日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第13回大会
選択された号の論文の156件中101~150を表示しています
ポスターセッション2
  • 屋沢 萌, 上原 泉
    セッションID: P-2-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    自伝的記憶は、自己にとって重要な意味を持つ個人の経験に関する記憶であり、出来事の時間と場所といったエピソード記憶で扱う情報に自己に関連する情報を加えた記憶であると考えられている(Conway& Pleydell-Pearce,2000) 。本研究では出来事カテゴリ単語を自伝的記憶の想起の手がかりとして用いて、若年者の出来事に対する感情の特性、構造的内容の特性を調べ、自伝的記憶と自己はどう関連しているのか検討した。その結果、若年者は出来事カテゴリによって感情の特性・構造的内容の特性が異なることが示された。学校の出来事については時間的体制化によってネガティブ感情からポジティブ感情に変化しやすいことが示された。また、自己ふり返りを比較的多く行う失敗の出来事やありがたいと感じやすい成功/達成の出来事など自己の形成に繋がる出来事に関しては、他の出来事とは異なる捉え方をしていると考えられる。
  • 兵藤 宗吉, 李 岩
    セッションID: P-2-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    「教師」と「先輩後輩」と「中学校の教師」と「中学校の先輩後輩」を手がかり語として自伝的記憶を想起させ、想起された出来事の感情価を評価させた。また、出来事の鮮明度と懐かしさについても評定させた。結果から感情価が快の出来事が不快と中立の出来事より多想起された。Conwayのモデルに基づいて実験を行ったが部分的に支持する結果を得た。
  • 清水 優
    セッションID: P-2-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    人々は自伝的記憶をしばしば語り直すことをしている。本研究では,ネガティブな経験をポジティブに語り直すことが,記憶の内容と想起後の気分にどのような変化をもたらすか検討した。
    実験は4つのセッションに分かれていた。参加者(N=16)には,まず初めに原語りとして受験生活をテーマに,予備調査で選定した記憶概念の単語10個を使用しながら,自由に思い出を語ってもらった。その後,転換的語り直し条件(N=8)と単純反復再生条件(N=8)に分かれ,条件に従ってそれぞれ思い出を語ってもらい,それをもう一度繰り返した。そして最後に,その1週間後,先週話してもらった原語りの内容を再び記憶の概念を使いながら語ってもらった。
    その結果,転換的語り直しを行うことで,もとの記憶に対するポジティブな要素が増加することが分かった。また,単純反復群よりも転換的語り直し群の方が原語り再生時に気分変容が生じることが分かった。
  • 松本 昇, 越智 啓太
    セッションID: P-2-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究では,高思考抑制傾向者における自伝的記憶の具体性の減少を,検索誘導性忘却効果によって説明できるか否かについて検討した。参加者は思考抑制頻度をたずねる質問紙へ回答した後,ポジティブ,ネガティブそれぞれ2つずつのエピソードを視聴した。その後,その中の1つのエピソードについて1週間にわたって反すうをするように教示を受けた。1週間後,自由再生課題と手がかり再生課題を行った。その結果,思考抑制得点が高い者ほど,ネガティブエピソードを反すうした際に,ポジティブエピソードがより抑制されることが示された。この結果は,思考抑制とその逆説的効果として生じるネガティブ記憶の侵入,そして反すうを繰り返すことによって,具体的なポジティブ記憶へのアクセシビリティが低下する可能性を示している。
  • 堤 聖月
    セッションID: P-2-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究では、出来事の忘却に関する認識が記憶特性にどのような影響を与えるのか検討した。調査対象者は、高校時代の行事に関する出来事を1つ選び、その出来事そのものと想起時の記憶特性、その出来事を忘れることについてどのように感じるのかを評価した。分析の結果、忘却に関する認識は抵抗感と喪失感の2因子に分かれた。忘却に対して喪失感を抱いているほど、出来事の自己象徴性は高くなることが明らかになった。しかし、喪失感は出来事および想起時の感情価の良さに影響を与えていなかった。このことから出来事の忘却と自己の関連性を認識していても、必ずしも出来事そのものをポジティブなものとして捉えるわけではないことが示唆された。
  • 村島 楓, 箱田 裕司, 松浦 ひろみ
    セッションID: P-2-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    これまで、嗅覚における言語隠蔽効果の研究はほとんどなされておらず、伊東(2014)のみである。その研究では、一部のカテゴリー(「花」)のみこの効果が得られた。しかし、言語的遮蔽効果に影響を及ぼすことがすでに報告されている再認選択肢間の類似性(Kitagami, et al, 2002)が、伊東(2014)では統制されていなかった。本研究ではまず、熟知度と類似度を統制した刺激を用いて、嗅覚刺激において言語隠蔽効果が見られるかを検討した。その結果、言語隠蔽効果の有意傾向が認められた。ターゲット刺激とディストラクター刺激間の類似度別に分析した結果、類似度が高い時のみ言語隠蔽効果が見られた。以上から、嗅覚刺激を言語化することで再認記憶が阻害される傾向があること、特に刺激間の類似度が高い時にその効果が有意であることは、匂いの識別に適切なグローバル処理モードから言語化によるローカル処理モードへのシフトによって起こったと考えられる。
  • 伊藤 美加
    セッションID: P-2-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    指示忘却における抑制効果と促進効果とがどのように認められるのか,3リスト法を用いて検討した。実験参加者は,3種類の刺激リストを学習した。第1リスト提示後に「忘れろ」と忘却手がかりが提示され,残りのリストは「憶えろ」と記銘手がかりが提示されるFRR群,第2リスト提示後のみに忘却手がかりが提示されるRFR群,どのリスト提示後にも記銘手がかりが示されるRRR群のうち,いずれかの群に割り当てられた。リスト学習後,全ての刺激に対する再生テストが行われた。その結果,忘却手がかりが提示されたリストは記銘手がかりが提示されたリストよりも記憶成績が低くなるという抑制効果は認められたのに対し,促進効果は認められなかった。
  • 斎川 加奈恵, 仁平 義明
    セッションID: P-2-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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      本研究では,顔と よくある名前の対連合学習成績に,「似顔絵を描く」,「顔の特徴を言葉で表現する」などの,顔を記憶するための方法がどう影響するか検討した.実験では,「顔」写真とその下部に書かれた“よくある名前”を連合させて記憶する,3つの条件群が比較された。結果では,まず,似顔絵を描くと「氏&名」の正確な記憶をしないことが明らかになった。多重比較では,「似顔絵を描く」条件は「じーっとよく観察して記憶する」条件に比べて有意に記憶成績が低かった.似顔絵を描くことは,名前情報処理のための資源配分を減少させることになり,記憶成績を低下させると考えられた.さらに,似顔絵を描くことが氏名の記憶を阻害することを別な面から確認するために,似顔絵の上手さと氏名の記憶成績の関係が分析された.その結果,最後まで正しい氏名を想起できなかった刺激数(「無答数」)と上手さには,中程度の負の相関が見られた.
  • 佐藤 秀樹, 兼子 唯, 巣山 晴菜, 伊藤 理紗, 樋上 巧洋, 松元 智美, 鈴木 伸一
    セッションID: P-2-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,抑うつと刺激の感情価による検索誘導性忘却の差異を検討することであった。健康な大学生・大学院生37名を対象に,検索経験パラダイムと質問紙調査を実施した。検索経験パラダイムでは,条件ごとに正再生率を測定した。群,感情価,リストの種類の3要因分散分析の結果,交互作用は有意ではなかった。また,感情価ごとに群とリストの種類の2要因分散分析の結果,リストの種類の主効果は有意であり,ネガティブ刺激では検索誘導性忘却は生じなかったが,ニュートラル刺激では検索誘導性忘却が生じた。この結果から,検索誘導性忘却は抑うつの認知的反応として生じる可能性があることと,感情価によって検索誘導性忘却が示す抑制に差異が生じる可能性があることについて考察された。
  • 髙橋 純一, 平野 智久, 村井 諒平, 行場 次朗
    セッションID: P-2-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究では,視覚処理段階に着目して怒り顔/幸福顔優位効果の生起を検討した(研究1)。その知見を基にして,アレキシサイミアの表情認知特性を検討した(研究2)。研究1では,フリッカー法による検出課題と記憶課題を実施した。結果から,検出課題(視覚処理の初期段階)では怒り顔優位効果が見られ,記憶課題(視覚処理の後期段階)では幸福顔優位効果が見られた。研究2では,視覚探索課題と変化検出課題を実施した。結果から,アレキシサイミアの個人差は変化検出課題(視覚処理の後期段階)でのみ見られた。特に,アレキシサイミア傾向者は,幸福顔の記憶成績が低かった。視覚処理の初期段階(視覚探索課題)では,両群で怒り顔優位効果が生じるため個人差が見られなかったと推測できる。アレキシサイミア傾向者は,記憶に関して,危険度の高い刺激(怒り)は処理できるが,危険度の低い刺激(幸福)に対しては特異的な機能不全を示す可能性がある。
  • ―喚起された覚醒度と刺激に内包された覚醒度の比較
    藤田 哲也, 加藤 みずき
    セッションID: P-2-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    従来の感情・情動と記憶研究のパラダイムでは,情動を喚起する画像や単語等の刺激を提示し,その刺激の属性としての感情価や覚醒度に基づいて独立変数を設定し,記憶成績に及ぼす影響をみるということが一般的であった。また,学習材料の提示時に,刺激の感情価や覚醒度(感情の強さ)を実験参加者に評定してもらうことも少なくない。本研究では,情動喚起刺激が元々持っている属性としての感情価・覚醒度だけでなく,感情価や覚醒度の評定行動自体が符号化としての効果を持つか否かを検討した。Kato(2014)は,評定を求める際に“その刺激によって参加者か喚起されたもの”と“その刺激自体に内包されているもの”とを区別し,両者が異なる情動を測定しているということを示した。本研究では刺激の覚醒度に対する喚起評定と内包評定の符号化としての効果を比較した。その結果,内包評定が先行する場合にのみ,喚起評定後の自由再生成績が高くなった。
  • ―喚起された感情価と刺激に内包された感情価の比較
    加藤 みずき, 藤田 哲也
    セッションID: P-2-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,藤田・加藤(2015,認知心,前件発表)と同様に,情動喚起刺激が元々持っている属性としての感情価・覚醒度だけでなく,感情価や覚醒度の評定行動自体が符号化としての効果を持つか否かをさらに検討した。藤田・加藤(2015)と同じく,評定を求める際に“その刺激によって参加者か喚起されたもの”と“その刺激自体に内包されているもの”とを区別し,刺激の感情価(ポジティブかネガティブか)の評定を求めた。その結果,内包評定が先行する場合にのみ,喚起評定後の自由再生成績が高くなった。二つの実験を通じて,喚起評定と内包評定とでは後の記憶成績が異なることが示され,情動に関する評定には符号化の効果があることが明らかになった。
  • 山本 晃輔
    セッションID: P-2-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,無意図的に想起される未来事象について,匂い手がかりと他の手がかりとの比較を行った。その結果,匂い手がかりによって想起された未来事象は,他の手がかりによって想起される未来事象よりも感情喚起度,想起頻度,重要度,鮮明度が低く,快であることがわかった。また,匂い手がかり群では,想起直後から1日以内に実行すべき内容が多かったのに対して,匂い以外手がかり群では,1週間以上半年未満の内容が最も多かった。さらに,想起内容にも手がかりによる違いが見られた。以上の分析から,匂い手がかりによって無意図的に想起される未来事象の独自性の一端が明らかにされた。
  • 漁田 武雄, 深沢 萌美, 漁田 俊子
    セッションID: P-2-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    The present experiment investigated whether the match or mismatch between the odor contexts at study and test would affect recognition performance. Eighty-four undergraduates intentionally studied a list of words in a short (1.5 s per item) or a long (4.0 s per item) study-time condition. After a 5-min filled retention interval, recognition for words was tested in the same or a different context. Two triplets of odors having different semantic-differential characteristics were used. One of the odors was presented at study, and at the recognition test the same odor (same-context condition) or the other odor within the one of the pairs (different-context condition) was presented. Furthermore, the third odor was briefly presented at the beginning of the retention interval for recovery from adaptation of the odor at study. Changes in context resulted in reduced hit and A' and increased false alarm rates in both study-time conditions.
  • 金子 亮佑, 加藤 宏一
    セッションID: P-2-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は一般の大学生48名を対象に、テスト時の気分状態(ストレス状態とリラックス状態)によって、記憶課題遂行時の情報処理過程(意図的処理と自動的処理)の関与の強さに及ぼす影響ついて、過程分離手続を用いて検討した。従来の研究では、抑うつ傾向や高不安を持つ者と健常者の比較が主であったが、本研究は、実験的に気分操作を行った。ストレス条件では内田クレペリン検査を行い、リラックス条件では自律訓練法を行った。その結果、テストを行う前で、ストレス条件とリラックス条件に気分の違いがみられた。次に、過程分離手続を用いて、各気分状態における意図的処理と自動的処理の影響を比較した所、意図的・自動的処理はストレス条件とリラックス条件で、異ならなかった。
  • 佐々木 真吾, 仲 真紀子
    セッションID: P-2-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では小学1,4,6年生を対象に,事物の数,長さ,色,場所につき,異なる詳細さでの報告を求める2つの教示(だいたい/正確に教えてください:概ね教示,正確教示)を異なる順序で行い(概ね-正確教示の順で行う「概ね先群」,正確-概ね教示の順で行う「正確先群」),言語報告を求めた。加えて,「答え」だと思う数や色,場所の範囲(心的表象)と,教示の理解や違いの説明(メタ認知)を調査し言語報告との関連を検討した。結果,言語報告は,正確教示の方が概ね教示よりも詳細な回答が多く,特に1年生よりも4,6年生,正確先群よりも概ね先群で顕著だった。心的表象は,正確教示がなされたとき,狭く詳細な範囲が「答え」とされることが多かった。メタ認知のレベルは,4,6年生の概ね先群で高かった。このことから,詳細さのコントロールは,心的表象の発達が基盤にあること,メタ認知のレベルが学年差や群間差と関連することが示唆された。
  • 三浦 大志, 伊東 裕司
    セッションID: P-2-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    メタ認知能力を測定するための質問紙は多数存在するが,質問紙に回答するにはメタ認知能力が必要であるため,メタ認知能力を質問紙で測定することは方法論的な問題を含んでいる。そこで本研究では,内観に頼らずにメタ認知能力を測定する認知課題を作成することを目的とした。覚えるべき単語の取捨選択や各単語への適切な時間配分が必要な記憶課題を作成し,質問紙や他の課題との相関を分析した。30名が参加した実験の結果,本課題において,21名が覚えるべき単語の取捨選択を行っていたなど,限られた学習時間の中で難度の高い課題に対して最善な学習を行うためにメタ認知が活用されたことが推察された。しかし,本記憶課題と,メタ認知能力を測定した質問紙およびメタ認知能力が反映される他の課題との間に有意な相関は確認されなかった。本課題がメタ認知能力を大きく反映したテストであるのか,その妥当性を検証するためのさらなる研究が期待される。
  • 佐藤 浩一, 大濱 望美
    セッションID: P-2-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    他者や自分の書いた説明文を推敲する際の視点を検討した。参加者は幾何学図形を説明する文章を書いた。相互推敲群の参加者は草稿を互いに交換して推敲し合い,その後に自分で清書した。コメント群は他者の文章を推敲した後に,自分の文章を清書した。被コメント群はコメント群の推敲を参考に清書した。個人群は自分で推敲,清書した。清書の後に実施した質問紙調査から,他者の文章を推敲する視点と,自分の文章を推敲・清書する視点は類似しており,段落や読点などの形式面より,図形のイメージしやすさや説明が曖昧でないことに留意していたことが示された。また他者に推敲されること,他者の文章を推敲することは,自分の文章を推敲・清書するのに有効だと感じていた。他者の文章を推敲して気づいた点を,自分の清書に取り入れた参加者もいた。
  • 皆川 直凡
    セッションID: P-2-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    中学生を対象とする質問紙調査により,学ぶ意欲の傾向(動機づけの質),学び方の傾向(学習方略),学習に関する自己効力感,および学習を支える諸要因を測定した。その結果,学習を支える「持続性」と内容関与型動機との間には,中程度以上の正の相関が見いだされた。一方,内容分離型動機との間には負の相関あるいは弱い正の相関が見いだされた。学習を支える「感受性」と内容関与型動機との間には,弱い正の相関が認められた。これらの結果から,学習内容の充実に向かう意欲を支える要因として,目標とする事象に対して粘り強く困難を乗り越えて取り組む「持続性」と,身近な人との触れ合いや読書や芸術鑑賞などをとおして育成される「感受性」がともに重要であることが明らかとなった。
  • 中川 華林
    セッションID: P-2-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    テスト不安は,“テストでよい成績をとるために必要な反応を妨害する不適切な反応である”(Mandler & Sarason, 1952)と定義される概念であり,学習者に様々な負の影響を及ぼすと考えられている(Cassady, 2004)。先行研究では,テスト不安への介入方法の1つとして,フィードバックなどの言葉かけが取り上げられてきた。このような研究においては,実験室実験や実験者による介入を用いたものが多い。しかし,これらの手続きは日常的な学習環境とは相違がみられるため,より身近な場面を用いた検討も必要であるといえる。 そこで,本研究では,実際に評価される立場から脱し,より客観的な評定が可能であると考えられる大学生を対象に,中学生という学校段階における家庭での言葉かけについて回想に基づく回答を求め,言葉かけがおこなわれる場面とその内容がテスト不安と学習時間に及ぼす影響を明らかにする。
  • ―上級課程パフォーマンスに対する初級課程パフォーマンスの影響
    伊原 良奈, 相羽 裕子, 牛島 雅子, 柴田 ゆみ
    セッションID: P-2-23
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、異なる航空機による複数の操縦訓練課程にみられるパフォーマンスの構造を明らかにすることである。操縦課程の全5課程を対象とし、各操縦課程のパフォーマンス間の関連性を表すモデルを作成し、共分散構造分析を用いてモデルの評価を行った。対象者は航空自衛隊の操縦課程学生198名であった。操縦課程での課目成績を分析に使用した。その結果、最初の段階の初級操縦課程で示されたパフォーマンスが、次の段階の操縦課程と最終段階の上級操縦課程でのパフォーマンスに対して直接影響を及ぼすモデルの適合度が最も高かった。このことから、初級操縦課程は、続く操縦課程の準備として位置づけられると同時に、最終段階の上級操縦課程に対して直接的に影響する可能性が示唆された。
  • 山岸 未沙子, 青木 宏文, 田中 貴紘, 高橋 一誠, 米川 隆, 金森 等
    セッションID: P-2-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究は,運転支援や機能訓練に役立てる知見を得るために,高齢ドライバの人間特性を多角的に把握することを目的とした.本報告は,そのうち運転適性検査を用いて高齢ドライバの刺激-反応特性を検討した.50代15名,60代40名,70歳以上45名が参加し,全員にインフォームド・コンセントを行った後,認知機能検査や高齢者講習と同種の運転適性検査器を用いて7つの検査を実施した.7つ中4つの検査の反応時間と正答率を用いた分析から,60代以上は刺激数が増加すると反応は遅延し,足反応と刺激数増加が同時に生じる場合には年齢差が顕著になることが示唆された.また,青色に対するパフォーマンス低下が60代以上の反応時間と正答率でみられ,赤色に対しては反応が速くなるという色の効果が示された.以上の結果から,運転適性検査により高齢ドライバの刺激-反応特性が得られ,運転時のパフォーマンス低下につながる要因が示唆された.
  • 田中 孝治, 梅野 光平, 池田 満, 堀 雅洋
    セッションID: P-2-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    適切な避難心得が周知されたとしても,災害時に個々の住民が適切な行動をとらなければ地域全体の円滑な避難行動の大きな妨げとなる。本研究では,一般的な知識として正しい行動を問う知識課題と自身が選択する行動を問う意図課題から構成される紙上でのテストを用いて,知識と行動意図の不一致が確認されるかどうかを検討するために二つの実験を実施した。二つの実験ともに,実験参加者が適切な知識を有しているにもかかわらず不安全避難行動を選択することが示された。さらに,実験参加者が認知している状況の危険性と切迫性および不安全避難行動の危険性が行動の意図形成に与える影響について検討したところ,不安全避難行動の意図形成に,災害状況や不安全行動に対する危険認知の低さが影響していることが示された。
  • ―医療従事者と学生の比較
    下島 裕美, 門馬 博, 三浦 雅文, 齊藤 昭彦, 蒲生 忍
    セッションID: P-2-26
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究では,理学療法学科の臨床実習学生と臨床経験5年以上の理学療法士による4ボックス法を用いた臨床検討を比較し,患者全体像の把握と目標設定の熟達化について検討した。その結果,学生群は現時点でわかっている事実に注意が限定しているのに対して,熟達者群は時間的展望の視点をもって患者の全体像を把握し目標設定を試みていることがわかった。4ボックス法は,把握している情報の偏りを視覚的に認識することができるツールである。4ボックス法を利用した話し合いが,医療チーム内でどの程度患者の現状を把握しているのか,足りない情報は何か等,各自がメタ認知を働かせるきっかけとなることが期待される。
  • Ji Eunhee, Son Lisa, Kim Min-Shik
    セッションID: P-2-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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      The current study investigated the cultural difference between American and Korean in reading other’s mind depending on the consistency of the emotional expression and the behavior. Participants played the prisoner’s dilemma game with a computer to get as many points as possible. The characteristic of the computer was set as a defector. In the consistent condition, computer showed a joyful face after winning lots of points and a regretful face after winning little points, and in the inconsistent condition, computer showed emotional expression vice versa. We found that participants in the inconsistent condition were more cooperative to the opponent than participants in the consistent condition, but this was only true for American group. Korean did not show the difference on cooperation rate depending on the consistency condition. This finding suggests that American is more susceptible to other’s emotional expression at the moment rather than other’s behavior as compared with Korean. 
  • 宋 永寧, 箱田 裕司
    セッションID: P-2-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    Autism Spectrum Disorders (ASD) are characterized by early onset qualitative impairments in reciprocal social development. However, whether individuals with ASD exhibit impaired recognition of facial expressions corresponding to basic emotions is debatable. Studies reporting an absence of deficits may have used stimuli that were too simple, for instance, 100% expressions (with associated ceiling effects). To investigate subtle deficits in facial emotion recognition, we asked 14 children diagnosed with High-Functioning Autism (HFA)/AS and 17 typically developing peers to complete a new highly sensitive test of facial emotion recognition. The test stimuli comprised faces expressing increasing degrees of emotional intensity that slowly changed from a neutral to a full-intensity happiness, sadness, surprise, anger, disgust, or fear expression. We assessed individual differences in the intensity of stimuli required to make accurate judgments about emotional expressions. We found that, compared with control participants, children with ASD generally required stimuli with significantly greater intensity for the correct identification of anger, disgust, and fear expressions. These results suggest that individuals with ASD do not have a general but rather a selective impairment in basic emotion recognition.
  • 林 美都子, 林 めぐみ
    セッションID: P-2-31
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    メール等で用いられる顔文字について、怒りと嫌悪の感情表現の相違は顔のどの部位で行われるか、程度表現の相違はどの部位に表出されるか、大学生148名に眉・目・口の部品を与えて、怒りと嫌悪について100%~20%までの顔文字を10種類作成させ、検討を行った。その結果、目と口の部品の相違によって怒りと嫌悪の相違が表出されていた。郷田・宮本(2000)の研究等で怒り認知は顔の上半分で行われているとの報告があることから、どの程度怒っているかの表現については眉と目の変化で行われると予測したが、本研究の結果、口の変化がもっとも大きいことが分かった。予測と異なり、怒っていることを目もとで表現するため、目はほぼ固定され、口元のバリエーションでその程度を表している可能性が示唆された。ただし、嫌悪に関しては目・口ともに良く変化しており、今後の検討課題と考えられる。
  • 後藤 靖宏
    セッションID: P-2-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    “賛美”に対して聴き手が抱く印象の構造を明らかにするために,賛美歌を8曲準備し,40語の評価語を用いて質問紙調査を行った.因子分析の結果,平穏,快活,荘厳,寂寞,および単純の5因子が抽出された.これらは,“賛美”がおだやかな要素や明るく生き生きとした要素,おごそかな要素など多くの側面を持っており,それらの異なった様々な要素を感得したことの表れであると解釈できる.また,因子ごとに,クリスチャンとノンクリスチャンの“賛美”に対する印象を比較した結果,平穏以外の4因子において両者の間に差がみられた.これは日常的に“賛美”に触れる機会が異なっており,“賛美”に対する親近性も異なっているためであると考えられる.今後は,“賛美”の曲調や歌詞などに着目し,クリスチャンとノンクリスチャンの“賛美”に対する印象の共通点や違いを,より詳細に検討していくことが必要であろう.
  • ―自由記述による収集とカテゴリ分け
    山口 剛, 押尾 恵吾, 加藤 みずき, 中川 華林, 鈴木 洋介, 藤田 哲也
    セッションID: P-2-33
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は一般の大学生を対象に,どのようなときに動機づけが増減すると認知しているのかの,素人理論を明確にすることを目的とした。大学生66名に,中学 生がどのようなときにやる気(動機づけ)が上がる/下がると思うか,自由記述による回答を求めた。また,記述された出来事に対して,自身がどの程度その出 来事を体験したことがあるかの評価を求めた。動機づけの増加に関しては計10種類,減少に関しては計12種類に記述を分類した。動機づけの増加に関して は,既存の動機づけ理論とも対応するカテゴリに多く記述がみられたが,試験前の焦燥感などといった“期限切迫”や,いかに勉強がしやすい環境下が重要であ るといった記述もみられた。動機づけの減少に関しては,勉強することを強要される“干渉”や,睡眠不足などの基本的欲求の欠如がみられた。
  • ―各カテゴリにおける体験度の比率の違いによる検討
    押尾 恵吾, 山口 剛, 加藤 みずき, 中川 華林, 鈴木 洋介, 藤田 哲也
    セッションID: P-2-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は一般の大学生を対象に,動機づけの素人理論について,体験度の比率に違いがみられるカテゴリと,違いのみられないカテゴリを,明確にすることを目的とした。そこで,山口他(2015,認知心,前件発表)で得られた,動機づけの増加における10種類,減少における12種類の各カテゴリにおいて,1~5の体験度でχ2検定を行った。その結果, 1(体験していない)が他のいずれかの体験度よりも統計的に有意に低いと示唆されるカテゴリは,多く見積もっても増加で2つ,減少で3つであり,1が他の体験度よりも低くならなかったカテゴリは,増加で6つ,減少で4つであった。動機づけの増加・減少する場面のどちらにおいても,体験度の高いものばかりが挙げられているわけではなかった。ここから,必ずしも体験が伴わなくても,動機づけの素人理論として報告されるカテゴリがある(e.g., 増加:“目標”,減少:“干渉”)ことがわかった。
  • ―魅力度と画像特性の関与
    満田 隆, 阪口 遼平
    セッションID: P-2-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    画像選好判断において,対象が顔の場合は見慣れた画像を好む傾向(親近性選好)が生じ,対象が風景の場合は初めて見る画像を好む傾向(新奇性選好)が生じる。本研究はその詳細を明らかにするために,まず,魅力が大変高いモデル,魅力の高い高校生,低い高校生の顔写真を用いた選好判断課題を行い,顔の魅力度と親近性選好の関係を調べた。その結果,魅力の低い顔は高い顔と比べて親近性選好が強く生じた。また,魅力が大変高い顔では親近性選好と新奇性選好のいずれも生じなかった。つぎに,ティアラ,リビング,家具,住宅街,銃,食器,星雲,抽象画を用いた選好判断課題を行った。その結果,リビングと星雲で新奇性選好が生じ,その他のカテゴリでは偏りは生じなかった。また魅力度と新奇性選好に相関があった。以上の結果より,魅力の低い顔画像では親近性選好,顔以外の画像では画像全体が変化する魅力の高い画像で新奇性選好が表れることが示された。
  • 佐々木 恭志郎, 山田 祐樹, 三浦 佳世
    セッションID: P-2-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    身体動作は感情処理に影響を与えると言われており,上方向の身体動作は快感情,下方向の身体動作は不快感情と結びついている。本研究では,上下の身体動作が感情情報への意識的なアクセスに影響を与えるかについて検討を行った。実験では,参加者は腕を上げた状態(上動作条件),腕を下げた状態(下動作条件), 腕を動かさない状態(動作なし条件)で感情を喚起する画像を観察した。その際,両眼間抑制により画像は見えなかった。参加者の課題は画像が確認でき次第その画像が快か不快かを判断することであった。実験の結果,上動作条件では,快感情画像が呈示された場合に比べて,不快感情画像が呈示された場合の方が判断までに時間がかかることが明らかになった。これらの結果は身体動作が感情概念の賦活に自動的に影響を与えていることを示唆している。
  • 布井 雅人, 吉川 左紀子
    セッションID: P-2-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    無意味図形の選好判断は、周囲に呈示された4人の顔画像の内で半数が喜び表情であると上昇し、1人でも嫌悪表情を示すと低下することが知られている (布井・吉川, 2014)。本研究では、顔画像を評価対象とした場合の、周囲の顔画像の表情と人数割合の影響について検討した。その結果、周囲の喜び表情によるターゲット顔画像の好意度は上昇しなかった。一方で、4人中1人が嫌悪表情を示すことによってターゲット顔画像の好意度が上昇した。このように、無意味図形を評価対象とした場合と、顔画像を評価対象とした場合で、周辺顔画像の影響が異なった理由として、周辺顔画像とターゲット顔画像の間で対比効果が生じた可能性が考えられる。また、5枚の顔画像が1つの集団として捉えられ、表情の組み合わせから文脈が読み取られていた可能性も考えられる。
  • 三雲 真理子, 水政 沙貴
    セッションID: P-2-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、携帯情報端末上のアプリを使用してバーチャルペットとの触れ合いによってどのような気分変化が現れるかについて、女子大学生にバーチャルペットと触れ合う前後の気分評定(POMS短縮版30項目を使用)を求めて検討した。その結果、本研究で使用したような単純な育成アプリであっても隙間時間に利用するだけで緊張‐不安・抑鬱‐落ち込み・怒り‐敵意・疲労・混乱のような気分が緩和され、一時的な癒しやリフレッシュにつながることがわかった。また、このようなバーチャルペットによる気分改善効果は、日常的に育成アプリを使用している人やペットを飼育していない人にとってのほうが、やや大きく現れることが示唆された。このことから、ペットに触れる機会が減っている我々にとって、バーチャルペットと短時間触れ合うことは、直接ペットに触れ合う代替機能を果たすとは言えないまでも一時的な癒しやリフレッシュ効果はもつと考えられる。
  • 齊藤 俊樹, 金城 光
    セッションID: P-2-39
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    視線のカスケード現象とは、選好判断における意思決定の直前に選択する刺激に対して視線を向ける割合が偏りはじめ、その偏りが判断時まで上昇し続けるという現象のことである(Shimojo et al., 2003)。これまでの視線のカスケード現象についての研究では、発達的な観点からの検討が行われていなかった。そこで本研究では、若齢者と高齢者を対象に二者択一の強制選択判断課題を課し、視線のカスケード現象が加齢に伴い変化するのかを明らかにすることを目的とした。
    結果、高齢者においては選択する刺激に対して視線が偏り始めるのが大学生と比べて早く、より勾配が緩やかな視線のカスケード現象が認められた。また、両群とも判断条件によって視線の偏りの程度が異なっており、選好・類似性判断条件において最も強い視線の偏りが認められることが分かった。本研究により、視線のカスケード現象が高齢者においても認められること、好意判断に特有でないことが示唆された。
  • 高橋 知世, 北神 慎司
    セッションID: P-2-40
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。
  • ―高齢者への失敗の強調は成績向上を導くか
    田中 伸之輔, 小山 明莉, 原田 悦子
    セッションID: P-2-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    近年,認知的な課題成績における感情や動機づけの効果が注目されてきている。本研究では,高齢者の動機づけが防止焦点へ変化するという報告(Ebner, Freud & Baltes, 2006)や,制御適合が生じる場合に認知的柔軟性を必要とする課題成績が向上するという報告(Maddox & Markman, 2010) から,高齢者は,損失が強調される状況下で課題を行う際に認知的課題の成績が向上するという仮説を立て,実験的に検討した。認知的課題には,異なる課題特性を持つ3つの食品を調理し,客に提供するという新朝食課題(原田・大川,2014)を用い,ボーナス報酬を獲得する獲得群,エラーなどに応じて報酬を減じる損失群,報酬条件を設けない統制群とを比較した。その結果,損失群の高齢者において一部のエラー数が少なくなることが示されたが,その影響は複雑な形をとり,また制御適合の影響を受けないエラーや達成成績が示された.今後,制御適合が影響をおよぼす範囲や,メカニズムについて検討が必要である。
  • 本間 喜子, 川口 潤
    セッションID: P-2-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    インターネットへの依存傾向が高い人は,ストループ課題などの抑制機能が必要な課題で,反応を抑制することは可能ではあるが,より強い抑制努力が必要なため,課題と無関連な情報を抑制することは容易でないことが示された (Dong et al., 2009;2012)。よって,制御を必要とする認知課題に影響を及ぼす個人差として考慮していく必要があると考えられる。また,インターネット依存とされた患者は気分障害などを併発していることが報告されており (Shapira et al., 2000),インターネット依存は独立した症状なのではなく,気分障害など別の疾患の症状の1つだとする批判も存在している。そこで,気分障害を統制しても制御能力とインターネット依存の間に関連性があるか調査を行った。その結果,BDI-I得点の影響を制御した場合も制御能力とIAT得点に相関関係が認められたため,少なくともうつ病がインターネットの過剰使用の原因ではないため症状の一部ではないといえる。
  • 茶谷 研吾
    セッションID: P-2-43
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    抑制や隠蔽を試みているにも関わらず表出してしまう表情を微表情(micro expression)と言う。微表情は500msしか持続せず,隠蔽時に表出するため嘘を検知する有効な手がかりになると考えられている。これまで微表情は嘘検知の観点からしか研究されておらず,微表情が表情認知に及ぼす影響は明らかにはなっていない。本研究では微表情により後続する一般表情の表出強度は高く真実味は低いと受け手に判断されるとの仮説を立てて,幸福と怒りの一般表情を対象にこれを検討する目的で実験を行った。その結果真実味に微表情の影響は見られないものの,幸福の一般表情においては微表情がAU17のみである時に,怒りの一般表情においては真顔とAU20のみである時に他の条件と比較して表出強度が高まることが明らかになった。このことから微表情は後続の表情との相違が大きいほどその表出強度の判断に影響を及ぼす可能性が示唆された。
  • 赤嶺 亜紀
    セッションID: P-2-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では女性大学生の化粧が対人行動に及ぼす影響を検討するため,女性実験参加者の化粧を操作し,前方に加え,後方と左右の4方向のパーソナルスペースを測定した。またSTAI日本語版状態不安尺度(清水・今栄,1981)用いて,化粧が感情と対人積極性に及ぼす効果を検討した。
  • ―商品の価格帯の違いによる検討―
    井関 紗代, 北神 慎司
    セッションID: P-2-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    保有効果とは、自分が所有する物に高い価値を感じ、手放すことに強い抵抗を感じることである。先行研究では、実際に所有していなくても、単に触るだけでその商品に対する所有感が高まり、さらに実際に商品に触れることができない状況でも、目を閉じて商品を触るイメージをすることで、その商品に対する身体的統制感が高まり、所有感も高まることが示されている。本研究では、この触るイメージが所有感を高める効果は、安い商品と高い商品という価格帯の違いに関わらず、一様に生じるかを検討することを目的とした。また、触るイメージが購買意図に及ぼす影響についても検討した。価格帯の安い商品6種類、高い商品6種類、合計12種類のカラー画像を刺激として用い、触るイメージをした群とイメージなしの群で比較をした。その結果、触るイメージが商品の所有感と身体的統制感を高める効果は、商品の価格帯の違いに関わらず頑健であることが明らかになった。
  • 宮城 円, 中尾 敬, 宮谷 真人
    セッションID: P-2-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    同程度に好ましいアイテムから好ましい方を選択すると,自らが選んだものの選好は増加し,選ばなかったものの選好は減少する。この現象は“選択による選好の変化”と呼ばれ,近年自らが選択したものの選択率を上げるといった強化学習によって説明できることが示唆されている。抑うつ傾向者では,ギャンブル課題等において強化学習による価値の学習が生じにくくなることが知られているが,選択による選好の変化について抑うつ傾向との関連は明らかになっていない。本研究は選択による選好の変化と抑うつ傾向との関連についてBlind choice paradigmを用いて検討した。その結果,抑うつ傾向者ほど選ばなかったものの選好が減少しにくいことが明らかとなった。一方,選んだものの選好の変化と抑うつ傾向との関連はみられなかった。このことから,選んだものと選ばなかったものの選好の変化は異なる過程により生じている可能性が示唆された。
  • 向居 暁
    セッションID: P-2-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。
  • ―連続フラッシュ抑制下における無自覚的魅力評価
    中村 航洋, 新井 志帆子, 川畑 秀明
    セッションID: P-2-48
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    顔魅力評価は急速かつ自動的に行われることが知られている。しかし,顔魅力評価が視覚的意識を伴わない無自覚的情報処理レベルで生じている可能性を直接的に検討したものはこれまでにほとんどない。本研究では,一時的に視覚刺激の意識的知覚経験を両眼間で抑制する連続フラッシュ抑制を用いて,閾下刺激提示時の無自覚的顔魅力評価特性と顔魅力が両眼間抑制に及ぼす影響について検討した。実験では,参加者の優位眼に連続フラッシュ刺激を提示する間,非優位眼に顔刺激を提示し,参加者は顔の意識的知覚が生じていた時間を報告した。実験の結果,両眼間抑制は魅力顔よりも非魅力顔に対して長く持続し,顔の意識的知覚経験が持続していた時間は,非魅力顔よりも魅力顔に対して長かった。よって,顔魅力評価は顔の意識的知覚経験が生じる前段階の無自覚的情報処理レベルで行われ,魅力顔に対する注意捕捉は,顔の意識的知覚の持続を促進することが示唆された。
  • 橋本 和奈実
    セッションID: P-2-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    内田・中畝(2004)は,音声の速さと高さによって,聞き手に与える性格印象が異なることを明らかにした。本研究は,話し手を女性,場面を初対面の挨拶とし,音声の速さと高さが印象形成に及ぼす影響について検討した。また,性格印象は音声印象(音声に対する印象や音声から推定しうる話者の発言中の状態に関する印象)から形成されているか検討した。実験計画は,聞き手の性別(男性,女性)と音声の速さ(速い条件,普通条件,遅い条件)と音声の高さ(高条件,中条件,低条件)の3要因2×3×3水準混合計画であった。実験の結果,女性の初対面の挨拶において音声の速さと高さの独立の影響によって聞き手に与える印象が異なることが明らかになった。また,音声印象から性格印象が形成されていることが明らかになった。特に,外向性と経験への開放性は音声印象から推定しやすく,勤勉性は音声印象から推定しにくい性格であることが明らかになった。
  • 松下 戦具, 杉澤 みなみ, 森川 和則, 白土 真紀
    セッションID: P-2-50
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究で我々は,二重まぶたの線に目を大きく見せる作用があるかを検討した。つまり,目の客観的な大きさ(眼裂内の面積)が同じである時に,線がついているだけで目が大きく見えるかどうかを調べた。眼裂の線と二重まぶたの線とがデルブーフ錯視のように知覚的同化を起こすなら,二重まぶたの線があるだけで目が大きく知覚されるはずである。
    実験の結果、客観的な目の大きさが同じで場合でも,まぶたに線が有るだけで目が大きく知覚されることを示した。顔全体としての処理を抑制した条件(倒立提示)でもこの錯視効果が得られたため,その基本原理は顔知覚に特有ではなく,デルブーフ錯視のような幾何学錯視と共通であると推察される。しかしながら,正立顔では,倒立顔に比べ,二重幅の個人差が強く表れた。これは,正立顔では二重の錯視効果も顔の他のパーツとの相互関係の中で統合的に処理されていることを示唆している。
  • 蔵冨 恵, 河原 純一郎
    セッションID: P-2-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,瞳の輝き(キャッチライト)が顔の魅力に及ぼす影響を検討した。同一人物の瞳のキャッチライトありとキャッチライトなしの顔画像を対呈示し,魅力な方,アイコンタクトしていると思う方,生き生きしていると思う方を強制選択させた。顔画像の呈示時間は,正立顔500 ms,正立顔200 ms,倒立顔200 msのいずれかであった。実験の結果,正立顔では呈示時間に関わらず,キャッチライトのある顔を魅力的だと判断することが明らかとなった。一方,倒立顔では正立顔のような効果は得られず,キャッチライトのある顔の選択率はチャンスレベルであった。従って,キャッチライトの存在そのものに対して魅力判断が行われたのではなく,キャッチライトのある顔に対して魅力判断が行われたことを示している。
  • 尾田 政臣
    セッションID: P-2-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    顔の選好を表す言葉として「美しさ」「魅力」「好ましさ」が使われている。この三つの評価項目が異なる意味として使われているのか、あるいはほとんど同義として使われているかについてはあまり調べられていない。本稿では顔のイメージを評価させる方法で、12人の有名人の顔について19人の被験者にそれぞれ3項目の評価をさせた。その結果を評定の平均値を用いて分析をすると、美人度と魅力度の間には差が無い結果となった。一方、被験者ごとに3項目間の評定値に違いが生じる率を求めた。その結果、最大でも4割程度の一致率であった。3つの評価項目は異なる意味として使い分けられていることが明らかになった。また、相関係数で比較すると魅力と好みの評価項目間の相関が他のものより高いことが明らかになった。
  • 池田 華子, 田中 智明, 日高 聡太, 石山 智弘, 宮崎 弦太
    セッションID: P-2-53
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    ハイビジョン(HD)とその4倍の画素数を持つ超高精細(4K)動画像では,異なる感性的印象が生じることが報告されている.本研究では,解像度とともに,撮像対象(自然物・人工物)および撮影画角(広・中・狭)が感性的印象に及ぼす影響を検討した(実験1).次に,先行研究(23.98 fps)よりも高い(59.94 fps)フレームレートで動画像を撮影・提示し,映像に含まれる動きの大小が及ぼす効果についても検討した(実験2).実験1では,4K映像において撮影画角が広い場合や自然風景が提示された際に,HD映像に比べより好ましく快適であるという印象が生じた.実験2では,動きの大小に関わらず,4K映像においてより好ましく快適であるという印象が生じ,動きの大きい 4K映像に対して評価や快適さが低下するという先行研究の知見と異なる結果が得られた.以上のことから,超高精細動画像に関して,観視者の感性的印象を効果的に高める条件が存在することが示唆された.
  • 向井 志緒子
    セッションID: P-2-54
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    ペットボトルお茶飲料のパッケージ・デザインは,お茶の味よりも消費者の選好に重要な要素になることが指摘されている。特にフォントデザインは消費者の商品評価に強い影響を与えると指摘されているにも関わらず,フォントデザインがペットボトルお茶飲料の商品評価にどのような影響を及ぼすのか,その詳細については未だ明らかにされていない。本研究では,商品名に用いられる和文書体フォントがペットボトルお茶飲料の美的印象に与える影響を検証した。その結果,HG教科書体をペットボトルお茶飲料の商品名に用いると,美的印象向上に一定の効果を持つことが示唆された。また,DF金文体W3およびHG創英角ポップ体を用いたラベルは,ペットボトルお茶飲料の美的印象の向上には効果を持たない可能性も示唆された。今後は他のフォントや商品群を用いてその効果を検証したい。
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