臨床神経学
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53 巻, 3 号
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会告
総説
  • 榊原 隆次, 岸 雅彦, 露崎 洋平, 舘野 冬樹, 内山 智之, 山本 達也
    2013 年 53 巻 3 号 p. 181-190
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    排尿障害は,自律神経症候の中で非常に頻度が高いものである.このうち過活動膀胱(OAB)は生活の質を悪化させ,残尿・尿閉は尿路感染症,腎後性腎不全をきたし生命予後を悪化させる懸念もある.本稿では,排尿の神経機構とその見方について図をもちいながら述べた.次に,神経因性膀胱の病態と治療について,OABをきたす疾患として高齢者白質病変,残尿をきたす疾患として糖尿病を例示しながら述べた.治療については,OABに対して抗コリン薬,残尿・尿閉に対して清潔間欠導尿,α交感神経遮断薬,コリン作動薬を組み合わせながら投与することが勧められる.排尿障害の治療を積極的におこない,患者の生活の質を向上させることが望まれる.
原著
  • 山田 健治, 長谷川 有紀, 吉川 陽子, 高橋 知男, 小林 弘典, 虫本 雄一, Jamiyan Purevsuren, 山口 清次
    2013 年 53 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    成人後に発症する先天代謝異常症(inborn errors of metabolism, IEM)はまれと考えられているが,詳細は不明である.2001年から2010年に当科で,成人後に診断されたIEMについて臨床経過や予後を検討した.IEMと診断した386例のうち24例が成人後に診断された.そのうち成人期の発症例は15例あった.疾患の内訳はアルカプトン尿症11例,その他の有機酸代謝異常症6例,尿素サイクル異常症4例,脂肪酸代謝異常症3例であった.IEMの成人例はまれであるが,発症時期にかかわらず,診断の遅れが患者QOLの低下に繋がる.原因不明の発達遅滞や退行例などでは,成人であってもIEMを念頭においた検索が必要である.
  • 田中 敬子, 関島 良樹, 吉田 邦広, 水内 麻子, 山下 浩美, 玉井 真理子, 池田 修一, 福嶋 義光
    2013 年 53 巻 3 号 p. 196-204
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    遺伝性神経筋疾患の発症前診断の現状を明らかにするため,発症前診断を希望し当院を受診した73名(家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)30名,ハンチントン病16名,脊髄小脳変性症14名,筋強直性ジストロフィー9名,家族性筋萎縮性側索硬化症3名,アルツハイマー病1名)を解析した.発症前診断を受けたのは,FAPでは73%,根本的治療法がないその他の疾患では42%であり,カウンセリングを介してクライエントの心境や考え方が変化したと考えられた.発症前診断に関する相談は遺伝カウンセリング外来受診の契機になっていることが多く,発症前診断に対応できる遺伝カウンセリング体制の整備が重要と考えられた.
症例報告
短報
  • 清水 洋, 志賀 裕正, 松本 有史, 久永 欣哉
    2013 年 53 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    発症から10年が経過したプリオン蛋白V180I変異Creutzfeldt-Jakob病(CJD)患者の頭部MRI画像所見の変遷を検討した.発症から約1年6ヵ月後までは大脳皮質および基底核を中心にDWI画像,FLAIR画像で高信号域がみとめられたが,3年目では皮質の高信号域が減少し,4年目以降はほとんど消失した.大脳皮質,基底核を主体とした萎縮は発症初期から急速に進行したが,視床,脳幹,小脳では10年を経過しても萎縮はきわめて軽微であった.CJD患者の脳において部位による脆弱性の違いが生じる理由は明らかでなく,プリオン蛋白遺伝子変異の違いが関与する可能性もふくめ,今後症例を重ねて検討していく必要がある.
  • 福元 恵, 山城 亘央, 小林 史和, 長坂 高村, 瀧山 嘉久
    2013 年 53 巻 3 号 p. 239-242
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性である.数日の経過で進行する四肢脱力により歩行できなくなったため,当院に緊急搬送された.脱力発作の既往歴や家族歴はなかった.血清カリウムが1.9mEq/lと低下しており,低カリウム血性ミオパチーと診断した.経口的にカリウム補充をおこなったところ,血清カリウム値,症状ともにすみやかに改善し,治療中止後も再発はなかった.カリウム代謝に関連した内分泌学的異常はみとめず,患者は,去痰目的に市販の総合感冒薬を10年間連日服用し,肥満解消目的に,症状出現2週間程前より緑茶抽出物健康飲料を大量摂取していたことから,これらにふくまれるカフェインの大量摂取が低カリウム血症の原因であると考えられた.
  • 上井 康寛, 橋本 昌也, 鈴木 正彦, 崎元 芳大, 川崎 敬一, 吉岡 雅之
    2013 年 53 巻 3 号 p. 243-246
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性である.嚥下障害で緊急入院.初診時,頭痛と右舌下神経麻痺に加え,2ヵ月前からの間欠熱があった.血液検査でCRP 5.3 mg/dl,可溶性IL 2レセプター834 U/mlの他異常なく,髄液検査も正常であった.脳MRIで蝶形骨斜台内部と周囲に造影効果をみとめたが,CTで骨破壊像はなかった.悪性腫瘍検索のためのPETで斜台内部と周囲,脾臓,腎臓,左鎖骨上窩と腸間膜リンパ節にFDG異常集積をみとめリンパ増殖性疾患がうたがわれた.間欠熱の出現から3ヵ月後にはじめて末梢血に芽球が出現,骨髄穿刺にて急性リンパ性白血病(minor-bcr/abl陽性)と診断した.同疾患は髄膜への浸潤あるいは脳血管障害が多いが,本例のように舌下神経単独麻痺で発症した症例はなく,貴重と思われ報告した.
地方会抄録
編集後記
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