都市計画論文集
Print ISSN : 1348-284X
第39回学術研究論文発表会
選択された号の論文の157件中51~100を表示しています
  • EU加盟が与えた影響とその要因分析を通じて
    松本 忠, 大西 隆
    セッションID: 51
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では、1980年代以降、分権化とともに国の関与のあり方が大きく変化したスウェーデンの事例を分析し、都市計画における国の関与の実態と1995年のEU加盟以後の国の関与のあり方の変化について論じ、併せて、我が国の都市計画における今後の国の関与のあり方を考察する。 主な知見は以下のとおりである。(1)スウェーデンでは、ガイドラインによる誘導手法はあまり用いられず、国の関与の視点は法令で明確に定められている。「国の利害」の範囲が具体的、即地的に定められることが特色である。(2)個別計画策定プロセスにおける事前の関与は小さく、代わりにコミューンの「独走」を防ぐ事後関与の仕組みが充実している。(3)EU加盟以後、環境政策、地域政策、インフラ整備などの分野で国の役割が増大し、コミューンへの関与を強めつつある。一方で、一層の分権化や国の関与の縮小を志向する動きも見られる。(4)直面する課題として、国とコミューンの計画調整手法、地域レベルの組織に対する国の関与のあり方、計画決定プロセスの効率性と国の関与とのバランスがあげられる。
  • 田中 大策, 中村 悟, 佐藤 滋
    セッションID: 52
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、市民組織との協働による運営や、居住者に対して相互扶助による自立生活支援を試みている民間の事業主体を対象とする。そして、今後の地域福祉に寄与していくような民間供給型高齢者住宅の在り様を考察するために、市民組織との協働及びコミュニティ形成という視点から以下のことを明らかにすることを目的とする。・事業主体と市民組織との協働の実態分析から両者が協働することの有効性・居住者の住み替え、生活の詳細の分析から、居住者の相互扶助による自立生活へ発展するコミュニティ形成要素
  • 効果的な都市計画提案制度の運用・活用に向けて
    安藤 準也
    セッションID: 53
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    都市計画提案制度という、土地所有者等が一定の要件のもとに、都市計画を提案できる仕組みが創設された。この論文の目的は、制度創設初動期にある都市計画提案制度が、今後、効果的に運用・活用されるための知見を得ることにある。そのために、まず既存制度との比較により、都市計画提案制度の制度的特徴を明らかにしている。次に、先進自治体の都市計画提案制度の運用方法及び同制度の活用事例を整理・分析し、参考点、今後の課題を抽出している。その結果、都市計画審議会開催の事前に、専門家を交えて、提案内容について分析・検討することの有効性や、条例により、積極的に提案の間口を広げることの有効性などが明らかとなった。
  • -兵庫県篠山市を対象として-
    遠藤 亮, 中井 検裕, 中西 正彦
    セッションID: 54
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    地方行政の基盤強化や広域的な対応の必要性から、市町村合併に注目が集まっている。行政と住民とが連携してまちづくりを展開していく上で、住民の合併に対する意識を考慮することは重要な課題である。市町村合併のデメリットとして、地名の変更が挙げられている。本研究は、市町村合併による市町村名称変更が住民の地域帰属意識に与える影響を明らかにし、市町村名称変更の形態と地域帰属意識変化との関係を明らかにすることを目的とする。5年前に合併した兵庫県篠山市の住民を対象にアンケート調査を行い、その結果の分析から、旧名称を残す場合と消滅させる場合とで、地域帰属意識の変化に違いが出ることを突き止めた。
  • 中伏 香織, 真野 洋介, 佐藤 滋
    セッションID: 55
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では、密集市街地のまちづくりにおいてアリーナ組織が発生する経緯を年表と組織表から3段階に整理した。各段階で関連する主体の関係を図示し、資金・人材・まちづくりの情報の3つの資源の流れと活動テーマの広がりから、市民活動組織・個人・行政セクターの連関について分析した。以上の分析から、日本の密集市街地固有のまちづくりパートナーシップの形成システムと組織の運営方法について分析した。 まちの将来ビジョンを議論する場であるアリーナ組織は、既存の協議会とその他地域の活動をネットワークする組織として新たに設立されていること、既存の組織の枠を越えて緩やかなネットワークが広がることで組織に有効な資源の動員につながっていること、地域運営におけるアリーナ組織の役割は地域によって異なることが明らかになった。
  • 西オーストラリア州パース都市圏におけるフォーラム「都市との対話」の取り組み
    松橋 啓介
    セッションID: 56
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    "Dialogue with the City"フォーラムについて報告する。1,100人もの人々が参加して、情報技術を活用した参加者間の共同作業を通じて、パース大都市圏の共通の将来像を構築した。ここで適用された大規模まちづくりワークショップの方法は、米国のNPO"AmericaSpeaks"によって開発されたもので、既にいくつかの適用事例が見られる。ここでは、2003年9月に、西オーストラリア州政府の計画インフラ省が主催したフォーラムについて報告する。各10人の参加者からなる110個のテーブルにおいて、何が守られるべきでありまた何を変えるべきか、またそれらの事項の間に優先順位を付ける作業を行った。さらに、成長限界線、開発シナリオ、保護地区、都心、土地利用密度と交通システムを含む望ましい都市開発の地図を作成するための計画ゲームを行った。110枚の地図データは、将来のパースの計画とガイドラインの決定の基礎資料とするために利用される。こうした、大人数による計画ゲームは、マスタープラン策定の資料を得る方法として興味深い。今後、多くの事例が積み重ねられることを期待したい。
  • 大学ベース型のコミュニティ・デザイン・センターの活動実態
    近藤 民代
    セッションID: 57
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、米国の大学および大学に設置されたコミュニティ・デザイン・センター(以下CDC)が展開している地域貢献活動の実態とそれを支える公的制度の助成実態を明らかにしたものである。アメリカでは大学のさまざまな学科が協働して、地域住民やコミュニティ組織と共に地域経済活性化や公営住宅の建替え事業、職業訓練などの総合的な問題に取り組んでいる。特に建築・都市計画分野に限定すると、建築・都市計画学科や大学ベース型CDCなどによる地域貢献活動は、「初動期」における建築設計、地域計画の策定、フィージビリティ・スタディなどの支援が中心であることが明らかになった。また、大学による地域貢献活動には多くの大学生が参加し、彼らが地域の住民やコミュニティ組織と対話を通して、そのニーズに応じた建築デザイン、まちづくり計画を策定するといった実践的な教育を実施している。近年、日本においては住民参加や協働の流れの中で、それをファシリテート・コーディネートする専門家へのニーズが拡大するのと平行して、彼らの育成が大きな課題となっており、本研究で明らかにされた参加型の建築・まちづくりの教育はわが国にも大きな示唆を与えるものである。
  • 志木第三小学校の環境教育に参加するNPO「エコシティ志木」を事例として
    森山 良, 後藤 春彦, 山崎 義人
    セッションID: 58
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年、環境配慮した地域社会づくり、地域へ開いた学校づくりが求められている。その中で、小学校の環境教育の授業の中で、NPOを受け入れることが考えられる。本研究のでは、NPOを受け入れる小学校の環境教育の実態を把握し、課題を明らかにする。そのために、NPOを受け入れた学校の教師、親、子供からの評価を把握した。その結果から、今後、学校とNPOが取り組むべき課題を明らかにした。
  • 1都3県の都市計画法34条8号3・4の運用を中心に
    村岡 慎也, 和多 治
    セッションID: 59
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     この研究は、1都3県の都市計画法34条8号の3および同条8号の4の運用を中心とした市街化調整区域における開発許可立地基準に関する研究である。 そこで本研究の構成は以下のとおりである。まず調整区域において34・8・3条例および34・8・4条例が制定されることとなった背景を把握したうえで(2章)、各自治体が調整区域の立地基準を定めることが可能となったこれらの条例に関して東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県を対象とし、都県レベルでの運用方法および市町村レベルでの条例の活用方法を整理した(3章)。その上で、埼玉県三郷市、鳩山町を取り上げ指定の経緯や課題について分析を行った(4章)。 以上から、34・8・3条例および34・8・4条例の有効性や運用上の課題を、既存宅地制度や地区計画制度との比較の視点から明らかにし、調整区域のスプロール問題や集落の活性化に示唆を与えることを目的とする。
  • 都市計画法と農業振興地域整備法で指定する両法規制地域に着目して
    大島 崇, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    セッションID: 60
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、都市計画法と農振法の両制度に着目し、非線引き都市計画区域を対象とした両法規制地域の指定のあり方を検討することを本研究の目的とする。その結果、農政側が創出させた農振除外地での開発が一要因となって、用途地域内に残存農地が存在しているにもかかわらず、その農政の側が用途地域内の残存農地の存在を指摘することで、用途地域拡大の足かせとなっている実態を生み出している。また、この残存農地の存在を軽視し、かつ広い未開発地を対象として用途地域を拡大すると、それが過大な指定となり、計画開発と連動した農振除外・用途地域の指定であっても同様である。そのため、都市計画の側も白地地域での農政側が行う農振除外・農地転用をチェックした上で、両法規制地域の新しい指定形態等が必要であると考える。
  • 指定既存集落に着目して
    長谷川 真一, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    セッションID: 61
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、市街化調整区域において二重線引きが指摘されている知事指定地(指定既存集落)と、その制度に関連の深い法34-8-4に着目し、それらの運用実態を把握することで市街化調整区域での適切な土地利用の提案を行った。まず、アンケート調査により知事指定地と法34-8-4の運用実態を把握した。その結果、ほぼ全国の地方都市圏で知事指定地は運用されていることが明らかになり、その制度を法34-8-4へ移行した自治体もあった。新潟県での知事指定地の運用実態を調査した結果、指定によって市街化調整区域で許容される開発が増えること、優良農地を区域に含んでいる知事指定地では、農地が開発可能地となることがわかった。
  • 濱松 剛, 中出 文平, 樋口 秀
    セッションID: 62
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では散漫な市街地形成をもたらす恐れの大きい飛び市街化区域の指定に特に着目し、市街化区域の拡大を空間的に把握することにより市街化区域指定の適切なあり方を考察する。まず、地方都市の過去30年間における市街化区域の変遷を空間的に把握した。その結果、低密な市街地を形成している都市が多数存在しているということが明らかになった。次に福島県内の4都市を対象にマクロ、ミクロの両視点から分析をした結果、飛び市街化区域においては企業等の誘致ができない状況や、大規模な住宅団地、広大な面積の区画整理事業地に計画通りに人口が貼り付かない傾向が顕著にみられることが明らかになった。
  • 岸本 和子, 川上 光彦, 沈 振江, 竹森 秀朗
    セッションID: 63
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     本稿では、インターネット上で委員会方式に対応した計画デザイン策定支援システムの開発を行い、公共空間の計画デザインへの適用実験をとおしてその可能性について分析を行っている。まず、実際の委員会方式での参加とインターネット上の参加の特徴を比較・整理し、それを踏まえて、音声やインターネット上で利用可能な3DCGなどのマルチメディアを用いてシステム開発を行った。そして、金沢市の中心市街地に位置する街路の再整備計画を対象として学生実験と市民実験を行い、計画案に関する情報提供、計画案評価の議論におけるシステムの適用可能性について分析した。その結果、委員会方式に対応したインターネット上の参加によって住民参加の機会を広げる可能性を示した。そして、インターネットでの計画案評価の議論における課題とシステムに必要な改善点も明らかにした。
  • タナテ ケネス, 大村 謙二郎
    セッションID: 64
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    この研究は、メトロ・マニラにおけるゲーテッド・コミュニティを従来コミュニティーに比べ、良い生活環境を持っているかどうか、そしてゲーテッド・コミュニティの特徴を概括することを目的としている。この研究の結果としては、ア)OCs に比べて、GCsでは生活環境に関してよい認識を持っている。イ)GCsは富裕層と貧困層を実質的に分離させていると思われる。ウ) GCsの排他性により、都市景観の維持に関しては貢献度が低いというネガティブな認識を持っている。そして主要な政策的観点として、GCsの開発のメリットを維持する一方で、過度な排他性に関しては適切なルールと基準を導入する必要がある。
  • むつ小川原開発と苫小牧東部大規模工業開発を事例として
    佐野 浩祥, 十代田 朗
    セッションID: 65
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、国土計画に位置づけられた大規模地域開発の代表例でありながら、現時点での評価は必ずしも芳しくない「むつ小川原開発(むつ開発)」と「苫小牧東部大規模工業基地開発(苫東開発)」を対象に、国と地方の計画の「計画内容」及びそれらにおける両開発計画の「位置づけ」の変遷を明らかにした。無論、事業化にあたっては、政治的、時代的背景等も大きく影響していると考えられるが、本研究では、今後の地域開発における計画策定手法に資する知見を得ることを第一義的に考え、関連する各種計画書等を主たる資料に計画内容及び計画策定段階にのみ着目した。その結果、苫東開発をめぐっては上位計画(全総)と下位計画(北海道総合開発計画)の乖離が、むつ開発をめぐっては国家的な事業を県が計画するといった計画意義と計画主体の矛盾がみられたことから、各セクターが責任を担保しうる事業のみを担当する必要性を述べた。また、むつ・苫東両開発において、構想レベルから計画の具体化の過程を明らかにし、公共投資としての計画の限界、空間操作技術の不足を指摘した。
  • -まちづくり合意形成活動における諸方策に対する主観評価-
    熊澤 貴之
    セッションID: 66
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,社会的ジレンマにおけるまちづくり方策の主観評価を規定する要因を明らかにする.筆者は既往の研究から仮説を導き,それを検証するために実験計画法に基づく実験を行った.その結果,利得が強いとき,集団のサイズが大きいとき,個人的視点に基づくとき,まちづくり方策に対する住民の満足度に肯定的な効果を与えることが明らかなった.この知見から,まちづくり方策の策定過程における社会的ジレンマ問題を解決するためには,まず,社会的視点を促すような利他的な思考を押し付けるよりも,利己的なまちづくり方策が利得にもたらす効果を徹底的に理解させ,個人的視点を促すべきである.
  • 大和市情報都市マネジメントプラン策定過程を事例として
    山口 行介, 小林 隆, 日端 康雄
    セッションID: 67
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    計画策定の際に大和市では、情報空間と現実空間に、それぞれ代表者により構成され、参加制限のある参加機会と、自由参加可能で参加制限のない機会を設置した。そこで、本研究は、情報空間と現実空間、参加制限の有無という4つのタイプの参加チャンネルの役割をプロトコル分析を用いて明らかにすることを目的とする。その結果、以下の二点が明らかになった。1)参加者制限のある空間では、情報空間と現実空間で相互の連続性が成立しており、深いコミュニケーションを行うことが可能である。2)議論の連続性は、参加者制限のある空間から無い空間へと、ほとんど一方通行で成立しており、参加者制限の無い空間はある空間での市民議論を正当化する役割を果たしている。しかし、より深いコミュニケーションを行うためには、参加者制限の無い空間からある空間への議論の連続性を成立させる必要があり、そのために何らかのシステムを組む必要がある。
  • 柿本 竜治, 藤 泰久
    セッションID: 68
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    今日,公共事業を遂行するにあたり,当該事業に関わる地域住民から意見を聴取することは不可欠となっている.しかしながら,地域住民全員の参加の上で議論を行うことは不可能である.当該事業に関するワークショップや検討委員会に住民代表に参加してもらい意見を聴取することは可能であるが,出された意見が広く市民の意見を本当に代表している保証はない.そこで,地域住民へアンケート調査を行ない,住民代表が参加しているワークショップや検討委員会にその結果を示して議論を重ねることで,幅広い意見を取り入れながら議論の内容を深めることができよう.本研究では,熊本県八代市の麦島地区で都市計画道路建設中に発掘された城跡の保存の是非をめぐる住民アンケート調査にCVMを採用した検討委員会での議論の経過と合意に至る経過について考察している.この事例から,現行計画や計画変更に伴い生じる実費用や利用効果だけでなく,外部経済や外部不経済の存在を関係者に認識してもらうことが,対立関係に協調をもたらす上で有効であるとの示唆が得られた.そして,この事例を通じてCVMは対立問題の解消の有効なツールの一つに成り得ると確認できた.
  • 大沢野・富山南道路PI事業を対象として
    宮川 愛由, 高山 純一, 中山 晶一朗, 沈 振江
    セッションID: 69
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年における公共事業に対する国民意識の高まりを受け,事業内容を構想段階から情報公開し,市民等の意見を把握し,合意形成を図る手続きとしてPublic Involvement(以下PI)の導入が注目を集めている.本研究は大沢野・富山南道路PI事業を対象とし,情報提供活動の一環として実施された意見募集結果から住民意識変化を分析し,PI導入による効果を検証することを目的とする.意見募集結果から合意形成期における住民意識構造,事業経過に伴う住民意識の変化,事業参加時期の違いによる住民意識の差の分析を行う.
  • 谷 武
    セッションID: 70
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     平成10年度に旧建設省の施策として「高齢者向け優良賃貸住宅制度」が創設され、平成13年度には「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく制度として位置づけられた。本研究は、都市基盤整備公団中部支社が管理する改良型高優賃に居住する世帯を対象に実施したアンケート調査をもとに、居住者の属性と入居までの経緯の分析を行い、公団の高優賃が実際に果たしている役割を明らかにすることを目的とした。分析の結果、公団の高齢者向け優良賃貸住宅は、団地内に住んでいて高齢者向けの住宅への転居を希望する世帯、団地の周辺の民営借家に住んでいて居住状況を改善したい世帯、持ち家に住んでいて子供と近居または別居を希望する世帯の受け皿になっていること等が明らかになった。
  • 横浜市を事例として
    藤井 祥子, 内海 麻利, 小林 重敬, 柳沢 厚, 大野 整
    セッションID: 71
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年、大都市近郊の住宅地において、斜面地を利用した大規模マンションが建設され、開発事業者と住民との間で紛争を起こしている。これは、建築基準法の改正により規制が緩和されたこと、住環境に対する住民の意識の高まりがその要因と考えられる。本研究は、こうした問題への対応方策を検討するため、次のような考察を加える。第1に、これらの大規模地下室マンションの発生メカニズムを明らかにする。第2に、こうした問題を条例により対応しようとする横浜市を事例にとりあげ、その対応方策を考察する。
  • 永井 恵一, 十代田 朗, 津々見 崇
    セッションID: 72
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、東京23区内のキリスト教会で行われている地域活動に着目し、地域コミュニティの担い手として教会が果たしうる役割について示唆を得ることを主な目的としている。アンケート調査とヒアリング調査の結果、以下のことが明らかになった。1)23区内の教会は、「住居エリア立地型」「業務エリア立地広域型」「伝統的近隣型」「新設近隣型」の4タイプに分類された。2)教会の地域活動は「提供」「交流」「参加」の計3タイプ7項目36小項目に分類された。3)教会タイプ毎に、行われている活動のタイプに違いが見られ、「住居エリア立地型」では「支援活動」が多く行われており、「業務エリア立地広域型」では「文化的な催し」や「教育活動」が、「伝統的近隣型」では「空間提供」と「イベント」が盛んで地域への貢献意識も高く、「新設近隣型」は地域活動には肯定的な意識を持つものの、実際のところの活動数は4タイプ中最も少なくなっている。4)地域活動の課題として、近隣率が低いことによる弊害と考えられる地域固有の問題への関心の低さや人手不足、また、教会どうしの繋がりが希薄なこと等が指摘できる。
  • 室田 昌子
    セッションID: 73
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本論文の目的は、ドイツの計画確定手続きにおける公共事業での利害調整の仕組みを明らかにし、日本での課題を明らかにすることである。まず第一に、計画確定手続きのプロセス、役割、公開書類や地図、計画プロセスでの位置づけを把握し、次に、計画確定手続きと他の法制度との連携による調整の仕組みを明らかにした。これは、計画確定手続きが他の法制度の手続きを包括する手続きのためである。また、連邦長距離道路A94の一部を事例として調べた。計画確定手続きでは、個々の権利と結びついて示される事業の影響に関する書類や地図が公開され、異議申立てに基づく聴聞会で協議が行われ、必要に応じて計画や対策が変更される。日本の都市計画事業で言えば、都市計画事業認可段階に相当する段階と考えられ、このような段階で手続きが実施されることは、事業の透明性や公平性を確保する上で重要と考えられる。しかし、日本での導入にはなお各基準の設置や個人情報の公開方法など課題も多い。
  • イングランドの広域都市圏の都市再生と計画主体に着目して
    村木 美貴
    セッションID: 74
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は我が国の都市再生のあり方を考えるにあたり、イングランドの都市再生を目的とした計画と事業の関連性を明らかにすることを目的とする。結果、個々の都市再生事業の効果を十分発揮させるためにも、広域都市圏で個別計画の役割を明確に示すこと、地域独自色を活かしたまちづくり実現のための補助金を競争原理に基づき分配する場合、こうした指標を用いること、再生の必要性が高い一方でリスクの高い地域では、前述した事業優先度の明確化を行い、それに基づき、公共主導で事業を進める仕組みを構築していくことの必要性が明らかとなった。
  • ノルトライン・ヴェストファーレン州未来のエコロジカル都市モデルプロジェクト対象都市を事例に
    神吉 紀世子, 阿部 成治, 小浦 久子
    セッションID: 75
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    1992年から10年間、ドイツ、ノルトライン・ヴェストファーレン州のアーヘン、ハム、ヘルネの3都市は、州の補助事業である未来のエコロジー都市モデルプロジェクトを行った。現在はさらに、ローカルアジェンダ21の取り組みとして新しい多様な事業を展開している。これらの事例では、各都市の状況や特性に応じて、様々な協働型のプロジェクトが行われた。このプロジェクトからは、エコロジー都市の実現のために異なった立場の人々の間でどのように将来像や行動の実現を共有できるようになるか、その協働を進めるためのヒントが見出せる。本稿では、これらプロジェクトの中でよく用いられたプロジェクトデザインの方法を示している。
  • 新城 龍成, 吉武 哲信, 梶原 文男, 出口 近士
    セッションID: 76
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本論文は,平成12年度都市計画法改正により市町村都市計画審議会の権限が強化されたことをうけ,都市計画のアカウンタビリティの観点から市町村都市計画審議会の情報公開に関し調査を行ない,その結果から情報公開のあり方に関する考察を行なったものである.アンケート調査は九州内の都市計画区域を持つ264市町村に対し行なった.主な調査項目は,1)委員名簿の公開,2)議事録・議事要旨の公開,3)市町村都市計画審議会の傍聴,4)公開に対する現状評価と今後の方向性である.分析の結果,次のことが明らかになった.1)委員名簿を受動的な手法で公開している自治体が多い,2)議事録・議事要旨に関しても受動的公開が多い,3)傍聴に関しては原則非公開の自治体が多い,4)今後の公開の方向性については,自治体担当者は「公開」を進めることに関しては慎重である.以上のように,市町村都市計画審議会についてはアカウンタビリティの基礎をなす情報の公開が不十分といえる.また「公開」に関する行政側の「インセンティブ」の欠如している.住民とのインフォームド・コンセント的な関係の構築のためには,いっそうの自主的な情報の公開が必要である.
  • 吉武 哲信, 新城 龍成, 梶原 文男, 出口 近士
    セッションID: 77
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,平成12年度の都市計画法改正により市町村都市計画審議会(以下、都計審)の運営が重要になったことに鑑み,1)開催回数や開催時間等の都計審の開催状況,2)都計審開催以前の事前説明および調整,3)都市計画法および政令(政令第十一号)で定められた,建議,専門委員等の制度の活用に関するアンケート調査を九州内の都市計画区域を持つ264市町村に対して行ない,今後の運営のあり方に関し考察したものである.その結果,地方部の都計審では1)案件数,開催回数ともに少ない,2)約半数の都計審が事前面談を行なっている,3)事前面談によって案件の提案内容,方法を変更した都計審は極めて少ない,4)事前面談を行なう都計審は,開催回数や審議時間が少ない傾向がある,5)修正案,対案を答申した都計審は少数である等が明らかになった.以上より,市町村都市計画審議会の運営はアカウンタビリティのみならずレスポンシビリティをも充分に果たしているとは言い難いが,一方で,重大な問題が発生したときには都計審が最終的に専門的,客観的視点を担保する場となりうる可能性は保持しているといえる.
  • 神戸市共生ゾーン条例の里づくり計画を事例として
    秋田 典子, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    セッションID: 78
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、神戸市の調整区域に適用された「人と自然との共生ゾーンの指定等に関する条例」(以下、共生ゾーン条例)を対象に、地区レベルの詳細計画に基づく開発立地コントロールの実効性について明らかにすることを目的としている。本研究の分析の結果、共生ゾーン条例で地区レベルの詳細計画(里づくり計画)の実現手段として使用されている農村用途区域による土地利用コントロール上の課題として、1)届出の契機が確保しにくい開発があること、2)4ゾーン制による立地コントロールの限界があること、3)特例的緩和用途の扱いがルーズであること、4)協議会に依存した開発コントロールには限界があることが明らかになった。地区レベルの詳細計画の実効性を高めるためには、地区住民の誰もが開発協議の主体となりうる仕組みを制度上明確に位置づける必要がある。
  • 田中 早紀子, 丸茂 弘幸, 木下 光
    セッションID: 79
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、ヘルシンキにおける大学の立地過程を都市の成長との関連において歴史的に検討し、都市と大学がいかにして空間的な親和関係を形成してきたかを明らかにすることを目的としている。
    本研究では、ヘルシンキに位置する8校の大学のうち、それらの立地変化から明らかになった異なるタイプの中で、典型的な動きがみられかつ相対的に規模の大きい3つの大学を研究対象とし、以下の3点に焦点を絞り検討をしている。1)都心キャンパスの立地経緯およびその成長・存続過程、2)郊外キャンパスとその周辺との空間的親和関係の形成過程、3)都市内の工場等の跡地に移転した大学とその周辺地域との空間的親和関係。
  • 安藤 愛, 木下 光, 丸茂 弘幸
    セッションID: 80
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、大阪国際空港周辺における移転補償跡地について、以下の2点について述べている。一つ目は空港とその周辺地域の変遷や騒音対策から、広域的に点在した過程とその分布について、二つ目は移転補償跡地の実地調査を行い、その利用実態とその課題についてである。
    近年、騒音の軽減によって空港は、再び都市施設として見直されてきている。市街地に位置する本空港にとって、地域との共存のあり方を示すことともに、空港という魅力ある都市施設を活かした地域づくりを行う上でも、移転補償跡地は重要な意味をもっている。
  • 吉田 樹, 秋山 哲男
    セッションID: 81
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    これまで,地域のモビリティを支える路線バスの運行計画は,どちらかと言えば事業者主導ですすむ傾向にあった.しかし,バスの規制緩和を受けて,市民のモビリティを保障するためには,市町村が責任を持って地域公共交通計画を立てていくことが重要である.ただ,今日の市町村には潤沢な財源が確保されていない状況にあり,地域公共交通全体を効率的かつより自律的に維持していく方策も合わせて検討していく必要がある.また,市町村がバスサービスの設定をする際に目安として活用できる運行計画の標準を提示する事が望ましい.
    本研究では,都市部における路線バスの標準的な運行計画を導きだすとともに,それを簡便に計算できるプログラムを開発した.バス路線沿線の人口密度から損益分岐点となるバス便数を算出することにより,標準的なバスサービスレベルを提示したが,概ね実際のバス路線の採算状況に適合したものになっており,有効なプログラムを開発できた.
    また,バスの集客数を予測する過程のなかで,便数の増加により顕在化した外出ニーズを定量的に示すことを試みた.その結果,自由車を持たない層で外出量が増加することが分かった.
  • 若林 拓史, 夏目 浩次
    セッションID: 82
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     現在の駅空間における障害者移動対策は,バリアフリーへの関心も高まり整備が進んでいる.しかしながら,それらの障害者移動施設は点的な整備が中心で,必ずしも線的な連続性を考慮して整備されているとはいえないのが現状である.本研究では,駅空間における移動容易性に着目し,障害の属性別に実移動距離と理想的移動距離を計測比較することで移動容易性を計量化し,あわせて駅空間における改善点を示唆できる情報を提供しようとするものである.
  • 中尾 成政, 浅野 光行
    セッションID: 83
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    近年,ペデストリアンデッキを用いた駅前広場整備が多くなされるようになったが,駅前デッキに関して定量的な分析・評価が十分になされておらず,立体式駅前広場に対応する面積算定式の必要性と可能性が一部の文献・論文で指摘されている.本研究は戦後の駅前広場計画及び面積算定式についてレビューを行い,関東圏のペデストリアンデッキを備えた全ての駅前広場を対象に面積という視点から定量的に評価・類型化し,その面積算定手法について考察することによって今後の整備のあり方を論じるものである.
  • 札幌市都心部を対象として
    石田 眞二, 鹿島 茂, 久保 勝裕, 亀山 修一
    セッションID: 84
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    わが国は,他に類を見ない速度で高齢化が進んでいる.2015年には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者となることが予想されており,歩行空間における高齢者や身体障害者の移動円滑化を目指したバリアフリー整備は,まちづくりの主要テーマの一つである.歩道のバリアフリー化は,安全で快適な都心を形成する上で重要視されている事業の一つであり,本研究では札幌市都心部において,小型プロファイラを用いて,歩道の縦断プロファイルの測定を実施し,得られた結果から札幌市都心部の歩道のプロファイルとバリアフリー状況を高精度に把握することができた.また,札幌市都心部のまちづくり計画の体系的な位置づけと歩道のバリアフリー状況を照合し,段階的にネットワーク化を目指した歩道のバリアフリー整備の効果的な優先順位の選定手法を提案した.さらに,まちづくり計画と連動した歩道の維持管理に関する考え方を示した.
  • 斎藤 正俊, 谷下 雅義, 鹿島 茂
    セッションID: 85
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,著者が開発した鉄道駅における利用者の行動モデルの変数にエネルギー消費量を明示的に組み込む方法を提案し,モデルの説明力が大幅に向上することをケーススタディにおいて検証している.行動モデルは,移動円滑化の影響を評価する観点から,乗車駅の改札口から降車駅の改札口に至る行動を対象としており,この一連の行動を乗車駅における移動施設の選択行動,車両の選択行動,降車駅における移動施設の選択行動に階層化するとともに,効用関数(選択基準)を移動時間に加え,エネルギー消費量と移動形態の線形関数として仮定し,確率効用理論に基づく階層型の非集計行動モデルを用いて個人属性単位で定式化し,都営三田線の利用者を対象にケーススタディを行っている.
  • 三古 展弘, 森川 高行
    セッションID: 86
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    非集計交通手段選択モデルの移転性は高いといわれているが,移転性を向上させるためにモデルを修正する方法がこれまでにも提案されてきた.しかし,地域移転性を向上させるために修正されたモデルの時間移転性はほとんど分析されておらず,その時間移転性に影響を与える要因の解明は不十分であった.本論文は,モデルの修正方法のひとつである,非集計データを用いた選択肢固有定数項の修正を取り上げ,修正定数項の時間移転性に影響を与える要因を解明することを目的としている.分析では,中京都市圏で収集された繰り返しクロスセクションデータを分割し,適用地域を効率的に多数生成した.分析の結果,修正定数項の時間移転性に影響を与える要因は,地域特性のみならず,過去の交通状況や交通行動の不可逆性とも関連している可能性が示された.
  • 交通基本法としてのLOTIの役割
    板谷 和也, 原田 昇
    セッションID: 87
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、フランスにおける都市圏交通政策を、国レベルでの計画コントロールシステムとして捉えることで、各都市圏の計画が高い実効性を持っている要因を明らかにしようとするものである。具体的には、各政策の、都市圏交通政策全体の中での位置づけを行うとともに、その枠組みの中で実際に地方がどのような条件のもとで計画に関する意思決定を行ったかを示している。結論としては、フランスでは国がLOTI(国内交通基本法)を策定することでPDU(都市圏交通計画)の向かうべき理念を明らかにし、政策に関する全ての責任を負う組織であるAOTU(都市圏交通機構)を設置させて計画策定を義務づけ、VT(交通税)に代表される自由度の高い財源制度システムと法定の住民参加制度を構築することで、政策実施の枠組みを作った。それに対し、地方はその枠組みの中で、各地域に固有の問題をルールに則って解決することを大きな役割としているのである。このように国と地方の間で明確に役割を分担したこと、特に国による計画枠組みの設定こそが、フランスにおける地方の交通政策がスムーズに進むようになった大きな要因と考えられる。
  • 大阪南港ポートタウンをケーススタディとして
    松村 暢彦
    セッションID: 88
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,住宅団地の自動車交通問題が社会的ジレンマの1つである「共有地の悲劇」の問題構造を有していることに着目し,社会心理学を中心とする共有地の悲劇に関する既往の知見から,住宅団地の自動車交通問題の解決に結びつく糸口を得ることである.本研究では,大阪南港ポートタウンで実施されているノーカーゾーンという,居住区域内を車両通行禁止とする交通政策に着目する.ノーカーゾーンは,路上駐車がまん延した時期があったことから,「失敗」と評価され,これまで研究が行われていない.そこで,共有地の悲劇における知見から,「取り締まり・規制の必要性に対する合意」に着目し,入居時のノーカーゾーンに対する受容度の低下が,路上駐車まん延の要因であることを明らかにした.
  • 高橋 洋二
    セッションID: 89
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    わが国は2008から2012までに1990年比で6%の二酸化炭素を削減することを京都議定書(COP3)で約束している。わが国の二酸化炭素排出量の約2割が運輸部門から出されており、そのうち4分の1が物流を担う貨物車に起因している。 政府は貨物車から鉄道や船舶へモーダルシフトすることにより、440万tの二酸化炭素を削減する計画が立てている。企業がモーダルシフトにより二酸化炭素排出量を削減する場合、その費用の一部を国が助成する実証実験制度が2002年に創設され、これまでの2年間に44件が採択された。プロジェクトの審査は、単位補助金あたりの二酸化炭素削減量の多いものから採択する、オークション方式を採用している。 その結果、排出原単位の小さい鉄道にシフトするプロジェクトが多く採択されている。併せて行われたアンケート調査によれば、企業のなかには二酸化炭素削減のためのプロジェクトを独自に進めているところも多い。しかし、国の計画である440万tを削減するには、現行の補助金をはるかに超える予算が必要なことも明らかになった。
  • 塚原 真理子, 藤田 素弘, 山岡 俊一
    セッションID: 90
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    コミュニティ・ゾーン形成事業についての研究事例としては、コミュニティ・ゾーンに対する整備手法等などの評価や、計画とその実施についての研究などがある。また最近では、事業に対する環境質の価値意識と住民参加意識およびCVM(仮想評価法)による支払意思額との関係を分析した研究も行われている。しかし既存研究では、本来同時に意識される事業への価値意識をそれぞれ独立としたモデルで扱っているため、幾つかの環境質価値間における相互関係の分析には至っておらず、この相互関係が支払意思額や事業への参加態度に及ぼす影響についても明確に扱っていない。更に、この事業が公共事業であるという特質上、施設を利用する人への効用のみならず、全市民的な整備価値を考慮すべきであり、環境質的価値への評価も考慮が必要であると考える。これらの課題に対して、本研究では異なる特徴を持つ3カ所の住宅地区で調査を行い、この地区の特徴を様々な角度から分析し、この特性の下で、コミュニティ・ゾーン事業に対して意識される環境質価値の相互関係を比較分析することにより、これが支払意思額や参加態度にどのように影響しているかを明らかにした。
  • 仙台都市圏を対象として
    小島 浩, 吉田 朗, 森田 哲夫
    セッションID: 91
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    今後の都市交通課題に対処していくためには、交通施策のみならず都市構造施策も合わせて検討していくことが重要である。また、施策評価を行う際には、広域的な環境負荷の低減に加え、地区環境へ及ぼす影響を定量的に評価することが求められている。本研究では、交通モデルに土地利用モデルを組み込むことにより、様々な交通施策および都市構造施策が、交通環境負荷の及ぼす影響を定量的に評価するモデルを構築した。ケーススタディの結果、交通施策と都市構造施策の組み合わせにより、交通環境負荷に与える影響は異なることが明らかになった。
  • 北九州都市モノレールを対象として
    宮下 清栄, 渡邉 健太郎
    セッションID: 92
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    環境制約などから、公共交通の利用促進と都市のコンパクト化が促されているが、公共交通への手段転換は現在のところそれ程無い。しかし、公共交通優先型開発(TOD)や歩いて暮らせるまちづくりは今後一層重要な施策である。都市モノレールなどの中量軌道システムの歩行空間の質を考慮した駅勢圏の算定と端末交通手段であるバス及び自転車も考慮した駅勢圏の特性を把握することが重要である。本研究では、北九州都市モノレールを研究対象とし、定期券購入者データとGISを用いてモノレール利用者の駅勢圏の把握と特性を明らかにすることを目的としている。研究の結果から以下のことが言える。(1)定期券によるモノレール利用者は広域的で主に学生が利用している。これらの利用者は、モノレールの沿線区域人口の少なさを補っている。(2)ネットワーク解析を行った結果、沿線地区において、今まで考えられてきた駅勢圏よりも定期購入者の利用は広域であり、バスとの乗り継ぎ駅では、更に駅勢圏は拡大する。(3)郊外沿線地区の公共交通空白地区では、交通施策と歩道整備により利用者のアクセシビリティーは向上し利用促進につながる可能性がある。
  • 東京臨海部開発のための「りんかい線」を事例として
    高津 俊司, 佐藤 馨一
    セッションID: 93
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。_丸1_事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。_丸2_りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後30年集計)をGREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。_丸3_これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
  • 猪狩 周二, 中出 文平, 樋口 秀
    セッションID: 94
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は中心市街地衰退の一要因として公共施設の郊外展開に着目し、地方都市に立地する公共図書館を対象として郊外展開の実態把握を行い、その問題点を明らかにすることで、今後の公共施設立地のあり方を考察している。まず、地方都市の過去20年間における図書館規模の拡大と立地変遷を明らかにした。移転や新設された立地は郊外部が多く、中枢機能を担う中央館ですら例外ではない。そして5都市7図書館において利用者アンケート調査を実施した結果、図書館の立地は利用実態に影響を与えており、特に交通弱者が受けている影響は大きいことが分かった。
  • 溝本 剛志, 塚井 誠人, 奥村 誠
    セッションID: 95
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    リサイクル施設は固定費用が大きく、時間的に安定したレベルで稼動させるためには、ある程度の規模を持つ施設を共同で少数設置し、廃棄物を広い区域から収集することが望ましい。しかしそのことは、輸送費用の増加をもたらす恐れをもっている。
    廃棄物リサイクル施設の最適位置は自明ではなく、廃棄物の発生量のみならず最終処分場の容量や輸送費用を考慮して適切に定める必要がある。さらに今後のリサイクル処理技術の向上により残滓発生率が変化することも想定して、施設配置を検討することが望まれる。
    本研究ではこのような検討を行うためのツールとして、施設配置モデルの提案を行うことを目的とする。その際、上述した施設の固定費用に起因する「規模の経済性」、および最終処分場の逼迫に伴う「規模の不経済性」を考慮するため、非線形の費用関数を取り込んだネットワーク型の施設配置モデルを提案する。
  • 吉田 謙太郎
    セッションID: 96
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、神奈川県が実施を検討している森林保全及び生活排水処理対策目的の水源環境税を基礎として、神奈川県と東京都においてほぼ同一の評価フォーマットを用いた環境評価を実施した。便益評価額及び便益関数の同等性比較を行うことにより、便益移転可能性を検証した。その結果、水源環境税の便益評価においては、CVMと選択モデルのどちらを用いたとしても、抵抗回答を除外した場合に便益移転が可能であることが実証された。これまでに、CVMのみによる便益移転あるいは選択モデルのみによる便益移転を実証した研究はあるが、両者を同時に比較した研究結果はきわめて少ない。また、CVMにおいて便益移転可能性は実証されたものの、スコープテストをパスできなかったという結果が得られた。一方、選択モデルについては、回答者が政策水準の違いに適切に反応したことが分析結果から明らかである上に、便益移転可能性があることも明らかとなった。現在の環境評価研究における最大の論争点の1つであるCVMと選択モデルのどちらが適切な表明選好法として利用可能であるかという問題への解答を探る上でも重要な実証研究の成果が得られた。
  • -千里ニュータウンを事例として-
    田中 晃代, 久 隆浩
    セッションID: 97
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、持続可能性の観点から見た千里ニュータウンの現状と課題を整理し、課題解決を手がかりとした持続可能なまちづくりの指標のあり方、について考察したものである。その結果、1.住み続けるための物的環境の更新のあり方について市民参加による議論の必要性、2.コミュニティや居住環境を維持継承できる集合住宅の建替え、住民自らが管理できる物的環境整備のあり方、地域活動の発展のためのしくみづくり、3.今回の指標づくりを通じて、まちづくり指標を市民参加で策定する方法論、4.プラットフォームの開催が市民やグループの交流、情報交換を促進させる、などについて明らかになった。今後の課題として、1.この指標を住民や地元行政がいかに位置づけ使用するか、2.今後はより時間をかけ、多くの住民に共有されるかたちで指標づくりを発展させるか、などがあげられる。
  • 高知市種崎・浦戸地区を対象として
    塩崎 賢明
    セッションID: 98
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、南海地震が想定される高知市内の2地区において住民に対するアンケート調査を実施し、地域における津波・地震対策の現状、住宅や地域の安全性に対する認識状況、地震に対する危機感、津波からの避難意識、防災対策に対する意向を把握したものである。対象地域では自主防災活動が展開されており、多くの住民が危機意識を持っているが、住宅の耐震化は進んでおらず、その阻害要因として、_丸1_住民が耐震診断や補強工事の内容や制度について的確な情報を持っていない、_丸2_地震に対して、予防対策しても仕方がないと考える傾向がある、_丸3_地震に対する不安よりも将来(老後)への不安の方が勝っている、という3点が明らかとなった。対策意欲に欠ける階層は、年齢が高い世帯、年収が低い世帯、世帯人数の少ない世帯ほど多いという特徴がある。耐震改修を推進するためには、耐震診断や耐震改修に対する補助金などの制度整備、きめ細かい情報提供が必要である。また、お金があっても住宅対策に使うよりは貯金するという傾向の背景には確実に迫ってくる老後の不安が考えられ、これを取り除く施策も必要といえよう。
  • 京都市東山区を対象とした実態調査
    秋月 有紀, 田中 哮義, 岩田 三千子
    セッションID: 99
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は多数の観光客が存在する京都市の、特に文化財が集中する東山区を対象として、行政管轄下にある空間把握に有効な標識の視認性に関する実態調査を行い、現状の問題点を抽出し今後の改善案を示したものである。京都市が管轄する空間把握に関連する標識は、消防局・産業観光局・建設局の3部局で維持管理されているが、災害時の避難場所を誘導する標識の設置数や設置位置に問題があり、適切な誘導が行われていない。主要道路に密に設置された視認性の高い道路標識などの、現存する他の標識を有効利用した、部局を超えた配置計画を行う必要がある。またいずれの標識も夜間および無灯時の標識の視認性が不十分である。高齢者は広域避難場所関連の標識を視認できず、その他の標識の視認距離も短い。外国語表記の文字の視認距離も短く国際都市としては問題がある。配置図の中の現在地を示す文字は主要文字に比べて遙かに短く、地図上の現在位置を把握しにくい。これらの問題を解決するには、風化による影響を最も受けにくい文字寸法を重点的に取り上げ、標識のデザインを見直す必要がある。また広域避難場所を示すピクトグラムを積極的に利用することも効果的である。
  • 米国カリフォルニア州のジェネラルプランと市町村マスタープランの分析
    牧 紀男
    セッションID: 100
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    会議録・要旨集 フリー
     本論文ではカリフォルニア州のジェネラルプランと日本の市町村マスタープランにおける防災計画の内容について分析を行い、カリフォルニア州では、1)ジェネラルプランの中に防災に関わる計画を持つ事が義務づけられていること、2)目的手段関係が明確になった「戦略計画」の手法に基づく計画となっている事、3)被害想定結果を踏まえた計画となっている事、日本の計画では1)多くの計画で全体計画の<目標>として防災に関わる規定を持っている事、2)目的手段関係が明確でなく実効性を持つ計画となっていない事、3)具体的な被害に基づく計画となっていない事を明らかにした。 しかし、「持続的発展可能な防災」という概念に基づく防災計画とマスタープランの融合は未だ途についたばかりである。今回とりあげた日本の自治体は今世紀前半にほぼ確実に巨大地震に見舞われる。将来の開発計画を策定する際に、こういったリスクを考慮にいれる事は不可欠である。
feedback
Top