2017年2月,日本建築学会「膨張材・収縮低減剤を使用するコンクリートの調合設計・製造・施工指針(案)・同解説」1)(以下,本指針(案))が発刊された。本指針(案)は,膨張材と収縮低減剤のいずれか一方,あるいは両方を使用するコンクリートの,調合,製造・運搬,施工,品質管理などの方法を合理的に決定するための技術標準を示し,コンクリートの収縮低減を図るとともに,コンクリートの収縮に起因するひび割れを抑制することで,コンクリート構造物の品質向上に資することを目的としたもので,2015年より改訂に向けた検討が行われてきた。本稿ではその制定内容および経緯について概説する。
持続可能なリサイクルシステムを構築するためには,構造物のライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から,①安全性と品質の確保,②環境負荷の低減,③コスト削減の3つの目標を達成する必要がある。本報は,コンクリート塊から製造した低品質再生骨材の構造用コンクリートへの利用を主体としたリサイクルシステムを構築した結果を示す。具体的には,コンクリート塊を従来の道路路盤材等の再生砕石等への利用に加え,骨材置換法による低品質再生骨材を用いて構造用コンクリートに利用するものである。実際の大規模利用を通じて,資源循環技術において,その実現が困難とされていた3つの目標を達成することができた。
著者らは,大断面ボックスカルバートでの生産性の向上(構造の合理化・施工の省力化)を図るため,函体の側壁部に適用する,ハーフプレキャスト構造の開発を行った。また,著者らは,このハーフプレキャスト構造のせん断補強方法を検討するため,想定側壁部材を1/4に縮小した試験体により,せん断補強方法をパラメータとしたせん断実験を実施した。その後,ハーフプレキャスト構造がRC構造と同等以上の曲げ性能を有していることを確認するため,せん断実験と同様に1/4スケールの試験体を用いて,曲げ実験および軸力を導入した軸曲げ実験を実施した。
斜張橋やエクストラドーズド橋の斜材は,比較的高所にあることから,近接目視による点検に高所作業車が必要になったり,ロープアクセス技術が必要になったりして,目視点検が困難な箇所が多くある。また,斜材に用いられている高強度鋼線は,劣化因子の侵入などにより腐食したり応力変動により疲労したりして破断するおそれがあるが,保護管内の鋼材の変状を点検するためには,効率的な非破壊検査機器が必要となる。本稿では,高所にある斜材の目視や高強度鋼材の変状を簡便に調査することを目的として開発した自走式斜材点検装置について述べる。
複雑な凹凸リブ形状を有する外壁打放しコンクリートを,現場打ちコンクリートで施工した事例について報告する。リブ躯体は梁・壁部分の縦リブおよび柱部分の横リブで構成されており,施工性などの観点からリブ寸法や配筋等の詳細について検討した。また,本施工に先立ちリブ躯体の先行試作体を作製し,コンクリートの充填性や脱型方法などの確認を行った。一方,本工事では,多数の構造スリットにより打込み工区割が細分化し,工程調整が難しくなるという課題もあったが,施工方法などを工夫したことで予定工期内に上棟した。本施工のリブ躯体については,コンクリートの良好な充填が確認できた。
本工事は,地下鉄の列車の運行経路の平面交差を解消することを目的に,既設駅部のボックスカルバートの両側に新たな躯体を構築した後,既設の側壁を撤去し駅部を拡幅する改築工事である。本報告では,既設壁撤去から拡幅部の中柱設置までの期間の受け替え工として実施したPC鋼棒による「中床版の吊り補強工」,および拡幅に伴う既設部の補強として実施した「ウォータージェット削孔による長尺アンカー鉄筋挿入工」について紹介する。これらの技術により,線路構内での作業を回避することができたため,安全性の向上,工期の短縮を図ることができた。
京都市東山区に位置する蹴上浄水場は,明治45年に完成し,一部を更新しながら現在も供用されており,平成19年に近代化産業遺産として認定されている。この浄水場内にある第1高区配水池は,創設期の姿を残している唯一の構造物で,当工事は,この歴史的建造物の外観を保持したまま,当配水池の改築更新・耐震化を行うものである。改築にあたり,既存の流入および流出弁室の2棟のレンガ建屋は,新設する両弁室の上屋として再利用する計画であったが,施工の支障となるため,曳家工法により移設,復旧した。本稿では,老朽化が顕著であったレンガ建屋の補強方法と曳家工法について報告する。