日本建築学会では,各種構造材料の火災時を想定した高温性状に関する情報を体系的に整理・取りまとめた「構造材料の耐火性ガイドブック 2017」(第3版)を2017年2月に刊行した。本ガイドブックでは,建築で用いられる構造材料を,コンクリート材料・鋼材・木質系材料・アルミニウム合金および新材料(FRP,ガラス,膜材料等)の5つに大分類し,火災時および火災後を想定した材料の高温性状に関する文献調査ならびに系統的な整理を行っている。本稿は,本ガイドブックの概要を報告する。
機械式鉄筋定着工法をせん断補強鉄筋に適用する技術について,筆者らの一部は,コンクリート工学1998年11月のテクニカルレポートにおいてその可能性について報告していた。その後,種々の構造物への適用を進めながら実績を積み上げてきたが,昨今,建設現場での生産性向上を目指す取組み「i-Construction」に有効な手法として,設計段階からの採用が望まれるようになっている。本稿では,機械式鉄筋定着工法の適用実績について紹介するとともに,性能の評価方法,使用方法に関する最新の研究について報告する。
建設現場にも生産性の向上を求められている中で,新東名高速道路の建設現場においても計画当初からオリンピック前の人手不足が想定されたため,現場での省力化を目的にプレキャストを積極的に採用している。本稿では,プレキャストセグメントによるUコンポ橋の施工,品質管理に関する工夫や,維持管理のしやすさなどについて述べるとともに,従来形式の橋梁と比較して生産性向上について検証を行ったので報告するものである。
中日本高速道路は,日本の産業・経済に不可欠な存在である高速道路ネットワークの機能を今後も永続的に活用できるように,高速道路リニューアルプロジェクト(大規模更新・大規模修繕事業)に着手している1)。東名高速道路用宗高架橋(下り線)P7~A2間の床版取替え工事は,今後の高速道路リニューアルプロジェクトの円滑な全面展開に向けたパイロット工事との位置付けで,予防保全および性能向上の抜本的な対策として計画された。本稿では,既存の道路空間を最大限に有効活用し,片側二車線ずつの対面通行規制による交通運用により,無事故・無災害でしゅん功した鋼橋床版取替え工事について詳述する。
東海北陸自動車道 白鳥IC~飛騨清見IC間4車線化事業において,日本一の高橋脚を有する鷲見橋(II期線)が建設中である。当該地域は岐阜県内でも有数の積雪地域に位置し,橋脚の建設にあたり冬季の12月から3月は積雪により施工期間が限られる現場条件から,工程短縮と品質向上を目的にハーフプレキャスト部材を適用した橋脚の急速施工(SPER工法)を採用した。本稿では,P 2橋脚におけるハーフプレキャスト部材を用いた急速施工について報告するものである。