症例は31歳の女性である.小児期より長距離走が不得意で,23歳より易転倒,31歳より歩行時のふらつきが増悪し受診した.神経学的に小脳失調,下肢優位の四肢筋力低下,腱反射低下,振動覚低下,ミオクローヌス,感音性難聴,網膜色素変性症をみとめた.MRIで小脳脳幹の萎縮があり,血清・髄液中の乳酸・ピルビン酸が高値,針筋電図検査で慢性神経原性変化をみとめた.生検筋の組織検査ではragged-red fiberなどの所見はなく慢性神経原性変化のみで,neurogenic muscle weakness, ataxia, and retinitis pigmentosaと診断した.遺伝子検査でミトコンドリアDNA 8729 G>A変異をみとめ,呼吸鎖酵素複合体である複合体Vの活性低下を確認したため,本症例での病的変異と考えた.
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