本稿は,発刊して約10年が経過した土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」について,これまでの活用実績と最新の情報を取り入れて改訂したコンクリートライブラリー145号「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針[2016年版]」を概説したものである。改訂版は,コンクリートの施工や材料に関する最新の情報も取り込み,現場技術者の実務に役立つように改訂されただけでなく,設計段階における設計における施工性の考慮の内容も新設した章に明記している。また,施工性能をスランプ試験以外で評価する方法について併せて検討され,「ボックス形容器を用いた加振時のコンクリートの間隙通過性試験方法(案)(JSCE-F 701-2016)」として土木学会規準が制定された。
混和材を大量に用いた低炭素型のコンクリートを適用したコンクリート構造物の設計・施工方法を確立することを目的として,9機関による共同研究を実施した。実験や解析によって得られた検討結果に基づき,「低炭素型セメント結合材を用いたコンクリート構造物の設計・施工ガイドライン(案)」を提案した。ガイドラインでは,国内で一般的に用いられているセメントと比較して混和材の置換率を高めて材料製造時の二酸化炭素排出量を削減した結合材を「低炭素型セメント結合材」と定義し,これを適用したコンクリート構造物の設計および施工の原則と配慮することが望ましい事項を示した。
石炭火力発電設備等から産出されるフライアッシュは,耐久性や施工性の向上など,コンクリート混和材として多くの利点がある。また,コンクリートの長寿命化や天然資源材料の削減により,環境負荷低減にも貢献すると考えられている。石巻工場において,自家発電用の石炭ボイラーの燃焼灰を加熱改質したフライアッシュの生産を開始した。本稿は,加熱改質フライアッシュを使用したコンクリートの基礎的実験結果をまとめたものである。
コンクリート構造物の耐久性に大きな影響を及ぼす表層部の品質は施工要因の影響を大きく受ける。本稿では,表層部の品質を目視で評価し,PDCAにより品質の向上につなげるための目視評価法について紹介する。なお,橋脚や橋台などの一般構造物用と,トンネル覆工コンクリート用に開発された目視評価法を説明する。目視評価法が活用された品質確保の試行工事において明らかとなった目視評価法の特徴について述べ,実際の試行工事で見られた施工者の工夫やその効果を紹介する。
容量22万kLの大規模なLNG地下式貯槽の建設にあたり,高強度な鉄筋およびコンクリート等を採用することで,当工場の既存タンクに比べ各部材の躯体厚さを最大20%薄肉化した。また,各部材の施工に際しては,それぞれの施工上の課題を抽出し,連壁では計測管理の強化,底版では大量施工における詳細な施工計画の立案と施工管理,高密度な配筋を有する側壁では試験施工による施工方法の検討等の対応策を講じた。その結果,延べ85000m3のコンクリート施工を計画通りに実施できた。本稿では,躯体の薄肉化に関する設計および各部材のコンクリート施工の概要について報告する。