臨床神経学
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58 巻, 6 号
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原著
  • 竹丸 誠, 竹島 慎一, 原 直之, 姫野 隆洋, 志賀 裕二, 竹下 潤, 高松 和弘, 野村 栄一, 下江 豊, 栗山 勝
    2018 年 58 巻 6 号 p. 377-384
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome; RCVS)11例を報告する.男性2例,女性9例で平均年齢47.9 ± 14.1歳で若年者に多かった.雷鳴頭痛と言える強度の頭痛は64%,全身けいれん27%,運動麻痺36%であった.脳内病変の合併は,脳表限局のくも膜下出血63%,皮質下出血9%,可逆性後頭葉白質脳症45%で発症初期から認めた.脳梗塞は45%に,発症後1~3週間目頃に起った.脳血管攣縮は発症1ヶ月目頃から改善傾向を認めた.誘因は,産褥,片頭痛既往,輸血,急速な貧血改善,腎不全,入浴,脳血管解離の合併などが認められた.発症時の血圧異常高値を55%に認めたが,誘因なのかは確定的ではなかった.

症例報告
  • 志賀 裕二, 下江 豊, 千種 誠史, 楠 進, 森 雅裕, 栗山 勝
    2018 年 58 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は28歳の男性.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)感染後に四肢しびれ感,両手の脱力が出現し,末梢神経障害を認めた.血清IgM抗CMV抗体,IgM抗GM2,抗GalNAc-GD1a抗体が陽性で,脳脊髄液で蛋白細胞解離を認め,神経伝導検査で脱髄型ニューロパチーを示した.CMV感染後急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy; AIDP)と診断し,免疫グロブリン大量療法で軽快退院した.神経伝導検査は4ヶ月後に正常化した.CMV感染後AIDPで報告されているランビエ絞輪蛋白モエシンに対する抗体が治療前血清で陽性を示し,4ヶ月後,神経伝導検査が正常化するとともに同抗体が陰性化し,病態への関与が考えられた.

  • 松尾 欣哉, 古賀 道明, 本田 真也, 神田 隆
    2018 年 58 巻 6 号 p. 390-394
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    橋本脳症はステロイドが奏効する自己免疫性脳炎だが,近年ステロイド抵抗性で追加の免疫治療を要した報告が増えている.しかし追加の免疫治療には明確な方針が定まっていない.症例は3ヶ月の経過で認知機能が低下した69歳男性.頭部MRIでFLAIR高信号域が複数の血管領域に認めることから当初中枢神経血管炎を疑った.ステロイド治療に反応が乏しく,シクロホスファミド(cyclophosphamide; CPA)パルスを追加すると,速やかに認知機能は正常化しステロイド漸減後も再発はなかった.後日抗NAE抗体陽性が判明し橋本脳症と診断した.CPAパルスはステロイド抵抗性の橋本脳症に対する追加治療として有効な選択肢と考えられた.

短報
  • 仁科 拓也, 上森 麻美, 佐藤 智彦, 浅野 彰彦
    2018 年 58 巻 6 号 p. 395-398
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は52歳男性.44歳時に神経梅毒治療歴あり.3ヵ月前より持続する頭痛,記憶障害,発熱を訴え,左片麻痺を呈し頭部MRI拡散強調画像で右側頭葉に高吸収域を認めた.髄液検査で細胞数増加,梅毒検査陽性を認め神経梅毒再発と診断,Lissauer型進行麻痺と考えられた.梅毒抗体価が治療により低下しない例での再発,画像上脳血管障害類似の所見を呈すること等,神経梅毒の管理上の問題を痛感した1例であった.

  • 白石 朋敬, 仙石 錬平, 高梨 成彦, 渋川 茉莉, 金丸 和富, 村山 繁雄
    2018 年 58 巻 6 号 p. 399-402
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は86歳女性.約2週間の経過で全身の舞踏運動を呈し,左頭頂部に慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma; CSDH)を認めた.アマンタジン内服中止で舞踏運動は改善せず,穿頭術施行後,舞踏運動は約1週間で完全に消失した.既報告では,本症例のように一側の血腫で全身の舞踏運動を呈する例や,血種と同側のhemichoreaを呈する例もあり,その発症機序は不明である.CSDHによる不随意運動は稀であることから,これらの症例は大脳皮質-基底核回路に潜在的な障害を持っている可能性がある.CSDHによる舞踏運動では,背景に脳血管障害や舞踏運動に関連する薬剤歴,家族歴などがないか検索する必要があると考えられた.

  • 大久保 芳彦, 上田 優樹, 田口 丈士, 加藤 陽久, 赫 寛雄, 相澤 仁志
    2018 年 58 巻 6 号 p. 403-406
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は67歳女性である.急性発症の激しい頭痛と左下肢筋力低下を主訴に前医を受診し,頭部MRI・FLAIR画像で右頭頂葉のくも膜下腔に高信号域を認め,くも膜下出血を疑い同日緊急入院となった.脳血管造影で動脈瘤や異常血管を認めず,髄液検査で単核球優位の細胞増加を認めたため髄膜炎が疑われ当院へ転院となった.転院後の髄液検体から異型細胞(Class V)が検出され,上部消化管内視鏡検査にて組織生検で印環細胞癌を認めたことから髄膜癌腫症と診断した.急性発症の頭痛をきたし頭部MRI・FLAIR画像でくも膜下腔に高信号病変を認めた場合,髄膜癌腫症も考慮する必要があると考えられた.

  • 廣瀬 文吾, 久原 真, 上杉 春雄, 曽根 淳, 祖父江 元, 下濱 俊
    2018 年 58 巻 6 号 p. 407-410
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は70歳の男性,10年前より原因不明の尿閉,4年前より認知機能低下,1年前より視力障害が進行した.頭部MRI拡散強調画像で皮質下皮髄境界に弧状の高信号を,皮膚生検で神経核内封入体を認めたため神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)と診断した.神経伝導検査では軽度の伝導速度低下を,下肢体性感覚誘発電位では早期皮質潜時の延長が見られた.視力低下の原因精査で行った網膜電図では錐体応答優位に振幅低下を認めていた.これらの所見は他に明らかな原因がなくNIIDに伴う異常と考えられた.視力低下は臨床徴候として知られておらず詳細な文献的考察は少ない.症例の集積が必要であると考えられる.

  • 津田 曜, 小栗 卓也, 櫻井 圭太, 渡邉 督, 前田 永子, 湯浅 浩之
    2018 年 58 巻 6 号 p. 411-413
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    80歳女性.多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis; GPA)の経過中に頭痛が出現.頭部MRI上,トルコ鞍部に辺縁に造影効果をともなう占拠性病変を認めた.当初GPAの下垂体病変を疑ったが,以前のMRIでラトケ囊胞を認めたことから,囊胞内に生じた膿瘍も考えられた.経蝶形骨洞手術により病変は膿瘍をともなう黄色肉芽腫と診断され,ラトケ囊胞に膿瘍を形成し黄色肉芽腫が生じたと判断.術後,頭痛は軽快した.ラトケ囊胞と黄色肉芽腫の併存は以前から報告されているが,経時的変化を確認できた報告は本例がはじめてである.トルコ鞍部占拠性病変の鑑別診断上,以前からラトケ囊胞が存在する場合,膿瘍をともなう黄色肉芽腫も考慮すべきと考えられた.

  • 月田 和人, 三宅 啓史, 景山 卓, 末長 敏彦
    2018 年 58 巻 6 号 p. 414-417
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    [早期公開] 公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

    症例は49歳女性である.2007年に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)と診断され治療中であった.2015年7月上旬,左上肢から左体幹部,左下肢へと広がる数分の異常感覚発作を繰り返し緊急入院した.他覚的には左手の皮質性感覚障害のみ認めた.頭部MRIでは,造影fluid-attenuated inversion recovery(FLAIR)像でのみ,右中心後回周囲も含み右半球に広範に髄膜の異常造影効果を認めた.異常感覚発作は,神経精神SLE(neuropsychiatric SLE; NPSLE)による中心後回周囲の髄膜炎が原因と考え,プレドニゾロンを増量し,症状と造影FLAIR像での異常造影効果は消失した.NPSLEなど髄膜に炎症をきたしうる病態では,造影剤漏出の少ない軽微な髄膜炎の検出に優れた,造影FLAIR像を積極的に撮像するべきと考えられた.

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