臨床神経学
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55 巻, 11 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 安東 由喜雄
    2015 年 55 巻 11 号 p. 797-803
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/10/10
    ジャーナル フリー
    神経関連アミロイドーシスはとりわけこの10年の間に治療の道が開けてきた.ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシスではそれぞれ新規化学療法剤やIL6レセプター抗体による治療が奏功している.遺伝性アミロイドーシスの中で最も患者数の多いトランスサイレチン(transthyretin; TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloidotic polyneuropathy; FAP)は,肝移植,TTR4量体安定化剤,gene silencing剤と次々に治療法が開発され,根治目前の状態が拓かれつつある.神経関連アミロイドーシスとしては,ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシス,透析関連アミロイドーシス,FAP,老人性全身性アミロイドーシス(senile systemic amyloidosis; SSA),脳限局アミロイドーシスとしてアルツハイマー病,プリオン病などがあげられるが本稿では全身性アミロイドーシスに絞ってそれらの診断・病態・治療について述べる.
原著
  • 赤石 哲也, 神 一敬, 加藤 量広, 板橋 尚, 三須 建郎, 竪山 真規, 岩崎 真樹, 青木 正志, 中里 信和
    2015 年 55 巻 11 号 p. 804-809
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    抗glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体は1型糖尿病に加えて,stiff-person症候群,小脳失調,認知機能障害,てんかんなどの神経症候とも関連する.本研究では,青年期から中年期に側頭葉てんかんで発症した抗GAD抗体関連脳症4例の臨床的特徴を報告する.4例のうち3例は40~50歳代に発症した.4例とも発症時には脳炎・脳症を疑わせる所見に乏しく早期診断は難しかったが,3~30年後に糖尿病・小脳失調・高次機能障害の併発を契機に診断に至り,2~3剤の抗てんかん薬により発作は消失した.原因不明の中年発症側頭葉てんかんでは,抗GAD抗体の関与を考慮する必要がある.
症例報告
  • 松島 理明, 清水 裕香, 高橋 育子, 佐藤 和則, 廣谷 真, 加納 崇裕, 矢部 一郎, 佐々木 秀直
    2015 年 55 巻 11 号 p. 810-815
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/10/10
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性.7年前に手指関節痛が出現し,当初は関節リウマチや成人発症Still病の診断でステロイド,免疫抑制剤で治療された.4年前から筋痛と軽度CK上昇を認め,3ヶ月前からさらにCK上昇し,免疫抑制剤変更も効果なかった.当科入院時,中等度の体幹四肢近位筋筋力低下,肩周囲や大腿内側の筋痛がみられた.血液検査では筋逸脱酵素と炎症反応の上昇があり,抗PL-7抗体陽性であった.筋生検では壊死再生線維を認め,壊死性ミオパチーの所見であった.ステロイドを増量しタクロリムスを充分量使用して症状は改善した.抗PL-7抗体等の抗ARS抗体測定は診断や予後予測に有用であり,今後さらに症例の蓄積が必要である.
  • 周藤 豊, 伊藤 悟, 野村 哲志, 渡辺 保裕, 北尾 慎一郎, 中安 弘幸, 中島 健二
    2015 年 55 巻 11 号 p. 816-822
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性である.急性発症の右臀部痛,下肢脱力で入院した.両下肢の徒手筋力検査3,腱反射低下,S3~5領域異常感覚,膀胱直腸障害をみとめた.MRIで下部胸椎レベルの脊髄から脊髄円錐,その脊髄周囲,馬尾の造影効果をみとめた.脳脊髄液は細胞数増多,蛋白上昇,糖低下をみとめ,結核菌PCRと培養は陰性であった.膵頭部周囲の多房状の腹部リンパ節腫大をみとめ,リンパ節生検組織の抗酸菌培養より結核菌をみとめた.腹部リンパ節結核と診断し,抗結核薬を開始し,神経学的所見と脳脊髄液の改善傾向から,結核性脊髄神経根炎と診断した.結核性脊髄神経根炎の診断にリンパ節生検や培養を含めた全身検索の有用性が示唆された.
  • 森谷 真之, 那波 一郎, 中野 美佐, 巽 千賀夫, 井上 貴美子, 藤村 晴俊
    2015 年 55 巻 11 号 p. 823-827
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性である.左足趾が紫色に変色し凍瘡として加療を受けていたが,8か月後に高次脳機能障害が出現したため入院となった.血液検査で好酸球が著増しており,頭部MRIにおいては脳弓,脳梁,基底核,前頭葉に病変を認めた.ステロイドを投与したところ症候の改善を認めたが,突然心肺停止をきたした.剖検においては,高度の肺出血と肺胞の血管炎を認め,大脳,腎,肝などにコレステロール結晶を認めた.脳を含む多臓器へのコレステロール塞栓症を発症し,全身の血管炎が惹起されたことにより,肺出血を発症し致死的な転帰を辿った可能性が考えられた.好酸球増多を伴う脳病変を認めた際には本症の可能性も考える必要がある.
  • 横川 和樹, 藤倉 舞, 静川 裕彦, 高橋 明, 下濱 俊
    2015 年 55 巻 11 号 p. 828-832
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/19
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の女性.右眼瞼下垂と複視で当科に入院した.右動眼神経麻痺と右眼視力低下を認めた.確定診断に至らず,経口PSLを開始したが治療効果に乏しく症状は残存した.約10ヶ月後より左眼瞼下垂が出現し再入院した.入院中に左結膜充血,全方向性の左眼球運動障害が出現した.頭部MRAにて右海綿静脈洞の血流信号の増強を認め,血管造影で右海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻と診断した.左眼症状は海綿間静脈洞を介した対側海綿静脈洞の灌流圧上昇に由来すると考えられた.経静脈的塞栓術にて症状寛解を得た.原因の特定できない外眼筋麻痺を認めた場合,本症の可能性をふまえ積極的な画像的検索を考慮すべきと考えられた.
  • 葛目 大輔, 井上 薪, 高松 正宏, 佐島 和晃, 今野 優子, 山崎 正博
    2015 年 55 巻 11 号 p. 833-839
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/19
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.2014年7月上旬,高体温,昏睡,弛緩性麻痺にて搬送.重症熱中症と診断し,加療を行った.遷延性意識障害に対して,頭部MRIを実施したところ,拡散強調画像(DWI)にて両側対称性に大脳半球,小脳半球に広範な高信号病変を認めた.同部位のapparent diffusion coefficient(ADC)と併せて血管原性浮腫と判断した.その後,これらの病変は消失し,両側大脳半球及び小脳半球に著明な萎縮を認めた.現在も昏睡状態,四肢は弛緩性麻痺を呈し,自発呼吸なく,人工呼吸器管理を行っている.
  • 竹島 慎一, 音成 秀一郎, 姫野 隆洋, 高松 和弘, 下江 豊, 栗山 勝
    2015 年 55 巻 11 号 p. 840-843
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/09/19
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性である.筋萎縮性側索硬化症(clinically possible amyotrophic lateral sclerosis)と診断し,リルゾール(riluzole; RZ)の内服を開始した.約2ヶ月後より呼吸困難が出現し,徐々に悪化し入院した.胸部CT所見などから,間質性肺炎と診断し,ステロイドパルス療法を開始し,RZを中止したところ,呼吸状態は速やかに改善した.RZにより発症した間質性肺炎が考えられた.16ヵ月後,本人の強い希望があり,RZの再投与を行ったところ,投与4日目に同様の間質性肺炎が再発した.RZ投与中の筋萎縮性側索硬化症患者の呼吸困難の原因として,臨床的に極めて重要である.
短報
  • 竹脇 大貴, 辻 有希子, 笠井 高士, 吉田 誠克, 中川 正法, 水野 敏樹
    2015 年 55 巻 11 号 p. 844-847
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/21
    [早期公開] 公開日: 2015/10/10
    ジャーナル フリー
    腎生検にて半月体形成を伴う糸球体を認めたANCA関連肥厚性硬膜炎の76歳男性の症例を報告する.多発脳神経障害に加え,MPO-ANCA陽性,頭部MRIでの造影効果を伴う硬膜肥厚,硬膜生検でのリンパ球の集積と硬膜肥厚所見を認めたことからANCA関連肥厚性硬膜炎と診断した.尿検査にて尿蛋白および尿潜血を認め,腎生検を施行したところ半月体形成を伴う糸球体を認めた.ANCA関連肥厚性硬膜炎においては,腎病変を伴う症例は少数であるため見過ごされる可能性があるが,予後不良と予測される.本症例は腎生検にて早期に腎病変を把握することができ,予後予測や治療法の決定に有用であった点で貴重な症例と考える.
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