日本調理科学会誌
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45 巻, 4 号
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総説
報文
  • 肥後 温子, 大坪 俊輔, 井部 奈生子
    2012 年 45 巻 4 号 p. 244-254
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     焼き,揚げ,蒸し,マイクロ波加熱処理を行ってクッキー様の製品を作り,加熱処理が水分調整後のテクスチャー,糊化度,官能評価に及ぼす影響を調べた。
    (1) R.H. 23%の吸湿条件では加熱法による硬さの差が少なかったが,R.H. 88%では焼き<揚げ<マイクロ波<蒸し加熱製品の順に硬化する傾向があった。
    (2) 硬化ピークが出現したのは,水分9~16 g/乾物100 gの範囲であった。
    (3) 蒸し加熱試料とマイクロ波加熱試料は硬い,歯ごたえがあると評価され,官能評価値とR.H. 88%の破断特性値との間に高い相関が得られた。
    (4) 糊化度(溶出デンプン量など)とR.H. 88%の破断物性値との間に高い相関が得られた。
    (5) マイクロ波加熱には蒸し加熱と似た湿熱加熱効果があり,同時に乾燥効果もあるため硬化現象が発現しやすいと考えられる。
  • 大学調理教育研究グループ北九州
    2012 年 45 巻 4 号 p. 255-264
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     大学における調理実習教育に関する現状と担当教員の把握する学生の実態について,九州に所在する大学において調理実習科目を担当している教員を対象として,アンケート調査を実施した。
     調理実習科目の開講状況は,栄養士養成系および家政・教員養成系において,平均開講総単位数は2.8単位および2.0単位,平均必修単位数は2.2単位および0.6単位であった。
     調理実習の時間割上の時間は,栄養士養成系では約2コマ180分を設定している大学が70.0%,家政・教員養成系では1.5コマと2コマが共に40.0%であった。
     調理に関する学生の知識及び技術に関しては,両系統ともに低下しているという回答が多かった。
     調理実習を時間内に終わらせるために,種々の工夫が行なわれ,具体的な内容としては特に「料理の組み合わせを工夫する」が両系統とも半数を超えていた。
  • (第1報)モデル試料を用いたIHクッキングヒーターによるフライパン焼成伝熱および水分移動モデルの確立
    石渡 奈緒美, 堤 一磨, 福岡 美香, 渡部 賢一, 田口 靖希, 工藤 和幸, 渡辺 至, 酒井 昇
    2012 年 45 巻 4 号 p. 265-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     IHクッキングヒーターを加熱源とし,フライパンでハンバーグを片面ずつ焼成する時の温度と水分移動を予測できる数学モデルを構築するため,モデル試料(シリコン,ボロニアソーセージ)を用いた解析を行った。蓋をしたフライパン内全体を調理空間とみなした伝熱モデルは,IH発熱層,フライパン伝熱層,フライパンと試料との接触層および試料から構成される伝導伝熱領域と,フライパン内の空気との熱伝達からなる。試料表面と空気との熱伝達とともに,フライパンから空気への放熱が,試料の温度上昇に影響をおよぼすことから,試料のないフライパン面と空気との熱伝達も考慮した。水分移動の計算では,試料表面とともに,試料内部も水分蒸発の計算領域とした。本モデルの妥当性を検証するため,調理中に形状が一定とみなせるボロニアソーセージを用い,中心温度50℃で一度反転させた際の温度と含水率変化を算出した。その結果,解析値は実験値と同様な傾向を再現可能であった。
  • (第2報)反転タイミングの違いがもたらす殺菌価への影響
    石渡 奈緒美, 堤 一磨, 福岡 美香, 渡部 賢一, 田口 靖希, 工藤 和幸, 渡辺 至, 酒井 昇
    2012 年 45 巻 4 号 p. 275-284
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     IHクッキングヒーターとフライパンによりハンバーグを片面焼成し,一度反転させた際の伝熱と形状変化の解析ならびに,大腸菌O157:H7を対象とした殺菌価を算出した。初期中心点の温度が20,30,40および50℃到達時,反転させた伝熱解析値ならびに形状変化は実験値と一致した。なかでも形状変化は,反転直前は初期中心点が厚みの半分より上に,調理終了時は半分より下に位置する実験結果を再現した。殺菌価は,50℃反転試料以外は初期中心点が75℃ 1分を保持していても,調理終了時の試料上面の殺菌価は不十分であると判明した。そこで試料全体が十分な殺菌価を得るのに要する時間を算出した結果,40℃反転試料が最も焼成時間が短く,加熱負荷が最も少ないことが明らかとなった。また,厚みを変化させ,反転温度40℃を対象とした同様な解析を行ったところ,厚み2.0 cm程度が本調理条件において最適な試料の厚みであると示唆された。
ノート
  • 伊藤 友美, 亀谷 宏美, 鵜飼 光子
    2012 年 45 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     モノアシルジグリセロール2種(ジグリセリンモノオレエート(DO),ジグリセリンモノステアレート(DS))中に小麦澱粉を加えて加熱処理し,電子スピン共鳴(ESR)により分析した。加熱はオープンエア条件の下,150°Cで0.5時間,200°Cで0.5時間,200°Cで1.0時間の処理をした。試料のESRスペクトルはg=2.005の1本線信号で構成され,非常に強い異方性が確認された。200°C 1.0時間加熱した試料では,加熱のみの試料に比べてラジカル量が減少し,加熱処理することによりモノアシルジグリセロールにはラジカル生成抑制効果があることが示唆された。
  • 柴田 圭子, 渡邉 容子, 早瀬 明子, 安原 安代
    2012 年 45 巻 4 号 p. 289-296
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     冷凍または解凍シロサケ(Oncorhynchus keta)の切身を用いて,その調理性および食味に及ぼす影響を検討した。試料は塩ザケ,食塩無添加のサケの両方の冷凍切り身を用いた。塩ザケ,食塩無添加のサケのいずれにおいても冷凍切り身は解凍切り身より長い加熱時間(p<0.05)を要した。解凍塩ザケは冷凍塩ザケよりも調理歩留まりが高く(p<0.01),保水性(p<0.01)も高かった。官能評価結果より,解凍塩ザケの焼き物の食味は冷凍塩ザケより好まれた。塩ザケおよび食塩無添加のサケいずれにおいても,加熱開始が冷凍状態の加熱切り身の表面には,熱凝固タンパク質より成る白い凝固物が形成された。冷凍で食塩無添加の切り身は解凍して食塩添加すると,凝固物は減少した。食塩無添加のサケを解凍して食塩添加することで食味は向上した。
  • 津田 淑江, 小池 恵, 船木 絵美子, 大家 千恵子
    2012 年 45 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,食物のライフサイクルで排出されるCO2量と食物の総合評価得点との割合を環境効率で表し,食の持続可能性を表現する指標とすることを提案するものである。食物分野で用いられる環境効率は食物の価値評価を環境負荷量(CO2排出量)で除することによって得られる。モデルケースでは,メニューを食べた時の官能評価を行い,環境効率の分子とした。評価項目は,栄養,安全・安心感,経済性,利便性およびおいしさとした。分母は食品を生産・輸送・調理までの1食当たりの環境負荷量とした。その結果,これらの環境効率指標は健康と味を損なわずに環境を考え,持続可能な食物ライフスタイルを続けるための重要情報を提供することが明らかになった。
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