ある種の類人動物の脳のサイズが大きくなったのは,進化の歴史からみると比較的最近のことであり,両足での歩行と,それにともなってあらわれる道具の使用が,脳の進化をもたらしたと考えられる。大きな脳を持った人間が新しい生活方法を見い出したというよりは,むしろ,道具の使用,地上生活,狩猟生活が人間の脳を大きくさせたのである。つい最近発見された類人動物の化石を研究した結果得られたもっとも重要な知見は,まさに上述のことであり,またこの知見は人間の行動やその起源を説明する上でも,非常に大きな意味をもっているように思われる。……(中略)……重要な点は脳の大きさが,頭蓋内の容量で比較される限り,道具の使用製作後はおよそ3倍になってきていることである。……(中略)……近代人をして近代人たらしめているものは技術的な社会生活の結果であり,技術的社会生活が脳の重さを3倍にし,顔を小さくし,身体その他の構造を変えたのである。
Washburn & Howell, 1960 (Buruner et al., 1956; 岡本夏木ら訳「認識能力の成長」,1977より)
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