臨床神経学
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56 巻, 1 号
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症例報告
  • 吉田 健二, 白田 明子, 佐藤 拓, 岸田 悠吾, 齋藤 清, 山根 清美
    2016 年 56 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性である.2か月の経過で出現・進行した,左眼窩部痛および頭痛,複視,左眼瞼下垂を主訴に来院した.左視力低下,左眼瞼下垂,左眼内外転障害を認め,不全型左眼窩先端症候群であった.頭部MRIで左眼窩円錐部に異常信号を認め,血清β-Dグルカンが上昇,血清アスペルギルス抗原とアスペルギルス抗体がともに陽性であった.抗真菌薬を開始したが症状が進行しため視神経管開放術とステロイドパルス療法を施行すると,症状は徐々に改善.同部位の病理標本からアスペルギルス菌体を検出した.アスペルギルス感染症に伴う眼窩先端症候群に対して視神経管開放術を施行し,失明を免れ眼球運動も回復した稀な症例であり報告する.
  • 安藤 利奈, 永井 将弘, 岩城 寛尚, 矢部 勇人, 西川 典子, 野元 正弘
    2016 年 56 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.2008年より両足底部異常感覚が出現.2010年頃より徐々に失調性歩行障害,体幹失調,両下肢筋力低下も認め,2013年には独歩困難に至った.2014年より認知機能が亜急性に悪化.神経学的所見,認知機能は評価困難だったが,腱反射は下肢で消失,Babinski反射は両側陽性だった.頭部MRI拡散強調画像で広範囲に大脳皮質の高信号域,遺伝子検査でP102L変異を認めGerstmann-Sträussler-Scheinker(GSS)病と診断した.GSS病は9割が歩行障害等の小脳症状で発症する.本症例は下肢異常感覚で発症し,経過中に小脳症状を認めた.発症6年後に認知機能が低下したことから初めて診断に至った.
  • 沖 良祐, 内野 彰子, 和泉 唯信, 小川 博久, 村山 繁雄, 梶 龍兒
    2016 年 56 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は死亡時74歳の男性である.小児期の急性灰白髄炎罹患後に左下肢麻痺が残存した.60歳頃より四肢筋力低下,72歳頃より呼吸機能障害・嚥下障害が進行し,発症約14年後に死亡した.神経病理学的には脊髄にポリオ後遺症と思われるplaque-like lesionのほか,脊髄全長にわたりグリオーシスを伴う前角細胞脱落を認めたが,Bunina小体やユビキチン・TDP43陽性封入体などamyotrophic lateral sclerosis(ALS)に特徴的とされる構造物は認めなかった.ポストポリオ症候群は稀に呼吸機能障害や嚥下障害が急速に進行して致死的となる場合があり,これらの病理所見はポストポリオ症候群による運動麻痺の進行と関連していると考えられた.
  • 中村 祐貴, 松谷 学, 池田 和奈, 津田 玲子, 有吉 直充, 下濱 俊
    2016 年 56 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    約40年の慢性の飲酒歴を背景に,神経症状および脳MRIからMarchiafava-Bignami disease(MBD)と診断した1例を報告した.拡散強調画像では脳梁膨大部と両側中心前回に高信号を呈しており,脳梁膨大部ではADCが軽度高値であった.ビタミン剤の投与により画像変化は消失し,臨床的にも症状の改善を得た.従来,脳梁病変は細胞傷害性浮腫に起因した脱髄と壊死が主病態であると考えられていたが,より発症早期には血管原性浮腫の関与が示唆され,病態像の理解に重要と考え報告した.
  • Nobuhito Nakajima, Tsutomu Igarashi, Chiemi Yaguchi, Masayuki Ueda
    2016 年 56 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    Abstract: Here, we present a case of right eyelid drooping in a 79-year-old man. Neurological examination revealed ptosis of the right eye without severe painful eyelid swelling and redness. An ocular motility examination of the right eye revealed upward limitation and downward overshoot. The results of routine blood examinations were within normal limits, and no autoantibodies were detected. Orbital magnetic resonance images revealed mild right eyelid swelling and lacrimal gland enlargement, indicating orbital inflammation. The ocular discharge was positive for Staphylococcus hominis by culture and the patient was diagnosed as having acute dacryoadenitis. Treatment with topical and systemic administration of antibiotics rapidly improved symptoms. Ocular infection is not usually suspected in the absence of local severe painful swelling and redness, and painless acute dacryoadenitis presenting as ophthalmoplegia and ptosis may be misdiagnosed. Orbital inflammation may rapidly progress to orbital cellulitis with treatment delay, which may also lead to aggravation of ophthalmic prognosis. Therefore, neurologists should be aware of the possibility of acute dacryoadenitis occurring without the local severe inflammatory findings mimicking neurological diseases, and acute dacryoadenitis should be considered in patients with ophthalmoplegia even in the absence of severe painful eyelid swelling and redness.
  • 井汲 一尋, 横井 克典, 安藤 哲朗
    2016 年 56 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    電子付録
    症例は72歳女性である.2型糖尿病で通院治療中であった.7年前に左肺多発結節影があり精査するも診断に至らず経過観察で縮小した.その後呼吸器症状もなく安定していたが,5ヶ月の経過で認知機能障害と歩行障害が進行し入院し,クリプトコッカス髄膜脳炎と診断された.両足趾右優位にアテトーシス様の不随意運動を認めた.不随意運動はpainful legs and moving toesに極めて類似していたが,疼痛は全くなかった.クリプトコッカス髄膜脳炎で認知機能障害,不随意運動の改善過程を観察した報告は稀であり,貴重な症例であると考えられたため報告する.
  • 池田 茜, 池上 眞由美, 谷 淳至, 加治屋 より子, 梅原 藤雄
    2016 年 56 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.既往歴:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫.主訴:両側眼瞼下垂.来院時,両側眼瞼下垂,正中視で右眼球の軽度外側偏倚,左側方視時に右眼の軽度内転障害を認めたが,内眼筋麻痺やその他の眼球運動障害は認めなかった.MRIで中脳に異常信号を認め,同部位に一致してFDG-PETで異常集積を認めた.髄液細胞診で異型リンパ球を認め,悪性リンパ腫の中枢神経再発と診断した.本例の眼症状の責任病巣は両側のpartial fascicular oculomotor paresisと推定した.中脳病変による動眼神経麻痺の場合,眼瞼下垂が主で内眼筋・外眼筋麻痺を伴わない場合があり注意が必要である.
  • 上田 雅道, 上田 美紀, 竹内 有子, 落合 淳, 馬渕 千之, 服部 新之助
    2016 年 56 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性である.6週間にわたり間欠的に出現する両下肢脱力と残尿感があったが歩行障害が増悪したため当院を受診した.対麻痺と下肢にビリビリとした異常感覚,排尿障害を呈していた.MRIではT2強調像で胸腰髄の腫大,Th3のレベルから脊髄円錐に高信号域,造影T1強調像で脊髄前方に異常血管を認めた.血管造影検査で右椎骨動脈と右上行咽頭動脈からの流入動脈と脊髄前面を下降する流出静脈を認め,右頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻と診断した.動静脈瘻遮断術により症候と画像所見の改善を認めた.胸髄以下のレベルに病変を呈する頭蓋頸椎移行部硬膜動静脈瘻は稀であり報告する.
  • 志賀 裕二, 金谷 雄平, 河野 龍平, 竹島 慎一, 下江 豊, 栗山 勝
    2016 年 56 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.主訴は過眠症状と食欲不振.糖尿病性腎症の加療中で透析は未導入.高血圧は治療中で安定し変動はない.神経学的他覚所見異常なし.クレアチン3.7 mg/dlの腎不全で,軽度の低Naと低K血症を認めた.頭部MRI画像で中脳背側,視床内側,視床下部に血管浮腫性のposterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)を認めた.電解質と脱水の補正を行い,症状とMRI病変は改善したが,MRI病変は3ヵ月後も残存した.髄液オレキシンが低値を示し,半年後に改善した.非典型の脳幹型PRESを示し,視床下部を障害した尿毒症性脳症と考えられた.
短報
  • 廣瀬 昂彦, 中嶋 秀人, 重清 太郎, 横手 耐治, 石田 志門, 木村 文治
    2016 年 56 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/29
    [早期公開] 公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.右動眼神経単麻痺の自然回復直後に右側の外転神経,三叉神経,舌咽神・迷走神経の障害が出現.一般血液検査に異常なく抗ガングリオシド抗体陰性.髄液蛋白51 mg/dl軽度上昇も細胞診陰性で頭部MRI,MRAに異常なかった.自己免疫機序による多発脳神経麻痺を考えステロイド,IVIG施行したが効果なく,扁桃と頸部リンパ節が腫脹し,MRIで右眼窩下神経の肥厚,海綿静脈洞と脳神経の濃染が出現.扁桃生検でB細胞性悪性リンパ腫と診断した.本例の多発脳神経麻痺は海綿静脈洞部位から脳幹表層に沿った悪性リンパ腫の直接浸潤が原因と考えられ,自然軽快と再発を呈した貴重な症例と考えられた.
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