日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第6回大会
選択された号の論文の132件中51~100を表示しています
ポスター発表1:記憶
  • 関口 理久子
    セッションID: P1-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    本研究では、自伝的エピソード記憶検査(TEMPau)について、仏語オリジナル版著者の許諾の元で日本語版作成を試みることを目的とした。この検査は、5つの時期(幼年期から思春期、青年期、成人期、最近5年間、最近12ヶ月)・4つの主題についてのエピソードについて尋ねるだけでなく、想起時の視点(視野/観察者)と自己認識的意識(Remember;R/Know;K)について尋ね、それらを得点化するものであった。時期ごとにエピソード性、視野視点の回答数、何・どこ・いつについて尋ねたときのR反応数を計測し、それらを従属変数、時期を独立変数とする分散分析を行った結果、エピソード性では時期の主効果に有意な傾向が認められ、視野視点とR反応数では有意な時期の主効果が認められた。エピソード性については明確な時期による差は認められないにもかかわらず、視野視点では、最近12ヶ月が成人期より有意に視野視点が多く、R反応数は、幼年期から思春期が他のすべての時期に比べて反応が少ないことが示された。
  • 仁平 義明, 佐藤 拓, 菊地 史倫, 川嶋 伸佳
    セッションID: P1-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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     別な誰かが行ったことなのに自分が行ったことだと記憶している現象(取りこみ記憶)と、自分が行ったことを他者が行ったことだと記憶していたりする現象(押しつけ記憶)について検討した。押しつけ記憶あるいは取りこみ記憶の経験がある大学生について調査が行われた。本人の評定では、押しつけ記憶は、取りこみ記憶に比べて有意に「恥ずかしさ」の感情を喚起する出来事だと評定された。他方、取りこみ記憶は押しつけ記憶に比べて、「社会的望ましさ」が高い出来事だと評定された。しかし、記憶の鮮明度、出来事の重要度、記憶の確信度については、二種類の記憶の間の違いはなかった。また、取り込み記憶と押しつけ記憶は、肉親とそれ以外という人間関係による違いはみられなかった。こうした帰属の歪曲の傾向は、記憶システムが自己システムとむすびついており、記憶が自己維持機能を有していることを示唆している。
  • -想起の視点についての検討-
    川平 杏子, 厳島 行雄
    セッションID: P1-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    過去の出来事を想起する際,出来事を経験したそのままの視点で想起する場合 (field memory) と,実際には経験したはずのない自分自身をも含んだ視点で想起する場合 (observer memory) があるとされている (Nigro & Neisser, 1983)。本研究では,この想起の視点について,無意図的想起でどのように表われるのかについて検討した。89名 (20代~80代) の男女に日誌法を用いた自伝的記憶の無意図的想起の報告を求めた。その結果,field視点よりもobserver視点のほうが多く報告された。特により最近起こった出来事が想起された場合にobserver視点で想起したという報告が多くみられた。さらに,出来事の情動性や日常性などについてそれぞれの視点の表われ方を検討した。
  • 後藤 靖宏
    セッションID: P1-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    有意味線画と無意味線画を材料とし,材料への自己参照的処理が潜在記憶に及ぼす効果について検討した.線画の白黒面積比の大小評定(表層的処理課題)もしくは線画に対する好悪評定(自己参照的処理課題)のどちらかを行わせた後,線画の意味の有無を判断する課題を行わせた.線画の意味の有無を判断する際の平均反応時間を条件ごとに分析した結果,どの条件下においても,旧項目の線画の方が新項目の線画よりも反応時間が短いという結果が得られた.さらに無意味線画において,旧項目の線画の場合で自己参照的処理を行った方が表層的処理を行ったよりも反応時間が短いという結果が得られた.線画の意味の有無に関わらず反応時間にプライミング効果が見られたことから,線画が潜在記憶として処理されたと考えられた.また,無意味線画における自己参照効果が得られたことから,非言語情報の潜在記憶においても自己参照効果が得られる可能性があるということが示唆された.
  • -意味処理とJOLにおける適合性の差違-
    藤田 哲也
    セッションID: P1-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    メタ記憶研究の一つに,既に学習した項目に対して,後の記憶テストで思い出せるかどうかを参加者が予測判断する,JOL(judgments of learning; 既学習判断)がある。JOLは一般にメタ記憶の正確さの指標として研究がなされているが本研究では観点を変え,JOLを符号化の一種として捉え,処理水準の枠組みで自由再生における記憶成績について検討した。これまでの研究で,符号化時にJOLを行うと,再生成績は意味処理と同等になり,JOLによって「思い出せる」と判断された項目の再生率は「思い出せない」項目よりも高いが,意味処理を受けた場合には,方向付け課題の質問に対する回答の諾否によって成績は異ならないという分離も見られることが明らかになっている。本研究ではメタ記憶判断(JOL)がどのような情報に基づいて行われているのかを検討するために,意味処理判断を行った後に続けてJOLを求め,意味的方向付け質問およびJOLに対してYesと回答するかNoと回答するかによって項目を分類し,再生率を比較した。
  • 高橋 真衣子, 厳島 行雄
    セッションID: P1-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    リスト法の指示忘却課題とは,第1リスト学習後に,第1リストも第2リストも記銘するよう,または,第1リストは練習であったため,それを忘却するよう教示が与えられる。そして,第2リストの学習後,2つのリストの再生課題を行うと,第1リストに関しては,忘却条件のほうが記銘条件の再生成績よりも悪くなるという結果と,第2リストに関しては,記銘条件よりも忘却条件の再生成績がよくなるという結果が得られている。これらを合わせて指示忘却効果と呼ぶ。本研究では,前述した指示忘却課題を用い,単一カテゴリーリストを用いた場合に指示忘却効果が見られるかどうかを検討した。実験参加者は台所用品リストまたは楽器リストのどちらかを学習した。その結果,第1リストに関して,記銘群よりも忘却群の再生成績が悪く,第2リストに関しては,記銘群と忘却群の再生成績に差は見られなかった。
  • 刺激文とターゲット語の意味的関連性の影響
    田中 哲平, 齊藤 智, TOWSE John, N.
    セッションID: P1-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    ワーキングメモリ(WM)課題では処理と保持が同時に要求されるため、理論的モデルでは両者の関係が検討対象とされてきた。Towse, Cowan, Hitch, & Horton(2008)はリーディングスパン課題(RST)を用い、処理された文の表象が記銘単語の再生手がかりとなると仮定している(再生再構成仮説)。RSTがWM容量の測定を目的としている一方、リーディングピリオド課題(RPT)では記銘単語の数を変えずに刺激文の量を操作し、WMの耐久性を測定している。本研究では再生再構成仮説を直接的に検討する為に刺激文と記銘単語の意味的関連性を操作したRPTを用いて単語を系列再生させた。その結果、リストの第1番目の単語において意味的関連性が高い条件が低い条件よりも成績が高かった。この事から再生時にはターゲット語の表象だけではなく、処理された文の表象を手がかりとして単語が再生されている事が示唆された。
  • 森田 泰介
    セッションID: P1-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    予定に関する記憶の表象がどのように構造化されているのかを明らかにするため,予定の記憶を意図的に想起する際の想起順序を規定する要因に関する検討を行った.将来においてしなければならない予定を,頭に浮かぶ順に最大10件まで報告するように求めた後,それらの予定の実行時期及び重要度について実験参加者に評定するよう求めた.想起された予定の間の実行時期及び重要度における類似性について分析した結果,想起された予定とその直後に想起された予定との間には予定の実行時期及び重要度において相関関係が見られることが示された.特に,重要度において類似した予定が続いて想起されやすいことが示唆されたことから,予定に関する記憶の表象の構造化が,予定の重要度に基づいて行われていることが考察された.
  • 遅延時間を入れた場合
    佐々木 尚
    セッションID: P1-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    本研究の目的は,単語の自由再生,順唱,逆唱において学習フェーズと再生フェーズ間に遅延時間を設けた場合,初頭効果と新近性効果に対して作動記憶容量の個人差が果たす役割を検討することであった。作動記憶容量は単語スパンテストとリスニングスパンテストによって測定された。また,遅延時間は,漢字テストによって生み出された。この実験の結果,新近性効果に対するリスニングスパンテストの予測力は有意ではないことがわかった。代わりに,順唱条件においてリスニングスパンテストと初頭効果は負の相関関係を持つことがわかった。この結果は,低い制御機能を持つ被験者は強い初頭効果を持つことを示唆した。
  • 伊藤 美加
    セッションID: P1-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    感情が記憶の促進過程あるいは抑制過程に及ぼす影響について,感情語を記銘材料に指示忘却パラダイムを用いて検討した。実験参加者に第1リストと第2リストの項目を学習させた後,自由再生を求めた場合,第1リストの記憶成績がRemember条件の方がForget条件よりもよい,第2リストの記憶成績がForget条件の方がRemember条件よりもよいという,典型的に認められる記銘材料に対する忘却教示の効果において,ポジティブ-ネガティブという感情価の違いが認められるかについて,実験的に吟味した。先行研究の知見に基づき,(a)Remember条件とForget条件に加えControl条件を設定し比較すること,(b)list提示とitem提示とを比較することとを目的とした。
  • 嶺本 和沙, 吉川 左紀子
    セッションID: P1-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    順応効果とプライミング効果はともに,先行刺激が後続刺激に及ぼす影響に関わる現象である。両者は異なる効果を示すが,順応効果の研究に比べ,表情を刺激としたプライミング効果の研究は少なく結果も一貫していない。本研究では表情画像を用い,先行する表情の知覚が後続の表情認知に及ぼす影響を検討した。プライム刺激(怒り表情・幸福表情・モザイク画像)を提示した後,ターゲット(怒り表情・幸福表情;プライム刺激と異なる人物)を提示し,参加者はターゲットが怒りか幸福かを素早く正確に判断した。その結果,怒り表情では幸福プライムによる促進効果がみられたが怒りプライムでは統制条件と差がなかった。また幸福表情では,怒りプライム,幸福プライムは統制条件と比べて反応時間が早く,怒りと幸福に差はなかった。これらの結果から,表情刺激を用いたプライミング課題では促進効果はみられず,順応効果と類似の抑制効果がみられることが示された。
  • 山本 晃輔, 森田 泰介
    セッションID: P1-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    本研究では,におい手がかりによるマインドワンダリングに及ぼす想起意図の効果を検討した。24名が参加した実験では,中断報告法が用いられ,想起の意図を付与する群とそうではない群とのマインドワンダリングの生起頻度が調べられた。その結果,過去の記憶や未来の記憶等のマインドワンダリングには想起意図の効果がみられたが,においに関する事象のマインドワンダリングのみにおいて想起意図の効果がみられなかった。
  • 日常記憶に基づく検討
    三浦 大志, 伊東 裕司
    セッションID: P1-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    アナグラムなどの認知的課題を行った直後に単語の再認判断を求めると「old」と判断されやすい(revelation effect)。本研究では、実際の経験に基づくブランド名の、時間判断を含む再認判断(高校時代に知っていたかどうか、など)におけるrevelation effectについて検討した。その結果、被験者間比較で効果が見られることが示された(実験1)。また、old項目、new項目(問われた期間以降に現れたブランド名)、lure項目(実在しないブランド名)に分けて効果を検討したところ、new項目、lure項目においてrevelation effectが見られる、すなわちFA率が高くなることが示された(実験2)。これらの結果から、revelation effectは記憶検索時にrecollectionではなくfamiliarityに依存した場合に生じやすいことが示唆された。
  • 月元 敬, 山田 陽平
    セッションID: P1-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    記憶情報の一部を思い出すことによって、その後の検索機会において、関連情報が思い出しにくくなることが示されている。この現象は検索誘導性忘却(retrieval-induced forgetting)と呼ばれ、これまでに多くの実験的検討がなされている(Anderson, Bjork, & Bjork, 1994; 月元・川口, 2004)。本研究の目的は、検索誘導性忘却を“記憶の歪み”の一種と捉えることによって、従来の言語刺激において見られる離散的な忘却ではなく、検索行為によって生じる“連続量としての記憶情報の歪み”について検討することである。本発表では、RGB値で規定された色を刺激とし、グラデーション・パレットによる色生成課題を用いた実験について報告する。
  • ―嘘の方略が記憶のリハーサルに及ぼす抑制効果の検討―
    田中 未央, 厳島 行雄
    セッションID: P1-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    嘘がその後の記憶を抑制する要因として1)リハーサルの抑制,2)検索抑制忘却,3)ソースモニタリングの失敗の3つの可能性が示されている(Christianson & Bylin, 1999)。本研究では嘘をつくとオリジナル記憶のリハーサルが抑制されるか否かを検討することを目的とした。本実験では,ビデオ刺激を使用して以下の3条件を比較した。_丸1_ビデオについて嘘をついた後の記憶,_丸2_ビデオについて正確に想起させた後の記憶,_丸3_ビデオについての想起を行わなかった後の記憶の3条件であった。その結果,ビデオについて嘘をついた場合とビデオについての想起を行わなかった場合の記憶成績は,ビデオについて正確に想起した場合の記憶よりも有意に悪く,嘘をつくとオリジナル記憶のリハーサルが妨害される可能性が示唆された。
  • 話し合いの方略と協同促進・協同抑制現象
    佐藤 浩一, 猿山 恵未
    セッションID: P1-23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    3人一組の集団が協同想起を行う際に,集団としての話し合いの方略が及ぼす影響を検討した。促進教示群の集団には,曖昧な情報や部分的な再生であっても話し合いに持ち出すように,教示を与えた。抑制教示群の集団には,曖昧な情報や部分的な再生は他者を妨害するので発言しないように,教示を与えた。質問紙への評定ならびに発言の分析から,メンバーは各々の教示に従った話し合いを行っていたことが確認された。個人再生からの予測値と比較すると,促進教示群では協同再生が予測値よりも高い促進現象が見出された。これに対して抑制教示群では,協同再生が予測値よりも低い抑制現象が見出された。また成績に関わりなく,協同での再生は個々人での再生よりも肯定的に評価されることが多く,協同作業を現実以上に好ましく捉える"romance of teams"現象が見られた。
  • 漁田 武雄, 漁田 俊子
    セッションID: P1-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    BGMの熟知性(既知,未知)×文脈(同文脈,異文脈)の4群に,大学生96名をランダムに割り当てた。各大学生は個別に実験参加した。教示につづいて,24個の漢字2文字熟語を,4個ずつ6回に分けて,各々30秒間コンピュータ画面に提示した。大学生は4つの熟語を用いた文を作成し,口頭報告した。作文の際に,各条件に対応するBGMを流した。作文が終わるとBGMを止め,コンピュータ画面に背を向けさせた。そして連続加算課題を5分間行わせた。つづいて,作文で使用した熟語の自由再生を行わせた。その際,SC条件では作文時と同じBGM,DC条件では作文とは,同じ熟知性で異なるBGMを流した。総再生数および,各熟語群からの第1反応数のいずれにおいても,文脈の主効果のみが有意で,熟知性の主効果と交互作用は有意でなかった。以上,これまで未知楽曲でのみ報告されていたBGM文脈依存効果が,既知楽曲でも生じることを見いだした。
  • 内田 明, 漁田 武雄
    セッションID: P1-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    同一文脈下で学習を反復する条件(same-context repetition, SCR)と異なる文脈下で学習を反復する条件(different-context repetition, DCR)との間で,対連合学習成績を比較した。第1・第2セッションでは文脈AもしくはBの下で,イタリア語とその日本語の翻訳語の対連合の意図学習を2回行った。第3セッションでは,中立な文脈Nの下で筆記再生テストを行った。実験1では,大学の40名規模の教室(集団)と個別実験用のブース(個別)とで文脈操作し,反復間隔が1週間で,31名の大学生が参加した。実験2では,大学の教室(集団)か実験参加者の自宅(個別)とで文脈操作し,反復間隔が1日間で,実験1と重複しない37名の大学生が参加した。実験1では条件間に差は見られなかった。実験2では,DCR条件がSCR条件よりも有意に成績が良かった。
ポスター発表2:知覚・認知・身体・運動
  • -その2:ブロック間配置による検討-
    水野 りか, 松井 孝雄
    セッションID: P2-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    水野・松井 (2007) は注意の瞬き (AB) 実験の報告率が2標的間の注意切り替えの困難度を反映する第2標的への単純RTと有意な負の相関をすることを示し,注意切り替えの困難度がABに影響している可能性を示した。一方,松井・水野 (2006) は文字マッチング実験で一般的なブロック内配置では注意切り替えの困難度の影響が大きいがブロック間配置はそれがほとんどないことを見出した。そこで本研究では水野・松井 (2007) の実験をブロック間配置で実施し,注意切り替えの困難度の単純RTと報告率への影響やそれを排除した際の両者の関係を検討した。その結果,ABは大幅に減少したが依然としてlagの短い時の方が長い時よりも報告率は低くかつ単純RTは長く,両者に負の相関があった。この結果から,ABには注意切り替えの困難度が関与していることは確かだが,それ以外の要因も関与していると結論された。
  • 松井 孝雄, 水野 りか
    セッションID: P2-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    2つの刺激を呈示し第2刺激への反応時間を測定する実験において刺激間間隔(ISI)をブロック内でランダムに配置される要因にすると、短いISIの試行に対する反応時間が増大する効果があることがこれまでの実験で示されている。本研究ではISIが50ms刻みで0-250ms、100ms刻みで0-500ms、200ms刻みで0-1000msの3条件を比較し、ISIの範囲がこの効果におよぼす影響を検討した。その結果、1)効果の大きさはISIの絶対値ではなくISIが範囲全体の中でどこに位置するかによっておおむね決まること、2)しかしISIが小さいときの効果は範囲が広いほうが大きいことが示された。この結果は、被験者がISIの分布をもとにある範囲の予期を構成しているために、第2刺激がその予期よりも早く現れるほど効果が大きくなるのだと考えれば説明できる。
  • 小野 史典, 内田 雄介, 北澤 茂
    セッションID: P2-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    視覚刺激が移動中に変化(フラッシュ)した場合,知覚される変化位置は刺激の運動方向にシフトする。また,急速な眼球運動(サッカード)の直前に呈示された刺激の位置はサッカードの方向にシフトして知覚される。本研究では,これまで別々に調べられてきた運動刺激による定位誤りとサッカードによる定位誤りの関係を明らかにするために,高速で運動する視覚刺激をサッカードを用いて見たときの定位誤りを調べた。視角90°のスクリーン上を水平方向に高速運動(250°/s)する視覚刺激の色を運動中に変化させた。実験参加者は視覚刺激の色が変化した位置を回答した。実験の結果,運動刺激をサッカードを用いて見たときの定位誤りのシフト量は,先行研究で見られた運動刺激とサッカードのそれぞれの要因で生起するシフト量の総和よりも大きかった。この結果は,視覚刺激の位置知覚に運動刺激と眼球運動が相乗的に作用して影響を与えることを示している。
  • ―ドット・プローブ課題を用いた検討―
    海老原 優, 北村 英哉
    セッションID: P2-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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     状況を実験的に操作し、その状況に対応した情報とそうでない情報を同時に呈示情報としたときに、それに付随して状況に対応した情報への選択的注意が生じるかどうかをドット・プローブ課題によって検討した。相互作用予期状況は、相互作用相手と会話を行なう会話条件と推理課題を共に行なう推理課題条件、ドット・プローブ課題の先行刺激語は、会話条件に対応する対人的側面関連語と推理課題条件に対応する能力的側面関連語、先行刺激の呈示時間は50msと100msであった。3要因の混合分散分析結果、相互作用予期状況×先行刺激に有意な交互作用効果(F(1,31)=4.62,p<.05)が認められた。また、推理課題条件において先行刺激に有意な単純主効果が確認され、仮説通り、能力的側面関連語で反応が促進された(F(1,31)=12.68,p<.01)。
  • 石井 紀之
    セッションID: P2-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    固執とは先行した行動や思考を反復することである。本研究では、2肢選択課題において先行試行と同じキーによって反応が行われた場合と、異なるキーで反応が行われた場合の反応時間の差(スイッチコスト)を反応固執と定義した。また2種類の2肢選択課題を切り替えながら遂行する場合に生じるスイッチコストをセット固執と定義した。これらのパフォーマンス間の関連、経時的・通状況的一貫性を調べ、認知的特性の個人差指標としての機能性について検討した。再テスト法による固執パフォーマンスの信頼性を調べたところ、反応固執パフォーマンスについては経時的に一貫性のある指標であることが示された。固執を軽減させることが示されている、ポジティブ感情操作条件下での測定を行ったところ、反応固執パフォーマンスは非操作条件下と個人内で一貫した傾向を示した。以上の結果から反応固執パフォーマンスについては信頼性の高い指標であることが示唆された。
  • ―ストループ効果と逆ストループ効果の競合―
    芦高 勇気, 嶋田 博行
    セッションID: P2-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    管理コントロール機能にとって処理のinterruptionは重要であるが、従来十分に研究が行われていなかった。この機能を探求するための新しい実験パラダイム(ストループ課題における外因的手がかりに基づく選択反応)を提出した。手がかりは音による手がかりであり、相対的に高い音の場合は、リーディング、低い音の場合は、ネーミングで毎回選択反応を行った。この逆のマッピングの場合も用意した。手がかりとターゲットのSOAは-150、-50、+50、+150m秒の4条件であり、interruptionに関係していた。その結果ストループ効果と逆ストループ効果の競合を得た。つまり、反応モード(リーディングvs.ネーミング)は有意ではなく、SOAと一致性が有意な主効果をもった。ストループ干渉と逆ストループ干渉量はほぼ同じ量であり、しかもリーディングにおける不一致試行のRTはネーミングのRTとほとんど同じであった。
  • ―11肢強制選択による色見本の命名―
    金敷 大之
    セッションID: P2-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    本研究は,昨年の発表に引き続き,色見本に対する色名の命名課題の調査結果を発表する。追加調査により,総計94名の参加者が,202色の色見本に対して,命名を行った。その結果,いわゆる暖色系の色については,個々人の命名のばらつきが大きかった。
  • 京屋 郁子
    セッションID: P2-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    本研究は、カテゴリに特異な特徴がカテゴリ化に影響を与えるのか、またいかに与えるのかを検討した。事例は長方形の縦と横の長さを変化させたもので、縦長か横長かでカテゴリ判断が可能な2カテゴリであった。それぞれのカテゴリは6事例からなり、そのうち1事例のみには色をつけ、それ以外の5事例には色をつけなかった。1事例のみにつけた色は、他方のカテゴリの1事例につけた色とは異なる色であった。すなわち、色自体はカテゴリ判断の手がかりとはなり得ないが、それぞれのカテゴリに特異な色を付随させた。このような各カテゴリ6事例、2カテゴリあわせて12事例を用いてカテゴリ学習を行い、学習事例も含めた転移テストを行って、カテゴリ化における各カテゴリに付随させた特異な特徴の影響を検証した。
  • 塩田 真友子, 堀内 孝
    セッションID: P2-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,人物認識における顔と名前の処理について検討するため,判断対象人物の親近性を操作した実験を行なった。具体的には,親近性の高い人物(友人),低い人物(有名人)を自己と比較することにより,それらの人物に対する反応時間に親近性が及ぼす影響を検討した。実験計画は,刺激人物4(自己,友人,女性有名人,男性有名人)×刺激の種類(顔,名前)の2要因実験参加者内計画であった。32名(女性16名,男性16名)の大学生が実験に参加した。実験参加者の課題は提示された刺激に対する性別判断を行うことであり,その判断に要する反応時間を測定した。その結果,刺激人物の主効果のみが有意であり,自己に対する反応時間が最も短く,次いで友人,有名人の順に短くなった。この結果より,親近性が高いほど反応時間が短くなること,顔だけでなく名前についても自己に関する反応時間が最も短いことが示された。
  • 倒立呈示による影響
    小松 佐穂子, 箱田 裕司
    セッションID: P2-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,選択的注意課題を用いて,表情認知と人物認知間の関係について検討を行うことを目的とした。これまでの研究において,表情認知過程と人物認知過程の間には,表情情報は人物認知に干渉しないが,人物情報は表情認知に干渉するという非対称的な関係が存在することが明らかになっている。そこで本研究では,呈示される顔刺激を倒立させることによって,顔の全体的情報の利用を困難にし,両過程間の干渉がどのように変化するのかについて検討した。実験の結果,正立呈示時に見られていた表情認知に与える人物情報の干渉が消失した。この結果から,表情認知に干渉していた人物情報は,部分的な情報ではなく顔の全体的情報によるものと考えられる。
  • 検証課題での検討
    遠藤 光男
    セッションID: P2-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    視覚刺激が最初に認識されるカテゴリーレベルをエントリーポイントという。通常のエントリーポイントは基礎レベルのカテゴリーであるが、顔のように熟達したパターン認識が行われている場合、エントリーポイントが下位レベルに移行すると言われている。今回は、顔認識過程のエントリーポイントについて、カテゴリー検証課題を用いて検討することを試みた。
  • 松川 真弓, 須藤 昇
    セッションID: P2-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    顔の記憶には,符号化時と検索時の処理が深く関連しているとされる.Macrae & Lewis(2002)は,ターゲットの学習後にNavon(1977)図形の文字判断課題を行ったところ,グローバル文字回答群のターゲットの再認成績が,ローカル文字回答群より有意に高いという結果を得た.本研究では,記憶の検索過程に直接関連する課題によって先行する課題が検索過程に与える効果を検討した.ターゲットを学習した後,半数ターゲットに対する再認テストを行った.先行課題では,顔刺激全体を提示して再認を行う群とターゲットの一部のみを提示して再認を行う群,統制群を設けた.その結果,再認手掛かり条件間に再認成績の差は見られなかったが,先行課題で未提示のターゲットに対する成績が低かった.本実験の結果では,先行課題の経験は先行課題で検索されなかったターゲットに対して妨害的な効果を生じ,このような特性の課題経験が顔の記憶に対する検索誘導性の干渉を及ぼす可能性が示唆された
  • 武藤 沙羅, 松香 敏彦
    セッションID: P2-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    R. Plomら(1965)は質問紙法を用いて、1オクターブ間における代表的な整数比の和音に対する不協和曲線を発表した。彼らの不協和曲線は、現代も多くの音楽実験などにおいて参照され、協和・不協和を定量的に論じる基礎となっている。本研究は、既存の不協和曲線が数値計算で出されたこと、発表以降の音楽の多様化などから、実測値を用いた再検証を試みた。  本実験では、先行研究で使用された「心地いい-心地悪い」に加え19種の形容詞対を使用し、被験者の複数の和音に対する印象を集計した。 その結果、「心地いい-心地悪い」においては先行研究とほぼ一致した値が得られた。 また、複数の形容詞を用いたことによって、多面的な協・不協和音の性質の考案や、不協和曲線の見直し、新しい解釈の可能性を示すことができた。
  • 宮原 道子
    セッションID: P2-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    無関連な聴覚刺激による課題遂行への妨害効果は,聴覚刺激の種類と課題の内容の組み合わせによって異なる(レビューとしてBeaman, 2004).また,人は聴覚刺激に対して自分がどのように感じ,対応しているかについてある程度一貫した認知を持つ(宮原,2007).ところが,聴覚刺激の提示による遂行成績の変化に対するメタ認知はあまり正確なものではない(宮原,2002など).本研究では,テキストの記憶に対する妨害効果の有無が確認された4種類の聴覚刺激(日本語/外国語/ピンクノイズ/オフィスノイズ)を提示して,記憶課題を行う際の妨害効果の大きさを予測させた.被験者は95名であり,集団実験であった.4種類の聴覚刺激による妨害の予測評定値を用いて1要因分散分析を行ったところ,有意差は得られなかった.この結果から,被験者は課題遂行によってメタ認知を修正していることが示唆された.
  • 室井 みや, 金井 智之
    セッションID: P2-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    中途失明者の点字習得を困難にする要因の1つが、隣に位置するマスの点字であると言われている。点字習得の困難さに影響を与える要因について検討するため、点字未習得の大学生を対象に、点字のマス間の距離が点字の触覚による同定のしやすさに与える影響について検討した。その結果、マス間の距離を広げると、正答率には差が見られなかったが、同定にかかる時間が短くなった。このことから、初期の学習者において、マス間の距離を広げることが学習を容易にする可能性があるといえる。
  • 円グラフの「手前」効果
    上田 卓司, 安田 孝
    セッションID: P2-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    三次元化されたグラフがどの程度に読み取りを困難にさせるかという点については経験的な検討が十分ではなく,また,読み取りにおける情報処理過程についても十分な考察が進んでいない.本研究では円グラフを例に取り,グラフの読み取り精度について検討した.三次元化された円グラフについては「手前側」に配置されたデータ領域の誤差が大きくなるという知見がRangecroft(2003)により出されているが,この「手前」効果を検討するために,指定されたグラフ領域に対応する比率を推定させる読み取り課題を実施した.実験の結果,三次元グラフの読み取りにおける「手前」配置の影響は顕著ではなかった,また,この結果はグラフ読み取りのについての「アンカーモデル」三次元円グラフにおいても適用可能であること示唆するものである.
  • 柴田 寛, 日高 聡太, 行場 次朗, 今泉 修, 松江 克彦
    セッションID: P2-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    一人の人間が物体を手渡し、もう一人の人間がその物体を受け取る動作の適切さを評価しているときの脳活動をfMRIによって調べた。実験参加者は二人の人間によって行われる受け渡し動作を観察して、受け取り動作の適切さを判断した。観察する視点(受け取り側もしくは手渡し側)と受け取り動作の適切さ(適切もしくは不適切な受け取り動作)を操作した。その結果、受け取り側の視点で適切な受け取り動作を観察しているときはミラーニューロンシステムに関連する脳領域(下前頭回や上側頭溝)などが賦活し、一方で手渡し側の視点で不適切な受け取り動作を観察しているときは下前頭回やエラーモニタリングに関与する前部帯状皮質などが賦活した。これらの結果は協同動作の適切さを理解する処理が視点の違いによって異なることを示している。
  • 日高 聡太, 永井 聖剛, 行場 次朗
    セッションID: P2-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    仮現運動知覚は後続刺激の提示後に成立するが,時空間的に後続する運動表象形成過程が時空間一貫性のある運動知覚の成立にいかに寄与するかわかっていない.本研究では,運動系列が時空間的な逆行を含む事態で生じる仮現運動知覚を調べた.5点間仮現運動系列の第4,第5刺激の時空間的な順序が先行系列と逆行する場面では,両刺激間で先行系列と一致した方向知覚が生じた.この現象は,第4刺激の色が他の刺激と必ず異なる事態や第4刺激の垂直位置がランダムに変化する事態,2刺激に先行する系列が1刺激(3点間運動)の事態で生じた.逆行事態では非逆行事態よりも運動系列の知覚速度が速くなったため,第3,第5刺激間における時間間隔の符号化後に,第4,第5刺激間で方向知覚が形成されると考えられる.以上の知見は,運動処理の比較的初期の段階で,可塑性のある運動表象生成過程が,遡及的に時空間一貫性のある運動知覚を生み出すことを示唆する.
  • 藤木 晶子, 菱谷 晋介
    セッションID: P2-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    入力・テスト時に用いる感覚モダリティを一致させた視覚-視覚による空間記憶課題では,眼球運動がその情報の減衰を止めるリハーサル機能を果たしており,入力時とテスト時に身体感覚を用いた課題においては,身体運動がそのリハーサルに関与していることが明らかにされている(藤木・菱谷,2006,2007)。このことから空間情報のリハーサルには,眼球運動が関与する視覚系と身体運動が関与する身体感覚系の2つのシステムが存在する可能性が考えられる。そこで,本研究では,入力した情報を他の感覚モダリティに変換する必要のある視覚-身体感覚によるクロスモダルな空間記憶課題を用いた場合,その情報の保持に,眼球運動と身体運動が関与する各リハーサルシステムがどのように関与しているのかを検討した。
  • 北守 昭
    セッションID: P2-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
     歩行時において、視覚情報をどのように知覚し、記銘しているかに関する実験的研究は歩行距離、歩行範囲等の統制上の困難さから、検索上でもあまり見当たらない。しかし、ヒトは歩行を通して様々な知覚情報を入手し、記銘して、適応上の問題として、事実、生活しているわけであるから、ヒトの歩行と知覚、記憶は切り離して考えることは出来ない。従って、今後、歩行時における知覚、記憶の心理学的メカニズムを明らかにしていく必要があるだろう。  著者は、歩行時における記憶、すなわち、Walking memory に関する実験的研究を行ってきた。研究方法、並びにその結果については、第4回、第5回日本認知心理学会において報告した。今報告では、歩行時における記憶実験の方法と研究の方向性について課題提示したい。
  • 工藤 智美, 原島 雅之, 須藤 昇
    セッションID: P2-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    未来に課される課題の所要時間の予測は、直前の遂行課題の情報(所要時間・難易度)に影響を受けると言われてきた(Thomas, Newstead, & Handley, 2003)。しかし先行研究で用いた課題は難易度と所要時間が交絡しているため、厳密に各要因の効果について検討できていない。本研究では難易度と所要時間の交絡を排除した単純加算繰り返し課題(数字加算課題)を用い、先行課題の難易度が後続課題の所要時間予測に与える影響を検討した。先行―後続課題間の難易度変化条件を2種類設定(高→低/低→高)し、各課題に対し時間予測と所要時間の計測を行った。結果、先行―後続課題間の難易度変化は認知されたが、予測時間は課題に対して一定であり、これは難易度変化の種類を問わず確認された。直前に行った課題と類似した枠組みで捉えられる課題の予測時間作成時には、難易度情報は直接的な影響を持たない可能性が示唆される。
ポスター発表3:加齢・支援・感情
  • 9ヵ月後の得点変化
    佐久間 尚子, 大神 優子, 呉田 陽一, 伏見 貴夫, 藤原 佳典, 新開 省二, 本間 昭
    セッションID: P3-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    健常高齢者の記憶能力の加齢変化を検討する目的で,日本版RBMTの物語の記憶課題の並行版を用いて2回の直後と遅延の再生成績を比較した。地域住民を対象とする追跡研究において2回目(約9ヵ月後)の認知機能検査を受けた281名に対し、短い物語を読んで聞かせ口頭再生を求めた。年齢群を中年(65歳未満),高齢前期(65‐69歳),高齢中期(70‐74歳),高齢後期(75歳以上)に分けて正答率を比較した。どの年齢群も直後再生(全平均13.3)より遅延再生(全平均12.1)の正答率が低く,年齢群の差は高齢前期以前と高齢中期以後で認められた。直後再生では1回目と2回目の得点に差がなかったが、遅延再生では2回目に上昇し、1回目の検査経験が保持方略に影響することが示唆された。物語のあらすじとなる主要情報と周辺情報に分けて得点を比較したところ、いずれも年齢差が認められた。
  • 文脈の分析から
    大神 優子, 佐久間 尚子, 呉田 陽一, 伏見 貴夫, 藤原 佳典, 新開 省二, 本間 昭
    セッションID: P3-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    健常高齢者の物語の記憶では、加齢に伴い、緩やかに再生成績が低下する(佐久間ら、2006; 2008)。この再生量以外に、内容の理解にも加齢の影響があるかを調べた。地域住民を対象とする調査の参加者281名に対し、日本版RBMTの記憶の物語課題を聞かせ、口頭で再生(直後・遅延)を求めた。年齢群を中年(65歳未満)、高齢前期(65-69歳)、高齢中期(70-74歳)、高齢後期(75歳以上)に分けて、再生内容について、結末と文脈の2側面から比較した。どの年齢群でも結末が欠落または変容する人の割合は、直後再生・遅延再生とも低く(直後0~14.1%、遅延0~12.7%)、年齢群の差は認められなかった。結末までの経過を含めた文脈でも変容が生じる人の割合は比較的低かった。高齢者では、物語全体の再生量は減少しても、内容の変容は少ないことが示唆された。
  • 意図の想起の経時的変化と関連要因の検討
    黒川 育代, 増本 康平, 上野 大介, 権藤 恭之, 藤田 綾子
    セッションID: P3-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    展望的記憶の遂行には、予定内容の記憶だけでなく、何かするべきことがあるという意図の想起が重要である。これまで加齢が展望的記憶に及ぼす影響を検討した研究は数多く報告されているが、日常生活場面における意図の想起に加齢が及ぼす影響を検討したものは少ない。そこで本研究では、高齢者の意図の想起の経時的変化を検討し、年齢、回想的記憶能力、メタ認知的要因、自身の記憶に対する潜在的態度と意図の想起の関連性を検討することを目的とした。実験では、60代23名、70代17名に、3日後の約束した時刻に実験者に電話をかけるように求め、対象者の意図の想起回数とその想起した時刻を測定した。実験の結果、年代を問わず、遂行時刻が近づくにつれて意図の想起回数に有意な上昇が確認された。また、その上昇には自己の記憶に対する潜在的な自信が大きく関与していることが示された。
  • 言語的知識の影響について
    伊集院 睦雄, 近藤 公久, 島内 晶, 佐藤 眞一
    セッションID: P3-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    高齢者では若年者に比べてTOT現象の頻出することが知られており,その原因としてi) 加齢により語の検索機能がうまく働かなくなるというdecrement viewと,ii) 高齢者は単に語彙が豊富なためTOT状態に陥りやすいとするincremental-knowledge viewが提唱されている.本研究ではii) に注目し,同じ高齢者でも語彙数の違いにより,TOTの生起数に差が認められるか否かを検討した.健常高齢者をWAIS IIIの単語課題素点で二群(高語彙群15名,低語彙群15名)に分け,絵(高頻度語160枚,低頻度語160枚)の命名課題を実施し,TOTの生起数を比較した結果,対象者の語彙数の多さはTOTの生成数を増加させないが,語彙数の多い対象者のみ,単語の頻度が高い場合にTOTの生成数が減少した.本結果は,高齢者でTOTが増加する現象をincremental-knowledge viewでは単純に説明できないことを示唆する.
  • 野畑 友恵, 箱田 裕司, 二瀬 由理
    セッションID: P3-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,快感情と不快感情が有効視野の変化に及ぼす影響に違いについて明らかにすることを目的とした。実験では写真刺激を用いて感情を喚起した。実験参加者の課題は,写真刺激が提示された後,パソコン画面の中心に提示されるアルファベットの弁別課題を行いながら,画面の四隅のいずれかに提示される数字を同定することであった。実験の結果,不快感情を喚起した場合は数字の同定率が低下したが,快感情を喚起した場合はそのような影響はみられなかった。このことから,不快感情が喚起されると有効視野が狭まるために,数字を同定しにくくなったことが示唆された。
  • 山田 祐樹, 河邉 隆寛
    セッションID: P3-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    我々の時間の感覚は我々がそのとき抱いている情動によって変化する.本研究は,無意識的に呈示された情動刺激が,それとは非関連な刺激に対する時間知覚に影響するかどうかを調べた.被験者は実体鏡を通して画面を観察し,片方の目には情動刺激 (快,不快および中性画像) を,もう片方の目には同じ位置に一定間隔で連続して変化するモンドリアン刺激を呈示した.連続的なモンドリアン刺激の変化は感情刺激を意識から取り除いた.また,モンドリアン刺激の周辺には白色の枠線が2700 msec呈示された.被験者はこの枠線の呈示時間を,後に呈示される同一の刺激の呈示時間を調整することで再生することを求められた.その結果,再生された時間は,不快刺激が呈示された場合の方が快刺激の場合よりも有意に長くなった.この結果は,無意識的な情動刺激が時間知覚に影響することを示唆する.
  • 布井 雅人, 吉川 左紀子
    セッションID: P3-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    処理水準のような主体的要因及び提示回数のような外的要因がそれぞれ好みの形成とどのように関わっているのか、日常物品の画像を用いて検討した。被験者はモニタ上に提示される日常物品画像に対して意味処理が必要とされる動詞生成課題、あるいはそれを必要としない位置判断課題のいずれかの水準の処理を行った後に、それぞれの物品に対する好ましさを9段階で評定した。また、判断課題の実施回数(画像提示回数)は1回・5回の2条件が設定され、それぞれに32名が参加した。実験の結果、意味処理が行われた物品はそれが行われなかった物品よりも好ましいと判断された。本実験より、対象に対してより深い処理を行うこと、すなわち対象の処理の仕方という主体的要因が好みの形成に影響することが示唆された。
  • 守谷 順, 丹野 義彦
    セッションID: P3-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    高不安者は注意の処理資源が多いというEysenckらのAttentional Control Theoryについて、大学生の高・低社会不安者を対象に知覚的負荷課題を用いて検証した。知覚的負荷が高まれば、注意資源容量が限界となり課題無関連刺激が処理されないと考えられ、低社会不安者は高負荷条件では課題無関連刺激を処理しなかったが、高社会不安者は高負荷条件でも処理した。この結果からでは、高社会不安者の注意制御困難性、または顕著性への敏感さにより、課題無関連刺激へ注意を向けていた可能性が考えられる。そこで、前者に対し注意の捕捉を利用してターゲットへと注意を向けさせ、後者に対しては課題無関連刺激をマスキングし顕著性を低下させた。その結果、どちらの実験でも低社会不安者が課題無関連刺激を処理しない知覚的負荷条件において、高社会不安者は処理していることが明らかとなった。以上より、本実験の結果は高社会不安者の注意資源容量の多さを反映していると考えられる。
  • 上田 彩子, 廼島 和彦, 村門 千恵
    セッションID: P3-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    主に顔の形態特徴の情報処理を基に行われる顔認知過程において, 表情情報が影響を及ぼすことは, 多くの研究で示されている. また, 表情認知に性差があることも示唆されている. 表情認知における性差が, 顔認知過程で表情が及ぼす影響に関与する可能性がある. そこで, 本研究では, 顔の印象決定において表情が及ぼす影響に性差が認められるかどうか実験的に検討した. 刺激の顔の形態変化にはメイク手法を用いた. 被験者は, 刺激の相貌印象と表情表出強度について評価を行った. その結果, 表情認知能力に性差は認められなかったが, 相貌印象判断に表情が与える影響は女性の方が大きいことが示された.
  • 竹原 卓真, 大坊 郁夫, 谷尻 豊寿
    セッションID: P3-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    従前の顔研究では刺激として2次元顔を用いてきたが、奥行情報がロスされるため、自然な顔であるとは言い難い。そこで本研究では、顔の3次元撮影を行い普段我々が目にする顔と極めて類似した3次元顔(無表情顔・喜び顔・怒り顔・驚き顔)をコンピュータ上で再現した。実験では顔を左右それぞれの水平方向に1,15,30,45,60,75,90度回転させ、14種類の刺激を作成した。被験者に無表情顔について魅力度評価を、感情表出顔についてそれぞれの感情強度評価を行なわせた。その結果、魅力度に対しては左右の向きに関係なく30,45,60度の顔が90度の顔よりも魅力的であると評価された。喜び顔に対しては右方向に回転した顔において60度を超えると感情強度が低下し、怒り顔に関しては左右の向きに関係なく30,45度の顔が90度の顔よりも怒り強度が高かった。逆に、驚き顔では左右の向きおよび角度による効果は検出されなかった。
  • 森 数馬, 中村 敏枝, 安田 晶子, 正田 悠
    セッションID: P3-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    音楽の印象における歌詞の影響を定量的に検討した研究は数少なく、これまでの研究では、歌詞における意味内容と声質や歌い方を混同して歌詞の影響を測っている。本研究は、歌詞の言語の意味内容が認知できない演奏音と文字で書かれたその歌詞の邦訳を用いることで歌詞における意味内容と声質や歌い方を区別し、歌詞の意味内容が演奏音の印象に影響を与えるかを定量的に検討することを目的として実験を行った。演奏音と歌詞の意味内容の印象がかけ離れた作品2つを刺激とし、同一の参加者が3条件(演奏音のみ呈示、歌詞のみ呈示、演奏音+歌詞呈示)で実験を行い印象を測定した。実験の結果、両作品において演奏音+歌詞の印象は、歌詞よりも演奏音に近い印象を示すという傾向があった。したがって、本研究で用いたような作品の印象において、歌詞の意味内容という論理情報が及ぼす影響は弱く、演奏音という感性情報が及ぼす影響が強いということが示唆された。
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