臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
55 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
症例報告
  • 林 隆太郎, 田原 将行, 大江田 知子, 小西 哲郎, 澤田 秀幸
    2015 年 55 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.抗アセチルコリン受容体抗体陽性の胸腺腫合併全身型重症筋無力症で,胸腺腫摘除後も高度の球麻痺と呼吸筋麻痺を呈し,治療抵抗性で4週毎の血漿交換を要した.シクロホスファミドパルス療法にひき続き,rituximab(RTX)を投与したところ,徐々に症候が改善した.CD20陽性細胞数は低値で推移し,血漿交換施行間隔を9週まで延長,併用プレドニゾロン(PSL)を漸減できた.投与後27ヵ月目にCD20陽性細胞数上昇とともに症候も悪化したためRTXを再投与し,16ヵ月目にはPSLを中止できた.今回,治療抵抗性重症筋無力症に対するRTXの適応について考案した.
  • 古田 充, 三原 雅史, 木村 康義, 奥野 龍禎, 高橋 正紀, 望月 秀樹
    2015 年 55 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性である.生下時より咀嚼筋,顔面筋の筋力低下があり,当科を受診した.両側咬筋の萎縮と顔面筋力の重度低下をみとめ,閉口困難・兎眼を呈していた.左眼に内外転障害と随意運動時の上転障害をみとめたがBell現象は残存していた.顔面神経伝導検査で遠位潜時は保たれていたが瞬目反射は導出不能で,針筋電図では舌に神経原性変化をみとめた.上肢筋生検や皮膚生検でも異常所見はなく,先天性顔面神経麻痺に核上性眼球運動障害を呈したMöbius症候群と診断した.Möbius症候群は先天性の顔面麻痺と外転麻痺を呈する症候群だが,その病態と症状は多様である.同症候群を考える上で貴重な症例であり,ここに報告する.
  • 石原 智彦, 石原 彩子, 小澤 鉄太郎, 三瓶 一弘, 下畑 享良, 西澤 正豊
    2015 年 55 巻 4 号 p. 238-242
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性で,進行性の認知機能低下と痙攣発作を呈した.頭部MRIにて右前頭側頭葉を中心に広範なT2強調画像の高信号域をみとめた.脳血管造影検査で主要血管は正常であった.Mass effectを呈する画像所見から神経膠腫を鑑別に挙げたが血清,髄液梅毒検査が陽性であり,神経梅毒と診断した.ペニシリン静注にて治療を開始したが,肝障害のため,エリスロマイシンに変更した.2ヵ月間の治療後も認知機能は改善しなかった.経過中に施行した4回の頭部MRIにて,右側優位の進行性高度大脳萎縮を呈した.これらの所見よりLissauer型進行麻痺と診断した.経時的な脳萎縮の進行を確認しえた貴重な症例と考え報告する.
  • 竹島 愼一, 竹田 育子, 小畠 敬太郎, 山下 徹, 阿部 康二, 栗山 勝
    2015 年 55 巻 4 号 p. 243-247
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性である.50歳で運動緩慢が出現し,抗パーキンソン病薬を投与し,レボドパ最高800 mgの投与をおこなった.反応はあるが,感受性は悪く,満足ある効果はなかった.脳MRIで小脳虫部と半球の萎縮,脳SPECTで両側頭頂葉血流低下,心筋シンチグラフィーで集積低下,DATスキャンで線条体への左右差のある中等度集積低下をみとめた.母親は純粋型小脳失調を示し,パーキンソン症状はなった.母親の同胞2名は多系統萎縮症(multiple system atrophy; MSA-C)と進行性核上性麻痺の臨床診断であった.患者,母親,母親の兄(MSA-C)3名の遺伝子検査でspinocerebellar ataxia type 6(SCA6)と診断した.小脳失調はみとめず,パーキンソン症状のSCA6は非常にまれである.
  • 高下 純平, 林田 翔太郎, 今木 裕幸, 光尾 邦彦
    2015 年 55 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.2013年8月下旬にマダニ咬傷を受傷.同年10月中旬から40°C台の発熱が出現し,下旬より,左眼中心視野障害,左末梢性顔面神経麻痺をみとめ,当科入院.入院時神経学的所見で,左末梢性顔面神経麻痺,左眼中心暗点,左上下肢失調,体幹失調をみとめた.血液検査で炎症反応と髄液検査で軽度の細胞数増多をみとめた.頭部MRIは異常なく,眼底所見にて左視神経乳頭炎が示唆された.抗菌薬,ステロイドパルス療法で加療し,後日血清抗ボレリアIgG抗体陽性が判明し,神経ボレリア症と診断した.原因不明の視神経乳頭炎において,顔面神経麻痺などの神経合併症を有するばあいには,神経ボレリア症を考慮する必要がある.
  • 板谷 一宏, 井上 学, 岩波 弘明, 大中 洋平, 自見 隆弘, 市川 博雄
    2015 年 55 巻 4 号 p. 254-258
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性である.無症候性高CK血症で12年の経過の後に筋力低下が出現した.臨床診断は肢体型筋ジストロフィーであったが,骨格筋MRIで異常信号域をみとめたことから筋生検をおこなった.筋病理は壊死性ミオパチーであり,抗signal recognition particle(SRP)抗体を測定し陽性が判明した.副腎皮質ステロイドに加え免疫グロブリン大量静注療法をおこない,筋力の改善がえられた.遺伝性筋疾患がうたがわれる症例の中に,本例のごとく免疫療法が適応となる抗SRP抗体陽性ミオパチーが潜在している可能性があり注意する必要がある.
短報
  • 眞野 智生, 仁紫 了爾, 小林 洋介, 松尾 幸治, 小林 靖, 筧 昭夫
    2015 年 55 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)患者40名(男26,女14;年齢70.4 ± 7.6歳)と健常者17名を対象とし,歩行機能をMDS-UPDRS,Timed up & go test,5 feet walk test,6 minutes-walk testにて測定し,姿勢異常をスマートフォンのアプリケーションをもちいて前傾姿勢(FF)と側屈姿勢(LF)に分けて測定した.PD患者は健常者にくらべ,歩行機能の低下と姿勢角度の拡大をみとめた.FFと年齢,LFと経過年数は単変量解析にて相関関係をみとめ,LFはすくみ足の重症度とも関連した.しかし,多変量解析では,すくみ足への姿勢角度の関与はFFとLFの両者ともに示されなかった.
  • 小仲 邦, 望月 秀樹
    2015 年 55 巻 4 号 p. 263-265
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    音楽家におけるジストニアは動作特異性ジストニアの一つとして知られる.長年同じ演奏動作をくりかえすことで生じるとされるが,その実態の詳細は明らかではない.また疾病が社会的に周知されていないことから患者自身が医療機関を受診していない可能性も考えられる.われわれは音楽大学の学生を対象として音楽家におけるジストニアについてはじめてアンケート調査を施行した.480名の対象者のうち本疾病を認識している学生は29%であった.1.25%の学生において演奏時にジストニアが出現するとの回答がえられた.
  • 澤村 正典, 當間 圭一郎, 垂髪 祐樹, 関谷 智子, 西中 和人, 宇高 不可思
    2015 年 55 巻 4 号 p. 266-268
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.2010年に陰部むずむず感が生じた.2013年より歩行障害・易転倒性が進行し,パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)と診断した.クロナゼパム,プラミペキソールにより陰部むずむず感は改善した.Persistent genital arousal disorder(PGAD)は性的欲求とは無関係に陰部感覚の高ぶりや苦痛を生じる病態であり,レストレスレッグ症候群(restless legs syndrome; RLS)を高頻度に合併し,クロナゼパムが有効である.そのためRLSと共通の病態が想定され,restless genital syndrome(RGS)という概念が提唱されている.本例はPGAD/RGSで発症したPDのはじめての報告である.
Letters to the Editor
Reply from the Author
地方会抄録
会告
編集後記
feedback
Top