カウンセリング研究
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49 巻, 2 号
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原著
  • 菊地 創, 富田 拓郎
    2016 年 49 巻 2 号 p. 53-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学4~6年生とその両親92組を対象として,両親の夫婦関係が児童の抑うつ症状にどのように影響するのかに関するモデルの検討を行った。本研究では,中学生を対象とした先行研究で示された「親行動媒介モデル」と「子どもの知覚・反応性モデル」を1つのモデルに組み込んだ包括的モデルを参考に,「子どもの認知した家族関係」を変数に組み込んだモデルの検討を行った。その結果,父母の夫婦間葛藤からそれぞれの親行動への効果,母親の親行動から児童の家族関係認知への効果,児童の家族関係認知から児童の抑うつ症状への効果が認められた。本研究の結果,小学生においても夫婦関係が抑うつ症状のリスクファクターとなりうる一方で,夫婦間葛藤が存在したとしても,ただちに児童が家族全体をネガティブに認知するわけではないことが示された。
  • 竹田 剛
    2016 年 49 巻 2 号 p. 64-74
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    神経性過食症をもつクライエントへのカウンセリングを行う上で,自尊感情が治療に対してもつ有益な機能に近年注目が集まっている。このことから,神経性過食症をもつクライエントの自己概念や自己評価を整理し,クライエントの自己のあり方をより深く理解することが求められているといえる。そこで本研究では,臨床群を対象とする質的研究から神経性過食症関連パーソナリティ質問票を開発し,それを用いて自己概念を整理して臨床上の示唆を得ることを目的とした。まず大学生172名の回答データを因子分析した結果,「こだわりをもち邁進する私」や「内閉的な私」などの6因子にまとめられることが示され,尺度の信頼性・妥当性が確認された。また自尊感情尺度などとの関連性について検討した結果,第6因子「落ち込みやすい私」や第2因子「内閉的な私」をはじめとする因子が自尊感情や症状とネガティブな関係性をもつことが示された。カウンセリングでは第1因子「こだわりをもち邁進する私」のレジリエンス機能を生かすなど,複数の自己概念を視野に入れ並行して扱う必要があると考察された。
  • 河村 昭博, 武蔵 由佳, 河村 茂雄
    2016 年 49 巻 2 号 p. 75-84
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,教員が指導行動を行使する中でのユーモアの表出度と,児童の学級生活での適応や意欲などの面との関連を検討することを目的とした。具体的には,教員のユーモア行動測定尺度(河村・武蔵・河村, 2015)を用い,児童が認知する教員のユーモア表出の3つのタイプごとに,児童の学級満足度やスクール・モラールとの関連を実証的に検討した。さらに,学級集団の状態のタイプごとに,所属している児童たちが認知している担任教員のユーモア表出の特徴について,実証的に検討した。対象は,公立小学校2校24学級596名(男子300名,女子296名)である。その結果,「親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」では,他の学級集団の類型と比較して,教員の「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」が有意に高く認知されていることが明らかになった。
  • 村上 達也, 藤原 健志, 西村 多久磨
    2016 年 49 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,対人的感謝と学級適応の関連について,学校適応の類型と対人的感謝との関連を検討すること,および,交差遅延効果モデルを用いて対人的感謝と学校適応との因果関係を検討することの2つが目的であった。研究1では,小学4年生から6年生の624名を対象に,質問紙調査を行った。分散分析の結果,男子より女子のほうが対人的感謝が高いこと,非承認群と学級生活不満足群より学級生活満足群と侵害行為認知群のほうが対人的感謝が高いことが明らかにされた。研究2では,小学4年生から6年生の616名を対象に,2時点の質問紙調査を行った。交差遅延効果モデルを用いたパス解析の結果,対人的感謝と承認の間および承認と被侵害の間には,双方向の因果関係がみられた。また,女子においてのみ,被侵害が感謝を高める効果が示された。以上の結果を踏まえて,各群に合わせた援助について議論された。
資料
  • 石原 みちる
    2016 年 49 巻 2 号 p. 96-107
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,学校に関わるコンサルテーションの中でもスクールカウンセラー(以下SC)が教師に対して行うコンサルテーションに焦点化し,それに関する国内の研究動向を明らかにし,研究の特徴と課題,今後の方向性を考察することを目的とした。研究の分析から,事例・実践研究が多く,理論的背景や定義が曖昧な研究もあることがわかった。事例研究の分析では,対応する課題は不登校に限らず多様であり,コンサルティは担任・養護教諭が多く必要に応じて対象が拡大すること,継続方法や方針共有の枠組みは柔軟で,コンサルティ以外への関与が並行する例が多いことが明らかになった。問題を把握し,アセスメントを行い,それを伝え,対応を検討するという過程と並行して,SC視点の提供や情緒的支援,経過の共有が行われていた。一方,SCに限らないコンサルテーションの過程と比較すると,関係づくりは開始前に行われ,対応への評価や終わり方が明確でない可能性が見受けられた。今後の方向性として,それらの意味を明らかにする研究が必要と考えられた。また,理論的背景や事例報告の形式を整えること,コンサルティ視点からの研究が今後の課題と考えられた。
委員会報告
  • 沢崎 達夫, 小林 正幸, 新井 肇, 藤生 英行, 平木 典子, 岩壁 茂, 小澤 康司, 山崎 久美子
    2016 年 49 巻 2 号 p. 108-122
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/06/03
    ジャーナル フリー
    日本カウンセリング学会資格検討委員会は,その任期中に新たなカウンセラーの資格について検討を進めることになった。そして,公認心理師資格が実現した中,現在のわが国におけるカウンセリングの位置づけをより明確にし,また日本カウンセリング学会の発展に向けて何をすべきかを,さまざまな観点から議論してきた。認定カウンセラーに続く新たな資格は,将来的には「カウンセリング心理士」として実現される手はずであるが,そこに至る道筋の一端をここに示す。全体の構成は,「カウンセリング,カウンセラーとは(概念,定義,活動内容,領域など)」,「カウンセリング心理学と臨床心理学」,「学校におけるカウンセリングの将来展望」,「カウンセラー資格の現状と課題」,「国際資格について」,「カウンセラーとして学ぶべきこと」となっている。これらを踏まえて,日本カウンセリング学会として,カウンセリングをどのように捉え,どのようなカウンセラーを養成すべきかを明確にし,それを実現するための具体的なカリキュラムと養成方法を検討していくことが今後の課題となっている。
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