2015年12月に,「壁式鉄筋コンクリート造設計・計算規準・同解説」が「壁式鉄筋コンクリート造設計規準・同解説」「壁式鉄筋コンクリート造計算規準・同解説」ならびに「壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造設計規準・同解説」の3つの規準を纏めた形で刊行された。本規準は,耐震性に優れる現場打ちの壁式鉄筋コンクリート造およびプレキャスト壁式鉄筋コンクリート造建物の構造設計および構造計算の際に活用して頂くことを目的としている。本報告では,3つの規準を一つに纏めた設計・計算規準の要点を概説する。
欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)の加盟国域内において製品を流通させ,販売するための法規制に裏付けされた仕組みは,セメント,骨材,混和材料,およびコンクリート製品等の建設製品も含めて,ISO規格の制定を介して,我が国でも大きな影響を及ぼしている。各種のニューアプローチ指令が整合化されて,新しい法的枠組み規則(NLF:New Legislative Framework)が制定され,建設製品指令(CPD)は建設製品規則(CPR)に格上げして,より規制力の強い「規則」として制定された経緯とその内容について述べるとともに,NLFに基づくCPDからCPRの制定について解説する。また,CPRで不可欠となったCEマーキングの貼付に伴う品質性能宣言書について,化学混和剤の事例を紹介する。
著者らは,鉄筋コンクリート(RC)造のPCa工法を用いた施工において,柱と梁の接合作業を省力化した鋼繊維補強コンクリートを用いた省人化型接合部工法を開発し,2015年6月に実用化に至った。本工法では,3つの画期的な特長を有している。1)梁主筋を通し定着せずに,接合部内で梁主筋を機械式定着させる点,2)梁主筋間の接合部せん断補強筋を配筋しない点,3)接合部せん断強度および,梁主筋の定着強度を割り増すために繊維補強コンクリートを使用し,日本(建築分野)で初めて繊維補強コンクリートの効果を構造設計に取り入れた点である。本稿では,工法の概要から実用化に至った事例の概要について示す。
流し込み成型で最高の圧縮強度を得ることを目標に,新しいセメント結合材と製造法を開発した。最密充填を示す混合粉体を結合材とし,脱型直後の供試体に外表面から内部に水分を供給させてから熱養生を行うことで,450~464 N/mm2のきわめて高い強度を発現した。この硬化体の組成と細孔構造の分析から硬化組織のポアフリー化が確認された。また,球状化させたセメントを用いて結合材の充填性を向上させることで,500 N/mm2を超える強度発現も可能となった。今後,このポアフリーコンクリートを構造利用する上では脆性破壊を制御することが重要であり,例えば,新規の収縮低減剤やスーパー繊維との組合せを図ることも必要となる。
本稿では,各種の衝撃作用を受けるRC構造物の挙動について,数値解析を中心とした検討事例を述べる。一つ目は,道路上を立体交差するRC高架橋に自動車が衝突した場合,高架橋にはどの程度の損傷が生じるか検討した事例を示す。二つ目は,同じくRC高架橋に津波漂流物が衝突した場合の高架橋の損傷度について検討した事例を示す。三つ目は,津波避難タワーに漂流物が衝突した場合を想定し,津波や漂流物の衝突に有利な避難タワーの構造形式について例示する。さらに四つ目として,RC構造物の解体に放電衝撃破砕を適用した場合の検討事例について示す。
東海北陸自動車道において,現在4車線化事業を進めている白鳥IC~飛騨清見IC間は,標高が最大約1100mと高く,急峻な山間部を通過する高速道路である。そのため,道路構造物の設計,施工においては,これらの気候的および地形的な条件に配慮した高所および積雪寒冷地特有の品質管理および劣化防止対策,維持管理などの計画が必要となってくる。本稿では,トンネル構造物では非鋼材料繊維を混入した中流動コンクリートの施工計画に関する取り組み事例について,橋梁構造物ではI期線の橋梁調査結果に基づく橋梁計画や維持管理計画,高橋脚の施工計画に関する取り組み事例などについてを紹介する。