カウンセリング研究
Online ISSN : 2186-4594
Print ISSN : 0914-8337
ISSN-L : 0914-8337
47 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
資料
  • 渡部 雪子, 濱口 佳和, 新井 邦二郎
    2014 年 47 巻 3 号 p. 127-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/10/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,中学生の捉えた親の期待に対する認知と外的適応/不適応との関連を検討した。分析1では中学生312名を対象に質問紙調査を実施し(分析対象者225名),外的適応/不適応への関連が予想される3つの期待の認知(期待されていると感じる程度,親の反応予期,期待の受け止め方および期待の受け止め方×親の反応予期の交互作用項)に焦点を当てて,外的適応/不適応との関連を包括的に比較検討した。分析の結果,3つの期待の認知の中で期待の受け止め方が最も説明力が大きく,外的適応/不適応変数を広範に予測できることが示された。分析2では,さらに最も外的適応/不適応への説明力が高かった受け止め方尺度の期待に対する3つの受け止め方を組み合わせて4つのクラスターを作成し,外的適応/不適応との関連を検討した。その結果,反発的感情群の不適応得点が高く,その他の3つのクラスターとの間に有意差がみられた。一方,肯定的感情群は外的適応が最も良好であることが明らかになった。
  • 上條 菜美子, 湯川 進太郎
    2014 年 47 巻 3 号 p. 137-146
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/10/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,人がストレスフルな出来事に遭遇したとき,その出来事に対しどのような主観的評価を与えることで意味づけが動機づけられるのかについて,物語性をもつ多様な仮想場面を用いた場面想定法により検討した。「未然防止性,生起可能性,不快感が脅威評価と関連し,脅威評価が意味づけ動機と自己の変化と関連する」という仮説のもと,大学生および大学院生30名を対象に,10のストレスフルな出来事について質問紙調査を行った。その結果,意味づけ動機に対する脅威評価の関連性は弱く,一方で,出来事の未然防止性・生起可能性・不快感が高いほど,意味を見つけ出そうと動機づけられることが示された。また,出来事を脅威に感じるほど,自分自身が大きく変化すると推測しやすいという関連が見いだされた。考察では,本研究で得られた,意味づけを動機づける主観的評価に関する基礎的知見,および本研究の限界と今後の展望について議論された。
  • 永井 智, 松田 侑子
    2014 年 47 巻 3 号 p. 147-158
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/10/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学生の援助要請に対してソーシャルスキルおよび対人的自己効力感が与える影響を検討することである。330名の小学生(男子178名,女子152名)を対象に,教師および友人への援助要請意図,ソーシャルサポート,悩みの経験,抑うつ,ソーシャルスキル,対人的自己効力感を尋ねた。共分散構造分析の結果,対人的自己効力感は教師への援助要請意図に正の影響を与えていたが,友人への援助要請意図に対する影響力は非常に弱いものであった。さらに,性別,悩みの経験,抑うつ,ソーシャルサポートは援助要請に対して先行研究と同様の有意な関連を示したが,悩みの経験と抑うつの影響力は非常に弱いものであった。
ケース研究
  • 今野 義孝, 吉川 延代
    2014 年 47 巻 3 号 p. 159-169
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/10/04
    ジャーナル 認証あり
    本研究は,一女子大学生の過敏性腸症候群(IBS)の軽減における「とけあい脱感作法」の効果について検討した。「とけあい脱感作法」では,最初にクライエントはIBSに関連する不安が最高に達するまでイメージし,次に援助者によって肩に「とけあい動作法」の心地よい体験の援助を受けながらそのイメージと直面し,そのときのSUDを評価した。1回のセッションでは,この手続きを3回繰り返した。セッションは合計5回行った。また,第2回のセッションでは,クライエントが自分でとけあい動作法をしながら行う「セルフとけあい脱感作法」も導入した。クライエントは,IBSの症状とそれに関連する不安をコントロールし,症状の背後に不合理な信念があることに気づいた。この結果から,とけあい脱感作法は,クライエントがIBSと関連する不安とマインドフルな態度で直面することと,不安がもっている成長促進的な意味への気づきを促進することが示唆された。本研究は,マインドフルネス,それに認知の再構成の観点から考察された。
ケース報告
  • 原 英樹
    2014 年 47 巻 3 号 p. 170-178
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/10/04
    ジャーナル 認証あり
    本論文は,アスペルガー症候群の男児の事例報告である。事例では,他者の存在や言動に的確な注意がいかず,感情的側面を十分認識しないなどの認知関連上の問題に視点をあてて援助を行った。まず,他者の言動や感情への注目と理解を促すことで,自他の対比が促進され,共感性などの社会技能が獲得された。また,自らの問題への自覚が深まるにつれ,その改善意欲が高まり,学習面の技能向上や自己の確立なども進んでいった。本事例を通して,問題点への自己理解を促し,改善へのレディネスを高めた上で,改善に向けた課題の意味や手順などが容易に理解できるような工夫をした援助が重要だと示唆された。
feedback
Top