2017年7月から,国土交通省が発注する一般土木工事の鉄筋コンクリート構造物を対象に,「流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用に関するガイドライン」の運用が開始された。半世紀以上続いた積算基準のスランプ8cmが12cmに変わった。さらに,条件によって高流動コンクリートの使用を示した。究極のコンクリート工は,締固め不要の高流動コンクリートを用いた完全自動施工であることは自明である。しかし,積算基準のスランプが12cmになることで,コンクリート工の生産性が大いに向上すると期待されている。このガイドラインの技術的根拠として,土木学会制定の「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針[2016年版]」と「高流動コンクリートの配合設計・施工指針[2012年版]」が大いに貢献している。本稿では,このガイドラインと両配合設計・施工指針の関係について解説する。
長崎市からの委託により「供用不可まで劣化破損が進行したコンクリート構造物の補修・補強工法に関する研究委員会」が2015~2016年度に設置された。軍艦島は,2014年に国の史跡指定を受け,2015年に世界文化遺産の構成資産として登録されたため,委員会では,廃墟と化して残存する著しく劣化した鉄筋コンクリート造建築物群の保存方策に関して,技術的・文化財的な観点から様々な検討がなされた。特に,保存優先順位の高い3号棟,16号棟および65号南棟に対しては,具体的な補修方法,補強方法,および補修工事・補強工事の施工方法に関して具体的な検討がなされた。本稿は,それらの概要について取り纏めたものである。
コンクリート中のASRゲルの有無およびその性状を簡易に明らかにするために開発された二重着色法(ゲルステイン法)によってASRの進行過程の推定の可能性を検討した。本報告では,供試体の破断面に薬剤を塗布したときの着色状況からASRゲルの有無と分布を明らかにするとともに,着色の特徴と膨張過程との関係について考察した。薬剤を塗布した破断面をより詳細に観察するために,デジタルマイクロスコープを使用し,粗骨材および細骨材粒子内部や周辺のASRゲルの分布状況を明らかにした。その結果,薬剤を塗布した破断面の着色の特徴からASR発生の有無および進行程度の概略も把握できることが判明した。
大空間のアリーナ屋根部における鉄骨トラス架設時のベント支柱による仮受およびコンクリートに伝わるスラスト力低減のため,施工時解析によるジャッキダウン計画を実施し,施工管理を行った。また,アスリートモール屋根部に長さ約16mのS字型屋根PCがあり,片方に棒鋼を打ち込み固定,もう片方はすべり支承にて取り付けを行った。それらの施工計画および現場管理について報告する。
低炭素社会の構築に向けた取組みの一環として,ポルトランドセメントの一部あるいは大部分を高炉スラグ微粉末やフライアッシュ等の混和材で置き換えたコンクリートの利用が注目されている。そうした背景の下,筆者らはコンクリートに使用するポルトランドセメントの大部分を高炉スラグ微粉末に置き換えたコンクリートを開発し,施工現場への適用を行った。本稿では,高炉スラグ微粉末の置換率が70%である高炉スラグ微粉末高含有コンクリートの暑中環境下におけるフレッシュ性状の保持,寒中環境における強度発現に関する事前検討および現場施工結果について報告する。