臨床神経学
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52 巻, 8 号
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症例報告
  • 山口 佳剛, 和田 学, 栗田 啓司, 高橋 幸利, 加藤 丈夫
    2012 年 52 巻 8 号 p. 545-550
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は23歳女性である.発熱・頭痛・多形紅斑の後に全身性間代性痙攣が出現し,頭部MRIで左側頭葉内側と左視床枕に病変をみとめた.失見当識,健忘症状があり抗核抗体などの自己抗体をみとめ,自己免疫疾患を背景とした辺縁系脳炎をうたがいステロイドで治療した.その後SLEの診断にいたり,SLEに関連した自己免疫疾患関連性辺縁系脳炎と診断した.本例では血清・脳脊髄液の抗グルタミン酸受容体(GluR)抗体(抗GluRε2抗体,抗GluRζ1抗体,抗GluRδ2抗体)をみとめ,脳炎回復期に抗体価は低下した.SLEにともなう辺縁系脳炎の一部は病態に抗GluR抗体が関与し,抗GluR抗体測定が辺縁系脳炎の診断と治療に寄与することが考えられる.
  • 高橋 育子, 山田 萌美, 松島 理明, 佐藤 和則, 加納 崇裕, 矢部 一郎, 佐々木 秀直
    2012 年 52 巻 8 号 p. 551-556
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    結核性髄膜炎は早期発見と早期治療を要し死亡率の高い中枢神経感染症である.迅速に治療開始しても難治例が存在し,不可逆的な副作用の出現,血管炎などの重篤な合併症など多くの問題を経験する.われわれはイソニアジド髄注療法およびステロイドパルス療法の併用が奏功した2例を経験した.いずれも標準的治療は奏功せず,これらの療法を併用することで改善し,重篤な後遺障害を残さず社会復帰した.イソニアジド髄注療法およびステロイドパルス療法は難治性の結核性髄膜炎に対し考慮すべき療法と考えられた.
  • Manabu Inoue, Yasuhiro Kojima, Masato Kinboshi, Masutaro Kanda, Hirosh ...
    2012 年 52 巻 8 号 p. 557-560
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    Background: Reticular reflex myoclonus is a rare condition with only a few cases clearly documented on video. The purpose of this paper is to report a patient manifesting typical clinical picture documented on video and characteristic electrophysiological features of reticular reflex myoclonus. Case: A 60-year-old woman presented with spontaneous and stimulus-sensitive myoclonic jerks involving the face, neck and upper extremities following anoxic episode. The patient was investigated electrophysiologically. Surface electromyogram showed brief myoclonic activity starting from the sternocleidomastoid and spreading up to the orbicularis oculi as well as down to the upper limb muscles. Cortical somatosensory evoked potentials and long-latency reflex were not enhanced. Conclusion: Clinical features and electrophysiological findings of this case are consistent with those of reticular reflex myoclonus originally reported by Hallett et al. in 1977.
  • 古賀 俊輔, 関口 縁, 金井 数明, 武藤 真弓, 桑原 聡
    2012 年 52 巻 8 号 p. 561-566
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は生来健康な20歳男性である.軽微な頭部外傷を契機に意識障害と四肢筋緊張亢進が出現し,症状は遷延した.頭部MRIでは左右対称性の大脳白質病変をみとめ,内部にFLAIR低信号域をともなう側脳室周囲白質のT2/FLAIR高信号病変という特徴的な所見をみとめた.脳脊髄液グリシン高値をみとめた.外傷を契機に症状が顕在化した白質脳症という特徴的な病歴,画像所見,脳脊髄液グリシン高値よりvanishing white matter diseaseと診断された.vanishing white matter diseaseは近年になり確立された疾患概念であり,若年発症の白質脳症の鑑別診断として考慮されるべき疾患と思われる.
  • 小野澤 里衣子, 坪井 義夫, 尾畑 十善, 井上 展聡, 山田 達夫, 三宅 勝久
    2012 年 52 巻 8 号 p. 567-570
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    Wegener肉芽腫症に合併したReversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)を経験した.症例は45歳男性,約1年前にWegener肉芽腫症を発症し,免疫治療にて寛解状態であったが,治療開始10カ月後にRPLSを発症した.RPLSは,悪性高血圧や妊娠子癇,免疫抑制剤などの使用により発症する頭蓋内の可逆性脳症であるが,本症例は発症時,免疫抑制剤を長期間服用しておらず,高血圧も軽度かつ一過性であったことから,Wegener肉芽腫症による血管内皮障害が病態に関与した可能性が考えられた.類似症例の文献的考察をふくめ報告する.
  • 鈴木 潤, 菅野 直人, 西山 修平, 金子 仁彦, 三須 建郎, 竪山 真規, 遠藤 俊毅, 青木 正志
    2012 年 52 巻 8 号 p. 571-575
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性である.受診半年前より頭部MRIで異常信号を指摘されていた.1カ月前より歩きにくさ,尿の出にくさが出現し当科受診.神経学的には両下肢の中等度の筋力低下,胸部以下の温痛覚低下,排尿困難,便秘,陰萎をみとめた.腰髄MRIでは円錐部に辺縁の造影効果をともなう浮腫性病変があり,頭部MRIでは無症候性の散在性白質病変をみとめた.末梢血ではみられなかったが脳脊髄液中には好酸球の増加が明らかであり,これはステロイドパルス後に変性像が観察された.寄生虫感染や骨髄増殖性疾患が否定的であり,特発性に好酸球が病態に関与する再発性脳脊髄炎と考えられた.急性期および寛解維持にステロイドが著効する点が特徴的であった.
  • 山下 裕之, 宇羽野 惠, 上坂 義和, 國本 雅也
    2012 年 52 巻 8 号 p. 576-580
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    脳症を呈した猫ひっかき病(CSD)の一例を経験した.症例は34歳女性,約1カ月前より微熱および鼠径部リンパ節腫脹を自覚していた.発熱および嘔気・嘔吐をともなう頭痛出現後,意識障害が出現し,受診した.髄液検査で大きな異常なく,頭部MRI正常であったが,骨盤造影CTにて壊死性リンパ節炎の所見をみとめ,外科的リンパ節生検にて肉芽腫様変化をみとめた.猫を飼っているという生活歴を考慮し,生検組織をもちいてCSDの病原体であるBartonella HenselaeのPCR検査施行し,陽性であることが判明しCSD脳症と診断した.本邦ではCSD脳症の報告が非常に少なく,見逃されている可能性があるため注意が必要である.
短報
  • 石原 哲郎, 伊藤 瑞規, 渡辺 宏久, 石上 雅敏, 木内 哲也, 祖父江 元
    2012 年 52 巻 8 号 p. 581-584
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性である.37歳時に健診にて肝機能異常を指摘,原発性胆汁性肝硬変と診断された.52歳ごろより頻回に転倒し,家事の段取りができなくなった.当院受診時,仮面様顔貌,四肢固縮,姿勢反射障害をみとめた.MMSEは28点,視覚性再生,符号,Trail Making Testなどでいちじるしい低下がみられた.MRI T1強調像では両側淡蒼球のみならず広範囲に高信号をみとめ,肝脳変性症と診断し7カ月後に生体肝移植施行された.術後6カ月で歩行,認知機能は改善し,T1高信号は軽減した.肝脳変性症にともなうパーキンソニズムと認知機能低下は肝移植により早期より改善しうると考えられた.
  • 岩永 健, 兼子 宜之, 西村 広健, 木村 和美
    2012 年 52 巻 8 号 p. 585-588
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代の女性である.痙攣後に右片麻痺,右半側空間無視をみとめ頭部MRI FLAIR画像において左大脳半球皮質下にびまん性に左右不対称に広がる白質病変をみとめた.神経症候の増悪とMRI所見で白質病変の増大がみられた.以前より認知症があり,T2*強調画像において皮質下に微小出血をみとめることからアミロイドアンギオパチーをうたがい脳生検をおこなった.アミロイド蛋白の沈着ならびに血管周囲への軽度の炎症細胞浸潤を呈したことからアミロイドアンギオパチー関連白質脳症と診断した.ステロイド治療により著明な神経症候の改善にともないFLAR画像における白質病巣の改善がみられた.
  • 須貝 章弘, 今野 卓哉, 矢野 敏雄, 梅田 麻衣子, 小宅 睦郎, 藤田 信也
    2012 年 52 巻 8 号 p. 589-591
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
    症例は2カ月前から構音障害が進行した62歳女性である.急速に進行する両側の舌萎縮と線維束性収縮をみとめ,脳MRIで左舌下神経管内に病変をみとめた.ガリウムシンチグラフィーで左大腿部に異常集積をみとめ,同部位の生検により,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断にいたった.化学療法により舌萎縮は改善し,左大腿部の病変も消失した.その後,左動眼神経麻痺と右上肢筋力低下が生じ,続いて右下肢筋力低下もみとめ,神経リンパ腫症を示唆するMRI所見を各々にみとめた.神経リンパ腫症の診断には難渋することが多く,とくに本症例は,筋萎縮性側索硬化症との鑑別を要する両側舌萎縮で発症した点が,日常臨床的に重要と思われ,報告した.
地方会抄録
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