日本調理科学会誌
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42 巻, 5 号
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総説
報文
  • 宮内(古根) 康衣, 藤浪 典子, 市川 朝子, 下村 道子
    2009 年 42 巻 5 号 p. 275-284
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    魚肉の味噌漬けは,伝統的調理・加工食品であり,保存と食味の向上を目的としている。実験では冷凍魚肉のサワラ肉とメロ肉をステーキ状にきり,味噌の割合が低い味噌床Iと味噌の割合が多い味噌床IIの2種類を調整して漬け込んだ。官能検査では,サワラは味噌床I又はIIに浸けた肉で5日間味噌に漬けたものが好まれたが,メロ肉では味噌床IIで,5,7日間漬けたものが好まれた。官能検査の結果好まれたものは,レオメーターで測定した硬さの値が高いものであった。魚を味噌床IIに漬けると筋節の肉は硬くなり,結合組織(筋隔膜)は,温水に溶出しやすくなった。サワラの結合組織のSDS-PAGE分析でコラーゲンの分解が起こっていることが示された。
  • 貝沼 やす子, 新城 知美
    2009 年 42 巻 5 号 p. 285-293
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    豆腐の製造過程で排出される生おからを,主食となるパンへ添加することを試みた。生おからの水分は70%前後であるが,80~180℃のオーブン内で加熱することにより,簡単に乾燥・焙煎処理を行うことができた。焙煎により,生おからの水分値以上に重量が減少した。焙煎したおからの吸水率は低下し,その低下の速度は焙煎温度が高いほど,また焙煎時間が長いほど速かった。焙煎によりたんぱく質量が減少し,たんぱく質の組成も変化した。Native-PAGE,SDS-PAGEの結果から,おからに含まれるたんぱく質は焙煎処理により変性あるいは分解し,複合体の解離や高次構造の崩壊を起こして溶解性などの性質が変化し,結果的におから全体の吸水率を低下させたものと考えられた。焙煎おからを10%代替添加したパン生地にはグルテンの形成がみられ,パンの膨化状態も改善した。焙煎によるおからの性状変化が,パンの膨化状態の改善に有効に作用したものと考えられた。
  • 清原 玲子, 山口 進, 潮 秀樹, 下村 道子, 市川 朝子
    2009 年 42 巻 5 号 p. 294-299
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。
    リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。
    AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。
    以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
  • 三神 彩子, 喜多 記子, 松田 麗子, 十河 桜子, 長尾 慶子
    2009 年 42 巻 5 号 p. 300-308
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,現在の家庭での上位頻出献立10種類を取り上げ,調理機器や調理道具の選択,調理操作の違いによる省エネルギー効果およびCO2排出量削減効果を計測した。
    トーストは,トースターに比べグリルは約30%,ベーコンエッグは,鉄製フライパンに比べテフロン加工フライパンで約44%,さらに油なし・水なしで調理すると約59%,コーヒーは,コーヒーメーカー方式に比べ,やかんを用いて湯を沸かすドリップ方式で約42%,チャーハンは,卵とご飯を混ぜ合わせてから一緒に炒める方法が他の方法と比べ約25%,ガスコンロでの炊飯は,電気炊飯器に比べて約39%,焼き魚は,グリルはテフロンフライパンに比べ約19%,さらに切り方の工夫で約18%,味噌汁は,煮干しを粉砕し丸ごと使用すると約38%,野菜の和風煮物は,油膜使用で約20%,落し蓋使用で約26%,青菜のおひたしは,青菜の3倍の茹で水量は6倍の茹で水量に比べ約16%,カレーライスは,ジャガイモの形状を小さく切ると約72%,さらに茹で水量を同重量にすると7倍水量と比べて約46%のCO2排出量削減効果が得られた。
  • 山本 誠子, 奥村 麻里, 大場 智美, 為積 沙奈絵, 松岡 博厚
    2009 年 42 巻 5 号 p. 309-314
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    生姜搾汁の牛乳凝固性について塩化カルシウム添加脱脂乳を基質に用い検討した。生姜搾汁の乳凝固活性は調製後不安定であった。生姜搾汁に1mML-システインと1mML-アスコルビン酸の添加により-18℃~-20℃で9~11週間貯蔵後も約80%の乳凝固活性が保持された。乳凝固活性は脱脂乳5mlに対する添加量が生姜搾汁0~0.4mlの範囲内で直線的に上昇し,0.5mlにて飽和に達した。乳凝固活性は脱脂乳へ塩化カルシウム0~15mM添加の範囲内で直線的に上昇した。乳凝固活性はカルシウム濃度に依存していた。乳凝固活性は温度とともに上昇した。最高乳凝固活性は70℃であった。生姜搾汁を60℃,10分間加熱処理後の乳凝固活性は約50%減少し,70℃で完全に失活した。しかし,70℃,1分間の加熱処理後には乳凝固活性の83%が保持された。
  • 杉本 温美, 蒲 尚子, 石井 由佳里, 伊井 佐和子, 菊田 千景, 川西(朝岡) 正子
    2009 年 42 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    5種類のデンプンを用いて調製した衛生ボーロについて官能検査を行った結果,総合評価はジャガイモ>ヤマノイモ>Normal-maize>High-amylose maize>Waxy-maizeの順で,ジャガイモデンプンならびにヤマノイモデンプンで調製した衛生ボーロの方が,トウモロコシデンプンで調製したものより好まれた。ジャガイモデンプンの膨潤度は他のデンプンに比べて高く,また,ジャガイモデンプンで調製した衛生ボーロの糊化度は26.9%で,他のデンプンの2.7~5.5%と比べて高かった。それらが,ジャガイモデンプンで調製した衛生ボーロの清涼感や総合評価の高い理由ではないかと考えられたが,ヤマノイモデンプンで調製した衛生ボーロも高い評価を得た。ジャガイモやヤマノイモデンプン粒はトウモロコシデンプン粒よりも粒が大きく,衛生ボーロの組織構造の違いが食感に影響を及ぼす一因ではないかと考えられた。
ノート
  • 小柳 津周, 荻原 博和
    2009 年 42 巻 5 号 p. 322-326
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    10℃で12日間保存した白菜浅漬の微生物叢および化学的特性の検討を行った。その結果,浅漬の低温保存中において保存8日目以降,生菌数および乳酸菌数の増加が観察され,それに伴いpH,濁度,酸度の数値が急変した。保存中の微生物叢の変遷は,保存当初は土壌や環境由来の菌が検出されたものの,保存日数の経過とともにLeuconostoc mesenteroidesが主要菌叢として推移した。保存10日目以降ではLeu. mesenteroidesが主要であるものの,L. sakeiL. curvatusLactobacillus属も多く検出された。従って白菜浅漬の保存中の変敗は,Leu. mesenteroidesLeu. carnosumL. sakeiL. curvatusなどが関与したものと考えられた。
  • 島津 善美, 藤原 正雄, 渡辺 正澄, 太田 雄一郎
    2009 年 42 巻 5 号 p. 327-333
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    清酒に含まれる有機酸の主要3成分(乳酸,コハク酸,リンゴ酸)および少量成分(クエン酸,酢酸)に着目して,飲用温度を変えて酸味の強さ(強度)および呈味質について,専門パネリストによる官能評価を行った。有機酸単独の評価は,20℃に比較して乳酸が37℃でコハク酸が50℃で,極めて有意に酸味を強く感ずることが認められた。さらに乳酸,コハク酸の呈味は,37℃,43℃において,ソフトでまろやかに感じられた。リンゴ酸は,10℃で爽快ですっきりしている呈味質が確認された。有機酸主要3成分混合の評価は,43℃での酸味が,極めて有意に強く感じられ,かつ呈味がしっかりとして調和が良いことが明らかになった。有機酸主要3成分+ブドウ糖+アルコール系の評価は,43℃での酸味が極めて有意に強く感じられ,さらに呈味がまろやかとなり,バランスが良かった。
  • 川崎 寛也, 赤木 陽子, 笠松 千夏, 青木 義満
    2009 年 42 巻 5 号 p. 334-341
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    本実験では,サーモグラフィ動画像の自動色分解処理技術を用い,中華炒め調理における具材及び鍋の温度変化を詳細に把握するための新規システムを構築し,プロ調理と家庭調理の比較によりあおり操作の調理科学的意義を考察した。さらにあおり操作の回数も自動取得した。回鍋肉(豚肉とキャベツの味噌炒め)調理を例とし,サーモ動画像と可視動画像を同時に取得した後,サーモグラフィの動画像から鍋領域と具領域を分離して鍋と具材の表面平均温度を経時的に把握した。終点具材温度に家庭調理とプロ調理では大きな差が見られなかった。プロ調理では,あおり操作が定期的連続的に行なわれているのに対し,家庭調理では不定期であった。各あおり操作の前後におけるプロ調理の具材温度上昇は家庭調理よりも大きい傾向があった。鍋温度はプロ調理では家庭調理よりも顕著に大きく上昇した。本システムにより,動きを伴うプロの炒め調理においても,具材や鍋の平均温度変化を計測する事ができた。
資料
  • 鈴木 敬子
    2009 年 42 巻 5 号 p. 342-348
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    無洗米の環境効果を明らかにするため,無洗米と普通米について,精米工程から炊飯工程開始までのLC-CO2評価を行った。無洗米には,4種類の製造方法があるが,製造時の燃料消費量が明確に公表されているBG(Bran Grind)精米製法の場合について考察した。その結果,共通である精米工程を除いた場合,米1 kgあたりのCO2 排出量は,普通米の0.078 kgに対し,無洗米は0.016 kgであり,普通米の約20%であることがわかった。普通精米をBG無洗米に替えることは,とぎ洗いの手間や時間も省け,CO2 排出量削減効果の高い有効な手段といえる。
    また,無洗米製造の副産物である肌ヌカを水稲栽培の肥料に利用した場合は,化学肥料のみを使用する場合に比べ,米1 kgあたり,0.017 kg-CO2増加した。
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