認知リハビリテーション
Online ISSN : 2436-4223
5 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特別寄稿
  • 入來 篤史
    原稿種別: 特別寄稿
    2000 年5 巻 p. 2-18
    発行日: 2000年
    公開日: 2024/12/20
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    ある種の類人動物の脳のサイズが大きくなったのは,進化の歴史からみると比較的最近のことであり,両足での歩行と,それにともなってあらわれる道具の使用が,脳の進化をもたらしたと考えられる。大きな脳を持った人間が新しい生活方法を見い出したというよりは,むしろ,道具の使用,地上生活,狩猟生活が人間の脳を大きくさせたのである。つい最近発見された類人動物の化石を研究した結果得られたもっとも重要な知見は,まさに上述のことであり,またこの知見は人間の行動やその起源を説明する上でも,非常に大きな意味をもっているように思われる。……(中略)……重要な点は脳の大きさが,頭蓋内の容量で比較される限り,道具の使用製作後はおよそ3倍になってきていることである。……(中略)……近代人をして近代人たらしめているものは技術的な社会生活の結果であり,技術的社会生活が脳の重さを3倍にし,顔を小さくし,身体その他の構造を変えたのである。

    Washburn & Howell, 1960 (Buruner et al., 1956; 岡本夏木ら訳「認識能力の成長」,1977より)

総説
  • 大東 祥孝
    原稿種別: 総説
    2000 年5 巻 p. 19-28
    発行日: 2000年
    公開日: 2024/12/20
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    昨今その臨床診断のあり方に大きな変化が生じつつあり,それに伴う概念上の混乱が鮮明になってきた「同時失認」について,再検討を行なった。同時失認の現在とその発端を探ることにより,その捉え方に, 1) 細部の視覚的認知ができるにもかかわらず情況画の意味理解が困難という病態と, 2) 複数の視覚対象を同時に認知することの困難という病態の,大きな二つの流れのあることを指摘した。最近は,後者との関連で,Bálint症状群における視覚性注意障害を同時失認とみなす傾向が強いけれども,臨床的には,情況画の認知障害という視点が重要であることを強調した。とりあえず混乱を回避しておくために筆者は,同時失認を, 1) 意味障害優位型, 2) 知覚障害優位型, 3) 注意障害優位型,の三臨床類型に区別して捉えておくことを提案したい。2) は,Farahの腹側型に, 3) は背側型に,概ね相当する。1) の意味障害優位型は,井村らの「視覚失認の象徴型」に代表されるような類型である。

  • 池田 学
    原稿種別: 総説
    2000 年5 巻 p. 29-36
    発行日: 2000年
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    Pick病をはじめとする前方型痴呆は,脱抑制や常同行動などの特徴的な行動異常により,処遇の最も困難な疾患と考えられている。しかし,Alzheimer病のような全般性痴呆と異なり,保たれている機能と障害されている機能が鮮明に分かれるので,保たれている機能を強化し,障害されている機能を逆に利用したり適応的な行動に変容させたりすることにより,質の高いケアが可能となる。また,損傷部位によって症例ごとに多様な症状を呈する脳血管性痴呆とも異なり比較的均ーな症状を呈するので,共通のケアやリハビリテーションの手法を用いることが可能である。まず,前方型痴呆の主症状を整理した上で,作業療法を中心としたケアやリハビリテーションの要点を述べ,病初期にはコミュニケーションの障害が前景に立つ側頭葉の限局性萎縮例における言語療法の可能性を検討した。最後に,選択的セロトニン再取り込み阻害薬を中心とした薬物療法について紹介した。

  • 福澤 一吉
    原稿種別: 総説
    2000 年5 巻 p. 37-44
    発行日: 2000年
    公開日: 2024/12/20
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    一般に,我々が何らかの主張(結論を出す)を行う場合,その背景として主張を支持する根拠を示す。これに加えて,フォーマルな議論を展開するには主張とそれを支持する根拠との間を論理的に結合するための論拠(仮定)が更に必要となる。ここでいう論拠とは仮定の集合にほかならず,科学的説明における理論と等価である。フォーマルな議論を展開するのであれば神経心理学的議論もこの図式に則る必要があろう。しかしながら,経験科学的色彩のつよい従来の神経心理学では根拠となる患者の症状と病巣の収集に焦点が当てられており,明確な論拠(仮定)なしに症状についての解釈が進められてきた。単なる経験的事実の蓄積だけでは症状を理解し,説明することはできない。これからの神経心理学に必要なのは患者の示す症状の理論的理解であり,説明であろう。患者に対する訓練プログラムも理論からの演繹により生まれるのである。

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