日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第14回大会
選択された号の論文の145件中51~100を表示しています
ポスターセッション1
  • 視点手掛かりの事前提示が顔の再認成績に及ぼす影響
    武藤 拓之, 加納 史織, 松下 戦具, 森川 和則
    セッションID: P1-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    本研究は,学習時とは異なる視点から見た顔を事前に想像することによって,その視点から見た顔の再認成績が向上するかどうかを検証した。実験では,学習刺激(正面顔;0度)を4秒間提示した後でテスト刺激(0度・30度・60度のいずれか)を提示し,2つの刺激の異同判断を求めた。学習刺激の提示中もしくはテスト刺激の提示と同時に,テスト刺激の視点を示す手掛かり画像が提示された。実験の結果,同じ顔の判断時には手掛かりの事前提示によって0度条件と30度条件の再認成績が向上したが,60度条件の再認成績はむしろ低下した。一方,異なる顔の判断時には手掛かりの影響は見られなかった。これらの結果から,学習時の視点に近い顔を想像することは比較的容易であるが,視点が遠ざかると想像が困難になり,かえって再認を妨害することが示された。これは顔以外の物体の心的回転では見られない現象であり,顔に特有な処理の関与を示唆している。
  • 古野 真菜実, 今泉 修, 日比野 治雄, 小山 慎一
    セッションID: P1-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    蓮の花托などの集合体に対する嫌悪はトライポフォビアと呼ばれる。トライポフォビアを誘発する視覚刺激の物理的要因については詳細な検討が行われているものの(Le et al., 2015),認知的要因については検討されていない。本研究では認知的要因について探索的に検討した。トライポフォビア喚起刺激(Le et al., 2015)に対する不快感評定実験の結果,集合体を有する物体が自然物か人工物か(e.g., 蓮かスポンジ)によって不快感が異なることが示唆された。さらに詳細に検討するため自然物・人工物の集合体画像からなる新規刺激を用いて不快感評定実験を行ったところ,自然物は人工物よりも不快感が強かった。以上の結果から,集合体を有する物体における自然物・人工物の違いがトライポフォビアに影響する可能性が示唆された。身体損壊や有害生物の連想からトライポフォビアが生じるとするならば(Cole & Wilkins, 2013),集合体を有する自然物はそのような連想を起こしやすい可能性がある。
  • 身体モデルの学習と身体所有感との関係
    秋丸 雄祐, 片山 正純
    セッションID: P1-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    手で使用する道具の認知には,手の身体モデルを用いた把持運動の脳内シミュレーションによって評価された把持可能性が寄与していると考えている(脳内シミュレーション仮説).この仮説の妥当性を検証するために,変形した手の身体モデルを学習するための実験パラダイムを構築し,学習中に表示した手に対する身体所有感と道具のサイズに関する認知的判断との関係について調査した.身体所有感の比較的高いグループにおいて,変形した利き手の身体モデルを学習したとき,利き手で使用する道具ではより大きなサイズの道具をその道具と見なすように変化したが,非利き手で使用する道具については変化しなかった.一方,非利き手の身体モデルを学習した条件では逆の傾向を示した.しかし,身体所有感の低いグループでは上記のような変化は見られなかった.これらの結果は,手の身体モデルの学習において身体所有感が重要な役割を果たしていることを示唆している.
  • 矢口 彩子, 日高 聡太
    セッションID: P1-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    自閉症スペクトラム障害(ASD)者は多感覚統合の時間処理において特異的な傾向を示すことが指摘されている。視聴覚統合により生じるダブルフラッシュ錯視(1回の光の点滅に伴い音を2回提示すると光の点滅が2回に知覚される)とASDとの関連を検討した研究では,ASD者は広い時間窓と強い錯視強度を示すとするものがある一方,一致しない傾向を示すものも存在する。我々は,ASD傾向には主に5つの下位傾向があることに着目し,ダブルフラッシュ錯視の生起様式との関係性について,定型発達者を対象にASD傾向の計測を行い検討した。その結果,コミュニケーションのASD的傾向が高まると時間窓は広くなる,社会的スキルのASD的傾向が高まると時間窓は狭くなる,さらに想像性のASD的傾向が高いほど錯視強度が弱まることが示された。このことから,ASDの下位傾向はそれぞれ独自に視聴覚統合の時間的処理と関係していることが示唆された。
  • 金谷 英俊, 永井 聖剛
    セッションID: P1-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    他者の存在が認知情報処理に与える効果について検討を行った.認知課題として変化の見落とし課題を実験参加者に課し,参加者と面識のない女性1名が実験ブース内で参加者の斜め後ろに立ち,その課題遂行の様子を観察する他者観察条件と,実験者が実験ブース外で待機し,参加者のみで課題を遂行させる観察なし条件を設定した.参加者には変化箇所の正解を見つけるまで探し続けることを求め,各試行の変化検出までにかかった時間を測定した.その結果,他者観察条件では観察なし条件よりも,見落とし課題の変化検出時間が有意に長くなった.他者に課題遂行を見られている場合,そうでない場合と比べ不安や緊張が増大することで認知処理が機能しにくくなる,もしくは他者に過分な注意が向いてしまうことにより認知課題を遂行するために必要な注意資源が少なくなるなどの理由により,課題成績が悪化した可能性が考えられる.
  • 満田 隆, 田中 真代
    セッションID: P1-21
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    二つの香りを自由に嗅いで一つの香りを選ぶとき、最後に嗅いだ香りを選択する確率はチャンスレベルよりも高い。このバイアスは、最終サンプリングバイアスと呼ばれ、視覚、聴覚、触覚を用いた選択課題でも観察される。本研究はこのバイアスが、最後に嗅いだことで生じるのか、それとも最終判断のために選択する香りを嗅ぐ傾向によるのかを区別するために、嗅ぐ香りを参加者が選択する場合と、決められた順番で香りを嗅ぐ場合の最終サンプリングバイアスを比較した。その結果、前者では後者よりも有意に大きい最終サンプリングバイアスが生じた。このことは、最後の随意的な嗅動作と最終判断との直接的な結びつきを示している。本研究は最終サンプリングバイアスの起源と意思決定モデルについて議論する。
  • 視覚統計学習を用いた検討
    加藤 公子, 吉崎 一人
    セッションID: P1-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    本研究は視空間注意の非対称性について視覚統計学習を用いて検討した。学習段階では文字刺激から成る3つ組みが同じ系列順序で凝視点を挟み左右視野に同時に呈示された。左あるいは右視野内で3つ組みが呈示されるものをそれぞれ左視野条件,右視野条件とし,3つ組みが左右交互に呈示されるものを両視野条件とした。参加者の課題は凝視点の位置に低頻度で呈示される三角形の数を数え,報告することであった。続くテストでは視野条件により潜在的系列学習の成立に違いがあるかを調べるため,ターゲット検出課題を実施し反応時間を記録した。右視野条件における反応時間は系列1が最も長く,系列3で最も短くなり,顕著な視覚統計学習の成立を示した。左視野及び両視野条件における反応時間は系列1よりも2で短く,系列2と3には差がないことを示した。この結果は課題に関係のない刺激,特に右視野刺激に対して注意資源が優位に配分されることを示唆する。
  • 丹藤 克也
    セッションID: P1-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    凶器注目効果とは,凶器を所持した犯人を目撃した際,目撃者の注意が凶器に向けられ,周辺情報の記憶成績が低下する現象である。先行研究の多くは記憶成績に着目した検討を行っている。しかし,凶器注目効果の発現機序を解明するためには,凶器が注意に及ぼす影響を検討することが必要である。そこで,本研究では,凶器が注意の解放を阻害するのかについて検討した。画面中央に凶器画像(包丁,拳銃)または統制画像(ドライヤー等)を呈示した後,左右いずれかにターゲットを呈示した。実験参加者には,ターゲット出現方向をキー押しによって回答するよう求め,それに要した反応時間を測定した。その結果,特性不安の低い者では,統制画像よりも凶器画像を呈示した場合に反応時間が遅かった。このことから,凶器は注意解放を阻害する可能性が示唆された。
  • 関口 貴裕, 加藤 駿
    セッションID: P1-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    スマートフォンを見ながら歩く際(歩きスマホ)に注意が前方の地面のどの範囲(奥行き距離)まで及ぶかに関する人々の認識の正確さを検討した。そのためにまず50名の参加者に,歩きスマホをしながら床面のLED光に気づくと思う最短の距離を,その場に立つことで報告させた。そして,20 mの直線歩行を歩きスマホをしながら繰り返す中で,途中7カ所設置されたLEDの1つをランダムに点灯し,それへの気づきが得られた距離を実際の空間的注意範囲を示す値として測定した。注意範囲の自己評価の広さにより参加者を狭群,中群,広群に分け,実際の注意範囲とのズレを群間で比較したところ,狭群,中群のズレがそれぞれ平均3.0 cm,5.1 cmと小さかったのに対し,広群では自己評価値の方が実際より平均61.1 cm広くなっていた。この結果は,歩きスマホ中の注意範囲を過大評価する傾向の人が3分の1程度いることを示唆している。
  • 蔵冨 恵, 吉崎 一人, 藤田 知加子
    セッションID: P1-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    本研究は知覚的変化が認知方略の持続性に及ぼす影響を検討した。フランカー効果は,適合性頻度が高い文脈に比べて,それが低い文脈において減少する。この認知方略は文脈が変化しときには,直前の文脈に関わらず現在の文脈に応じた適応をする。しかし,文脈間で刺激セットが異なる時の認知方略の柔軟性は明らかではない。そこで本研究は,セッション間で,適合性頻度と刺激セットが異なるフランカー課題を行った。具体的には,算用数字で構成され,左右視野間で適合性頻度が異なるトレーニングセッション後,漢数字で構成され,左右視野間で適合性頻度が等しいテストセッションを行った。その結果,テストセッションでのフランカー効果は,トレーニングセッションの適合性頻度に応じて変動し,セッション間で同じ刺激セットのときには,このような変動は見られなかった。この結果は,知覚的変化が認知方略の持続を導くことを示している。
  • 土井 章楠, 渡辺 友里菜, 吉崎 一人
    セッションID: P1-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    刺激反応適合性パラダイムにおいては,直前試行の適合性によって現試行の適合性効果は変動する。現試行の適合性効果は,直前試行が一致よりも不一致試行で減少する。この視覚情報選択性の調整(Gratton効果)は,競合を経験したことで,注意が動員されたためだと考えられる。近年,回避動機づけに比べ,接近動機づけが注意の動員をもたらすことが報告されている。そこで,腕の屈曲伸展動作を使って,接近回避動機づけを操作し,動機づけがサイモン課題のGratton効果に及ぼす影響を観察した。屈曲動作により接近動機づけを誘発するために,反応ボタンを机下に設置し掌で下から上に押す条件(屈曲条件)と,伸展動作により回避動機づけを誘発するために,ボタンを机上に設置し掌で上から押す条件(伸展条件)を用意した。その結果,Gratton効果は屈曲条件でより大きくなり,接近動機づけが視覚情報選択性の調整を高めることが示唆された。
  • 高尾 沙希, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    視覚システムは、他者の視線が向けられた位置に対して自動的に注意を向ける(視線手がかり効果)。しかし、実際には他者の視線手がかりを利用するか否かは社会的文脈に依存すると考えられる。実験1では他者が存在する場面を利用しやすいと考えられる購買場面(店舗内条件)と、そうでない自然場面(店舗外条件)、背景なし(統制条件)で視線手がかり効果の測定を行った。結果、店舗内・背景なし条件で同程度の視線手がかり効果が生じたものの、店舗外条件では視線手がかり効果が消失した。実験2では、実験1の店舗内条件の視線手がかり効果の消失は、画像の社会的文脈もしくは物理的特性のどちらによるものかを調べるために、画像を上下逆さまにし、同様の実験を行った。結果、どの条件でも視線手がかり効果の傾向が確認された。以上の結果は、購買などの意思決定の際には、他者に惑わされないように無意識的に視線認知を抑制している可能性を示唆している。
  • 在原 克彦, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    顔ではない刺激が顔に見えることがある。これまで,このような顔様刺激は顔刺激と同様の視覚処理を受けると考えられてきた。しかし,その時間特性の違いについては検討されていない。本研究では,注意の捕捉に注目し,顔刺激と顔様刺激の視覚処理における時間特性について調べた。実験参加者は,高速逐次呈示される文字系列(SOA = 67ms)の中から特定の色で定義された文字(標的)を同定した。標的が呈示される前に,刺激系列の周辺に顔様刺激が妨害刺激として呈示された(Lag 0, 1, 2, 3)。その結果,Lagが2,3の条件で標的の報告率は有意に低下し,顔様刺激が注意を捕捉したことが明らかにされた。しかし,同様の結果のパターンは統制刺激を妨害刺激として呈示した条件においても見られたため,本実験で生起した注意の捕捉は妨害刺激に特異的な現象とは言えない。今後は,注意を捕捉すると考えられている顔刺激を妨害刺激として,比較検討を進めていく。
  • 渡辺 友里菜, 吉崎 一人, 大西 志保
    セッションID: P1-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    逆ストループ課題では,採色された色名単語の単語読みを求め,インク色が干渉した程度が測定される。Smithson, et al. (2006)は,彩色された色名単語のインク色を操作し,色名単語との色が近づく程,反応時間は速くなることを示した。本研究は,刺激呈示空間の上下と刺激の示す方向(上下)との間で適合性が決まる空間ストループ課題を用いて,空間ストループ効果には凝視点から刺激呈示位置の距離(視角)に応じた変化がみられるかどうかを調べた。実験では,凝視点を通る垂直子午線上で,上下視野に2箇所(凝視点から視角にして2.32°と6.97°,又は6.97°と11.63°)の計4箇所に矢印刺激が呈示された。その結果,視角に関わらず,最も上,最も下の呈示位置の空間ストループ効果が,他の呈示位置より大きかった。つまり,空間ストループ効果の大きさは,刺激布置の相対的な位置(上下)に依拠することが示された。
  • 放送大学大学院「研究指導」を事例に
    高橋 秀明
    セッションID: P1-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    放送大学大学院で「研究指導」科目の単位を取得した(修士号取得した)学生へのインタビュー調査を行い、経済的に自立した学生の研究活動に対する態度について検討した。
  • フィクション,ノンフィクション,Web文章の比較
    猪原 敬介, 内海 彰
    セッションID: P1-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    フィクション本の読書頻度はノンフィクション本よりも語彙力と強く関連することが報告されている。原因として,テキスト内要因(フィクション本の単語出現のパターンのほうが語彙力向上に有効である,など)とテキスト外要因(フィクション本のほうが高い動機づけで本を読めるので,読書に集中でき,結果として単語の学習が行われやすい,など)が考えられるが,両者を切り分ける検討はこれまでなされてきていない。本研究では,言語コーパスに基づく語彙学習シミュレーションを行い,読書傾向によって群分けした人間の参加者の語彙テスト成績と比較を行った。その結果,参加者実験では先行研究の結果を追試できたが,シミュレーション実験ではノンフィクション本の成績がフィクション本の成績を上回るなど,食い違った結果が得られた。本結果はテキスト外の要因が上述の現象の原因であることを示唆しているが,別解釈の可能性についても併せて論じた。
  • 山田 恭子
    セッションID: P1-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,教員志望学生が産出する説明文の構造の特徴を明らかにした。そのために実際に説明文を産出させた直後,その後「表記・表現の容易性(例:文章が固くなりすぎないようにした)」「流れやまとまりに対する配慮(例:順序立てて書いた)」「読み手への興味・関心への配慮(例:読み手にとって身近な事柄を中心に書いた)」「具体性(例:見た目の特徴を書いた)」「説明すべきものの先行呈示(例:説明するものが何なのかを最初に明らかにした」の5つのメタ認知的説明文産出方略の使用の有無を自己評定させた。同時に児童と接した経験の有無の影響も調べた。その結果,学生は他の産出方略と比較して「具体性」を重視しないことがわかった。この傾向は児童と接したことがない学生においてより顕著であった。また,児童と接したことがある学生は,「表記・表現の容易性」「具体性」をより重視するようになる可能性が示唆された。
  • 中川 華林
    セッションID: P1-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    学習者が試験に対して抱く思考は,試験に関連する感情経験などに影響を及ぼすことが想定される。本研究では,大学生が,様々な試験に対して抱いている思考スタイルを明らかにした。対象は大学生65名であった。質問紙では,3つの試験(これまで受けた中で最も重要だと感じた試験,高校定期試験,大学定期試験)のそれぞれに対し,4期間(無関係な期間,試験の準備開始から試験前日,試験当日から試験終了,試験終了から結果を知るまで)においてどのような思考を抱いていたかについて,各1項目の自由記述を求める形式を用いた。その結果,いずれの試験においても期間ごとに同様の思考がみられ,各期間において代表的な記述カテゴリは,無関係期間(試験への準備,余裕),準備期間(試験への準備,試験形式・内容)試験当日から終了(時間配分,結果),終了から結果を知るまで(成績への自信・不安,無関心)であった。
  • 田中 観自, 渡邊 克巳
    セッションID: P1-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    ギャンブル依存症は今や大きな社会問題となっているが,健常者がギャンブル依存に陥る過程は未だに不明な点が多い.本研究では,感情抑制が後のギャンブル課題時のリスク選択に及ぼす影響を検討した.実験では,お笑い動画を実験刺激として呈示し,健常な実験参加者を自由に視聴させる統制群と笑うことを我慢させる実験群に分類した.動画視聴後,参加者は複数のリスクを考慮しながらサイコロの出目を選択できるギャンブル課題を行った.各リスクの選択回数に対して,実験条件と複数の性格特性を含めたモデリングを行ったところ,自己抑制ができると自己評価している参加者は,実験条件に関わらず低リスクの選択をする傾向にある一方で,統制群は実験群に比べて,全体的に低リスクの選択をしていることが明らかとなった.つまり,健常者は感情抑制を受けることで,性格特性とは半ば独立した形で,ギャンブル課題時に低リスクを選択しなくなることが示唆された.
  • 向居 暁
    セッションID: P1-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    私たちは、一般的に書いて(描いて)覚えること、つまり、視写学習を好む。視写学習には、その効果が認められる学習材料とそうでないものがあることがわかっている。本研究は、県の形と県名の対連合学習における視写学習の有効性の検討を目的とした。本研究の結果、県の形の視写学習は、その名称の再生を促進しなかった。県名の記憶を促進するためには、県の形に対する精緻化よりも、県の形と県名の項目間処理が必要だと考えられる。
  • 鄭 暁琳, 杉村 伸一郎
    セッションID: P1-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    鈴木(1996)は、5歳から12歳の子どもを対象に,呈示された対象を反対側の机に再構成する課題を行い、幼児における空間の捉え方が発達とともに絶対的から相対的になり、7歳以後相対的に一貫することを明らかにした。しかし、鄭・杉村(2013)は、4~6歳児に同じ課題を行ったところ、41%の4歳児は、すでに、相対的反応に一貫していた。鄭・杉村(2013)において,呈示机と再構成机の間に400cmの距離が離れてある。対照的に,鈴木(1996)において,呈示机と再構成机の間に100cmくらい離れている。距離が長い場合,移動後,符号化過程で参照した見えが見えなくなるため,環境の手がかりより自己の身体情報が安定している。そのため,相対的反応が高くなる可能性がある。そこで本研究では,移動距離が子どもの反応に影響するかどうかを検討する。
ポスターセッション2
  • 杉本 光, 重宗 弥生, 月浦 崇
    セッションID: P2-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    他者との競争により記憶は促進される.しかし,他者に勝利することへの期待が競争による記憶促進効果に与える影響や,その影響と他者に勝利することの達成動機(競争的達成動機)との関係は明らかではない.本研究では,記憶課題において他者へ勝利する期待の高さを操作し,競争的達成動機が高い参加者と低い参加者を比較することで,これらを検証した.参加者は,勝利の期待が高い条件(高期待条件)と低い条件(低期待条件)で他者と競争する条件としない条件で単語を記銘し,その後に単語の再認と主観的な達成動機の評価を行った.その結果,高期待条件においてのみ競争による記憶の促進効果が有意に認められた.また,この記憶促進効果は,競争的達成動機が高い参加者群においてのみ有意であった.これらの結果は,他者に勝利することへの期待が高い場合に競争によって記憶は促進され,その効果は競争的達成動機の個人差によって異なることを示唆している.
  • 作田 由衣子, 山田 涼子, 稲葉 善典, 赤松 茂
    セッションID: P2-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    顔の再認能力には個人差があり、日常生活の中で化粧や経年変化などで見た目の印象が変化しても人物を同定できる人と、同定しづらくなる人がいる。本研究では、日常場面において顔の再認能力の高い人は、表層的な変化にとらわれず人物固有の情報を抽出できるため同定の成績が高いのではないかとの考えのもと、再認実験を行った。テスト時には、記銘時と全く同一のターゲット刺激、顔の印象を変化させたターゲット刺激、新奇刺激を提示した。なお、顔画像に対する視線パターンも計測した。実験の結果、再認が正確な実験参加者は印象を変化させたターゲットに対するフォールス・アラーム(FA)が新奇刺激に対するFAよりも高いのに対し、不正確な参加者はどちらに対しても同等のFAを示した。つまり、再認が正確な人は見た目の印象が変化した人物を未知の人物とは区別することができるが、再認が不正確な人は両者を区別できない可能性がある。
  • 岩木 信喜, 田中 紗枝子
    セッションID: P2-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    語彙学習事態において、エラー反応の視覚的確認が正答の学習を阻害するかどうかを検討した。古典的なA-B/ A-Dパラダイムによれば、手がかりと反応は“A-B”を形成し,手がかりとターゲットに当たる“A-D”の記憶に順向干渉を生じるはずである。実験1と実験2において、参加者に漢字熟語(160語)を一度に一つ口頭で読ませ、誤っていた場合には正答だけをフィードバックするか(反応FBなし条件)、反応と正答をフィードバックした(反応FBあり条件)。また、反応にどの程度自信があるかを確信度として試行ごとに測定した。その結果、再テストにおける確信度を込みにした平均手がかり再生率は、いずれの実験においても反応FBあり条件の方が有意に高かった。つまり、エラー反応の視覚的確認が正答の学習に順向干渉を生じることはなく、むしろ、その学習を促進することがわかった。
  • 浅野 昭祐
    セッションID: P2-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    不完全な画像に基づいてターゲットを生成することで,ターゲットの記憶が促進されるという,画像の生成効果は,再生,再認,ソースモニタリングといった顕在記憶課題を用いた研究で報告されている。しかしながら,不完全な画像に基づいてターゲットを生成することで,ターゲットの無意図的・無意識的な記憶の利用が促進されるのか否かについては,ほとんど明らかになっていない。
    そこで,本研究では,画像の生成効果が概念的な潜在記憶課題において生起するか否かを検討した。その結果,概念的な潜在記憶課題においては生成効果が示されなかったが,同一の手がかりを用いた顕在記憶課題においては生成効果が示された。 潜在記憶課題と顕在記憶課題の間で生起パターンが異なったことへの解釈として,生成時に処理(が促進)された情報を,無意図的・無意識的に利用するためには,より特定的な検索手がかりが必要である可能性が挙げられる。
  • 大藤 弘典
    セッションID: P2-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では空間記述を用いて、ルート視点と空間視点で構成された空間表象を支える認知資源を調べた。実験参加者はある街状の環境について説明した文章を音声で聞き、その後、文章中のランドマークと方向が空欄になったテスト用紙を受け取り、空欄を埋める作業を行った。環境の説明は、環境内を移動する行為者の視点(ルート記述)か、真上から環境を見下ろす鳥瞰的な視点(サーベイ記述)で行われた。また、視覚パタンテストとコルシブロックテストを用いて、参加者ごとに視空間ワーキングメモリの空間容量と視覚容量が測定された。実験の結果、全体としてルート記述は空間容量に、サーベイ記述は視覚容量に依拠して処理されることが示唆された。
  • 羽渕 由子
    セッションID: P2-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
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    本研究は,病院薬剤部において医薬品取り揃え時に発生する取り間違いエラーについて,発生を予測し,防止策を提案することを目的とした。医療機関において約2か月間に発行された処方箋から,層化無作為二段抽出法によって約1000枚の処方せんを抽出し,処方された医薬品の組み合わせを共起ネットワークとして描画し,実際の取り間違いデータと比較した。検討の結果,正しい処方医薬品と取り間違われた医薬品は特定の症状で処方される医薬品との関連が強いネットワーク上にあることが示された。いわゆる“思い込み”エラーとして,薬剤師が医薬品を取り間違える要因の一端が明らかになった。
  • 鍋田 智広
    セッションID: P2-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    特性的楽観性は,健康心理学や臨床心理学において,身体的・精神的に肯定的な影響をもたらすことが多く報告されているものの,その認知的メカニズムは明らかではない。本研究では,特性的楽観性が肯定的影響をもたらす基盤として虚偽記憶を取り上げ,特性的楽観性が虚偽記憶に与える影響を検討した。実験参加者はポジティブ語,ネガティブ語,中立語からなる虚偽記憶リストを学習し,その後,再認テストを受けた。その結果,ポジティブ語,ネガティブ語の虚偽記憶については特性的楽観性との相関は認められなかったものの,中立語の虚偽記憶において特性的楽観性と有意な負の相関が認められた。特性的楽観性が高い個人ほど虚偽記憶が少ない結果は,特性的楽観性における身体的・精神的な肯定的影響は,記憶情報の判断を正確にすることによってもたらされる可能性を示唆している。
  • 久保田 貴之, 中島 早紀, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    中島・漁田・漁田(2015)は,再認弁別におけるビデオ文脈依存効果が手がかり負荷の増大にともなって消失することを示し,手がかり負荷の増大にともなう手がかり強度の低下をアウトシャイン原理の影響と推測した。本研究は,この推測の妥当性を検証することを目的とし,同じ手がかり負荷のもとでも,項目手がかり強度を下げることでビデオ文脈依存効果が生じるかを調べた。実験は,中島ら(2015)の手がかり負荷18条件の材料および手続きを踏襲したが,項目の提示時間のみ,中島ら(2015)の4秒/項目から1.3秒/項目に変更した。実験の結果,手がかり負荷が同じであっても,項目の提示時間が短い場合には再認弁別においてビデオ文脈依存効果が生じた。この結果は,中島ら(2015)の推測の妥当性を高めるとともに,ビデオ文脈依存再認がアウトシャイニングを支持することを意味している。
  • 佐野 司
    セッションID: P2-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,日誌法により大学生のライフイベントを対人領域,達成領域に分けて記載させ,それぞれの想起過程に関わる事象の相違を検討することを目的とした。また,各イベント想起時の記憶の鮮明さや感情喚起度などと,個人の抑うつ度との関係についても検証した。日誌に記載したライフイベントの再生率は対人・達成領域間に違いはなく,また抑うつ度による再生率の相違も認められなかった。一方で抑うつ傾向の高い実験参加者は,再生テスト時におけるイベント想起の鮮明度および感情喚起度が低いことが示された。この結果はWilliams(1996)の抑うつ傾向と記憶の概括性の論点から考察された。
  • 相澤 裕紀, 内藤 佳津雄
    セッションID: P2-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では視覚的作動記憶における保持の新たなオンライン指標として瞳孔サイズが有効かを検討した。実際に Unsworth and Robinson (2015) は変化検出課題中に保持した対象の数の増加に伴う散瞳を報告している。実験1では Unsworth and Robinson (2015) の追試として変化検出課題遂行中の瞳孔サイズの測定を行い,保持対象の数が多い条件で遅延期間中の持続的な散瞳を示した。この結果が見本配列の呈示に伴う刺激の物理的な明るさの変化や符号化処理による可能性を排除するため,実験2では実験1と同様の配列を提示して視覚探索課題を行った。その結果,保持を求めない場合には持続的な散瞳が認められないことを示した。符号化した情報を視覚的作動記憶に保持している場合には瞳孔サイズの持続的な散大が生じ,保持を求めない場合には散大が持続しないことから,瞳孔サイズが視覚的作動記憶における保持のオンライン指標として有用であることが示唆された。
  • 島根 大輔, 都築 誉史
    セッションID: P2-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,事件を目撃した人の記憶に基づくはずの目撃証言の信頼性が,なぜ低くなってしまうのかに着目した。これには,事件・事故の目撃による情動の喚起が,記憶を抑制することが関連している。多くの実験研究では,情動喚起刺激を全実験参加者が容易に知覚できる状態で提示することで,その情動喚起が記憶に与える影響を検討してきた。しかし現実場面では,目撃者は多くの刺激が存在する場面において,情動喚起刺激に選択的に注意を向けるのである。そこで本研究では全実験参加者に同じ映像を呈示し,その映像内に呈示された情動喚起刺激に気付いたかどうかで群わけを行い,その映像の全ての内容についての記憶テストを行った。その結果,情動喚起刺激を目撃した群のほうが目撃していない群よりも記憶が抑制されていた。この結果は,現実の目撃場面においても実験場面と同様の情動による記憶抑制が生じることを示唆している。
  • 山本 晃輔, 富高 智成
    セッションID: P2-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,匂い手がかりによって喚起される過去および未来の事象に加齢が及ぼす影響について検討した。大学生186名と高齢者79名を対象に日誌法を行い,日常生活の中で匂い手がかりによって喚起される過去および未来事象の記録を求め,それらについて鮮明度や重要度等の特性を評価させた。若年者と高齢者における過去および未来事象の諸特性を比較した結果,過去と未来の両方において,若年者の方が高齢者よりも快でかつ重要であり,鮮明な特性をもつ事象が喚起されることが示された。
  • 神谷 俊次
    セッションID: P2-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,不随意記憶現象を確実に捉えることのできるフィールドインタビューを2回実施し,不随意記憶の生起頻度の個人差が安定したものであるのかどうかを検討することを目的とした。2回の不随意記憶想起数間には強い正の相関が認められ(r = .96,  p < .001),パーソナリティ特性や認知能力特性の安定性を示す相関係数と比較しても,1年の間隔をあけたフィールドインタビューで想起された不随意記憶数は個人内できわめて安定していることがうかがえた。不随意記憶は偶発的に生起すると考えられがちであるが,環境内の刺激を受容し,その刺激から過去のあるエピソードを無意図的に想起するプロセスにおいては,非常に安定したメカニズムが関与していることが推察された。
  • 三浦 大志, 松尾 加代, 伊東 裕司
    セッションID: P2-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    事件や事故の捜査には、正確で豊富な目撃情報の取得が重要な役割を果たす。Self-Administered Interview©の日本語版である目撃者遂行型調査は、目撃情報を効果的に取得できる質問紙である。目撃者は言語報告に加え、スケッチを用いた報告も行う。本研究では、目撃者遂行型調査の効果に個人差があるかを検討するため、言語型-視覚型質問紙を用いて、認知スタイルが目撃者遂行型調査に及ぼす影響を検討した。65名の実験参加者が、架空の事件のビデオの内容を目撃者遂行型調査で再生した。その結果、スケッチによる報告を含めない正答数は言語型群と視覚型群で同程度であったが、スケッチによる報告の正答数は言語型群より視覚型群の方が多い傾向にあることが示された。目撃者遂行型調査による記憶の想起は、認知スタイルが視覚型である目撃者に対してより効果的である可能性が示唆された。
  • 中山 友則
    セッションID: P2-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,実験では意図・偶発学習パラダイムとDRMパラダイムを組み合わせ,さらに指示忘却教示を与えた。この二つの組み合わされたパラダイムでは単語を対呈示し,一方を意図的に学習し,もう一方を偶発的に学習することで,相対的により意識的な処理と,より自動的な処理を参加者内で同時に検討する。これまでの研究から,虚再認は意識的な側面に影響されることが明らかとなっている。そこで本研究では,意識的に忘れることを要求する指示忘却の影響を検討した。また,再認テストでは指示忘却が得られにくいことから再生テストを用いて検討した。実験の結果,忘却教示を行うことで虚再生率のみ減少した。正再生で差が得られなかったことから,指示忘却教示は虚記憶に選択的に有効となる可能性が考えられる。しかし,指示忘却により正再生が減少する研究報告とは一致しない点もあり,さらなる検討が必要である。
  • 漁田 武雄, 高橋 高大, 久保田 貴之, 漁田 俊子
    セッションID: P2-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    漁田・深沢・漁田(2015)は,2種類の学習時間で,匂い文脈依存再認を調べた。その結果,符号化特殊性原理で説明可能な結果パターンを示した。ただし場所文脈(Isarida, Isarida, & Sakai, 2012)とは異なり,長い学習時間でも有意な文脈依存再認が生じた。これは,アウトシャイン原理の影響を受けた場所文脈よりも,匂い文脈が強い手がかり効果を有することを示すようにも見える。そこで本研究は,項目手がかり強度を高め他条件での匂い文脈依存再認を再検討した。このため漁田ら(2015)のリスト長40よりも短いリスト長30を用いた。その結果,リスト長30では匂い文脈依存再認が生じなかった。さらに,匂い,場所,BGMというグローバル環境的脈における文脈依存再認の効果サイズが,DC条件のHit率(項目手がかり強度の推定値)とともに低下することを,回帰分析で見いだした。
  • 望月 正哉, 相澤 裕紀
    セッションID: P2-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    英語の文章刺激を用いた再認記憶課題では,二人称の主語の文のほうが,一人称,三人称の主語の文よりも成績が良いことが示されている。これは二人称の主語が読み手の感覚運動経験に関するシミュレートを促進するためであると解釈されている。本研究では,再認記憶に対する主語の効果が主語を含まないこともある言語の一つである日本語文でも起こるのかを検討した。参加者は「私」「あなた」「彼/彼女」で始まる文章を読み,記銘した。10分間の遅延課題を受けた後,参加者は主語を落とした文に対する再認課題を受けた。その結果,先行研究とは異なり,再認の感度は主語の違いによって差異がみられなかった。この結果は,日本語文では視点に関する心的シミュレーションが生起しない,もしくは生起しても再認記憶へは影響を与えないことを示唆している。
  • 伊藤 美加
    セッションID: P2-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    リスト法による指示忘却における忘却方略の違いを検討した。実験参加者は,忘却セッションでは第1リスト提示後にリストを忘れるよう提示され,その後に第2リストを学習した。その際に,第1リストを「考えないように」指示される抑制方略条件と,第2リストを「憶えるように」指示される代替方略条件といずれかに割り当てられた。記銘セッションでは第1リストも第2リストも記銘するよう提示された。いずれのセッションでも,リスト学習後,全ての刺激に対する再生テストが行われた。その結果,代替方略条件では,忘却手がかりが提示されたリストは記銘手がかりが提示されたリストよりも記憶成績が低くなるという指示忘却効果は認められたのに対し,抑制方略条件では認められなかった。
  • 田爪 宏二
    セッションID: P2-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    単語-線画干渉課題に反応遅延間隔(RDI)を導入して刺激の処理と反応活動とを分離し,単語の読みとカテゴリー判断を求めた際の処理過程について検討した。課題では,参加者は単語-線画刺激の呈示後,一定のRDIの後に反応を開始した。干渉における意味関連効果を明らかにするために,ターゲットとディストラクタの組み合わせにより,呈示条件としてカテゴリー一致(SC),カテゴリー不一致(DC),完全一致(SS),統制(C)条件を設けた。
    実験の結果,RDIの増加とともに反応潜時や干渉は減少したが,単語の読みとカテゴリー判断とでは干渉のパタンはが異なっていた。これらの結果を踏まえ,線画と単語の処理の特徴について考察した。
  • 玉木 賢太郎, 内藤 佳津雄
    セッションID: P2-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    修正版スタンバーグ課題における手がかりの影響を検討した。この課題では,2つのリストを覚え,指示されたリストにプローブが含まれるかどうかを判断する。Oberaeur(2001)は,指示されなかった(不一致)リストのセットサイズ効果が,リストの指示とプローブ提示の間隔(CSI)が1,000 msで消失することを示した。これは,不要な情報がワーキングメモリから排除されるためと解釈される。この課題ではリストの指示に色を手がかりとするが,玉木・内藤(2015)では,色手がかりに加え位置手がかりを用い,ワーキングメモリの競合を増大させた。その結果,CSIが2,000 msの時点で不一致リストの効果が認められ,排除が遅れたことが示唆された。しかし,この結果には手がかりの種類が交絡している可能性があり,本研究では手がかりの種類を比較した。実験の結果,手がかりの種類の効果は認められず,修正版スタンバーグ課題においては,手がかりの種類が情報の排除に影響を与えないことが示唆された。
  • 蒔苗 詩歌, 河西 哲子
    セッションID: P2-21
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    心的回転課題の成績は,視覚手がかりにより身体への見立てが可能なとき向上することが知られる。蒔苗ら(2015)はこのような身体への類推には男女差があり,身体化を促す視覚手がかりの有効性に個人差があることを示した。今後,身体化のための視覚手がかりの利用に関する発達過程を調べることを目指し,本研究はパーソナルコンピュータを用いた実験よりも,時間的・身体的制約が少なく簡便に行える紙の検査を作成し,心的回転課題における身体化を捉えることができるのかを検討した。検査用紙には,標準刺激と4つの回転刺激があり,キューブの上部に顔があるものとないもの,また全体形状が身体模倣可能なものと不可能なものがあった。課題は標準刺激と同じ形状を回転刺激から2つ選択することだった。大学生189名を対象にした結果,顔の付加と模倣可能性による統計的に有意な成績向上が認められ,作成した検査の有効性が示唆された。
  • 成人自閉症者を対象とした研究
    山本 健太, 増本 康平
    セッションID: P2-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    「拍手をする」などの行為文を憶える際に,単に言葉だけで憶えるよりも,行為文を実演しながら憶えた方が記憶成績がよい。これを,実演効果という。これまでの研究から,自閉症スペクトラム障害者(ASD者)は自己に関する記憶が低下していることが報告されている。そこで本研究では,ASD者の自己に関する記憶の低下が,符号化処理の問題であるのか,文脈情報の記憶の問題であるのかの2点を検討することを目的とした。ASD者9名(平均年齢30.3歳:SD=7.97)に対し,文を聞いて憶える言語条件,動作を見て憶える観察条件,動作を行って憶える実演条件を設定した。記銘直後と一週間後に自由再生テストと情報源再認テストを実施した。実験の結果,再生・再認ともに実演効果がみられた。これらの結果から,ASD者の自己に関する記憶の低下は,符号化処理や文脈情報の区別の問題ではないことが示唆された。
  • 武野 全恵, 奥田 絵美子, 北神 慎司
    セッションID: P2-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    時間的距離が遠いとスキーマを使って多くのオブジェクトが思い出され,実際よりも再構成された場所の面積は大きくなる。解釈レベル理論によれば,時間的距離を含む心理的距離が遠い場合は,抽象的な特徴を使って出来事を表象化する(高次解釈)。もし場所の記憶の再構成に解釈レベルが関係するなら,高次解釈をした場合,スキーマを用いた抽象的な解釈が促進され,再構成した場所の面積は大きくなるだろう。そこで,本研究では解釈レベルの操作により,場所の記憶の変容が生じるかを検討した。実験では,卒業した中学校の校舎とグラウンドを同年代の実験参加者に解釈レベルの操作を間に挟んで2回描画させ,操作前後の校舎とグラウンドの面積比を比較した。その結果,部活動を外で行っていた人が高次解釈をしたとき,グラウンドの面積比が大きくなった。ここから,スキーマが十分に形成されている場所の記憶再構成は解釈レベルの影響を受けやすいと考えられる。
  • 山根 嵩史, 徳岡 大, 中條 和光
    セッションID: P2-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    Dweck (1986) の達成目標理論では,習得目標と遂行目標の分化が仮定されている。近年,これらの目標の違いが,記憶課題における項目処理に影響を及ぼすことが見出されている。本研究では,DRMリストの虚記憶を指標として習得目標の下で項目の関連性処理が促進されることを検証した Tokuoka, Yamane, and Osumi (2016) について,実験事態を集団から個別に変更して追試を行った。その結果,先行研究の結果は再現されず,両条件の虚記憶の生起率に有意差は見られなかった。実験室における個別実験では,参加者の心的努力の程度が高くなると仮定した場合,達成目標の違いに関わらず,個々の項目を処理する毎に活性化拡散によってルアー項目の活性化が生じた,また遂行目標条件では,維持リハーサルによって強い活性化拡散が生じ,正再認率及び虚再認率が共に高くなった可能性がある。本研究の結果より,達成目標が項目処理に影響する際に,心的努力が媒介変数として機能する可能性が示唆された。
  • 喚起された覚醒度と自己関連付け処理との比較
    藤田 哲也, 加藤 みずき
    セッションID: P2-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,藤田・加藤(2015,認知心)と同様に,情動喚起刺激が元々持っている属性としての感情価・覚醒度だけでなく,感情価や覚醒度の評定行動自体が符号化としての効果を持つか否かをさらに検討した。藤田・加藤(2015)と同じく情動喚起刺激によって参加者が喚起された覚醒度と,その刺激に対する自己関連の程度の評定を求め,比較した。その結果,二つの処理の間には,自由再生成績における違いは見られなかった。すなわち,喚起覚醒度評定は,自己関連づけ処理と同等の符号化の効果を持つことが明らかになった。
  • 喚起された覚醒度と物理的処理との比較
    加藤 みずき, 藤田 哲也
    セッションID: P2-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,藤田・加藤(2016,認知心; 前件発表)で得られた結果が,相対的に有効な符号化の効果を示していることを確認するために情動喚起刺激によって参加者が喚起された覚醒度と,その刺激の物理的特徴として明るさ(brightness)の評定を求め,比較した。その結果,喚起覚醒度評定の方が自由再生成績が高くなった。二つの実験を通じて,喚起覚醒度評定には,自己関連づけ処理と同等かつ物理的処理よりも優れた符号化の効果を持つことが明らかになった。
  • 寺西 祐二, 川端 康弘
    セッションID: P2-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    記憶の検索において、検索対象と検索されるアイテムが強く関連しているほど検索確率や検索速度の成績が良くなることは多くの研究から知られている。中でも流暢性課題では、検索初期に比べ検索中期以降では検索にかかる時間が増加することや、ワーキングメモリ(WM)能力が高い個人は低い個人に比べて回答数が多くなることなどが知られている。本研究は、参加者は検索初期に無意図的な検索を行うことに着目し、検索初期の回答量とワーキングメモリ(WM)課題・時間ごとの検索数・既存の知識量との関係性を調べた。検索初期にすらすらと検索された回答の量はWM成績(r=0.24)・開始より3分までの回答数(r=0.41)・6分経過より9分経過までの回答数(r=0.32)とそれぞれ正の相関を示した。意外な結果として、既存の知識量はr=-0.27の負の相関を示し、検索可能な情報が多い人ほど初期の検索数が少ないことが示された。結果の一般性に関して、異なる参加者集団を対象として検討する必要がある。
  • 高瀬 愛理, 大山 潤爾
    セッションID: P2-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    複数刺激の動的な視覚短期記憶プロセスを調べるために,高速逐次視覚呈示(RSVP)刺激の呈示時間を短く正確に制御し,呈示速度が刺激とその順序の記憶に及ぼす影響を調べた.刺激は0~9の数字からランダムに選ばれた1~4つの数字であり,10~400ミリ秒で RSVP呈示した.若齢者(N=13, 平均年齢21.4) を対象に刺激系列の再生記憶課題を行った結果,刺激と順序が正しく記憶できる呈示時間よりも短い呈示時間で,各刺激の記憶精度は高く,順序だけが不正確な順序錯誤効果が見られた.また,記憶精度の段階によって,入れ替わりやすい順序に一定の傾向が見られた.同一被験者を対象に,記憶課題と同様の刺激を用いて知覚順序判断課題を行った結果,知覚順序判断が正確な呈示時間でも記憶順序の錯誤が起こることが分かった.本研究の記憶順序錯誤効果と,注意の瞬きや巡回系列順序錯誤等の先行研究を比較し検討した.
  • 小澤 郁美, 湯澤 正通
    セッションID: P2-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/17
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,大学生・大学院生を対象とし,言語的二重課題を用いてワーキングメモリの働きを阻害し,それが外部情報のソースモニタリングに及ぼす影響を検討した。40名の大学生・大学院生が実験に参加した (うち,実験群20名,統制群20名)。ワーキングメモリ課題と2回のソースモニタリング課題を実施し,ソースモニタリング課題では,異なる2人の発話者によって音声提示された単語刺激についてのソース判断を求めた。約1か月後に実施した2回目のソースモニタリング課題では,実験群にのみ,非単語を記銘させる言語的二重課題を行った。群 (実験群・統制群) × 言語性ワーキングメモリ (高・低) × ソースモニタリング (1回目・2回目) の3要因分散分析を実施した結果,群とソースモニタリングの交互作用が有意傾向であり,ソースモニタリング課題2回目において,統制群よりも実験群の得点が低く,二重課題の影響が見られた。
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