カウンセリング研究
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51 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 鈴木 孝, 佐々木 淳
    原稿種別: 原著
    2019 年 51 巻 3 号 p. 145-156
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル フリー

    臨床心理面接にて,カウンセラー(以下,Co.)がクライエント(以下,Cl.)に対して自己開示をする効果が指摘されており,多くのCo. が自己開示を使用している。その効果については実証研究が蓄積されてきた。しかし,どのような自己開示をCl. が求めているか,そしてCo. がその期待にどう応じるのかは明らかにされていない。そこで本研究では,Co. の自己開示について,Cl. の期待とCo. の実際の応答との差異を検討することを目的とした。心理援助職14名(Co. 役)と大学生53名(Cl. 役)を対象に,Cl. がCo. に自己開示を求めた仮想事例を提示し,Co. 役には自身がすると予想する応答を,Cl. 役には自身がCo. に求める応答を回答させた。Co. の気持ちの開示を求めた仮想事例では,傾聴に徹することが両者に共通する応答として見いだされた。一方で,Co. の見立ての開示を求めた仮想事例では,Cl. 役は解決策の開示を期待したのに対し,多くのCo. 役が解決策を提示しないと予想した。Cl. の期待とCo. の応答が異なる点について,面接における時間軸の観点から考察し,Co. に求められる姿勢を論じた。

  • 藤原 和政, 河村 茂雄
    原稿種別: 原著
    2019 年 51 巻 3 号 p. 157-167
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高校生のソーシャルスキルと学校生活満足度の関連について,学校の特性に着目し検討することであった。調査対象は,3,153名の高校生であった。高等学校を大学進学率を用いて,進学校,進路多様校,非進学校の3つのタイプに分類した。分散分析の結果,ソーシャルスキル得点は学校タイプによって差異があることが明らかになった。多母集団同時分析の結果,すべての学校タイプで,かかわりのスキルは承認感と正の関連が,被侵害・不適応感とは負の関連が示された。しかし,配慮のスキルと学校生活満足度との関連は,学校タイプによって異なることが明らかになった。これらの結果は,学校生活を適応的に過ごすことに関連するソーシャルスキルは学校タイプごとによって異なることが示唆された。

ケース報告
  • 尾花 真梨子
    原稿種別: ケース報告
    2019 年 51 巻 3 号 p. 168-177
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,自閉スペクトラム症のある特別支援学校高等部男子生徒の母親に対して行われた心理面接過程を報告するものである。面接開始当初,母親は,子どもの問題行動,直近に迫っていたインターンシップの不安を口にしていた。しかし,徐々に自身が抱えてきた罪悪感を吐露するようになった。面接を重ね,罪悪感が解消していく中で,子どもの長所や自身のかかわり方への客観的な視点,母親としての自信を取り戻していった。そして,就労移行期という重要なキャリア選択段階においても,障害特性に由来する困難さが形を変えて行動に現れることを理解していった。こうした経過について,親の障害受容やそれを支える支援者の役割という視点から考察を加えた。

  • 原田 真之介
    原稿種別: ケース報告
    2019 年 51 巻 3 号 p. 178-188
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,慢性疼痛を抱えるクライアントに対して臨床動作法を適用し,疼痛と関連症状である不安,不眠の改善をもたらした事例である。本事例では,臨床動作法を通してクライアントが自らの過剰な筋緊張や力みによる動作の様式に気づいて制御し,適度な力加減による身体の動かし方を獲得した。また,当初,クライアントは上記の筋緊張から力みによって身体の痛みが生じて動かすことができなかったが,セッションを通して痛みを生じさせる不適切な筋緊張に気づいて弛めることができるようになり,さらに動作を展開できるようになった。以上の過程は,クライアントの身体感覚への気づきと心身の自己コントロール力を育み,日常生活における活動様式の改善をもたらしたと考えられ,クライアントが当初抱えていた疼痛,不安,不眠症状に関するアウトカム得点も改善した。

  • 小粥 宏美
    原稿種別: ケース報告
    2019 年 51 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,双極Ⅱ型障害と診断された女子大学生との学生相談における面接経過と,認知行動療法を取り入れたかかわりについて報告する。本事例では,女子大学生の環境要因や気分の波に影響されやすい症状に対して,心理教育や活動記録表によるセルフモニタリング,価値のワークなどを取り入れたことにより,女子大学生は問題行動を視覚的に把握しながら,不快な気持ちにはとらわれずに物事に取り組めるようになった。さらには,不快な出来事を回避せずに行動レパートリーを増やしていくことが卒業を可能にし,その後の生活基盤を形成する行動に繋がったものと考えられた。

  • 熊澤 紅実
    原稿種別: ケース報告
    2019 年 51 巻 3 号 p. 197-207
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2020/10/06
    ジャーナル 認証あり

    本事例は,スクールカウンセラーが行った,母親との過剰な愛着を持つ男子高校生との面談過程の報告である。男子高校生が語る不安や学校不適応感の背景には,青年期の分離―個体化期の課題である母からの精神的離脱と個の自立,エディプス・コンプレックスの克服,超自我の形成が問題として考えられた。12回の時間制限カウンセリングで,それらの克服と男子高校生の精神的自立を目指して援助を行った。また,母への強い愛着がある男子高校生に対して,Co. は発達促進的な新しい対象(new object)(小此木, 1976)の役割を意識し,精神的成長を援助した。本事例では,青年期の分離―個体化に時間制限カウンセリングが果たした効果を考察する。

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