗MuSK抗体が検出される.近年,世界中で高齢発症MGの頻度が増加しており,MGはもはや高齢者の病気であるともいわれている.本邦の全国調査2006年では,50歳以上で発症したMG患者が1987年の20%から42%に増加したことが証明された.それにともなって,2010年日本神経治療学会から,高齢発症MGの診断と治療の考え方を示す標準的治療指針が公表された.その内容は,高齢発症MG治療に関してのかぎられたエビデンスと臨床報告や個々の経験から本標準的治療を,高齢発症のMGの疫学的特徴,その臨床症状の特徴,さらに,治療,すなわち胸腺摘出術の適応や副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の投与方法などについて記述されている.その要旨は,高齢発症のMG患者では,若年発症MGと比較して,眼筋型の比率が高かった.治療では,胸腺腫を合併しない高齢発症のMG患者では,若年発症MGと比較して胸腺摘除の適応は少なく,ステロイドの副作用をおさえるために少量のステロイドと免疫抑制薬の併用が標準的治療となる.
症例報告
  • 佐藤 俊一, 星 研一, 渡辺 正秀, 日根野 晃代, 小柳 清光, 矢彦沢 裕之
    2011 年 51 巻 8 号 p. 583-589
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は84歳男性である.上気道感染後から両側視力低下,左不全片麻痺,対麻痺が順次出現.脳MRIでは第4脳室周囲,左視床,両側放線冠に,脊髄MRIではC5からTh6レベルに病変をみとめた.ステロイドパルス療法で一時改善したが,再燃し死亡した.血清抗アクアポリン(AQP)4抗体陽性.組織学的には軟化病巣ではAQP4と神経膠線維酸性蛋白(GFAP)免疫原性が脱落,ミエリン塩基性蛋白(MBP)免疫原性と軸索は比較的保たれ視神経脊髄炎(NMO)と診断.高齢男性に先行感染をともなって発症し,急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との鑑別が問題となった症例を報告する.
  • 松田 真樹子, 澁谷 聡, 及川 崇紀, 村上 謙介, 望月 廣
    2011 年 51 巻 8 号 p. 590-594
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性である.56歳時から小歩,突進歩行,易転倒性,ものわすれが出現.入院時,不安定な広基性歩行,動作緩慢,後方への姿勢反射障害をみとめた.MMSEは27/30点.失禁なし.頭部MRIで第三脳室・側脳室の拡大をみとめたが,第四脳室は正常,Fast imaging employing steady state acquisition画像で中脳水道に膜様の隔壁をみとめた.以上より,晩発性膜性中脳水道閉塞症と診断した.神経内視鏡で中脳水道形成術と第三脳室底開窓術を施行し,術後早期から症状の改善をみとめた.膜性中脳水道閉塞症の隔膜の確認にはFIESTA画像が有用であり,神経内視鏡治療で完治が期待できる.
  • 緒方 英紀, 重藤 寛史, 鳥居 孝子, 河村 信利, 大八木 保政, 吉良 潤一
    2011 年 51 巻 8 号 p. 595-598
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性である.数カ月間で両側視力障害が急速に進行.視力は右0.03,左光覚弁.両側視神経萎縮,両下肢で腱反射低下と振動覚低下をみとめた.血清と髄液の梅毒抗体価が高値であり,梅毒性視神経炎としてpenicillin Gを投与したが視力の回復はなかった.経過中,明瞭で複雑な幻視が出現.認知機能は正常で他の幻覚や妄想はみとめずCharles Bonnet症候群と診断した.頭部MRIでびまん性大脳萎縮および斑状の白質病変,脳血流SPECTで右側優位に後頭葉内側の血流低下をみとめた.オランザピン投与にて幻視の出現頻度は減少した.本症候群の病態への後頭葉機能低下の関与を示唆する貴重な症例と考えた.
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