臨床神経学
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52 巻, 4 号
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原著
  • 松村 剛, 齊藤 利雄, 藤村 晴俊, 佐古田 三郎
    2012 年 52 巻 4 号 p. 211-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    呼吸管理や心筋保護治療により,Duchenne型筋ジストロフィーの生命予後はいちじるしく改善したが,心機能障害の遷延により循環動態の脆弱性が課題となる.われわれは,最近心機能指標が比較的保たれたまま腎不全で死亡した症例を6例経験し,本症における腎機能障害に関心を抱いた.筋萎縮症例ではcreatinineが低下するため,筋量に影響されないcystatin CをもちいてDMD 103例を評価したところ,30歳以上の患者では3割以上が異常値を示し,貧血と腎機能障害の関連も示唆された.本症の医療管理では心腎貧血連関に留意すべきで,適切な水分バランスや貧血に対する積極的治療などが必要と思われる.
  • 磯崎 英治, 飛澤 晋介, 内藤 理恵, 水谷 俊雄, 松原 四郎
    2012 年 52 巻 4 号 p. 218-226
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    多系統萎縮症における眼球運動障害の特徴を明らかにするため,50例を対象に9種類の眼運動系パラメーターの経時的変化を検討した.各パラメーターにおける異常出現率は,いずれも病型間(小脳失調先行型とパーキンソニズム先行型)で有意差をみとめなかった.また,経時的変化からパラメーターは3群―病初期から異常出現率が高頻度にみとめられる群,経過とともに徐々に高率化する群,進行しても比較的低値にとどまる群―に大別された.各群のそれぞれの代表として,頭位変換性眼振,視性抑制反応および温度眼振に注目し,これらの機能解剖学的検討から,病変は小脳の背側虫部次いで片葉,そして前庭神経核から前庭皮質にもおよぶと考えた.
症例報告
  • 山下 泰治, 越智 博文, 石津 尚明, 大八木 保政, 森 康雄, 荒畑 創, 大島 孝一, 吉良 潤一
    2012 年 52 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性である.10年以上におよぶ緩徐進行性の筋力低下を主訴に来院した.四肢近位筋に軽度の筋萎縮と筋力低下をみとめ,相対的リンパ球増多およびM蛋白血症を合併しており,末梢血と骨髄にγδ型T細胞の増多およびT細胞受容体γ鎖の遺伝子再構成をみとめたことからγδ型T細胞のクローン性増多が示唆された.筋生検で非壊死筋線維細胞膜上のMHC class I抗原の発現が亢進し,筋線維内へのγδ型T細胞の浸入像をみとめたことからγδ型T細胞が筋炎発症の病態に関与している可能性を考えた.シクロスポリンおよび副腎皮質ステロイド薬の投与で筋原性酵素の減少し,筋力の改善をみとめたが軽度の筋力低下が残存した.
  • 三輪 道然, 中村 由紀, 長坂 高村, 新藤 和雅, 瀧山 嘉久
    2012 年 52 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性である.27歳頃より頸部の筋力低下を自覚し,健診にて高CK血症を指摘され,当院を受診.頸部と上肢帯の高度の筋力低下と筋萎縮をみとめ,血中CK値は9,159IU/l と上昇していた.四肢近位筋で実施した針筋電図は,当初,筋疾患に典型的な低振幅MUPがめだたなかったが,経過中に徐々に低振幅MUPとなった.血中抗SRP抗体陽性で,三角筋生検は壊死性ミオパチーの所見であり,多発筋炎と診断した.プレドニゾロンとタクロリムスにより,症状は軽減した.本症例は,慢性の経過で頸部と両上肢帯の高度の筋力低下・筋萎縮をみとめながら,下肢はほとんど障害されておらず,過去の報告例と比較し,特徴的な症例と考えられた.
  • 沼尾 文香, 鈴木 圭輔, 渡邉 由佳, 伊澤 直樹, 中村 利生, 岩波 久威, 平田 幸一
    2012 年 52 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性である.30歳から頭痛の3日以内に複視,左眼の内転位が出現し,頻度は月に1度で,症状は約3日で自然軽快していた.53歳時に左外転神経麻痺をともなう眼筋麻痺性片頭痛(OM)と診断されていた.2011年5月発熱,感冒症状の10日後に両側眼窩部痛,複視,右眼の外転制限が出現したため精査入院した.MRIにて右外転神経が描出されたが,腫大や造影効果はなかった.右外転神経と前下小脳動脈との接触をみとめた.他疾患の除外により,OMにともなう右外転神経麻痺と診断した.ステロイド投与後眼症状は緩徐に軽快を示した.本症例のようにことなる時期に左右の外転神経麻痺を呈したOMはまれであり,推定される機序の考察を加えて症例報告する.
  • 横手 顕, 坪井 義夫, 福原 康介, 津川 潤, 井上 展聡, 青木 光希子, 鍋島 一樹, 継 仁, 井上 亨, 山田 達夫
    2012 年 52 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女性である.約1カ月の経過で進行した両側外転神経麻痺と後頸部痛を主訴に入院した.頭部MRIで頭蓋底斜台部を中心に腫瘤性病変がみられた.全身検索で異常はみられず,経鼻経蝶形骨洞的腫瘍生検術を施行した.病理組織より悪性リンパ腫と診断し,ステロイドおよび放射線療法をおこなった.後頸部痛は消失し,頭部MRIで腫瘍の縮小をみとめたが,両側外転神経麻痺は残存した.頭蓋底斜台部原発の悪性リンパ腫はきわめてまれで,頭痛と外転神経麻痺の合併が多い.外転神経が脳幹部を出て,斜台硬膜貫通部から海綿静脈洞に向かい上行する部位,petroclival segmentにおいて,両側性に障害を受けることがその機序と考えられた.
  • 矢崎 俊二, 塚本 祐子, 湯浅 直樹, 石川 達也, 吉井 文均
    2012 年 52 巻 4 号 p. 251-256
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性である.3年4カ月前より乳癌肝転移のためカペシタビンによる化学療法を受け,10カ月前よりシクロフォスファミドを併用していた.意識レベル低下のため入院.入院後,上記薬剤投与は中止した.頭部MRIで脳幹,中小脳脚,左脳梁膨大部,両側の基底核,視床,放線冠および頭頂葉皮質下白質にT2強調画像およびFLAIR画像で高信号を示す多発性病変をみとめた.上記薬剤投与中止後12日目より意識障害は改善し,3週間後よりMRI所見は消退傾向を示した.上記薬剤が原因と思われる遅発性白質脳症のまれな1例と考えられた.
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