土木学会コンクリートライブラリー148「コンクリート構造物における品質を確保した生産性向上に関する提案」が2016年12月に発刊された。ライブラリーは,現状の土木分野のコンクリート工の生産性を阻害している要因を抽出し,各方面に対して品質を確保した上で生産性の向上を図るための具体的な提案を取り纏めたものである。本稿では,ライブラリーの全体概要,ライブラリーの基本の考え方となる品質を確保した生産性向上の着目点,および設計・施工・プレキャストコンクリート・発注契約等に関する課題と提案事例の一部を紹介する。
稚内港にある北防波堤ドーム(延長427.6m)は,1936年に竣工,1978~1981年に全面改修,1999~2002年には柱部の耐震補強を中心とした改修が実施されている。全面改修から既に30年を越えて劣化が進み,2012年には銘板が落下するなど第三者被害にもつながりかねない事故が発生したことから,構造物の劣化状況の詳細調査と評価,優先度を考慮した適切な補修計画の立案が求められた。特に,本施設は北海道遺産等に選定され,稚内市の重要な観光拠点にもなっていることから,美観への配慮も求められる。本稿では,この施設の劣化状況の点検調査結果および評価とそれに基づいて立案した補修計画の考え方を紹介する。
五ケ山ダムは,福岡県筑紫郡那珂川町に建設中の重力式コンクリートダムである。本工事では,合理化施工法である巡航RCD工法の更なる高速化を図り,標準工程では26か月だった施工期間を3か月短縮して,23か月で約93万m3のコンクリートの施工を完了させた。巡航RCD工法において,コンクリート搬送装置・SP-TOMの導入,新規に開発した締固め機械の適用,RCDコンクリートの配合上の工夫により高速化施工を実現するとともに,建設機械の自動運転技術のフィールドとしても活用した。
「ウェブ・ウォール構造」とは鉄筋コンクリート造の壁に斜めの網目状に複数の開口を設けた耐力壁を有する構造形式で,耐震性とデザイン性を兼ね備えたものである。この構造を採用したのが体感型ミュージアム「NIFREL」である。「NIFREL」の外観デザインは生物を連想させる有機的なフォルムの外壁に多孔質な開口を配置し,展示空間を演出するとともに,日射負荷低減・照度確保,自然換気に配慮した構成としている。さらに開口形状を菱形とし,外骨格的な架構とすることで,地震時の外壁に作用する力を効果的に伝達させ,建物の安全性を確保しながらも,合理的な設計を実現することができた。この有機的な建物を具現化するためのその一端を示す。
平和記念公園内に設置された平和の灯は,「核兵器が地上から姿を消す日まで火を燃やし続けよう」と祈念して1964年に建設された鉄筋コンクリート製のモニュメントである。建設後52年が経過し,一部にひび割れや鉄筋露出が見られるようになったことを契機に,広島県コンクリート診断士会はボランティアで健全度調査を行い,長寿命化計画を管理している広島市へ提案した。本報告は診断士会会員63名で実施した健全度調査結果の概要を報告するものである。