臨床神経学
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58 巻, 12 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 三本 博, 齋藤 豊和
    2018 年 58 巻 12 号 p. 729-736
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    現在,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)の治療には2種類の薬剤が使用されているが,さらに効果的な治療が必要である.そのためには,臨床的な治療効果判定を補助する信頼性の高いバイオマーカー(biomarker; BM)の開発が必須である.神経生理学的BMと神経画像法BMはALSの疾患を理解する上で重要で,興味を引くものの,BMとしては高価であり,さらに充分なる研究が要求される.一方,体液を使用するBMにはクレアチニン(creatinine; Crn),尿酸(uric acid; UA),2種のニューロフラメント(pNF-HとNFL)があり,共にALSの進行を示唆する可能性が報告されている.CrnとUAは安価であり,またNFは多くの研究室でも研究可能なので,今後,臨床治療試験などあらゆる機会においてこれらの更なる信頼性が研究されるべきである.

症例報告
短報
  • 松田 希, 小林 俊輔, 宇川 義一
    2018 年 58 巻 12 号 p. 756-760
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は経過12年のパーキンソン病の77歳男性.発症4年後から絵画制作に没頭し,作品展を開催するまで上達した.しかし,発症11年後から人の顔を描く際に執拗に修正するようになり画風が変化した.当初の絵画制作への没頭は衝動制御障害(impulse control disorder; ICD)に起因し,後の画風変化はICDの増悪に加えて,運動性保続など前頭葉機能障害の関与も疑われた.

  • 菊本 舞, 野中 恵, 竹下 潤, 大下 智彦, 山下 拓史
    2018 年 58 巻 12 号 p. 761-763
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は91歳女性である.90歳時に右眼の視力低下が出現し,右視神経炎と診断された.その3ヶ月後に左視神経炎を発症したが,いずれもステロイドパルス療法で改善した.91歳時に左上下肢の筋力低下が出現し,MRIで頸髄に4椎体にわたるT2強調画像の高信号病変をみとめ,ステロイドパルス療法により筋力は改善した.血清抗アクアポリン4抗体が陽性であり,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica; NMO)と診断した.その後も約1年の経過で脊髄炎は1回,視神経炎は3回も再発した.NMOは90歳以降でも発症することがあり注意が必要である.

  • 菅原 夢穂, 小野 南月, 森下 英理子, 髙島 洋
    2018 年 58 巻 12 号 p. 764-766
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は31歳男性.7か月前に前医で脳静脈血栓症と診断された.右顔面,右手のしびれ,構音障害が出現し救急搬送された.頭部MRVで上矢状静脈洞・皮質静脈の描出不良が認められ,脳静脈血栓症の再発と診断した.血液検査でプロテインC抗原量65%,プロテインC活性40%と低下しており,遺伝子検査でプロテインC遺伝子エクソン9にc.811C>T,p.Arg271Trp変異が認められ,先天性プロテインC欠乏症が原因と考えられた.若年発症や既往歴・家族歴がある場合,誘因となる疾患や内服歴がない場合に発症した脳静脈血栓症では先天性血栓性素因を疑い,血液検査や遺伝子検査を行う必要がある.

  • 足立 洋, 井出 裕季子, 高橋 利幸, 米田 行宏, 影山 恭史
    2018 年 58 巻 12 号 p. 767-770
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は27歳男性.頭痛,発熱,失語,全身痙攣が出現し入院した.髄液細胞数増多(205/μl)と蛋白上昇(84 mg/dl)を認め,頭部MRIでは左大脳半球の皮質が腫脹し,FLAIR高信号域を呈していた.MRAでは左中大脳動脈が拡張していた.入院後,精神運動興奮状態に至ったが,抗精神病薬,ステロイドパルス療法と経口ステロイド剤で加療し,神経症状は軽快し,第52病日に退院した.第86病日にはFLAIR高信号域も消失していた.血清抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性であったことから抗MOG抗体陽性の大脳皮質脳炎と診断した.抗アクアポリン4抗体と抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体抗体は陰性であった.発症8か月時点で再燃していない.原因不明の急性発症の大脳皮質脳炎では,抗MOG抗体が何らかの役割をもつ可能性が推察された.

  • 羽尾 曉人, 原 愛徒, 松田 俊一, 市川 靖充, 吉澤 利弘
    2018 年 58 巻 12 号 p. 771-774
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/21
    [早期公開] 公開日: 2018/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は,約2年前に単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis; HSE)に罹患歴のある64歳男性.重症肺炎による敗血症性ショックに続き,HSEの再発を来した.敗血症では,初期の炎症反応後に抗炎症反応が増幅して免疫が抑制される免疫麻痺と称する時期が存在し,この期間に単純ヘルペスウイルス等の潜在性感染ウイルスの再活性化を来しやすい.本例で重症感染症への罹患を契機にHSEの再発が惹起されたことは,これを裏付ける結果と考えた.HSEの既往がある症例の重症感染症罹患時には,数日遅れて潜在性ウイルスの再活性化による脳炎再発を来す可能性があることを念頭に慎重に治療経過を観察する必要があると考え報告した.

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