73歳女性.夜間睡眠中の大声の寝言や日中覚醒時の異常言動,会話中に急に反応が乏しくなるエピソードが月単位で相次いで出現.他院にてレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies,以下DLBと略記)と診断されるも,これらの頻度が徐々に増加したため,当院にて精査入院.終夜睡眠ポリグラフィの“筋活動の低下を伴わないレム睡眠”および18F-FDG PETの辺縁系糖代謝亢進より,レム睡眠行動異常症を合併した辺縁系脳炎と診断.ステロイドパルス療法2コース実施後,症状は徐々に軽減した.本例は後に血清抗voltage-gated potassium channel(VGKC)複合体/leucine-rich glioma-inactivated protein 1(LGI1)抗体陽性が判明した.本抗体関連辺縁系脳炎は臨床像がDLBに重なることがあり,診断に際し注意が必要である.
症例は54歳女性.2015年11月に急性型成人T細胞白血病(adult T cell leukemia,以下ATLと略記)を発症し,翌年3月に同種造血幹細胞移植を受けた.2019年5月に急激に認知機能障害が出現し,頭部MRIで大脳白質病変を認めた.髄液検査では蛋白の上昇を認めた.脳生検ではCD8陽性のT細胞を主体とする炎症細胞が白質へ浸潤していた.肺・腸管の慢性移植片対宿主病(graft versus host disease,以下GVHDと略記)の既往と病理所見から慢性GVHDの中枢神経病変(central nervous system involvement of GVHD,以下CNS-GVHDと略記)と診断した.ステロイドとミコフェノール酸モフェチルによる免疫療法を行い,認知機能障害と髄液所見の改善を得た.本症例はATLにおけるCNS-GVHDの初の報告であり,脳生検による診断の重要性と免疫療法の有効性を示した.