2020年3月に,日本建築学会・RCシェル構造小委員会(構造委員会/シェル・空間構造運営委員会内)は “コンクリートシェル構造設計ガイドブック” の初版を発刊した。鉄筋コンクリートシェルは関連する設計・施工技術の進歩や自由度の高い形状へのニーズの増加もあり,ルーフシェルを始め,各種モニュメントや容器等への適用事例が進んでいる。一方,構造設計に際しては特別な設計ルートは用意されておらず,自由曲面等の新しい形式にも対応する構造設計のガイドを示すこととなったものである。本稿では,主要部分の紹介をする。
コンクリートの多様かつ複雑な内部の物性変化を解明するため,著者はX線CTに着目し,研究を行ってきた。近年,国内外でX線CTを用いたコンクリート内部の可視化に基づく考察も増えている。将来,構造物の定期健康診断や精密検査にも応用できる知見になるのではないかと考えている。本稿では,著者の実験経験を踏まえて,X線CT画像の撮影やその特徴,それを用いた活用事例の一端を紹介した。載荷荷重下では骨材の変形抵抗性の違いによる破壊過程を,また乾燥収縮では表面からの水分損失過程と体積変化を,そして水中凍結融解では膨張破壊過程を可視化できることを示した。
本報告は,高炉スラグ微粉末を10~70%の範囲で使用したコンクリートについて紹介する。本報告では,室内実験から高炉スラグ微粉末の種類や品質,使用率がコンクリートの諸性状におよぼす影響を,実機実験から実際の生コン工場での製造,施工性および模擬部材等の強度発現性を検討している。また,これらの結果から,高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートの調合設計および二酸化炭素の削減効果について考察した。近年,環境負荷低減のため様々な環境配慮型コンクリートの開発,実用化がなされている。本報告においても,このような観点から,製造・管理の簡易化など,広く適用可能な環境配慮型コンクリートの普及を目指すものである。
本稿で紹介するプロジェクトは,J1で活躍するセレッソ大阪のホームスタジアムである「長居球技場」の改修工事である。1981年に新築された球技場は,大規模な第3期改修工事に着手している。「世界に誇れるスタジアム」を目指し,今回の工事では「育成型クラブならではの育むスタジアム」等を合言葉に,約25000人収容のスタジアムとなる。本稿では,今後も段階的な改修が行われていくことを念頭に考えた設計と施工の取組みを,プレキャスト化に焦点をあてて報告する。併せて,新技術として環境に配慮した高炉スラグ高含有コンクリートおよび高炉スラグ高含有セメントを用いたカラーコンクリートについても報告する。
北陸新幹線金沢~敦賀間福井市内の営業線が近接するラーメン高架橋では,工期短縮を目的として鉄道初のフルプレキャストラーメン高架橋を採用している。フルプレキャスト化技術は,柱・梁部材だけでなく両部材の接合部も含めて,ラーメン高架橋の地上部材をすべてプレキャスト化するものである。本報では,工法の採用経緯から,試験的な施工の実施,それを踏まえた本施工の全般について報告する。