日本建築学会「高流動コンクリート指針改定小委員会」では,建築分野における高流動コンクリートの普及と標準化・体系化を目的に,1997年に制定された「高流動コンクリートの材料・調合・製造・施工指針(案)・同解説」を2021年12月に改定した。本稿では,本指針への改定の背景と検討内容,ならびに本指針の改定の概要について述べる。本指針が高流動コンクリートに関するさらなる技術の普及と品質向上に役立つことを期待している。
国土交通省東北地方整備局は,短期間に大量の構造物を建設する復興道路等のコンクリート構造物の品質確保のため,新設構造物を対象とした「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)」(橋台,橋脚,函渠,擁壁編)と(トンネル覆工コンクリート編)を策定し,品質確保の試行工事で活用している。これらの手引きはどちらも,「施工状況把握チェックシート」で適切な打込み・締固めを目指し,脱型後に不具合の種類と程度を「表層目視評価」で評価し,不具合があれば次のリフトでそれを抑制すべく施工方法を改善する品質確保の仕組みを採用している。ここではこれら手引きの活用上の留意事項等を解説する。
政府のカーボンニュートラル宣言を受け,各産業セクターでのカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速している。CO2排出量削減に向けた施策の一つとしてセメント・コンクリート分野に関わるカーボンリサイクル技術が注目を浴びる中,セメント単位量を削減でき,出荷時までに炭酸化養生から従来品と同等強度を担保しつつCO2を吸収・固定化させたCO2吸収型コンクリートが実用化している。本稿では,CO2吸収型コンクリートのキーマテリアルである炭酸化混和材の開発と実証,および炭酸化養生から得られる特徴など,これまで得られた知見をレビューする。
配筋検査は,施工を進める上で重要な位置づけにあるものの,一連の検査作業の準備や,検査作業,その後の報告書作成に時間と手間を要している。筆者らはステレオカメラとAI技術を用いた配筋検査システムの開発を開始し,現在,多くの現場で活用されている。加えて国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択され,本技術を実現場にて試行し,導入効果や社会実装の実現性が高いとの評価(A判定)を得た。今後更なる普及を見据え,これまでにない下層配筋計測,広範囲計測,およびシース管計測の機能を開発した。
四国横断自動車道吉野川サンライズ大橋は,一級河川吉野川の河口に建設される橋長1696.5mのPC15径間連続箱桁橋である。鳥類の飛翔と河川流況を阻害しないように環境配慮の観点から,最大支間長130mの桁橋形式が採用された。また,維持管理性向上のため,極力,支承部を少なくし中央5径間にラーメン構造を採用した。さらに,工期短縮を目的としてプレキャストセグメントを用いた張出し架設工法を適用した。本稿では,橋脚,柱頭部の耐久性向上施策,プレキャストセグメントや張出し架設における場所打ち調整目地について,コンクリートの配合や施工方法の観点で検討した結果を報告する。
河津ICランプ橋は,静岡県沼津市を起点として下田市に至る伊豆縦貫自動車道のうち,現在整備中の河津下田道路の北端となる(仮称)河津ICに位置するPC張出架設工法の2室箱桁橋である。本工事では,新技術導入による現場作業の省人化の取り組みとして,3次元レーザースキャナーによる主桁断面の出来形自動計測について現場実証を行い,従来の計測方法との比較を行った。本稿では,現場実証内容と,出来形自動計測の省人化に向けての課題について報告する。