臨床神経学
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54 巻, 4 号
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会告
総説
  • 山本 康正
    2014 年 54 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    大径穿通枝の母動脈からの分岐部近傍のアテロームプラークを基盤とした血栓により穿通枝全域におよぶ梗塞は,branch atheromatous disease(BAD)という一病型として提起されている.放線冠を灌流するレンズ核線条体動脈,内包後脚を灌流する前脈絡叢動脈,橋底面を灌流する傍正中橋動脈に好発し,錐体路の傷害により急性期に進行性運動麻痺を示し,機能予後不良となるばあいが多い.tPA治療は,BADが緩徐進行の経過をとることや,投与後の再増悪がみられることがあり最適とはいえない.アルガトロバン,シロスタゾール,クロピドグレル,エダラボンの,カクテル・強化抗血小板療法が有用である可能性がある.
原著
症例報告
  • 菅原 恵梨子, 齊藤 麻美, 岡本 光生, 田中 章景, 髙橋 竜哉
    2014 年 54 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性である.頭痛,嘔気を訴え脳MRIで右延髄外側に右椎骨動脈解離による梗塞巣をみとめた.第3病日当院への転院時,右Wallenberg症候群を呈しており,誤嚥性肺炎をきたしていたものの意識清明であった.その後不穏となり第9病日にCO2ナルコーシスのため人工呼吸器管理となった.第10病日に抜管後も同様のエピソードがあり,気管切開が実施された.第39病日に人工呼吸器離脱した.画像上で梗塞巣の拡大はみとめなかった.本例同様にWallenberg症候群の亜急性期に中枢性低換気を呈するものは少ないながら報告されており,亜急性期をふくめ注意深いバイタルサイン観察が必要である.
  • 西原 秀昭, 尾本 雅俊, 小笠原 淳一, 古賀 道明, 川井 元晴, 神田 隆
    2014 年 54 巻 4 号 p. 308-312
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性である.2週間前から意識障害が増悪し入院した.髄膜刺激徴候,腱反射低下がみられた.脳脊髄液では著明な糖低下をともなう単核球優位の細胞数増多をみとめ,adenosine deaminase(ADA)は上昇していた.入院4ヵ月前に左側頭葉星状細胞腫が摘除されており,頭部MRIでは腫瘍摘除部は術直後同様であったが,脳表に沿ったFLAIR高信号域,造影効果がみられた.結核性髄膜炎を第一の鑑別診断と考えたが治療反応性は乏しかった.脳脊髄液細胞診を反復した結果,大型の偏在した核を持つGFAP(glial fibrillary acidic protein)陽性の異型細胞をみとめ星状細胞腫による髄膜膠腫症と診断した.低悪性度星状細胞腫では髄膜膠腫症をきたすことはきわめてまれであり,本症例では脳脊髄液ADA高値が特徴的であった.
  • 辰野 健太郎, 中村 聖香, 朝山 知子, 中野 智
    2014 年 54 巻 4 号 p. 313-316
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性である.3年で進行する四肢の筋力低下を主訴に入院した.針筋電図では安静時の自発放電をともなう筋原性変化をみとめた.左上腕二頭筋の筋生検所見では,視野の大部分が結合織で占められ,筋線維は全視野で数本しかみとめなかったが,一部血管周囲にリンパ球が集積していた.数十枚の連続切片を追加し検索したところ,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と多核巨細胞が確認され,慢性ミオパチー型筋サルコイドーシスと診断した.全身検索をおこなったが,他臓器症状はみとめなかった.筋症状のみを呈した慢性ミオパチー型筋サルコイドーシスの臨床病理の報告はまれであり,貴重な症例と考えられた.
  • 角谷 真人, 尾上 祐行, 角谷 彰子, 東原 真奈, 池脇 克則, 海田 賢一
    2014 年 54 巻 4 号 p. 317-320
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は85歳男性である.第1病日,突然物が二重にみえ右眼が外側に偏倚した.歩行時ふらつきと上口唇周囲のピリピリ感もみとめた.症状が持続し第10病日入院.右優位の両眼開散位,交代性外斜視をともなう両側核間性外眼筋麻痺(wall-eyed bilateral internuclear ophthalmoplegia; WEBINO),左上下肢失調,口唇の右上方の異常感覚をみとめた.頭部MRIで橋被蓋傍正中部に限局する脳梗塞あり.発症4ヵ月で小脳失調と顔面感覚障害は軽快したが眼球運動障害は持続した.神経症候から推定される障害範囲は両側内側縦束,左上小脳脚,三叉神経視床路をふくみ,MRI上の梗塞域より広範だった.
短報
  • 三枝 隆博, 中谷 嘉文, 萩原 麻衣, 真部 建郎, 松井 大
    2014 年 54 巻 4 号 p. 321-324
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    症例は93歳女性である.まれと考えられる舌の発作性運動をみとめた.全身けいれん発作重積を契機に救急搬送された.右から左へ水平に偏倚する舌運動をくりかえし,発作中摂食・発話共不能であった.ジアゼパム静注で全身・局所の運動は共に消失した.MRI上,アルツハイマー型認知症に見合う両側側頭葉内側の萎縮をみとめた.脳波では対応するてんかん性放電はみとめなかった.治療にも拘らず発作抑制に難渋し,抗てんかん薬多剤併用下で転院した.発作性の舌運動は,てんかん・脳梗塞・脳腫瘍などで報告され両側性が多い.本症例は片側への運動である点が特異であり,病態は部分発作・口蓋ミオクローヌス/振戦・ジスキネジアなどとの鑑別が困難であった.
  • 青木 寧子, 望月 葉子, 磯崎 英治, 板東 充秋, 小栁 清光, 水谷 俊雄
    2014 年 54 巻 4 号 p. 325-329
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は死亡時73歳女性である.68歳より記銘力障害を生じ,71歳時に小手筋萎縮が出現した.病識が低下し,多弁,多幸的で,アルツハイマー病(Alzheimer disease; AD)に認知症をともなう筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis with dementia; ALS-D)を合併したと診断した.病理学的には孤発性ALSの所見と吻側側頭葉内側と海馬支脚に高度の神経細胞脱落,歯状回顆粒細胞に多数のTAR DNA binding protein-43陽性封入体があり,ALS-Dに合致した.大脳皮質の神経細胞脱落部位には多数のリン酸化タウ陽性構造と老人斑がみられたが,ADとしては神経原線維変化と定形斑が少数だった.今後,このような合併症例が増えると考えられ,その診断への参考として報告する.
  • 辻本 考平, 森谷 真之, 屋嘉 恵子, 川﨑 裕子, 仲谷 利栄, 那波 一郎, 中野 美佐, 巽 千賀夫, 保本 卓, 河原 隆二
    2014 年 54 巻 4 号 p. 330-333
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性である.55歳時に遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia; HHT)と診断,65歳時に胸部造影CTにて肺動静脈奇形(pulmonary arteriovenous malformation; PAVM)の存在を指摘されていた.頭痛,右同名半盲,右上下肢不全麻痺が出現し入院となった.頭部造影MRIにて左後頭葉や頭頂葉に輪状に造影される病変を多数みとめ,肺動静脈奇形を介した脳膿瘍を発症したと考えられた.穿頭ドレナージ術,PAVMに対するコイル塞栓術を施行し,症候は後遺症なく軽快した.PAVMを指摘されている患者においては,無症候でも早期に塞栓術を考慮する必要性が示唆された.
Letters to the Editor
委員会報告
  • 谷脇 考恭, 犬塚 貴, 吉井 文均, 青木 正志, 天野 隆弘, 豊島 至, 福武 敏夫, 橋本 洋一郎, 吉良 潤一
    2014 年 54 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    日本神経学会卒前・初期臨床研修教育小委員会では,全国80の医系大学の神経内科教育担当者を対象に,卒前・卒後教育の教育ニーズに関するアンケート調査をおこなった.回収率は82.5%.卒前教育では講義で使用している教科書がある大学は22.7%にすぎず,神経学会で標準化された教材を作成したばあい,使用すると回答した施設は78.8%あった.卒後教育(後期研修医)の研修プログラムは90.9%の施設で,神経学会が定めたミニマムリクアイアメントに準拠していた.しかし自大学(施設)内だけで達成されているのは66.7%に過ぎず,77.3%の大学が,プログラム充実のための支援を神経学会に望んでいた.
  • 福武 敏夫, 橋本 洋一郎, 谷脇 考恭, 豊島 至, 天野 隆弘, 青木 正志, 吉井 文均, 犬塚 貴, 吉良 潤一
    2014 年 54 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    大学病院(80施設)を除く日本神経学会教育施設(243施設)・准教育施設(326施設)・教育関連施設(121施設)の合計690施設を対象として,当該施設の教育責任者宛てに,①初期研修,②後期研修,③専門医試験についてアンケートをおこなった.388施設から回答をえて,回収率は56.2%であった.初期研修医の68.6%が神経内科で研修(2年間で平均2.1ヵ月間)を受けていた.半数以上の施設が,神経内科にローテーションしてこない初期研修医向けの教育をおこなっていなかった.後期研修では,1施設1年あたりの後期研修医は0.44人と少なく,経験する症例に疾患の偏りがあり,自施設だけでは研修目標を達成できない施設が多い(56%)ことがわかった.指導スタッフ不足・マンパワー不足が問題であり,神経学会への要望は多岐にわたっていた.専門医試験に関しては,施設あたりの受験者が少なく,支援・指導が半数の施設でできていない実情が明らかになった.学会への要望ではセミナーやハンズオンに関するものが多く,地方会ではさらに勉強会の設定を求める施設があった.卒後教育においては,各施設の工夫のみでは解決できないことも多く,地域,さらには日本神経学会を中心とした組織的な取り組みが必要と考えられる.
  • 吉良 潤一, 大八木 保政, 谷脇 考恭, 犬塚 貴, 吉井 文均, 青木 正志, 天野 隆弘, 豊島 至, 福武 敏夫, 橋本 洋一郎
    2014 年 54 巻 4 号 p. 349-358
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    日本神経学会卒前・初期臨床研修教育小委員会では,日本の神経内科における大学院教育の現状を明らかにすべく,医科大学・医学部を対象として平成24年度末に最近4年間の動向をアンケート調査した.その結果,平成21年度から平成24年度にかけての大学院進学者数は,1大学平均1.24人から1.67人へと漸増傾向で,入局者の半数以上が大学院に進学しており,大学院進学者の比率は増加傾向にあった.大学院生は,主として入局した教室において多様な研究手法をもちいて,主たる神経疾患の研究に取り組んでいることが示された.課題として,①平成21年度から平成24年度にかけての大学神経内科の入局者数は,1大学平均2.29人から1.96人へと漸減傾向にあること,②大学院の1,2年次は診療に従事している院生が多く,そのうえ大学院病院などから支給される給与は不十分で,奨学金をえる機会も少ないため,アルバイトに時間を割かざるをえない状況にあり,必ずしも十分な期間,研究に打ち込めていないこと,③研究場所が入局した教室であることが大部分で,基礎医学分野での学習機会が乏しいこと,④大学院修了後は,過半数は当該医局で何らかの形で研究を継続しているものの,国外・国内留学の機会などさらなる研究発展の機会が少ないことが明らかになった.
訂正
地方会抄録
編集後記
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