日本調理科学会誌
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42 巻, 2 号
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平成20年度日本調理科学会学会賞受賞記念論文
平成20年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
総説
  • Hervé This
    2009 年 42 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     分子美味学と呼ばれる科学的研究分野の20周年が記念されるに伴い,研究分野の概念もよくまとまって来ているように思われる。また,調理の構成を表現しうるCDS〔Complex disperse system;複合分散系(複雑な分散状態を説明する考え方)〕とNPOS〔Non periodical organization of space;非周期的空間組織(不規則な空間構成を説明する考え方)〕という2つの公式論もCDS/NPOSと呼んでいる一つの公式論に融合されている。そこで,本稿では分子美味学がどのように開始され,定義されるかを概説したい。
報文
  • 治部 祐里, 安川 景子, 桒田 寛子, 横畑 直子, 寺本 あい, 渕上 倫子
    2009 年 42 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究では冷凍ゆで卵の品質改善に対する圧力移動凍結の効果を調べるため,200 MPa,-18℃で圧力移動凍結したゆで卵を,大気圧下の-18℃圧力容器内凍結およびフリーザー凍結(-18,-30,-80℃)したゆで卵と比較した。200 MPa,-18℃では,高圧処理中には凍結せず,圧力解除時に急速凍結(圧力移動凍結)した。急速凍結により生成した氷結晶は小さく,解凍後のドリップが少なく良好な外観を示し,破断応力,破断歪率は凍結前未処理のゆで卵に近い値を示した。一方,大気圧下のフリーザーでは,凍結温度が高いほど大きな氷結晶が生成しドリップ量が増加した。また大気圧下の-18℃圧力容器内凍結では,-18℃,-30℃フリーザー凍結と比較すると凍結時間が短かったため,明らかに細かい氷結晶が生成しており,解凍時の外観,物性,ドリップ率ともに改善されたが,圧力移動凍結には及ばなかった。
  • ―煮豆としての浸漬・加熱条件―
    飯島 久美子, 奥山 綾子, 早川 和那, 藤井 義晴, 香西 みどり
    2009 年 42 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     ムクナ属マメの食用としての利用を拡大するためにムクナ属マメのハッショウマメ(JVB)とフロリダベルベットビーン(FVB)の二種類の調理特性を把握し,適切な調理条件を検討した。一般成分ではデンプン性の豆としてはたんぱく質と脂質が多く,L-DOPA量はいずれも約 4 g/100 g生豆だった。JVBはFVB,大豆,小豆よりも20℃浸漬での吸水が遅く,個体差も大きいことから吸水が悪いという特徴があった。「煎る」「傷付け」「皮剥き」により吸水率は増加した。さらに40~90℃浸漬では吸水率増加,個体差の低下と吸水特性の改善効果がみられたが,50~70℃浸漬では浸漬後の茹で加熱により硬化がおこった。JVBに適した調理条件として90℃ 4時間浸漬後沸騰水で40分間加熱が設定された。このときのL-DOPA量は浸漬により約40%に減少し,その後の茹で加熱でさらに約25%にまで減少し食用として煮豆への利用が十分可能であった。
  • 高橋 智子, 大越 ひろ
    2009 年 42 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,分子量を変えた寒天由来のゲル化剤とゼラチンにより調製したヨーグルトゲルを試料として,その力学的特性が健常人の食べやすさの評価および嚥下時筋活動にどのように影響するかについて検討した。食塊が口腔から咽頭へ移動しやすいと評価されたヨーグルトゲルの筋活動時間は有意に短く,筋活動量は有意に小さいことが示された。食塊を口中から咽頭へ送り込む際,試料は大きく変形していると考えられる。ヨーグルトゲル試料を大きく変形させることで得られる力学的特性が嚥下時筋活動量に,影響を与えていることが本研究の結果より示された。
ノート
  • 眞壁 優美, 中山 由佳, 谷井 潤郎
    2009 年 42 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     うどんの物性に及ぼす塩類の影響について検討するため,種々の塩類と市販塩を用いて調製したうどんの物性評価を行った。また,市販塩については,官能評価を行い,うどんの食感に及ぼす影響について検討した。
     生うどんの物性については,各塩類の影響が見られ,生うどんの生地における伸びやすさについては,塩化カリウムを用いた生地が最も伸びやすく,硫酸カルシウムを用いた生地が最も伸びにくく硬いことが分かった。市販塩を用いた場合,塩種による差が見られたが,その差は小さかった。
     ゆでうどんについては,塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムを用いたうどんについては軟らかい傾向が見られたが,生うどんの場合と比較し,各塩類の影響は小さくなることが分かった。市販塩を用いた場合,物性評価,官能評価の結果に差はなく,いずれの塩を使っても食べたときの食味には大きな違いはないことが分かった。
  • 日本調理科学会近畿支部 揚げる・炒める分科会
    2009 年 42 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     カルボニル化合物が油の劣化の判断の指標である風味点数に及ぼす影響について検討を行った。カルボニル化合物の組成,量の違いにより,油の識別が可能かどうか官能検査を行った。油の劣化の初期段階において,カルボニル化合物量の違いを認識することは可能であったが,劣化が進んで廃棄レベルに近づくとカルボニル化合物量の違いを認識することは困難になった。粘度,極性化合物量など他のファクターの影響によると考えられた。
資料
  • 川崎 太志, 飯 聡, 西村 由二三, 白土 男女幸, 濱田 明美, 仲井 朝美, 芳田 哲也
    2009 年 42 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    和包丁における,様々な刃先形状と官能評価の関係を明らかにするために,熟練者が研いだ4つの完成度(50%,70%,80%,100%)の包丁について,刃先粗さ,“切れ味”および“研ぎ味”を測定し,これらの項目間の関係を調査した。顕微鏡写真から測定された刃先粗さに関しては,70%の刃先は他の完成度のものよりも粗かった,その一方で100%の包丁は最も刃先粗さが小さかった。レーザー変位計を用いて測定した刃表面粗さと刃先角度は,完成度間で類似した傾向が認められた。“切れ味”および“研ぎ味”については,シェッフェの一対比較法を用いて評価を行った結果,100%の包丁が他の完成度に比べて高い点数を示した。100%の包丁の切れ味は50%の包丁に比べて高い値を示したが,包丁の刃先粗さは100%の包丁が小さかった。また,刃先粗さは“切れ味”との関係において有意な負の相関(p<0.05)が認められた。このように,表面粗さや刃先角度の変化が比較的小さいとき,刃先の細かい粗さが“切れ味”を向上させることが示唆された。
  • 西本 登志, 前川 寛之, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    2009 年 42 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
    サトイモ7品種・系統を用い,蒸し芋,田楽,煮っ転がしおよび味噌汁の4種の調理について官能検査を行った。美味しさ,粘りに対する食感,硬さに対する食感およびほくほく感に対する食感を評価した。美味しさは,蒸し芋と田楽では,品種・系統間で有意な差がみられ,品種・系統間の相対的な関係が異なった。一方,煮っ転がしと味噌汁では品種・系統間で有意な差は認められなかった。粘り,硬さおよびほくほく感に対する食感は,全ての調理法において,品種・系統間で有意な差がみられた。全ての調理法において美味しさとほくほく感に対する食感の間には正の相関が認められた。
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