1981年に「新耐震設計法」が導入されてから,約40年が経過した。この間,超高層RC造建物の実現などによりRC構造の設計・施工技術は大いに進展した。このようなRC構造技術に関する最新の研究成果が反映された「鉄筋コンクリート構造保有水平耐力計算規準・同解説」が日本建築学会から刊行された。この規準では,非線形増分解析を用いた架構の保有水平耐力計算方法とともに,構造実験データに基づく部材種別の判定方法,架構の全体崩壊形を保証する具体的な設計方法などを提示している。RC構造に関する保有水平耐力計算に関する学会規準はここ約30年の間刊行されておらず,今後本規準が合理的なRC構造設計に寄与することが期待される。
2020年10月に新たに制定されたJIS A 5011-5の制定の背景および主な内容を解説する。石炭ガス化スラグは,石炭の高度利用技術として開発された石炭ガス化複合発電から副生される水砕スラグであり,コンクリート用細骨材として他のスラグ骨材と同等の性能を有することが確認されたため,再生資源として有効に利用されるよう規格を制定した。規定する内容は,既往のコンクリート用スラグ骨材の規格と共通する項目の他,石炭ガス化スラグ骨材固有の品質として,炭素含有率の上限値,絶乾密度の見本値に対する許容差を規定した。
筆者らは,鉄道高架橋柱の耐震補強工事の生産性向上を目的とし,新しい耐震補強工法を開発した。開発した工法は,プレキャストパネルを分割された補強鋼板とボルトを用いて既設柱の周囲に配置し,既設柱との隙間に高強度繊維補強モルタルを充填するものである。本工法を構成する高強度繊維補強モルタルは,橋梁等での使用を想定した指針が整備されているが,耐震補強工事に用いた事例は少なく,合理的な耐震補強設計手法を構築することが必要であった。本稿では,開発時に実施したせん断耐荷特性および変形性能に関する載荷試験について記載するとともに,高強度繊維補強モルタルを考慮した部材性能の算定式について紹介する。
CO2排出削減と維持管理性の向上を狙い,セメントを用いることなく高強度で低収縮を実現したコンクリート(以下,サスティンクリート)と,錆びないアラミドFRPロッドを組み合わせて,環境負荷の小さい長寿命なPC橋梁を実用化した。サスティンクリートは,蒸気による促進養生により材齢6日で150MPaという超高強度を発現すること,また,模型梁の載荷試験結果から,曲げ挙動やせん断耐力は,一般の高強度繊維補強コンクリートと同様の方法で評価できることを明らかにした。本稿では,短繊維補強したサスティンクリートの開発とプラントでの製造,プレテンション桁の架設と構造の検証,モニタリングまで一連の検討とその結果について報告する。
本報は,中泊くにうみウインドファームにおける傾斜を有する形状のフーチングの施工において,寒冷期に凝結促進用混和材を用いたコンクリートの適用結果について報告するものである。凝結の促進およびブリーディングの低減効果によって傾斜部の打込み・仕上げ面の品質が向上すること,さらに,仕上げの作業着手時間,終了時間を大幅に早めることができ,施工管理の職員やコンクリートの施工関係の作業者の負担を大幅に軽減することを示した。
武庫川女子大学公江記念館は,2020年度より新設される経営学部のための8階建ての新校舎である。2層1ユニットの学習空間が積層するという建築コンセプトを有しており,そのコンセプトと調和のとれた「高効率PCa架構システム」を本建物に適用した。2層・2スパンごとに1つの部材が構成される本工法を採用することで,高効率な施工による工期の大幅な短縮を実現している。本稿では,架構システムの概要と実現するにあたっての設計と施工上の工夫した点について報告する。