日本調理科学会誌
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47 巻, 1 号
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総説
報文
  • 平野 聡美, 香西 みどり
    2014 年 47 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
     野菜のピューレを耐熱性ゲル化剤で成型した“野菜ゲル”の調理性について検討する目的で,ニンジンピューレをジェランガムと乳酸カルシウムで成型したニンジンゲルおよびニンジンを含まないジェランガムゲルをRO水または1% NaCl中で95°Cまたは沸騰状態で加熱し,加熱後ゲルのかたさ,液中に溶出した金属イオン量(カルシウム,マグネシウム,ナトリウム,カリウム)およびジェランガム量を測定した。ニンジンゲルは1% NaClにて30分間沸騰加熱後は加熱前ゲルに含まれていたカルシウムの半量が溶出してゲルの角が取れたが,かたさは加熱前の8割程度保持された。このことから,1% NaCl中加熱では金属イオンの溶出による軟化と液中のナトリウムイオンによるゲル強化が同時に起こったことが示唆された。また,ジェランガムゲルの場合加熱温度を95°Cに下げることでゲルの金属イオン溶出が抑制され,角が崩れることなく加熱できることが示された。このことから,ジェランガムを用いた野菜ゲルは調味液中であっても95°Cであれば形を保ったまま加熱できることが示唆された。
  • 宮下 朋子, 川野辺 愛, 長尾 慶子
    2014 年 47 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
     福島産の粘りの強い自然薯を用いて,撹拌時間を変え,含有気泡量の異なる各試料をゼラチンゾルに加えて,自然薯・ゼラチンゲル試料を調製し,製品中に分散する気泡の状態が製品の品質や熱移動に及ぼす影響を検討した。次いでこれら自然薯ゲル製品の嚥下困難者用への利用適性について検討した。その結果,気泡含有量の指標となる自然薯ゲル製品のみかけ密度は,撹拌時間10分までは低下し,その後定常となった。各試料ゾルを5°Cで冷却しゲル化する際の内部温度下降速度は,撹拌時間が長く,混入する気泡量が多くなるほど緩慢になった。今回調製した条件での各自然薯ゲル試料のテクスチャーはいずれも嚥下困難者用食品の許可基準IIないしIIIに該当した。官能評価では,撹拌8分間の試料は,総合評価において高い評価を得ていた。今後は,製品にだし汁や塩分などの副材料を添加することで,嗜好的に好まれる惣菜料理への利用が期待できる。
ノート
  • 北尾 悟, 安藤 真美, 西井 彩
    2014 年 47 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
     茶カテキン類の主要化合物であるエピガロカテキンガレート(EGCg)と各種糖質化合物(グルコース,フルクトース,およびスクロース)との混合モデル系を設定し,中性pH条件下,加熱調理過程におけるペルオキシルラジカル捕捉活性およびEGCg量の測定を行った。
     外部加熱法の1つである湿式加熱において,糖質化合物が加熱にともなうEGCgのペルオキシルラジカル捕捉活性ならびにEGCg量の減少を有意に抑制する効果を示した。また,内部加熱法の1つである電子レンジ加熱においても,糖質化合物が加熱にともなうEGCgのラジカル捕捉活性の減少を有意に抑制した。これら糖質化合物はEGCg量の減少を抑制する傾向も示したが,有意な差は見られなかった。
     EGCg量とラジカル捕捉活性との間で相関性が認められたため,検討した糖質化合物は加熱によるEGCgの減少を抑制し,ペルオキシルラジカル捕捉活性を維持する効果があることが明らかとなった。
資料
  • 菅原 久美子, 菊地 和美, 木下 教子, 酒向 史代
    2014 年 47 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
     本研究は北海道の行事食と儀礼食について,親子間の認知状況や経験状況などの実態把握を行い,地域性を明らかにすることを目的として検討した。行事食の認知度は,正月が最も高く,秋祭り,春祭り,重陽の節句は低く,経験度も同様の傾向であった。北海道は全国よりも春分の日,秋分の日,冬至の経験度が高く,秋祭り,春祭りの経験度が低かった。儀礼食は認知度,経験度ともにお七夜が儀礼食間では有意に低く,伝承が困難な様子がうかがわれた。三世代家族の婚礼,葬儀,法事の経験度が極めて高いことに特徴がみられた。北海道は七五三の経験度が低く,全国とは異なる傾向を示した。親子間で認知度・経験度の肯定的回答の一致が高かったのは,行事食では正月,クリスマス,大晦日,節分,上巳の節句,儀礼食では誕生日,葬儀,七五三であった。肯定的回答の一致度が低かったのは,行事食では春祭り,秋祭り,重陽の節句,儀礼食では,結納,お七夜であった。
  • 松下 純子, 後藤 月江, 金丸 芳, 遠藤 千鶴, 長尾 久美子, 有内 尚子, 高橋 啓子
    2014 年 47 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/11
    ジャーナル フリー
     日本の調理文化の地域性の特別研究のうち,平成21年から平成22年に「行事食・儀礼食」についてアンケート調査を行った。徳島県に10年以上在住する人を対象に,正月を除く年中行事について30歳未満,30歳以上50歳未満,50歳以上の年代区分に分類し検討した。人日,端午の節句,七夕,土用の丑,盂蘭盆,重陽の節句,春分の日,秋分の日,冬至,秋祭りでは,認知率および経験率の双方に年代区分で有意差がみられた。節分「巻き寿司・のり巻き」,土用の丑「うなぎの蒲焼き」は行事食としての喫食率が高かった。春分の日,秋分の日の「ご飯・だんご」,春祭り,秋祭りの「ご飯・すし」は,若い世代への伝承が薄れていることが推察された。全ての年代区分で年末のクリスマス,大みそかは行事として定着しており,「ケーキ」や「年越しそば」を多く食べていた。多くの行事食は以前には家庭で作ったが,現在は買う入手方法へ変化しており,特に50歳以上で顕著であった。
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