日本調理科学会誌
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47 巻, 3 号
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総説
報文
  • 品川 喜代美, 金 娟廷, 河村 彩乃, 岩崎 裕子, 高戸 良之, 大越 ひろ
    2014 年 47 巻 3 号 p. 126-133
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    高齢者向けにテクスチャーを改善した餅様食品が開発されている。その食べやすさについて検討するため,テクスチャー特性と筋活動量の測定ならびに官能評価を行った。テクスチャー特性の測定は,飲み込む直前の食塊についても行った。試料は,高齢者向けに開発された餅様食品S,K,および市販の切餅を用いた。餅様食品SおよびKのテクスチャー特性の付着性は,切餅に比べて小さいことが示された。若年者を被験者にした官能評価において,餅様食品SおよびKの喉につまる危険性は,切餅に比べて低いと評価された。また,SおよびKの筋活動量は切餅に比べて少ないことが示された。餅は高齢者が喉につめやすい食品であり,高齢化にともない咀嚼機能が低下するといわれている。付着性と喉につまる危険性および筋活動量に関係がえられたことから,付着性を抑えた餅様食品は,切餅に比べて食べやすいことが明らかとなった。
  • ―若年者と高齢者の比較―
    岩崎 裕子, 芳賀 芳衣, 立石 佳彰, 田中 靖代, 大越 ひろ
    2014 年 47 巻 3 号 p. 134-142
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    刻んだ大根にとろみあんを付与した混合系試料の食べやすさについて,力学的特性および官能評価(若年者と高齢者の比較)により検討した。
    i)大根の破断応力が異なる試料の比較
    大根の破断応力が高値な程,官能評価においてかたいと評価された。また,高齢者はかたいと感じる試料ほど,まとまりにくく残留感が多いと評価した。高齢者にとって,固形物の硬さの影響が大きいことが示唆された。
    ii)大根ととろみあんの混合割合が異なる試料
    若年者,高齢者とも,大根の混合割合が最も多い試料は,最もまとまりにくく,飲み込みにくいと評価された。また,高齢者はとろみあんが多すぎると,べたつき感を強く感じ,飲み込みにくいと評価することが示された。
    高齢者と若年者では主観的な感じ方が異なることもあるため,若年者で飲み込みやすいものが必ずしも高齢者が飲み込みやすい食形態であるとは限らない。
  • 第一報 カッパーカラギーナンとイオタカラギーナンの比較
    治部 祐里, 寺本 あい, 桒田 寛子, 渕上 倫子
    2014 年 47 巻 3 号 p. 143-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    冷凍・解凍後のゲルの品質改善に対する高圧力と蔗糖の効果を調べるため,0,5,10,20%の蔗糖を添加したカッパーおよびイオタカラギーナンゲルを作成し,-20°C,0.1~686 MPaの高圧力下で冷凍した。200~400 MPaでは,高圧処理中には凍結しなかった。圧力解除時に,急速に圧力移動凍結した。その結果,破断応力は減少したものの,圧力移動凍結したカッパーカラギーナンゲルの氷結晶は小さく,解凍後の離漿が少なかった。従って,圧力移動凍結が冷凍カッパーカラギーナンゲルの品質向上に効果があった。一方,イオタカラギーナンでは,全ての冷凍処理後のゲルで氷結晶跡は見られず,解凍後の離漿も少なく,未処理のゲルに近い品質を保っていた。従って,イオタカラギーナンは,カッパーカラギーナンより冷凍耐性が優れていることがわかった。また,両ゲルへの蔗糖の添加は,冷凍ゲルの解凍後の品質の向上に効果があった。
  • 第二報 カラギーナンゲルへのローカストビーンガム添加の効果
    治部 祐里, 寺本 あい, 桒田 寛子, 渕上 倫子
    2014 年 47 巻 3 号 p. 155-164
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    冷凍・解凍後のカッパーカラギーナンゲルの品質改善へのローカストビーンガム添加の影響を調べるために,2種類のローカストビーンガム添加ゲルが比較された。Aゲルは κ-カラギーナンとローカストビーンガム混合ゲル,Bゲルは市販ゲル化剤“パールアガー8ゲル”(8.3%グルコース含有)である。0,5,10,20%蔗糖を添加した両ゲルを-20°C,0.1~686 MPaで冷凍した。-20°C,200~400 MPaで圧力移動凍結すると急速凍結により,小さく,丸い氷結晶が生成し,凍結前と同じ緩い網目構造を維持していた。そのため,物性の変化や離水は抑制された。BゲルはAゲルよりグルコースを多く含むため,解凍後の品質はBゲル>Aゲル>κ-カラギーナンゲルの順に良好であった。ローカストビーンガム,蔗糖・グルコース添加は冷凍 κ-カラギーナンゲルの解凍後の品質改善に効果があった。
資料
  • 秋山 (山王丸) 靖子, ノーリタ サンセダ, 曽根 保子, 倉田 忠男, 鈴木 恵美子
    2014 年 47 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,魚醤発酵過程における脂肪酸の経時的変化について検討した。
    発酵過程におけるろ過前試料中の総脂肪酸含有量は,リノール酸添加試料とコントロール試料間で有意な差は認められなかった。脂肪酸のうち22:6(DHA)と20:5(EPA)は発酵過程で減少したが,16:0は増加が認められた。リノール酸添加試料とコントロール試料の脂肪酸組成は,リノール酸以外は同様の傾向を示した。発酵過程における,リノール酸添加試料中のリノール酸含有量は顕著に減少した。添加したリノール酸は遊離脂肪酸であったため酸化され易く,発酵の進行とともに酸化されたと考えられる。
    魚醤に含有される脂肪酸は,ろ過前試料よりも顕著に少なかった。このことは両試料ともに,ろ過過程において脂肪酸が試料中に残存したことを示している。12ヵ月経過後のリノール酸添加試料における脂肪酸組成は,コントロール試料とほぼ同様の傾向を示した。
    これらの結果から,いくつかの長鎖脂肪酸は発酵過程において炭素鎖が切断されたと考えられる。添加したリノール酸は脂肪酸組成に大きな影響を及ぼさず,12ヵ月経過後のリノール酸添加試料とコントロール試料間での脂肪酸組成は同様の傾向を示した。そのことから添加したリノール酸は,短鎖脂肪酸へと変換されたのではないかと考えられた。
  • 辻 昌美, 真部 真里子
    2014 年 47 巻 3 号 p. 171-182
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/04
    ジャーナル フリー
    5つの金沢市の縁起菓子(五色生菓子,氷室万頭,福梅,金花糖,ささぎ餅)が石川県内でどのように広がっているかについて,石川県の和菓子店計34店に調査を実施した。
    その結果,これら5種類の縁起菓子のうち,福梅のみ石川県全域で製造販売されており,氷室万頭は奥能登の穴水以南の地域,金花糖は加賀地方のみ,五色生菓子とささぎ餅は加賀市以外の加賀地方と能登地方の一部で認められた。能登地方は地理的に田畑が少なく米の生産量が少ないこと,加賀市は江戸時代の政治・経済状況が厳しかったことから金沢の和菓子文化が取り入れ難かったと考えられる。また,縁起菓子は,一旦新たな地域に伝えられても,その菓子の謂れや行事がその地域に受け入れられないと,定着できない傾向にあった。縁起菓子は行事と密接に関わっているため,文化的背景の後押し無しにはその縁起菓子の存在が維持できないと考えられた。
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