日本調理科学会誌
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52 巻, 5 号
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総説
報文
  • 大須賀 彰子, 中川 裕子, 高橋 智子, 藤井 恵子, 大越 ひろ
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 5 号 p. 299-307
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,液状油に食品用乳化剤(油脂固化剤)を用いて,固形脂を調製し,その固形脂を添加したマッシュポテトの力学的特性と安定性に及ぼす影響について検討した。その結果,油脂固化剤を4%以上添加することで安定した固形脂が調製でき,その固形脂は大きなずりに対して弱い性質を持つが,静置時間を設けることで,ゲル化が促進することが示された。また,油脂固化剤を添加した油脂を加えたマッシュポテトは油脂の分離が少なく,静置時間を設けることで安定した状態になることが示唆された。油脂固化剤を添加した油脂を加えたマッシュポテトのべたつき感,まとまりやすさ,飲み込みやすさは高い評価を得ている液状油添加試料と有意差がみられなかった。以上のことより,マッシュポテトに油脂固化剤を用いて調製した固形脂を添加することは調製後の安定面と食べやすさにおいて有効であることが示唆された。

  • 芹生 直子, 近堂 知子, 高橋 節子, 平尾 和子
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 5 号 p. 308-317
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,タピオカ澱粉にリン酸架橋(P),アセチル化リン酸架橋(AP)さらにそれぞれに酵素処理(P+E,AP+E)を施した加工タピオカ澱粉4種について,カスタードクリームへの利用適性,ならびにカスタードクリームの嗜好に大きく関わる口どけの数値化について検討した。加工タピオカ澱粉4種の中では,薄力粉にP+Eを10%置換したカスタードクリームは口どけが良く,保形性があり嗜好性が高いカスタードクリームとなった。

     P+Eを用いたカスタードクリームは降伏応力が大きく保形性に優れ,チキソトロピー特性値および粘稠性係数は小さく,連続圧縮測定では口どけが良いとされる薄力粉を用いたカスタードクリームに近い図形を示した。またチキソトロピー特性値および粘稠性係数は官能評価のなめらかさ,かるさ,口どけと高い相関がみられた。このことから,粘度測定によるチキソトロピー特性値および粘稠性係数,連続圧縮測定が口どけを物理的に数値化する有効な手法であると考えられた。

  • 米田 千恵
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 5 号 p. 318-328
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     未利用貝イボキサゴの食資源としての可能性を探るためにイボキサゴの成分を調べ,他の貝類と比較することを目的とした。生軟体部の水分は77.5%でカキおよびアサリより少なく,粗タンパク質はカキおよびアサリの2倍含まれていた。生肉のエキス成分はタウリン,アルギニン,AMPに富んでいたが,他の貝類と比較してグルタミン酸やグリシンに乏しかった。

     イボキサゴを包装無しの加熱および包装有の加熱を行い,得られた加熱肉のエキス成分量を調べたところ,包装有で加熱した肉のエキス成分量は生肉とほぼ同等に保持されていた。包装無し加熱によって得られたスープの官能検査より,60分間加熱スープより10分間加熱スープの方が生臭みは弱く,甘味が強かった。さらに,イボキサゴとカツオ節またはニボシの混合スープの方が単独の素材から調製したスープよりうま味および甘味が強かった。

ノート
  • 辰巳 桃子, 鮫島 由香, 松井 徳光
    原稿種別: ノート
    2019 年 52 巻 5 号 p. 329-334
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     低温(5℃)条件下で甘酒により挽肉を発酵させ,タンパク質の分解の程度を調べたところタンパク質の分解は緩やかであった。そこで,より早く食肉を軟らかくでき,甘酒で発酵させることの有効性を明らかにするため,酵素活性に影響を与えることが予測される,米麹の保存状態(冷蔵・冷凍)や甘酒の塩分濃度によるプロテアーゼ活性への影響について検討した。米麹のプロテアーゼ活性は冷蔵・冷凍ともに保存期間の経過につれて増加傾向が見られ,冷凍保存した米麹は著しい品質劣化もなかった。甘酒に食塩を添加することで酵素反応温度55℃で行ったものはプロテアーゼ活性が増加した。食塩を添加した甘酒で発酵を行う方が調理への汎用性が高いことが推察されたため,今後,実際に食肉の発酵を行う5℃においての食塩添加による有効性を明らかにする必要がある。

資料
  • 平島 円, 磯部 由香, 堀 光代
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 5 号 p. 335-344
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     2007年から2012年の4月に大学,短大および専門学校(高等教育機関)へ入学し,2009年から2016年3月に卒業した学生に対して,在学中の調理に対する意識と実践度の変化について調べるため,卒業年の1~2月にアンケート調査を行った。卒業時の対象者は合計1,361名だった。アンケート調査の結果から,学生は在学中を通して調理することが好きで,在学中に調理する機会が増え,得意料理を持つ学生が多くなるとわかった。また,対象者を性別,居住形態,調理頻度,調理の好き嫌いにより分類し,分析を行ったところ,調理頻度が高く,調理する機会が多い学生は,作る料理の種類も多く,得意料理を持つ割合が高いとがわかった。また,得意料理を持つためには,調理を好きなことも必要だとわかった。したがって,在学中に調理する機会を得て,調理頻度を高め,調理に関心を持つことが,今後,社会人として自分で食事を用意するために重要だと考えられる。

  • ―好みの温泉卵を作るには―
    辰口 直子, 大 雅世
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 5 号 p. 345-351
    発行日: 2019/10/05
    公開日: 2019/10/11
    ジャーナル フリー

     一定条件下で鶏卵のゆで加熱を行い,卵の中心温度と保持時間が凝固状態に与える影響を明らかにして,好みの凝固状態の温泉卵を作るための指標を提示する事を目的とした。

     水温65℃,68℃,70℃一定で加熱した場合,卵中心温度は,65℃で30 分,68℃で28 分,70℃で27 分で水温近くに達した。その時,いずれの温度でも卵白の流動性があるが,到達温度によって異なり,卵黄の高さもそれぞれ異なった。温泉卵の形状は65℃では,卵白の流動性があり,210 分経過した後も広がり方は減るものの流動性が認められた。68℃では保持時間が長くなると流動性は減少し,70℃では30 分経過すると流動性がみられなくなった。卵黄は65℃,68℃では保持時間が長くなると高さが増す傾向にあったが,70℃では大きな差はみられなかった。中心温度と保持時間での卵白と卵黄の凝固状態が明らかになったので,これらの結果を利用して好みの成績を得る為の指標を作成した。

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