カウンセリング研究
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44 巻 , 2 号
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原著
  • 原田 恵理子, 渡辺 弥生
    2011 年 44 巻 2 号 p. 81-91
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,高校1年生を対象としたソーシャルスキルトレーニング(SST)を行い,ソーシャルスキルと自尊心に及ぼす効果を検討した。このプログラムは,自尊心や怒りといった感情のコントロールをターゲットスキルに取り入れ,感情の認知的側面に焦点をあてて実践されたものである。実施期間は4か月で,総合的な学習の時間を利用し,10セッションが実施された。ターゲットスキルは,a)自己紹介,b)コミュニケーション,c)聴く,d)自尊心,e)敬意,f)感情のコントロール,g)目標をたて実行する,h)あたたかいことばかけ(感謝する)の8つのスキルであった。アセスメントに,社会的スキルや自尊心の尺度を用い,行動評定とともに実践前と実践後に行った。その結果,向社会的スキルが増加し,引っ込み思案行動と攻撃行動が減少した。自尊心は,失敗不安を抑制する効果を得ることができた。高等学校における感情の認知に焦点をあてたSSTは,向社会的スキルの向上と引っ込み思案行動および攻撃行動の抑制を支援するプログラムとして効果をもつことが示唆された。
  • 遠藤 寛子, 湯川 進太郎
    2012 年 44 巻 2 号 p. 92-100
    発行日: 2012年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,怒りの維持に影響を及ぼす要因として,思考の未統合感,反復思考,回避行動に着目し,思考の未統合感が反復思考をもたらし怒りの維持に結びつく過程,反復思考が思考の未統合感を維持・強化し,それが怒りの維持につながる過程,さらには,思考の未統合感が回避行動を促し反復思考に至る過程について検討した。この際,思考の未統合感を「過去の出来事に対して目指すべき方向に解決されていない,受容できない,脅かされると感じること」と定義した。高校生324名を対象に,1週間以上前に生じた怒りの出来事を記述するよう求めた。その後,質問紙調査を行い,出来事直後および最近の思考の未統合感,最近の反復思考,出来事後の回避行動,最近の怒りの維持の程度について測定した。共分散構造分析の結果,思考の未統合感が,反復思考を増加し,怒りを維持させるという過程が明らかとなり,また,反復思考が出来事に対する思考の未統合感を強化し,ひいては怒りを維持させることも示された。その一方で,思考の未統合感は回避行動へは結びつかず,またその回避行動は,反復思考の増加をもたらさないことが明らかとなった。
  • ―反すうを媒介したメカニズム―
    津田 恭充
    2011 年 44 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    人は不確実な対人状況におかれたとき,不確実性を低減させるための情報収集が動機づけられる。このとき,他の人から本心を聞き出すスキルが低いと十分な情報収集ができず,不足した情報を補完するための反すうが生じる。そして,それが関係妄想的認知につながることが先行研究により明らかにされている。しかし,他の人の本心を知るための方略は実際には数多く,それらの方略ごとの効果の違いは明らかにされていない。そこで,本研究では,どのような情報収集行動をどの程度とるのかを測定する情報収集スタイル尺度を開発した。探索的および検証的因子分析の結果,尺度は“当事者とのコミュニケーション”“当事者の観察”“他の人の意見”“メディアの活用”の4因子で構成されることがわかった。次に,反すうを媒介した情報収集行動と関係妄想的認知の関連を調べるためにパス解析を行った。その結果,“当事者とのコミュニケーション”は反すうとの間に負の関連を,他の3つの情報収集行動は反すうとの間に正の関連を示した。反すうは関係妄想的認知と正の関連を示していた。反すうに対する情報収集行動の対照的な影響を説明するため,情報価について考察がなされた。
資料
  • 古宮 昇, 谷口 弘一
    2011 年 44 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    ヨガが心理的状態に好影響を及ぼすかどうかを検証する目的で,調査を行った。ヨガを始めたばかりの参加者74名が,はじめてレッスンに通ったとき,およびその約1か月後,約2か月後に心理尺度に回答し,彼らの心理的変化が継時的に測定された。その結果,調査回数を重ねるごとに,彼らの心理状態は向上していた。調査参加者は,週あたり平均して約2回のレッスンを受講していたが,初回測定時よりも約2か月後のほうが,自尊感情がより高まり,人生により満足し,前向きに生きようという意欲が増していた。また,対人不安と完全主義は減少していた。
  • 松田 幸久, 田山 淳
    2011 年 44 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ストレスコーピング方略とピア・サポートによる心理的効果の関係を検討することであった。46人の被験者がピア・サポートに参加した。最近ストレスを強く感じた状況を想起させたあと,Profile of Mode State短縮版(POMS)を用いて気分を測定した。ピア・サポートの終了後,POMSを用いて気分を測定した。また,ピア・サポート時とは別に,ストレスコーピング方略質問紙に回答させた。結果は,1)「活気」の気分以外については全体的にストレス緩和効果がみられたが,問題焦点低群,コーピング量低群では「活気」の気分が変化しなかった。2)比率情動群はすべての気分変化を示したが,比率問題群では,「疲労」および「怒り―敵意」の気分変化がみられなかった。本研究において,ストレスの上昇がみられず,ストレス緩和効果がみられたため,ピア・サポートが,いずれのストレスコーピング方略にとってもストレス緩和効果に有効なサポートであることが示された。一方,問題焦点低群,コーピング量低群,比率問題群において,一部緩和効果がみられず,ピア・サポートとの適合性の低さが示唆された。
  • 星野 翔一, 青木 健一, 福住 紀明, 山口 正二
    2011 年 44 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,きょうだい構成と性格特性・シャイネス特性・心理的距離との関連性を検討することを主たる目的とした。性格特性を測定するため,柳井・国生(1987)が作成した新性格検査を用いて,共感性・自己顕示性・持久性を測定した。次に,シャイネス特性を測定するため,鈴木ら(1997)が作成した早稲田シャイネス尺度を用いて,行動(消極性)・感情(緊張・過敏さ)・認知(自信のなさ)を測定した。最後に,心理的距離を測定するため,山口ら(1989)が作成した心理的距離測定用スケールを用いて,被験者と家族・教員・ペット間の心理的距離を測定した。その結果,きょうだい構成と性格特性・シャイネス特性・心理的距離が,おおいに関係していることが明らかにされた。性格特性・シャイネス特性・心理的距離において,きょうだい構成は重要な要因であることが示唆された。
  • 牧 郁子
    2011 年 44 巻 2 号 p. 136-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,時間的・性別要因を入れたモデルの検証を通じて,中学生における無気力感の予防・対処要因を検討することが目的であった。分析1では,3時点での調査をもとにモデル検証を行った。その結果,随伴経験(t1)がコーピング・エフィカシー(t2)を形成し無気力感(t3)を緩和するパスに加えて,非随伴経験(t1)が,教師・友人関係・自己への偏った思考(t2)を形成し,コーピング・エフィカシーの少なさの影響とともに勉強における偏った思考(t2)へと収斂し,無気力感(t3)へつながっている可能性が示された。続いて分析2では男女別の解析を行い,男女ともコーピング・エフィカシーと勉強における偏った思考とが無気力感へ直接作用しており,その対処要因として有効な可能性が示された。また,男子では友人関係における偏った思考が,女子では教師への偏った思考が高い間接効果を示し,勉強における偏った思考へと影響して,無気力感に間接的に作用していた。こうしたことから,男子は友人関係の改善が,女子では教師との信頼関係の構築が,無気力感の予防につながる可能性が示唆された。
  • 八鍬 真理子, 水野 治久
    2011 年 44 巻 2 号 p. 148-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学生の情動コンピテンス,心の病に関する否定的認識が学生相談室のカウンセラーに対する援助不安に及ぼす影響を明らかにすることである。大学生357名に調査票を配布し,325名の調査票を回収した。そのうち,欠損値が認められなかった291名を分析の対象とした。情動コンピテンス尺度は因子分析され,「情動の表現と命名」「感情に対する尊重性」の2因子が抽出された。心の病に関する否定的認識尺度も因子分析され,「忍耐不足」「努力不足」「心の病の否定」の3因子が抽出された。援助不安は,呼応性への心配,汚名への心配が測定された。分析の結果,1)「呼応性への心配」については,「感情に対する尊重性」が負の関連,「忍耐不足」が正の関連を示した,2)「汚名の心配」については,「情動の表現と命名」「感情に対する尊重性」が負の関連,「忍耐不足」が正の関連を示した。以上の結果は,大学生の情動コンピテンスを高め,心の病に関する否定的認識を低めることで,大学生のカウンセラーに対する援助不安を低めることができる可能性があることを示していた。
  • 五十嵐 哲也, 杉本 希映, 西村 大樹
    2011 年 44 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,日本版「たくましさ希求」尺度の開発を目的とした。その結果,「行動」「態度」の2因子構造であることが確認され,これは男女ともにほぼ同様の構造であった。構造は原尺度と同様であるが,性差がない点は原尺度と異なっており,文化的な背景の違いがあるのではないかと考えられた。また,本尺度は十分な内的整合性を有しているものの,「行動」において得点が下限値に近く,原尺度より低い傾向にあった。日本における「行動」は,筋肉増強にかかわる具体的問題行動を指す可能性が高いと示唆された。妥当性については,性差や専攻による差から十分な併存的妥当性が得られた。収束的妥当性については,身体イメージ,自尊感情,自己愛傾向,性役割意識との関連から導き出された。弁別的妥当性については,「行動」との間にのみ,摂食障害傾向と弱い関連性が認められ,本尺度が痩せ志向とは異なる概念を測定している一方で,摂食障害傾向と行動的共通性があるという予測に一致していた。以上より,本尺度の有用性が実証された。今後,項目表現の再検証を行うこと,文化による違いを解明すること,問題傾向群の弁別に適用可能かどうかを明らかにすることが求められる。
展望
  • ―2000年以降の研究動向―
    青木 智子
    2011 年 44 巻 2 号 p. 167-178
    発行日: 2011年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本論文は,先の展望論文を踏まえ(青木,2000a),2000年以降のコラージュ技法・療法の研究を概観し,傾向と問題点に言及した。現在,コラージュは対象領域を末期がん患者,重症心身障害者,脳損傷に対するリハビリテーション領域,デイケア,発達支援,学校や研修の場の自己啓発まで広げ,手法も工夫が凝らされている。2000年以降,心理臨床場面で用いられていたコラージュが,他領域に導入された結果,エビデンスを明確にすべく基礎的研究数が増加した。しかし,アセスメントを目的に集積された基礎研究は,疾患や障害に起因する臨床的特徴が作品に顕著な統合失調症,認知症患者を対象としたもの以外,安定した再現性が得られていない。そもそも,作品のどこまでを障害,どこまでを個人の心的内容の投影とみなすかは判断が困難で,作品のみによるアセスメント研究の難しさがうかがえる。今後,コラージュの解釈・理解には,作品から受ける印象を重視する手法でのアセスメント,障害や疾患,課題遂行の観察,心的世界を象徴する作品テーマの検討,系列的制作等の視点を加えるべきであろう。そのためにも,基礎・事例研究の相互の知見と研究が,コラージュを導入するさまざまな場面で生かされることを期待したい。
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