本稿は,日本建築学会「フライアッシュを使用するコンクリートの調合設計・施工指針・同解説」の改定の概要について解説する。近年,フライアッシュの建築用コンクリートへの使用に際しては,環境側面への配慮がより重要となった。今回の主な改定は,フライアッシュコンクリートの環境性,塩分浸透抑制対策としてフライアッシュを使用するコンクリート,水中コンクリートについて新たな章を設けた。また,フライアッシュを細骨材の一部と置換するコンクリートを独立した章とした。調合において,強度寄与率(k値)を用いた水結合材比の設定について,前回改定(2007年)以降の研究成果,実績などを反映して充実させた。
コンクリート工における生産性向上の手段として高流動コンクリートの適用が考えられるが,コストや製造の繁雑さが課題となり,一般的なRC構造物への適用が進んでいないのが実状である。この課題に対し,筆者らは,普通コンクリートに対してコスト増を抑え,「汎用的に使用されることを目的とした締固め不要コンクリート」を開発した。本稿では,この締固め不要コンクリートの新しい評価試験方法を提案し,配合設計手法を構築した。さらに,実構造物に適用することで,配合設計手法の妥当性を検証するとともに,本コンクリートを用いることでコスト増を抑え,品質を確保しつつ省人化による生産性向上が可能であることを明らかにした。
近年の世界的な環境配慮への関心の高まりを受けて,国内でも二酸化炭素排出量を低減した環境配慮型コンクリートの開発および実構造物への適用が進められている。特に国内で普及が進められているのが,セメントの一部を高炉スラグ微粉末で代替したコンクリートである。本稿では,筆者らが開発した部位に応じて最適な高炉スラグ微粉末の使用率とした環境配慮型コンクリート(CELBIC)について,建物全体へ適用した事例について報告する。なお,本工事では,コンクリート材料に起因する二酸化炭素の排出量が従来技術に比べて46.5%の削減率となっている。
八王子水再生センターは,東京都多摩地区の汚水を処理し,多摩川へ放流する重要な施設である。本工事は,想定される最大級の地震に対して,地震後もライフラインの機能を確保するために,東京都下水道局が進める水再生センター施設の耐震化事業の一環である。本工事の特徴は,①坑内の作業空間が狭く放流渠の天井作業は足場作業且つ上向き施工となる,②チッピング作業やずれ止めアンカー作業の際,粉塵飛散による作業環境悪化,③200mmという狭隘な区間へのコンクリート打込みにおける品質向上が課題であった。その対策として,「天井用乾式研掃装置」,「自動アンカー削孔装置」,「現場添加型高流動化コンクリート」を採用した。その施工事例を紹介する。
JR松山駅を中心とする南北約2.4kmの鉄道を高架化するJR松山駅付近立体交差事業においては,鉄道高架構造物の工事施工に伴い様々な課題に直面し,その都度課題を解決し工事を推進した。本高架工事の千舟町架道橋に関する工事においては,地中の支障物により工期に大きな影響を与えることとなり,高架工事の全体工程においてクリティカルパスとなり工期短縮等を検討することとなった。本稿では,工期短縮を目的としてEPS(発砲スチロール)と埋設型枠を用いた。また,品質確保を目的として高流動コンクリートを用いた。これら対策の内容について報告する。
横浜市港湾内の海中に約27年間沈設されていたシンカーブロック182個を別の海域へ移設して再利用するため,海中でシンカーブロックに接着系アンカーをあと施工した後,そのアンカーを介してシンカーブロックを直吊りして陸上ヤードに揚げて,当該アンカーの引抜き試験を実施した。海中でのあと施工には,エポキシ樹脂を主剤とする注入方式の接着系アンカーを用いた。試験の結果,海中であと施工した接着系アンカーは,設計降伏荷重以上の耐力を有していることが分かった。