留学生交流・指導研究
Online ISSN : 2758-4909
Print ISSN : 1343-4683
24 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 秋田県農家民泊の事例を基に
    市嶋 典子
    2022 年 24 巻 p. 7-19
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    本稿では、2019 年度に留学生交流事業として実施した、秋田県内の留学生・日本人学生が、農業体験をする農家民泊において、参加者(留学生、日本人学生、受け入れ農家の方)の間にどのような「相互文化性」が生成されていったのか、また、「相互文化性」が生成された要因は何かを明らかにした。分析の結果、①仲介を含む「他者とのやりとり」を重ねながら、②「個々の価値観を交換」し、③「対等な関係性」が構築されたことが確認できた。また、「相互文化性」について明らかになったことは、コミュニケーションにおける仲介者としての役割が固定的なものではなく、流動的なものであったこと、また、必ずしも、日本語能力や外国語能力が高い者が仲介役を果たしていたわけではなく、母語話者、非母語話者というカテゴリーを越えた仲介活動が行われていたとうことである。このような「相互文化性」を生成した要因としては、受け入れ農家の方の開放的な態度、実践知を挙げた。
  • 「ブローカー」の役割に着目して
    島崎 薫
    2022 年 24 巻 p. 21-34
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は地域社会と深く関わりを持った1 人の留学生の事例に焦点を当て、その学生がどのように地域社会に関わっていったのかについて、異なる文脈やコミュニティを行き来しながら学ぶという越境的学習の理論を用いて明らかにする。また、越境の際に複数のコミュニティや文脈をつなぐ役割を果たすブローカーがどのように越境を支援したのかにも着目した。本研究は、半構造化インタビューを行い、越境の支援者としてのブローカーの役割についてまとめた石山(2018)をもとに分析した。留学生は、越境過程の中でブローカーの役割を果たす、特定の1 人ではない複数人と様々な段階で出会い、支援を受け、時には留学生が相手から支援を引き出し、越境を果たしていた。また母国から日本の大学院へ、そして地域社会へと越境が2 段階になっていたことで、1 つ目の越境の経験をもとに、2 つ目の地域社会への越境を自分の力で切り拓いていくことができたと考えられる。
  • Brian David BERRY
    2022 年 24 巻 p. 35-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    The goal of this paper is to consider qualitative research within higher education institutions in Japan in response to the unique challenges of research done in and of these institutions; institutions which pose unique challenges to researchers due to the proximity to informants and the organization(s) in which the researcher is often involved. The author presents the most immediate needs for further qualitative research at Japanese HEIs (Higher Education Institution) and several of the challenges faced researching ETPs at Japanese universities; such research that is currently lacking but critical for the implementation of effective governmental education policies. The author then presents a discussion of tentative recommendations for addressing these risks toward creation of best practices.
  • 安 婷婷
    2022 年 24 巻 p. 51-63
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    留学生の増加に伴い、彼らへの支援が課題となっている。留学生への母語支援が不足している一方、彼らの援助要請への抵抗も言われている。そのなか、ウェブサイトなどによる情報提供の有用性や援助要請促進の可能性が検討されている。そこで、本研究では中国人留学生におけるインターネットを介した情報提供の有用性と援助要請促進の可能性を検討することを目的とした。ある日本語学校の中国人留学生328 名に、ウェブサイトを介して留学生活やメンタルヘルス関連の情報提供を行った結果、8 割以上の利用者がその有用性を評価し、23 名(44.2%)がウェブサイト利用をきっかけに相談室に来談した。また、利用あり群の方が利用なし群に比べて、専門家への援助要請意図が有意に強いことが明らかになった。これらの結果から、ウェブサイトによる情報提供の有用性と専門家への援助要請意図を促進する可能性が示唆された。また、ウェブサイトの利用をきっかけに実際の援助要請行動に至る結果から、ウェブサイトを介した情報提供が実際来談行動につながる可能性が示唆された。
  • 宮崎-バングラデシュ・モデル
    伊藤 健一, 田阪 真之介, 森下 祐樹, 鵜澤 威夫
    2022 年 24 巻 p. 65-79
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    地方における留学生就職では、留学生と地域の求める業種・職種の不一致という課題があった。そこで、宮崎大学、宮崎市、国際協力機構、地域企業等が連携してICT 分野を対象に渡日前教育と留学により高度外国人材の就業を支援する「宮崎-バングラデシュ・モデル」を実施した。渡日前教育B-JET では独自の日本語教材を製作・使用し、また日本的習慣を身に付けさせるために少人数クラスによる日本の小中学校のような時間割、教室運営とした。短期留学JIP では、日本語教育に加えてキャリア教育として就職予定企業へのインターンシップを行った。同時に、外国人に不慣れな受入企業側の異文化理解促進と受け入れ態勢の充実を図るため、企業担当者をチューターに据えた留学生の生活支援を行い、留学生・企業の双方が相互に学びながら高度人材の導入・受入れを進めるプログラムとした。 その結果、渡日前教育修了生の73%が日本企業へ、うち3 分の1 が宮崎県内企業へと就職した。
  • イギリスの学生とA 大学の学生が共に取り組むプロジェクトの事例分析を基に
    髙橋 美能
    2022 年 24 巻 p. 81-95
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    本稿では、約1 か月間イギリスの学生とA 大学の学生合計40 名が、オンラインでプロジェク トに取り組んだ事例を取り上げ、オンラインを通じた学びと課題を分析する。プロジェクトでは、 誰もが当事者となって考えることのできる「人権」をテーマに取り上げた。課題は「参加者にとって身近な人権問題について考え、グループで話し合って問題点を絞り、解決策を考えて発表すること」であった。直接会ったことのない学生が、オンラインでプロジェクトに取り組む中で、言語の壁を経験し、時差を乗り越えて時間を調整して共に活動することは簡単ではなかった。しかし、最終発表という目標を達成することで、参加学生にプロジェクトの成果も得られた。プロジェクト終了後のアンケートから、参加学生に人権の理解や異文化・他者理解の深まり、他者と共に学ぶ力やコミュニケーション能力の向上が確認された。一方で、オンラインの活動では学生同士の交流が深まらないといった課題も残された。本事例考察を通じて、オンラインのポテンシャルを確認しつつ、今後は学生間の交流を促進させるために、教員による仕掛けの工夫とサポートの必要性が示唆された。
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