カウンセリング研究
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46 巻, 4 号
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原著
  • 田中 勝則, 田山 淳
    2013 年 46 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    身体醜形懸念は青年期に高まることが知られている。これまでに,高い身体醜形懸念を有する群に特有の認知や行動の特徴が明らかにされてきた。しかし,高い身体醜形懸念を有する群の対人的な認知の特徴については,未解明な点が多い。相談へのアクセシビリティ向上,介入技法の改善のために,高い身体醜形懸念を有する群に特有の対人的な認知の特徴の解明が望まれる。本研究では,高い身体醜形懸念を有する大学生の対人的な認知の特徴を検討することを目的とした。281名の大学生(男性117名,女性164名)がデモグラフィック項目,日本語版Body Image Concern Inventory,Short Fear of Negative Evaluation Scale,他者意識尺度,社会規定的完全主義尺度へ回答した。高い身体醜形懸念を有する者は,男女ともに,高い水準の他者からの否定的評価への恐れ,外的他者意識,社会規定的完全主義を示す傾向が認められた。女性においてのみ,高い身体醜形懸念を有する者は,内的他者意識も有意に高い水準の得点を示した。高い身体醜形懸念を有する者が,深刻な対人的な認知の問題を抱えていることが示唆された。
資料
  • ―類似面の差異に着目して―
    田中 健史朗, 梅本 貴豊
    2013 年 46 巻 4 号 p. 197-206
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,被開示者に対する類似性が,信頼感,好意感を媒介して自己開示へ与える影響を検討した。その際,類似性を表面的側面の類似と内面的側面の類似に分けた。大学生216名を対象とし,対象者に仮想の人物についての説明文を読んでもらった。そして,その仮想の人物に対しての類似性,対人魅力,自己開示を質問紙によって測定した。類似性を独立変数,信頼感と好意感を媒介変数,自己開示を従属変数としたパス解析を行った結果,表面的側面の類似からは,内面的自己開示,信頼感,好意感への正のパスがみられた。また,内面的側面の類似からは,信頼感と好意感への正のパスがみられた。さらに,表面的側面の類似と内面的側面の類似は,信頼感を媒介として内面的自己開示,表面的自己開示を促進することが示された。また,表面的側面の類似と内面的側面の類似は,好意感を媒介として,表面的自己開示を促進することが示された。本研究の結果より,類似の側面によっても自己開示や対人魅力へ与える影響に違いがあることが示された。カウンセラーに対する表面的側面の類似の認知を活性化させることにより,クライエントの自己開示を促進させることができるかもしれないことが示唆された。
  • ―日本語訳PDIによる調査―
    佐藤 邦子
    2013 年 46 巻 4 号 p. 207-213
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル フリー
    この研究は,山崎らが翻訳した日本語PDI(ピーターズ妄想質問紙)を用いて,高校生における妄想的体験の特徴を明らかにすることを目的とする。328人の高校生を対象にアンケート調査を行った。観察した特徴は妄想得点,苦痛率,心的占有率,確信率である。女子の妄想得点は,男子より高い得点を示した。また,2年生と3年生の妄想得点は,1年生より高い値を示した。高校生の妄想得点の平均値は,日本の大学生と統合失調症患者,および英国成人のそれよりも低いことが明らかになった。妄想体験率は男女間に有意差はなく,1年生より2年生と3年生のほうが有意に高い値を示した。
ケース報告
  • ―自動思考記録表と週間活動記録表の活用―
    矢島 道, 矢島 新, 松田  英子
    2013 年 46 巻 4 号 p. 214-225
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル 認証あり
    本事例は,実際には色素斑が認められないにもかかわらず,顔のしみへのこだわりや関係妄想を主訴とする中年女性に対し,認知行動療法にて援助した面接過程の報告である。本事例のクライエントは,数年前に偶然夫と見知らぬ女性との写真を見つけたことをきっかけに,身体醜形障害と妄想性障害を併発(皮膚科医院メンタルクリニックの医師が診断)し,皮膚科受診を繰り返していた。カウンセラーは,クライエントと支持的な関係を作り,被害妄想や顔のしみへのこだわりに対しては自動思考記録表により現実に即した認知的再構成を促し,また,症状の遷延化に基づく二次的な不安や抑うつ症状に対しては行動の活性化を図るため週間活動記録表を導入した。クライエントの認知と行動の適応的変容を目的として,6か月間に12回の心理面接と面接終了1か月後に1回のフォローアップ面接を実施した。その結果,クライエントは現実と妄想の区別が可能になり,社会生活上のトラブルに対処できるようになった。同時に顔のしみへのこだわりも消失していった。心理アセスメントの結果からも,身体醜形障害と妄想性障害を合併する成人事例に対する認知行動療法の有用性が示唆された。
  • ―赤面症状に苦しんだ男子学生の変容過程―
    原 英樹
    2013 年 46 巻 4 号 p. 226-235
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/03/12
    ジャーナル 認証あり
    本論文では,他者の言動などを過度に意識して,それらに翻弄され,おもに赤面症状や対人場面での強い緊張感に苦しみ続けた対人恐怖症の男性クライエントの事例を取り上げた。症状の背後には,他者への敏感性が強く,自己の欲求や意思を抑え,他者の反応や意向に合わせて自己の言動やあり方を決定するという他律的な問題傾向が示された。そこで,この問題に焦点を当て,クライエントの段階に合わせて,他者反応の想定状況などに調整や工夫を加えながら,対人関係場面で生じる不安を低減させ,場面に即して自己の意思や感情を適切に表明できるよう,社会的自己効力感を高めることなどに取り組んだ。さらに,他者との出会いや自己実現などのさまざまな社会的な試みを通じ,心理的構造の問題理解と新たな適応的自己への変容が進み,それらが結びつき両者が連携を強める中で,他律性が改善し,赤面などの対人恐怖症状が解消された。
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