臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
59 巻, 7 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 井 建一朗, 岡崎 周平, 井上 学, 三輪 佳織, 古賀 政利, 豊田 一則, 猪原 匡史
    2019 年 59 巻 7 号 p. 399-404
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は質問票を用いてmodified Rankin Scale(mRS)を評価する日本語版簡易mRS質問票(Japanese version of simplified modified Rankin Scale Questionnaire; J-RASQ)を開発し,信頼性について前向き観察研究による評価を行った.【方法】2017年8月から2018年3月までに急性期脳卒中で国立循環器病研究センターに入院し,3か月後に外来を受診した全患者を対象とした.患者もしくは家族にJ-RASQを配布し回答を得た.診察時に専門医が盲検的にmRSを評価し一致率を評価した.【結果】合計130例が登録され,κ係数は0.42,重み付けκ係数は0.78であった.【結論】J-RASQは一定の信頼性があり,mRSの簡便な評価法として有用である.

  • 正高 佑志, 池田 徳典, 安東 由喜雄
    2019 年 59 巻 7 号 p. 405-411
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.

症例報告
  • 下園 孝治, 田場 正直, 花木 祥二朗
    2019 年 59 巻 7 号 p. 412-417
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    53歳の高血圧症の男性が心肺停止となり,蘇生処置で30分後に自己心拍が再開したが,昏睡は持続し心停止後症候群と診断した.第6病日の脳波は,一側性周期性放電(lateralized periodic discharges; LPDs)からelectrographic seizureへの進展パターンを,約15分間に10回繰り返すcyclic seizure patternであった.ジアゼパム10 mgの静注で背景活動のみとなった後に,再びLPDsへと変化した.抗てんかん薬を調整し,第11病日に開眼し意識改善傾向となった以降は良好な回復で第30病日に退院した.

  • 中屋 亮彦, 蛯谷 征弘, 門前 達哉, 長野 拓郎, 齋藤 太, 矢尾板 裕之
    2019 年 59 巻 7 号 p. 418-424
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    症例は,喫煙歴,高血圧症,糖尿病,脂質異常症のいずれもない76歳の男性.2010年に慢性骨髄性白血病に対しニロチニブの内服を開始した.2017年9月に右不全片麻痺が出現し,左中大脳動脈境界領域の新規脳梗塞と両側の頸部内頸動脈の狭窄を認めた.ニロチニブをボスチニブへ変更し,クロピドグレルの内服を開始した.12月に同部位に脳梗塞を再発し,両側の内頸動脈は更に狭窄しており血管内治療を要した.近年,チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosin kinase inhibitor; TKI)内服中に重度の動脈狭窄を呈し脳梗塞を発症したとの報告が散見される.TKIの内服歴がある患者が脳梗塞を発症した場合は血管イベントリスクが乏しくても,画像検査による慎重な経過観察を行う必要があると考えた.

  • 山中 治郎, 橋本 修治, 末長 敏彦
    2019 年 59 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    発熱を伴う意識障害中にてんかん重積状態を来した76歳男性.向反発作に続く全身痙攣を呈していた.発作時脳波は左中心頭頂部から始まる速波律動であった.発作間欠時には両側前頭部にてんかん性異常波を認めた.拡散強調画像で両側前頭葉と左頭頂葉の皮髄境界部に高信号域があり皮膚生検で好酸性核内封入体を認めた.本例では意識障害が先行しその後に全身痙攣が出現したこと,及び,拡散強調画像での高信号域近傍にてんかん性異常波を認め,同部近傍皮質の興奮性が高いと考えられたことが特徴的であった.本疾患でみられる脳炎様病態の一部には,てんかんやその他の病態が関与している可能性があると考え,若干の考察を加えた.

  • 勇 亜衣子, 内山 純花, 島岡 雄一, 鈴木 重明, 河内 泉, 藤田 信也
    2019 年 59 巻 7 号 p. 431-435
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    症例は,53歳男性.肺扁平上皮癌に対しニボルマブ投与を開始して約1ヶ月後に,日内変動を伴う眼瞼下垂や球症状などの重症筋無力症(myasthenia gravis; MG)症状と高CK血症(5,266 IU/l)をきたし,免疫関連有害事象(immune-related adverse event; irAE)と診断した.抗AChR抗体は陰性で,四肢筋力低下はなかったが,抗横紋筋抗体の抗titin抗体が陽性で,筋生検で筋線維の壊死と再生,炎症細胞浸潤を伴う壊死性ミオパチーの所見を認めた.ステロイド治療で速やかにCKは正常化し,症状も寛解した.神経系のirAEではMG症状で発症する筋炎が報告されているが,本症例は抗横紋筋抗体陽性で,筋生検でミオパチーの存在を確認した貴重な症例である.

  • 藤野 雄三, 齋藤 光象, 前園 恵子, 笠井 高士, 水野 敏樹
    2019 年 59 巻 7 号 p. 436-441
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    症例は54歳男性.入院10日前から複視が,9日前から左眼瞼下垂が出現した.入院時は高度の左眼瞼下垂と全方向性の左眼球運動制限を認めた.頭部MRIで左側頭頭頂部に造影効果を伴う硬膜肥厚を認めた.全身CTで右顎下腺腫瘤,びまん性甲状腺腫,肺門部リンパ節腫脹がみられた.血清IgG4が高値(240 mg/dl)であり,IgG4関連疾患を考慮したが,顎下腺腫瘤の病理所見で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,サルコイドーシスが示唆された.肥厚性硬膜炎の背景疾患の検索においては,特に本症例のように高IgG4血症を呈する場合,慎重な病理学的診断が重要であり鑑別に留意する必要がある.

  • 猪奥 徹也, 今井 啓輔, 濱中 正嗣, 五影 昌弘, 傳 和眞, 山本 敦史, 為野 仁輔, 山本 聡
    2019 年 59 巻 7 号 p. 442-447
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.数年前より易怒性が出現し,某日夜間に左上下肢より始まる全身痙攣で救急搬送.頭部MRI-FLAIRにて右側頭極,両側扁桃体・海馬,右島皮質の異常高信号があり,頸部腫瘍の存在から傍腫瘍性辺縁系脳炎と診断した.抗てんかん薬にて鎮痙し第20病日に退院した.頸部腫瘍はリンパ節生検結果より転移性の神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma; NEC)と考えられていたが,第325病日目の頸部郭清術後に顎下腺由来の頸部原発NECと診断された.死亡後に血清抗amphiphysin抗体が陽性と判明した.頸部原発NECも傍腫瘍性辺縁系脳炎をきたしうる.

短報
  • 葛目 大輔, 森本 優子, 金星 匡人, 吉田 剛, 山崎 正博
    2019 年 59 巻 7 号 p. 448-450
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/31
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    症例は39歳男性.生来健康.2018年12月初旬,発熱,意識障害が出現し,当院に搬送された.神経学的所見では意識障害,項部硬直,Kernig徴候を認めた.髄液検査で細胞数1,012/μl(多核球96%),蛋白147.3 mg/dl,糖44 mg/dl,Gram染色でGram陽性球菌を認めた.細菌性髄膜炎と診断し,各種抗菌薬を開始した.髄液培養及び血液培養からStrptococcus agalactieS. agalactiae)が検出された.抗菌薬治療により,第18病日に後遺症なく当院を退院した.健常成人発症のS. agalactiae髄膜炎は稀であり,これを報告する.

地方会抄録
会告
編集後記
feedback
Top