臨床神経学
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55 巻, 10 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
症例報告
  • 中野 博人, 坂尻 顕一, 新田 永俊, 長田 敦, 高橋 利幸
    2015 年 55 巻 10 号 p. 716-721
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    患者は20歳女性.左眼の視力低下で発症し,眼科で左球後視神経炎を伴う両側中間部ぶどう膜炎を指摘された.MRIで両側側脳室周囲白質や脳梁膨大部,延髄,胸髄に非造影無症候性多発病変を認め,左視神経は腫大しており,当初は両側中間部ぶどう膜炎を伴った球後視神経炎と診断した.ステロイド治療にて左視力やぶどう膜炎は改善し,脳MRIで左視神経の腫大も軽快した.経口プレドニゾロン治療継続約1年後に脳MRIで新規病変を認め,多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)と診断した.ぶどう膜炎を合併したMS症例の報告は少なく,両側中間部ぶどう膜炎を合併したMSは本例が本邦第1例である.
  • 小林 康孝, 村松 倫子, 佐藤 万美子, 林 広美, 三浦 豊章
    2015 年 55 巻 10 号 p. 722-727
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性である.地誌的障害に対するリハビリ目的で当院に入院した.頭部MRIでは右後頭葉内側の脳梗塞巣を認めた.神経心理学的検査では,各種検査の視覚情報を用いる課題で点数が低かったが,全般的な認知機能は保たれていた.標準高次視知覚検査の「状況図」説明において,部分の説明は出来るが絵全体の説明ができないという同時失認の所見がみられた.また,旧知・新規どちらの場所においても,位置関係は説明できるが同定ができないという街並失認を認めた.右後頭葉病変による同時失認の報告は少なく,貴重な症例と思われたため報告する.
  • 徳田 直輝, 近藤 正樹, 笠井 高士, 木村 彩香, 中川 正法, 水野 敏樹
    2015 年 55 巻 10 号 p. 728-731
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    41歳女性,右利き.頭痛,発熱の2週間後に,異常行動が出現した.抗グルタミン酸受容体抗体が陽性であり,抗グルタミン酸受容体抗体関連脳症と診断した.ステロイドの投与で改善し,第72病日にほぼ後遺症なく退院した.第100病日頃より純粋失読,第200病日頃よりforeign accent syndrome(FAS)様の言語障害が出現した.FDG-PETでは純粋失読の時期には両後頭葉,FASの時期には左前頭葉で集積が低下していた.FASの病巣は報告により異なり経過中に改善する症例が多い.FASは特定の病巣部位による局所症状というよりは言語処理過程のアンバランスから生じる一時的な現象の可能性がある.
  • 山本 敦史, 今井 啓輔, 濱中 正嗣, 山田 丈弘, 山﨑 英一, 傳 和眞, 辻 有希子, 山下 紀行, 角谷 昌俊
    2015 年 55 巻 10 号 p. 732-736
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.四肢脱力が約20日間で進行し当科に入院した.四肢近位筋優位の筋力低下と四肢遠位優位の異常感覚をみとめた.Guillain-Barré症候群を疑い免疫グロブリン大量静注療法を実施するも筋力低下は進行し歩行困難となった.同時期から蛋白尿が出現し腎生検にて巣状糸球体硬化症と診断された.また抗SS-A抗体陽性と唾液腺生検によりSjögren症候群と判明した.ステロイド療法を追加することにより筋力低下は改善し蛋白尿も消失した.Motor dominant neuropathyを合併するSjögren症候群は稀であり,巣状糸球体硬化症との関連を含め文献的考察を加えて報告する.
  • 徳田 直輝, 今井 啓輔, 笠井 高士, 木村 彩香, 阿部 能成, 富永 敏行, 福居 顯二, 米田 誠, 中川 正法, 水野 敏樹
    2015 年 55 巻 10 号 p. 737-742
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    30歳女性.失語症状後に抑うつ傾向となり,最初の医療施設に入院した.急性辺縁系脳炎を疑い,ステロイドパルス療法を実施するも改善なく,入院同日より幻覚や精神運動興奮などの精神症状が出現した.血漿交換療法と免疫グロブリン静注療法の追加も無効であり,精神症状が強く一般病棟での管理は困難となった.第17病日に他院精神科病棟に転院となった.ステロイドパルス療法と長期ステロイド経口投与および精神科治療により,症状は徐々に改善し第143病日に自宅退院できた.臨床経過および抗甲状腺抗体と抗NAE抗体の存在より橋本脳症と診断した.本例では精神科治療下での長期ステロイド経口投与が唯一有効であった.
  • 三浦 正智, 中島 誠, 藤本 彰子, 植田 明彦, 渡邉 聖樹, 安東 由喜雄
    2015 年 55 巻 10 号 p. 743-747
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    脳腫瘍に対して放射線照射長期経過後に,若年性脳梗塞と微小出血を呈した2症例を報告する.症例1は44歳男性.構音障害と左片麻痺で発症し,右放線冠に急性期ラクナ梗塞を呈していた.症例2は28歳女性.構音障害と右片麻痺で発症し,左放線冠に急性期ラクナ梗塞を呈していた.症例1では喫煙,症例2では脂質異常症以外の血管危険因子を有しておらず,凝固異常,血管炎などは指摘できなかった.主幹動脈のアテローム硬化病変に乏しく,陳旧性ラクナ梗塞と微小出血が認められた.放射線照射後長期生存例において,主幹動脈病変のみならず,small vessel diseaseを念頭においてリスク管理と画像診断を行う必要がある.
  • 秋本 高義, 原 誠, 齋藤 磨理, 高橋 恵子, 亀井 聡
    2015 年 55 巻 10 号 p. 748-752
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    症例は34歳男性.右後頸部痛を自覚し,その後,四肢のしびれ感が出現し当院を受診した.右不全片麻痺と右半身の感覚低下を認め,2時間後には構音障害と上眼瞼向眼振が出現し,麻痺と感覚障害が四肢に進展した.頭部MRI拡散強調画像にて中下部延髄の両側の腹側から背側に及ぶ高信号を認め両側延髄内側梗塞と診断した.3D-CT angiographyで右椎骨動脈の動脈解離が原因と考えられた.アルガトロバン,エダラボン,グリセリン,クロピドグレルを投与し,第30病日にリハビリ病院へ転院となった.延髄内側を栄養する血管が片側性に支配される場合には一側の解離により両側延髄内側梗塞をおこす可能性があることが示唆された.
  • 齋藤 万有, 林 信太郎, 鎌田 崇嗣, 村井 弘之, 尾本 雅俊, 吉良 潤一
    2015 年 55 巻 10 号 p. 753-758
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/18
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.38歳より右手指の伸展障害が出現,その後数年かけて左側,次いで右側の下垂足が出現した.腱反射は右上肢と両下肢で減弱し,左下肢遠位部に軽度の異常感覚を認めた.神経伝導検査は軸索障害パターン,針筋電図検査で慢性神経原性所見を認めた.血清抗SS-A抗体と唾液腺病理所見が陽性.腓腹神経生検では神経束内の有髄神経線維脱落の分布に差異があり小血管周囲に炎症細胞浸潤を認めた.シェーグレン症候群に伴う多発性単神経炎と診断,免疫療法を行い一部の筋力に改善がみられた.本例が年余に亘る緩徐進行性の運動優位多発性単神経障害を示した点は,同症候群に合併する末梢神経障害として特異である.
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